議論白熱! 働き方改革法案~最大の焦点“高プロ制度”の行方~
国会で与野党による攻防が繰り広げられている「働き方改革関連法案」。労基法や労働契約法など8本の法案で構成され、時間外労働に対する罰則付きの上限規制や、同一労働同一賃金の実現にむけた施策などが盛り込まれている。その中で最大の焦点となっているのが、労働規制を緩和する新たな仕組み「高度プロフェッショナル制度」だ。高収入の一部専門職を対象に働いた時間では管理せず、導入されれば残業や休日出勤をしても割増賃金は支払われなくなる。厚生労働省は、高度な知識を持ち自分で働く時間を調整できる人は労働時間に縛られず柔軟に働くことができると説明。一方、野党側は、長時間労働が助長され、健康確保が十分できないと主張。激しい攻防が続いている。労働時間を管理しない労働者を作るという日本で前例のないこの制度で、私たちの働き方はどう変わるのか、そして働き方改革はどうあるべきか、議論する。
出演者
- 竹中平蔵さん (東洋大学教授)
- 上西充子さん (法政大学教授)
- 吉田浩一郎さん (クラウドワークス社長 新経済連盟 理事)
- 棗一郎さん (日本労働弁護団 幹事長)
- 武田真一・鎌倉千秋 (キャスター)
議論白熱!働き方法案 あなたの仕事に影響は?
社会の関心を集めるニュースが相次ぐ中、私たちの働き方を大きく変えうる議論が進んでいます。与野党の攻防が続く「働き方改革関連法案」。その大きな柱は、長時間労働を是正するため残業時間に上限を設ける規制。正規・非正規の格差を是正する同一労働同一賃金。中でも意見が大きく対立しているのが、「高度プロフェッショナル制度」。これは、年収の高い人たちを労働時間の規制から外すというものです。
安倍首相
「仕事で成果を上げて収入を上げていきたいという人もいる。議論をして成立していただきたい。」
これに対し、野党は反発を強めています。
立憲民主党 枝野代表
「1日何時間働こうと関係ない、こんな制度を導入してしまったらどうなるか。」
法案は、明日(31日)にも衆議院本会議で採決が見込まれています。一体何が論点なのか?働き方にどんな影響があるのか?意見の異なる立場の人たちが大激論。徹底的に掘り下げます!
議論白熱!働き方法案 “高プロ制度”是か非か?
鎌倉:働き方改革関連法案、最大の焦点は、「高度プロフェッショナル制度」の導入です。対象として想定しているのは、年収1,075万円以上の証券アナリストや医薬品開発研究者など、高度な専門的知識を持つ人で、これらの人たちを労働時間の規制から外し、多様で柔軟な働き方を認めるとしています。これまでの管理職や、編集者やデザイナーなどに適用される裁量労働制と比較しますと、このようになっているんです。
時間外労働の割増賃金や、一定時間ごとに休憩を取るという規定もなく、さらに、管理職にも認められている深夜の割増賃金も出ません。
労働時間の規制を全面的に外すというところが、最も大きな方針転換だと思いますが、まずはこの制度、どう評価されているのか、基本的な立場からお伺いしていきます。まず、賛成の立場の竹中さん。
竹中さん:この背景には、世界の経済社会の非常に大きな流れがあると思います。そこから生まれているという背景をちゃんと理解することが重要だと思うんですね。かつての伝統的な工場労働みたいに、1時間長く働けば、その分、生産が増えるというような仕事ではなくて、今、私たちが直面している仕事のいくつかは、やっぱりもっともっと柔軟に、時間ではなくて成果で、その労働の質で認められなければいけないものだと思うんですね。だからそういうものを認めていくということは、日本は、私は避けられないと思います。
ベンチャー企業の経営者の吉田さん。
吉田さん:私の仕事、経済を使って日本を活性化するということから考えますと、今、これから少子高齢化というテーマ、竹中さんが今、世界のお話をされましたけれども、日本も少子高齢化の中で、さらにイノベーションを起こして、経済を活性化していかないといけない。そういう意味では、この高度プロフェッショナル制度というのは、その1つのイノベーションの切り口になるんじゃないかなというふうに考えてます。
そして、反対の立場の上西さん。
上西さん:これは労働基準法の改正なので、労働者が労働法の保護の外に放り出されるという制度だと考えてます。ですので、反対です。これは「使用者にこうさせてはならない」という規定を外してしまうので、使用者の規制が外れる、使用者に対する縛りが外れるという基本的なところを理解していただきたいなと思ってます。
そして、労働問題を専門にしている、弁護士の棗(なつめ)さん。
棗さん:この高度プロフェッショナル制度の法律的な意味での本質というのは、専門業務型の「ホワイトカラーエグゼンプション」なんですね。つまり、労働基準法の時間規制をすべて外すという制度でありまして、どういうことになるかというと、法定労働時間制を適用しない、週休もない、休憩もない、それから残業代の割り増しもない。ということになると、使用者は24時間年中無休のコンビニエンスストアと同じように、労働者に対して「長く働け」と言うことができるという、そういう極めて危険な制度なので、断固反対ですね、私は。
多様で柔軟? 働きすぎ助長?
鎌倉:では、具体的なテーマに沿って、議論を進めていきたいと思います。高度プロフェッショナル制度、その論点は?
まずは「多様で柔軟な働き方」か、それとも「長時間労働の助長」かです。高度プロフェッショナル制度が適用されるとどう変わるのか、こちらのイラストで見てみましょう。
まず、国や経済界が期待する働き方のモデルケースです。例えば、証券アナリストのAさんです。働き方を時間で制限されていましたが、高プロが始まると、仕事をやりたいときにやって、休みたいときに休めるようになります。その結果、意欲が上がって、生産性もアップするとしています。
一方、野党や労働界などが懸念しているのが、研究員のBさんのモデルケースです。時間で仕事を管理されていましたが、高プロ制度が入ると、仕事が際限なく増えて、残業代も出ずに、休みもなし。その結果、健康を害してしまうとしているんです。
視聴者からはこんな声が寄せられています。
40代 男性
“高い才能や、能力のある人材が自由に時間を自己管理しながら効率的に仕事を進められる。何が問題なのか。”
50代 女性
“結果が出るまで働くのもよいが、行きすぎはだめ。やはり規制は必要。人間はロボットではありません。”
多様で柔軟な働き方につながるのか、あるいは長時間労働の助長になるのか、いかがでしょうか?
上西さん:「多様で柔軟な働き方」というのは、間違ったうたい文句だと思うんですね。先ほどのように労働時間の規制というのは、使用者を縛るものなので、それを外してしまうということは、柔軟な「働かせ方」ができる。働く人からすると、労働時間の自由になるわけではなくて、「この時間働け」というような命令については残ります。ですので、柔軟な働き方ができるものではない。むしろ裁量労働制よりも、厳しい働き方になると考えています。
竹中さん:今までの議論の中で、ものすごく大事なことが全く抜けてるんですね。「全ての規制を外す」という議論が横行していますけれども、そうではなくて、すごく厳しい規制が課されるんです。これは「最低これだけ休みを取りなさい」と、休みを規制するんです。休みを強制するんです。だから、休みを強制して、その休み以外の時間については自由にしなさいということですから、全く何も規制のないところに放り出されるとか、それはやっぱり非常に誤解を招くと思います。これは使用者にとっても、例えば年間104日、休日を取れと、これはほとんど完全週休2日制ですよ。それで4週間で、必ず4日取れというのも、ものすごく厳しい、要するに休日を取れという規制もしているわけで、そこのやはりバランスを見ないと、議論は誤ると思います。
どうみる?健康確保対策
鎌倉:健康確保対策についても書かれていまして、法案では働かせすぎを防止するために、保護する規定も明記されています。4週間で4日以上、かつ年間104日の休日確保を義務化。加えて、こちらの4つの項目のうち、労使がいずれか1つを選んで実施するとしています。また制度の適用には本人の同意が必要で、その後、離脱することも可能です。
という制度になっているんですけれども、いかがでしょうか?
棗さん:この健康確保措置ですけれども、極めて不十分ですね。これで労働者の健康が守れるかというのは、保証はないと思います。つまり、4週4日休ませなければいけないということなんですけども、4週28日ですね、4日間固めて休ませれば、あとは24時間24日働けという業務命令も合法になりますので、ブラック企業なんかがそれを利用しないとも限らないですし、この健康確保措置の4つのいずれかを選べということなんですが、企業にとってはどれが一番簡単かというと「健康診断」ですよ。ほぼこれを選ぶと思いますので、健康診断を選んで、じゃあ医者の診断に従うのかと、従わなきゃいけないというふうなことも、どこにも書いてありませんので、極めて不十分ですね。
企業側の対応が鍵となるともいえると思うんですが、いかがですか?
吉田さん:そういう意味では、これはここに書いてあるとおり、「本人同意が必要です」と、別に強制されるわけじゃなくて、こういった優秀層の人が主体的に自分の意思で同意をしたときに適用される。しかも適用したあとに、自分の意思でやめることも可能、ほかの働き方を選ぶことも可能なわけなので、あくまで選択肢を増やす活動にしかすぎない。そういった人たちが、どんどん自分の成果を出したいというときには、これを選べると。だから非常に機動的な制度なんじゃないかなというふうに考えています。
鎌倉:この高度プロフェッショナル制度について、家族を過労で亡くした遺族らは、国に対して強い懸念を示しています。
全国過労死を考える家族の会 寺西笑子代表
「(高度プロフェッショナル制度は)『定額働かせ放題』。過労死になってしまえば、責任も取れないひどい状態になってしまう。これ以上、過労死を増やさないでください。死人を増やさないでください。悲しい遺族をつくらないでください。」
鎌倉:一方、政府は次のように説明しています。
加藤厚生労働相
「私どもとしては、高度プロフェッショナル制度の必要性、どういう要件があって健康確保措置として考えてやっているのか、しっかりとご説明してご理解いただけるよう努力したい。」
企業に休日の確保を規制するものだと、あるいは本人の同意が必要なので、これは必ずしも強制されるものじゃないというご意見でしたが、いかがですか?
上西さん:選択肢というふうにいわれるんですけれども、やはり企業がこれを入れたいと、同意をしてくれというふうに求められたときには、なかなか断るということは難しいと思いますので、自発的に選べる、あるいは自発的に外れることができるという制度ではないと考えてます。
竹中さん:それは基本的には、この高プロだけではなくて、いろいろなものについて、当然のことながら、雇う人間と雇われる人間というのは立場がやっぱり違いますから、それは雇う立場のほうが強いわけですよ。だから労働者の権利を守らなければいけなくて、だからこそ団結権なども認められているわけです。でもそれがちゃんとやられてるかどうかというのは、これは執行の問題で、執行はちゃんとしなければいけない、労働基準監督をちゃんとしなければいけないわけで、棗さんもさっき「不十分だ」とおっしゃった。これについて、さらに議論することは私は必要だと思うんですけれども、高プロ制度そのものを否定してはいけないと思うんですね。こういうプロフェッショナル制度を認めましょう、これはちゃんと実行していって、労働者に不利にならないような形の労働基準監督をしていきましょうと。おっしゃっているのは、私は執行の問題だと思うんですね。
上西さん、いかがでしょうか?
上西さん:いえ、制度の問題ですね。これは労働者にとって利点は何もないので、使用者にとって使いやすくなる制度です。
竹中さん:もし利点がなければ、選ばなければいいわけですから。チョイスはあるわけですよね。
棗さん:断れないでしょう、それは。
吉田さん:年収の1,075万円というのは、全体の年収分布からすると、上位の3~6%といわれている層なんですよね。
上西さん:実績ではないですから。
吉田さん:それはそうなんですけれども、過去のデータから見ると、そういった上位層の年収の人たちが、じゃあ主体性がないのかというと、恐らく上西先生は自分の意思でいろいろ働いていると思うんですけど、そういった方が選べる制度でもあると。
竹中さん:プロフェッショナルですから、会社に対してそれなりの交渉力がある人だけを対象にしている、極めて限定的な制度だと私は思いますけどね。
上西さん:「交渉力」とよくいわれるんですけど、中身がないんですね。結局、仕事の量についても交渉力はないし、時間配分についても使用者の指揮命令を受けるし、じゃあ、やめればいいかというと、同じようなこういうところが、すべて高度プロフェッショナル制度になると、ほかに行ったって同じですから、そういう意味で交渉力という言葉は、言葉だけだと思います。
あなたの仕事にどう影響?
ここで、このような議論を、働く人たちがどう聞いたかというのを聞いてみたいと思います。
飯島徹郎アナウンサー:東京・銀座です。ここは机やいす、ネットワーク設備などを共有しながら、それぞれ仕事ができる場所、「コワーキングスペース」です。違った職種の人たちが交流を深めたりすることもできるんです。今日(30日)はここにお越しの、ITや金融関係で働いている現役世代の皆さんにお話を伺っていこうと思います。
ふだんはどんなお仕事をなさってますか?
女性
「マスコミで営業企画の仕事をしております。」
飯島:ここまで、議論をどんなふうに聞いてましたか?
女性
「やっぱりこういう場所が増えているということは、働き方をいろいろ考えられるきっかけになっていると思いますし、『働かされる』んじゃなくて、やっぱり『働く』っていうところで自分で選べるというのは大切なことなので、理想的な働き方を考えられるきっかけになると思います。」
飯島:ちょっと厳しい表情をされながら聞いてましたけども、この高度プロフェッショナル制度、どんなふうに受け止められていますか?
男性
「私は反対の立場から聞いていたんですけれども、大体、上西さんのおっしゃったとおりかなと思っていて、竹中さんがおっしゃるように、『自由に選択できる』『いい悪いも自分で選べますよ』とは言っていても、それをみんな、じゃあ選択できるんだっけといったときに、交渉力がない人は、じゃあどうしたらいいのというところに答えが出ていない以上、今、導入するのは反対だという立場です。」
飯島:最後に意見をお願いします。
男性
「現在、金融系の会社でITの仕事をしていて、将来のためにAIやブロックチェーンの勉強をしようと思っているんですけれども、この制度が将来、自分にどう影響してくるのか、不安ではあります。」
対象職種と年収要件は?
鎌倉:今、いろんな気になる質問もありましたけれども、最後の方は、今、ITの仕事をしていらして、将来、自分がこれに関係するのか、当てはまるのかどうかという質問も出ていましたけれども、これは、まさに次の論点にも関わるんです。
法案の対象職種、年収要件について、これから議論を進めていきたいと思います。この制度の対象となる人は、法案成立後、省令で定めるとしているんですけれども、これについてはどうお考えでしょうか?
棗さん:対象労働者が範囲が決まっていない法律を作るとき、それはありえないと思うんですよ。まず、どういう人が対象になるのか、何人ぐらいいるのか、どういう働き方になるのかというのを、ちゃんと議論してからやるべきで、導入ありきなんですよ、この考え方はね。それから、これから決めるって言ってますけど、どうやって、その使用者側の要求を受け入れていくのかというのは、全然歯止めがないんですよ。どんどん拡大していく可能性があります。
年収要件にしてもそうです。この制度を入れたときの、塩崎厚労大臣だったと思いますけれども、「小さく生んで大きく育てていけばいい」とおっしゃってました。年収要件も場合によっては下がっていく可能性はもう十分あります。
吉田さんは、会社を経営する立場ですが?
吉田さん:ちょっとまた視点を変えて、海外だと、ヨーロッパ、われわれから見ると成熟市場の先輩でありますけれども、ドイツが今、インダストリー4.0の流れで、「成長産業」と「成熟産業」を分けて働き方を変えていくと。ですので、インターネットとかそういうITの分野に関してはより柔軟に働けるという形で、成長産業が国を後押しすると、国の成長を支えるというような考え方でトライしている前例があるわけですね。
そういう意味でいくと、この内容自体が、そういったイノベーションを起こすときっていうのは、世界との競争に今なっているわけですね。じゃあ、アメリカに勝つ、中国に勝つというときには、こういった働き方で、どんどん新しい価値を生み出すことに集中できる環境を整えるというのは、1つ、これは意義のある取り組みなのではというふうに考えています。
視聴者からもこんな声が寄せられています。
50代 女性
“クリエーターなどは、高プロで働きたいという人を多く見聞きします。”
30代 女性
“『高収入の専門職』といわれていますが、派遣法のように、規制緩和されない保証はどこにもありません。”
このイノベーションを生み出すためには、こういった制度が必要じゃないかという声もありますが?
上西さん:やはり誤解があると思うんですね。自律的に自由に働ける働き方ではないので、あくまでこれは経営者の方、使用者の方が必要としている(制度)、今回のこのゲスト構成からも分かるように、そういうものだと思います。
なかなか、経営側と自分の仕事量や処遇について交渉するということに不安を感じるという声もあると思うのですが?
竹中さん:今までやったことないから、不安を感じるという気持ちも分かります。だからこそ先ほどから言ってますように、そこは労使の委員会を作るというのも1つの案だし、それと労働基準監督で、きちっとそういうことが実行されるかということだし、何事もやっぱり、一部を緩めて、それで事後的にチェックするという仕組みは、私はこれ大変必要だと思うんですね。
私が一番懸念するのは、さっきおっしゃったように、社会で競争してる中で、あれをやっても不安、これもやっても不安、あれやっても不安ということだと、本当に日本全体が沈んでいく、みんなで沈めば怖くないのかと。やっぱりここは、本当に新しい制度を作るために私たちは一歩踏み出さなきゃいけないと思うんですよ。
議論白熱! どんな働き方を目指す?
鎌倉:では、今後、私たちはどんな働き方を目指すべきなのでしょうか。
就業者の数は、2030年には790万人減少すると予想されています。また、時間当たりの労働生産性は、日本はOECD(経済協力開発機構)に加盟する35か国の中で、20位となっています。つまり人口減少が進む中で、生産性の向上というのが急務となっているんです。
一方、こうした現実もあります。毎年100人前後の方々が過労死したとして、労災認定を受けています。
労働生産性を高めていくことと、働く人たちの健康を守ることを、どう両立させていけばいいのでしょうか?
棗さん:生産性を上げるために、労働者の命や健康を犠牲にしていいという論法はありませんので、それはおかしいと思います。労働時間を短くすれば生産性は上がっていくんですよ。それは当たり前じゃないですか。世界の共通のルールで、その中で戦っていけばいいのであって、日本だけ規制を外して、こういうものを取り入れていけばいいという議論は間違っていると思います。
吉田さん:今、実は働き方のルール自体が根本から変わってきていると。1つの事例としては、航空会社の手荷物受け付けが、今、自動に、ロボットになりました。あるいはアパレルブランドのショップでも無人レジと。全コンビニが今後、無人レジを導入していくという報道もあります。そういう意味では、定型化・定量化できる業務、推し量れるような業務というのは、プログラミングによってAI・ロボットが発達していって、そういったものに置き換えられていく。そういうときに、じゃあ、その時代における人の働き方ってなんだというと、いわゆる決められた業務ではなくて、もっとクリエイティビティを発揮するような、非連続性とか、わくわくするアイデア、そういったものが求められていく。だからそういったものに集中できる環境作りというのが重要じゃないかと思いますね。
大きく社会が変わっていく中での私たちの働き方、どうあればいいのでしょうか?
上西さん:先ほど、事後的なチェックをすればいいというお話がありましたけれども、やはりこれは命と健康の問題なので、規制を外してしまうということは歯止めがなくなるんですね。労働者からして、これが違法だということが言えなくなる。労働基準監督署も入れません。なので、そういうことについて、やはりこれは労働法の改正ですから、労働者を守るというところを外してはいけない。いくら時代が変わろうと、そこの基本は外してはいけないと考えてます。
竹中さん:何度も言いますけれども、規制を外すのではないんですね。規制のしかたを変えるんです。労働の時間を規制をするのではなくて、休日をしっかり取るということを規制して、これは義務づけて、その範囲でクリエイティブに仕事をしてください。私はそういう人が増えていかないと、やはり経済は弱くなっていくと思うし、現実に世界を見ても、アメリカはこういう制度が進んでいます。ヨーロッパは、ある面で非常に硬直的な労働制度を取っているところもありますけれども、今年(2018年)のダボス会議なんかに出ても、メルケル首相もマクロン大統領もやっぱり、これは変えていかなければいけないというものすごい強い問題意識を持って(いて)、私はこれはやっぱり世界の流れとして、労働者の権利を守るのは大事です、命は大事です、でもその範囲で、しかし、しっかりと変えるべきところは変えていかなければならないと思いますよね。
では、働く人たちは、どう感じたのでしょうか。再び中継です。
飯島:スタジオでの議論を聞いていて、ぜひ意見を述べたいという方がいらっしゃいます。
男性
「やはり高プロ制度は、やっぱり推進されるべきだと思っていて、私自身は、週の半分はコンサルタントをやって、週の半分はフォトグラファーという生活をしているんですけれども、給料というものを「もらう」ものではなく、「稼ぐ」ものに変えていくんだというふうなことを考えるためのきっかけに、高プロ制度というのはより推進されていくべきじゃないかなというふうに考えます。」
飯島:一方で、否定的な意見の方もいます。
男性
「僕はフリーランスで働いているんですけど、結構、自由っていいなって言われるんですけど、わりと半分残酷なところもあると思っていて、これ、うまく使える人はいいと思うんですけど、そうじゃない人たちに、みんなでやっぱりケアして、うまくつきあっていけるようになればいいなと思っています。」
賛否両論ありますが?
棗さん:うまく使えるツールがこの法文上、ないんですよ。裁量はありませんし、自分で時間を決めて帰れるなんて権限は付与されてません。それがあるっていう法文上、書かれているならそうかもしれませんけどね、それはないんですよ。しかも、休日も規制があるじゃないかとおっしゃいますが、さっき言いましたように、24時間24日間働けっていう、それが合法になっちゃうわけです。これ、どうやって労働者の健康を守れっていうんですか、長時間労働なんか是正できないんです。私はそう思います。この制度が根本的に間違っていると思います。
竹中さん:私はやっぱり、これを入れていかないと、日本経済のあすはないというふうに思うんですね。まだまだ極めて不十分で、私はこれを適用する人が1%じゃなくて、もっともっと増えていかないと、日本の経済は強くなっていかないと思うんですね。
鎌倉:増やしていく考えですか?
竹中さん:政府は増やさないと言ってますけど、私は自然に増えていくことが、日本経済をよくしていくことにつながると思うんですね。ただ1つ、やっぱり労働基準監督はきちんとしなくてはいけなくて、そこは極めて重要なポイントだと思います。それで私が1つ、個人的に提案してるのは、労働基準監督局だけじゃなくて、それを民間の社会保険労務士とか、そういうとこに委託して、それでこの体制を強くするというのもこの際、私は考えてればいいと思います。