【大相撲】栃ノ心、初のジョージア出身大関 口上で異例の「親方」2018年5月31日 紙面から
日本相撲協会は30日、東京・両国国技館で大相撲名古屋場所(7月8日初日・ドルフィンズアリーナ=愛知県体育館、中日新聞社共催)番付編成会議と臨時理事会を開き、関脇栃ノ心(30)=春日野=の大関昇進を満場一致で決めた。新大関の誕生は昨年夏場所後の高安以来で、ジョージア出身力士では初めて。栃ノ心は同日、東京都墨田区の春日野部屋での昇進伝達式で「謹んでお受けいたします。親方の教えを守り、力士の手本となるように稽古に精進します」と口上を述べた。新十両には千代の海(25)=九重、沖縄県出身の木崎改め美ノ海(ちゅらのうみ、25)=木瀬=が昇進し、希善龍(33)=木瀬=が3場所ぶり、単独最多の9度目の再十両を決めた。 伝達式会場に入ってきた栃ノ心は、まず左胸に手をやった。気持ちの高ぶりを抑えようと必死だったが、汗びっしょり。緊張で未明に5、6回起きたが、そのたびにおさらいした成果で、堂々と口上を述べきった。こだわったひと言が、力を与えてくれた。 「親方の教えを守り」 どうしても「親方」に登場してもらいたかった。師匠の春日野親方(元関脇栃乃和歌)と相談し、決めた口上。稽古への精進を誓う内容で固まっていたが、主役が「言いたいことがあるんですけど、いいですか」と“待った”。師匠本人から「細かく絞らないでほしかったけど」と反対されながらも粘り勝った。 18歳でジョージアから来日し、言葉も分からないまま身一つで角界に飛び込んだ。初めてのプレゼントは、師匠からの「心をつけてもらった」しこ名だった。右四つの取り口を確立した現在も、立ち合いで相手を突き起こす春日野親方直伝の攻めを、稽古場から追求し続けている。 「あと10年、頑張れ」。2013年名古屋場所、右膝の靱帯(じんたい)を断裂。4場所連続休場して幕下に陥落し、引退も考えたが親方のひと声で再起を決めた。そんな師匠の現役時代の締め込みを譲り受けて土俵に戻り、新入幕から所要60場所という1位タイのスロー昇進を果たした。 初場所の平幕で14勝した初Vを起点に、大関昇進前3場所としては史上最多タイの37勝。大関とりを実現できなかった師匠の最高位を越えた。さらに上は横綱しかない。 会見中こそ「そういうのは、まだ考えないですね。自分の相撲を取りたいだけ」。生真面目に話したが、緊張から解放されると晴れの口上を振り返って「最高だよ。もう1回できれば緊張しないだろうな」と早くも綱への意欲をみなぎらせた。 新大関場所の名古屋の目標は、まず2桁白星。しっかり優勝争いに絡み、角界の頂点を見据えていく。 (志村拓) ▽春日野親方(元関脇栃乃和歌)「(初場所の)まさかの優勝から始まって、まさか大関をうちの部屋から出せるとは思っていなかった。常に優勝戦線に残れる力士になってほしい」
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