2億年以上も前からその姿を変えずに現在まで生きいるカブトガニは、その青い血液が細菌汚染を確かめる検査に有効であるとし、毎年アメリカでは約50万匹もの生きたカブトガニが捕獲され、その過程で30%が死に至る。
乱獲が進み個体数が急速に減少しているカブトガニだが、ようやく救いの手が差し伸べられた。
アメリカの大手製薬会社、イーライリリー・アンド・カンパニー社はカブトガニの血液の代わりに、合成化合物の使用を開始したと発表した。
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カブトガニの血液の代わりに合成品の使用を開始
現在イーライリリー・アンド・カンパニー社は、工場2ヶ所にある研究所内で水を検査するため、カブトガニから採取した血液の代わりに、合成品の「組み換え型ファクターC(recombinant Factor C/rFC)」を使用している。
rFCが流通するようなったのは2003年のことであるが、現在に至るまで普及はしていなかった。
カブトガニの血液に含まれる凝固タンパク質は細菌汚染に反応するため、ワクチンや薬剤の安全性を保つために使われてきた。
細菌内毒素は命にかかわるような発熱や毒素ショックを引き起こすため、米食品医薬品局は薬品の原料や最終製品に汚染検査を行うことを義務付けている。
・人類の命を救う。カブトガニの青い血の採取工場を訪ねて。 : カラパイア
血液を採取されたカブトガニの30%が命を落とす
カブトガニの血液は1970年代後半にウサギの血液に代わって採用された。
今では毎年50万匹ものカブトガニが捕獲され血液が抜き取られており、その過程で30%が死ぬと言われている。
血液を抽出した後は自然に放さねばならないが、それでも抽出のストレスによって多くの個体が命を落とす。
乱獲により個体数が減少
10年前、ニュージャージー州はカブトガニ捕獲に対するモラトリアムを設定したが、付近の他州では相変わらず釣り餌として利用し続けたため、個体数の回復には至らなかった。
カブトガニの卵の密度は、1990年代初頭の1平米当たり8万個から現在の8000個にまで激減した。
カブトガニの減少が生態系に悪影響を及ぼす
カブトガニの現象は生態系に悪影響を及ぼしていた。デラウェア湾頭のカブトガニの卵をついばむ渡り鳥のコオバシギの個体数も約75パーセント減少し、現在も減り続けているのだ。
コオバシギ image credit:Chuck Homler d/b/a Focus On Wildlife
この時期、コオバシギは南アメリカから16000キロ離れた北極の繁殖地を目指すが、そのエネルギー補給としてカブトガニの卵を食べて繁殖シーズンに備える。
カブトガニの卵に頼る渡り鳥はコオバシギの他にも数種存在する。
非営利団体ニュージャージー・オーデュボンの代表であるエリック・スタイルズ氏によると、デラウェア湾頭は、海岸に生息する鳥にとって世界で五指に入る重要な場所だという。
そこに生息する生物多様性とそれらが食べる餌を守れるかどうかは、私たち人間にかかっているのだ。
References:pressofatlanticcity
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コメント
1. 匿名処理班
自然環境には人間様が一番迷惑なのよねー
2. 匿名処理班
こんなクズみたいなことしてたのか。ほんと人間許せねぇ。タイトル忘れたけど丸太とゾンビの漫画とおなじことしてるな
3. 匿名処理班
イーライリリー、グッジョブだなー
カブトガニ、増えるといいねぇ
4. 匿名処理班
ほ乳類と違ってかわいそうに思わないのかもしれないけど
苦しいのはもちろんだけど3割も死んでるんだからひどいと思うわ…
5. 匿名処理班
てめえらの血はなに色だーっ!!
6. 匿名処理班
ありがとうカブトガニ これからもよろしく!
7. 匿名処理班
どっかで見た光景だと思ったら漫画ドロヘロドだ
拘束した魔女から力の素を強制的に搾取する工場
8. 匿名処理班
ちょっと前にNHKで、ギリギリまで血を抜かれた上に本来の生息域じゃないところにポイッと捨てられるカブトガニさんたちの映像を見たわ
確か製薬会社の人は「カブトガニに負担がかかるようなことはしてない」だか「命に別条ない」だか、そんなことをしれっと言っててめちゃくちゃ腹が立った
いや、お前らが遺棄したそこの浜辺で大量に死んでるだろと
カブトガニたちに幸いあれ
9.
10. 匿名処理班
※2
クズではないだろ
人間許せねえってお前も人間だろって
なんか自分は一切関係ない他人事のように批判してるだけの偽善者に見える
11. 匿名処理班
代替物作れるのも人間だけどね
12. 匿名処理班
無駄に、と言うことは使わなかったロスがあるのかな
それとも安易にかわいそうという意味で無駄って言ったのかな
後者ならおセンチだねとしか
13. 匿名処理班
今まですまんなあカブトガニさん…
あんたらの血液に人間は助けられた
これからはあんたらに頼らんようがんばるからな
あんたらの個体数が増えるようにがんばるからな
14. 匿名処理班
きっと人は皆何処かでこの青い血に助けられてきたと思うと、この合成品使用が広まる事を祈るしかできない
15. 匿名処理班
※2
『彼岸島』ですな。
つーか、カブトガニって意外に希少種でもなかったのね。
16. 匿名処理班
遂にだね。
今までの犠牲は変わらないけれど、この先少しでも減っていくと良いな。
17. 匿名処理班
透析でこのくらいの針を2本ほどぶち抜くがほとんど
激痛のため爆睡と呼ばれる一種の気絶に陥る
人間用針の色だと白は16G。例えばちょっと太い畳針を
体にぶっ刺すものと同じ感じ。これをカブトガニに刺して
ストレスにならんと思うのがおかしいぜ
18. 匿名処理班
※1
認めたくないがほんとこれ
人間が自然咸鏡に与える悪影響って
人類単位でトータルすると
もはや災害を上回る域に達しちゃってるんだよなあ
19. 匿名処理班
確かHIVの薬にも使われるって聞いた覚えがあるから、若干仕方がないかなと思ってる節はあった。けどこんなに酷かったとは……。結局状況を変えるのは道義心より代替技術の進歩なんだなぁ……。
20. 匿名処理班
乱獲はダメだけど採血自体は別にいいでしょ
ただの漁だよ
21. 匿名処理班
リムルス・テストは毒素というか、発熱の原因物質の有無を調べるのに必要だったけど、日本では万能薬であるマスクが普及してあまり使われなかった。
22.
23. 匿名工作員
こういうのはカブトガニだけじゃないからなぁ…
医療の発展に欠かせないのは事実。だからといって人間のためだけに一つの種を絶滅させ、生態系を壊し、新たな問題を産んで、それがまた人間に還ってくる構図はなんともバカな話だなぁ。
24. 匿名処理班
不自然にでも死なさず増やすために他の生態系破壊も当たり前ってスゲー生き物だな、よっぽど存在自体に意味がある生命体なんだろうな、そのニンゲンとやらの生き物は
25. 匿名処理班
生きるために色んな生き物を日常的に殺しておいて、今更何言ってるんだか…
26. 匿名処理班
rFCよりカブトガニの方が安価なのかな
一応絶滅を避けるためのキャッチアンドリリースだと思うけど、渡り鳥への被害の度合は実際にカブトガニの個体数を減らすまで予測できないものなんだろうか…
27. 匿名処理班
コレ言うと怒られそうなんだけど半端に血を抜いて大量に殺すくらいなら
最初から殺すつもりで全部血液抜いたほうが全体の被害が少ないんじゃないの?
だってコレは血を抜きましたが私には殺すつもりはありませんでした~
離したら結果として勝手に死んじゃったんです~
というエゴにエゴを重ねて体裁を守るために被害を拡大してるだけでしょ
人間に必要なことだとはわかるけれど悪者になりたくないからってさらに悪質なことを
するのはどうかと思うんだ
28. 匿名処理班
無駄にって、今まで代替がなくて必要だったから採ってたわけで一応無駄ではないのでは…
29. 匿名処理班
人類文明中心の世の中はそろそろ終わりにするべき
30. 匿名処理班
これ写真のカブトガニを哺乳類に置き換えて直視できる人間いるのかな?
よく映画や漫画で人間を捕らえて栄養を啜るモンスターを滅ぼすストーリーあるけど、ぶっちゃけ人間こそが地球上で1番モンスターだよね
31. 匿名処理班
※8
ていうか、本来の生育地と違う場所で、投棄されてそのまま死ぬんだったらまだいいかもしれなくて、全く逆にその場所に適応した場合の心配をしたほうがいい。
今年も、何週間か前に中国から何かに紛れて侵入した、「ヒアリ」がどこかで発見されて騒ぎになったし。
あと、海外から輸入されたクワガタやカブトを、安易に日本の里山に逃がしたりするやつらもいて、日本在来の種と交雑したりする問題もあるし。
それと、バラスト水の問題で本来オーストラリアの海域にいないはずの、ワカメが繁殖していろいろと問題になっていたりするし。
なので、用済みになって捨てられたカブトガニでも、生き残った個体が繁殖した場合、そこに本来いた生物の生息環境を破壊する可能性が十分あるから。
32.
33. 匿名処理班
代替品が存在しないならカニさんを利用せざるを得ないってのもまあ理解できるんだが。そりゃまあ合成品で代用できるんなら徒にカニさんをいじめる必要は無いわな。