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定年楽園への扉

お金より深刻な老後問題 暴走老人は孤独が育てる? 経済コラムニスト 大江英樹

2018/5/31

写真はイメージ=123RF

 老後の三大不安といわれる「健康」「お金」「孤独」のうち、最も深刻なのが「孤独」です。健康とお金は現役時代でもイメージしやすく、ある程度備えることができます。ところが、孤独は定年退職しないと実感できませんので、これに備える人は少ないのです。

 最近は雑誌の記事やテレビの特集で「切れやすい老人」とか「暴走老人」などのタイトルが目に付きます。高齢者の傍若無人な振る舞いが問題となっているわけです。人身事故などによる列車の遅延で、駅のホームで駅員さんに食ってかかっているのは若い人よりも年配者が多いように思えます。

■ほぼ一貫して増え続ける高齢者の犯罪

 実際、2017年版「犯罪白書」を見ると、犯罪全体の件数は減少傾向にあるものの、65歳以上の高齢者の犯罪はほぼ一貫して増え続けています。高齢者の犯罪検挙者数は約4万7000人で1997年に比べると約3.7倍です。中でも大きく増えているのは「傷害・暴行犯」で、こちらは97年に比べ約17.4倍に増えているのです。高齢者自体が増えているのは確かですが、それにしてもこれだけの増加はちょっと異常です。

 理由は一つではないでしょうが、私が考える一番の理由はやはり孤独な老人が増えてきていることです。周囲とうまくコミュニケーションが取れず、やけになって暴走してしまうパターンです。つまり、孤独は暴走老人の予備軍というわけです。

 昔は多くの人が大家族で暮らしていました。おばあちゃんがご飯を作ったり、おじいちゃんが孫の面倒を見たりといったように家族の中でお年寄りの役割がちゃんとあったのです。人間は極めて社会的な動物ですから、家族という小さな社会であっても、自分以外の人間とともに暮らすことで、我慢すべきところは多かれ少なかれ出てきます。何より孫などとのコミュニケーションは生きがいを感じさせたでしょう。

■現役時代から社外に友人や知人を持つ

 核家族化の進んでしまった今、もう元の大家族に戻るということは不可能ですが、それでも孤独に陥らないようにする方法はあります。特に会社員は定年後は孤独になりがちです。そうならないよう、現役時代から社内の人間とだけ付き合うのではなく、できるだけ会社の外に多くの知人や友人を持つことを心がけましょう。

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