スマートニュースの社員になりました
皆様、お久しぶりです!約 7 年振りにこのブログを書いています。 元気にしてましたか?僕は元気です。
実はこの 6 年間 id:mizzusano とカクテル株式会社という会社をやっておりまして、先日のプレスリリースにもあったようにこの度会社ごとスマートニュースにジョインすることになりました。
そこで今日は振り返りも兼ねて、以下の 3 点について、この 6 年間考えていたことを書いて見たいと思います。
少しでもこれから起業したい人のお役に立てればと思っております。
事業アイデアより大切なこと
6 年間の事業を振り返えると失敗の連続でした。その中で、事業そのもののアイデアより共に起業するメンバーが大切だと思ったので、その理由を書いておきます。
事業は失敗の連続
カクテル社が 6 年間で取り組んだ事業は 8 事業、作ったアプリは Android/iOS 合わせて 10 アプリ(そのうちリリースしたのは 7 アプリ)。とにかく失敗失敗の連続でした。
本当に酷いものです><
事業に失敗しても会社は潰れない
でも逆にですね。これは声を大にして言いたいのですが「事業に失敗しても会社が潰れるわけではない」ということなのですよ。
なので、「やりたい事業がないのに会社を作るとか無いわー」などと言う人もいますが、そこは「やりたい事業がなくても起業して良いのでは?」って思います。だって、最初の事業アイデアは失敗するかもしれないし、それでも会社は続くんですから。
事業アイデアよりもメンバーが大事
「失敗」するにしても、遅すぎる段階で「失敗」するとそれは会社にとっての致命傷になることはあると思います。なので、そういう意味でも「実装のスピード」は大切です。
あと、「失敗」したときに次にいける判断力や精神的な余裕が必要だと思います。
僕なりの結論としては、結局人なのだと思います。もちろん事業アイデアも大事だとは思うのですが、「実装のスピード」と「失敗しても次を挑戦する気持ち」を持ったメンバーを集めることが大切なんだと思っています。
起業家が健康的に働く方法
この話はブログに書こうかだいぶ迷ったことなのですが、この機会を逃すとなかなか告げるタイミングがないと思いますので、書かせてください。
友人の死について
会社を作って約 8 ヶ月経った時、代表取締役だった友人が亡くなりました。一緒に起業した仲間です。
プライベートなこともあるので詳細は具体的に書けないことはご了承ください。当たり前ですが当時はだいぶ落ち込みもしたのですが、その出来事を乗り越えて、学べたこともありました。この経験から、起業家がもっと健康的に働ける方法をずっと考えていたのでここに残しておきます。
起業家が健康的に力を発揮していれば、たとえ事業が失敗し続けても、きっと良い成果が生まれると信じています。なので、これから起業したい人に少しでもお役に立てればと思います。
起業家が健康的に働く 4 つの方法
起業家が健康的に働く方法として、僕が感じたのは
- 約束を自分で厳しくしすぎない
- 期待値調整を上手にする
- 不確実なことはなるべく早く終わらせる
- 責任は分散させる
この 4 つです。
約束を自分で厳しくしすぎない
起業家には上司はいませんので、基本約束する相手は投資家や取引先になると思います。上司だったら叱ってくれるかもしれませんが、投資家や取引先はそんな優しくないので、どうしても起業家からしてみると「投資家や取引先との約束は確実に守りたい!」と思ってしまうと思います。
約束を守りたいという気持ちはあるべきです。しかし一方で、約束を自分で厳しく設定しすぎると、自分も現場も辛くなってしまうこともありますよね。起業家は自分の責任でやっているわけなので、この責任感がマイナスに働いてしまってはもったいないと思います。
そこで、約束をする時は、自分たちにとって少し甘めにするのをおすすめしています。例えば、「1 ヶ月でリリースできる」と思ったなら、「3 ヶ月でリリースできる」と言いましょう。
これは心理的にはすごく難しいことだし、勇気がいることだし、相手によっては失望されることかもしれません。それでも、出来ない約束をするより絶対に絶対に良いです。ここは頑張ってください。
あと、 3 ヶ月で出来ることを前提に事業の計画を立てた方が、その期間に様々なリスクを内包して確実に事業を進めることができます。
誰に急かされることも無く、結果的に当初の想定より早く進むとさえあると思います。突発的なトラブルで心を痛める機会もかなり少なくなると思われます。
「人と約束する時、 3 倍で言う」この法則は思えておいた方がいいと思います。
期待値調整を上手にする
これは起業家に限らずですが、あまり人の期待値を上げない方が良いです。あまり自分自身にも期待しない方がいいです。プライドはなるべく低い方がいいです。人に対しては、下から目線、低みの見物を決め込みましょう。
ただ、会社を経営していると期待されないことは実際には難しく、期待されないと資金が集まらなかったり、人材採用ができなかったりします。
なので、大事なのは「期待値調整」です。期待値を上げすぎたなと思ったらちょっと下げる、下がりすぎたなと思ったらちょっと上げる、と状況に応じて使い分けちゃいましょう。期待から得られるメリットとリスクを考えながら対外的なコミュニケーションをしていった方が良いのかなと思います。
期待されてなければ、一度や二度の失敗なんてことはないさ!
不確実なことはなるべく早く終わらせる
不確実なことがあると、人間そこに期待してしまうものです。不確実なことはなるべく早く答えを出しましょう。 例えば、「〇〇層から 100 万 DAU が見込める」みたいな話は、さっさとリリースして「〇〇層から 1 万 DAU を得ており、月ベースで 10% 成長している」というような話にしてしまうと良いと思います。
一番まずいのは、楽観的な予測を残したままリリースもせずプロジェクトが半年とか過ぎてしまうケースです。 半年もリリースされなかったらどう思いますか?きっとリリースの時に「ついについに、半年かけた大作がリリースされる!!」みたいに思われちゃうのではないでしょうか?
前項でも書いたように人から実態以上に期待されると、失敗に対する心理的コストが上がってしまうので、期待の余地もないくらい早く可能性に答えを見出しましょう。。
責任は分散させる
責任重大な仕事を一人で背負いこまないことも大切です。特に、以下のような
- メールや文章を書く仕事(特に謝罪文)
- 人前での発表やプレゼンの準備
- 株主総会の議事録などを作る仕事
やろうと思えば何時間でも改善出来るような「作業者の誠意に依存したような仕事」は、特に二人でやった方が良いと思います。
例えば、いろいろ送り難いメールとかあるじゃないですか?そういう時は一人が荒く文章を書いて、もう一人がレビューして送信ボタンを押す(文章を書いた人と、送信した人が別になるようにする)みたいに「作業の責任」と「確認&決定の責任」を分離すると良いと思います。
ソフトウェア開発でいうと Pull Request を使ったコードのマージを想像すると良いかもしれません。あれも「コードを書いた責任」と「レビュー&マージした責任」を分けるようなものだと思ってます。
その後の会社経営について
彼の死後、もう一人のメンバーである id:mizzusano と手探りしながら会社経営を行ってきたのですが、分からないことだらけで本当に大変でした。投資家の方や友人に本当に助けられてここまでやってこれたのだと思います。
途中何度かお金が本当に無くなった時、事業に行き詰まった時、様々な場面で助けてくれた方々、本当に心から感謝しております。ありがとうございます。
この経験から思ったこととして「一度起業している人は優しい」というのがありました。起業家で成功してキラキラして見える人でも本当はめちゃくちゃ苦労していて、様々な部分で同情的に接してくれたのかなと思います。自分もこれからもし人に頼られたことがあったら、その人には出来る限りのことをしようと思っています。
あと時々、起業家の人が炎上しているのを見るといたたまれない気持ちになるので、みんな優しくしてあげて欲しいです。
プログラマーが起業するということ
これから起業したいプログラマーの人に向けて、以下のことを助言したいです。
- スタートアップの仕事はほとんど「コードを書く」こと
- 流行りの技術をキャッチアップする時間がない
- 大企業では使えないプログラマーになるかもしれない問題
プログラマーと一緒に起業しようと思っている人も、相手の気持ちになって読んでいただけるとありがたいです。
スタートアップの仕事はほとんど「コードを書く」こと
これはカクテル社(営業やマーケティングがほとんどいらないサービスを作っていた会社)特有のことなのかもしれませんが、会社のほとんどの作業は「コードを書く」時間でした。
なので、これからコンシューマー向けのサービスで起業する人は、プログラマーじゃないメンバーも「いざとなったらコードを書く覚悟」を持っていた方が良いかもしれません。
最近はどの会社もエンジニア採用に苦戦していて、「エンジニアの採用費を考えたら会社を買収した方がお得だよね!」という状況はあるので、会社のエンジニア率が高いと会社の EXIT の選択肢の幅も広がると思います。
(このあたりの細かいことは以前会社のブログに書いたことがあるので興味があればご覧ください)
流行りの技術をキャッチアップする時間がない
スタートアップをやっていると全くと言っていいほど自分のためのコードを書く時間が無いです。なので、流行りの技術を勉強する時間もほとんどありませんでした。
これは覚悟した方が良いかもしれません。
まあ「ライブラリ」「フレームワーク」「ツール」「プログラミング言語」などは、後からでもキャッチアップできるかもしれません。しかし、「機械学習」などの分野は、毎日のように新しいモデルが提案されるなど「分野が成長する速度」が「学習速度」に比べて非常に速いと感じます。今、一生懸命勉強してますが、いつか追いつけるかは謎です。
大企業では使えないプログラマーになるかもしれない問題
スタートアップを終えて、自分が市場から求められる人材か?ということに関して思ったことを書きます。
スタートアップで求められるエンジニア
基本的にスタートアップのエンジニアは以下のようなことが求められます。
- とにかく早く実装する
- シンプルに必要な機能だけ実装する
- サーバもアプリもウェブも全部自分で書く
- 基本はライブラリを使う
要は「拙速でフルスタックで、ライブラリを上手く使える人」というのが感じです。
しかし、こういうエンジニアは大企業ではあまり求められないかもしれません。
大企業で求められるエンジニア
大企業は、以下のようにスタートアップとは置かれる状況が全然違います。
- 失敗に対するリスクが大きい(速度ばかりを重視できない)
- プロダクトもそのマーケットも成熟している(シンプルな機能だけではダメかもしれない)
- 資金があるので、専門性の高いメンバーを揃えられる(全部ひとりがやらなくても良い)
- 資金があるので、ライブラリ自体を自社で作れる。コミッタを雇ったりもできる
要は「よくテストを書き、専門性が高く、品質の高いコードを書く人」というのが求められるのではないでしょうか?
自分は何が得意なエンジニアなのか?
カクテルを終えた今、この問いにどう答えて良いかわからない自分がいたりします。
ちゃんと自分の方向性を持ち、いざとなった時に潰しの効くエンジニアでいるということも常に意識していた方が良いかもしれません。
スマートニュースとこれからのこと
スマートニュースで働き始めて早 3 ヶ月が立ちました。
前々職のオーマから数えるともう約 9 年ぶりに会社員になったわけで、浦島太郎のような日々を過ごしております。そのあたりの感想、スマニューについて思ったこと、今後のことなどについても書いておきたいと思います。
めっちゃ人見知りになってた
6 年間ほとんど外出しなかったということもあって、ほとんど id:mizzusano としか会わない日々を過ごしていました。なので、今めっちゃ人見知りしてます><
必要なくても、適度に人と会っておくのは大切なことだと思いました。
「異能なエンジニア」を活かす環境作り
スマニューは非常にエンジニア駆動な会社で、いわゆる「異能なエンジニア」がビジネスに対して最大限に実力を発揮している会社だなあと感じています。
鍵は「お互いの特性の理解」と「部署を超えた連携」にあると思っています
会社って社員が増えると、部署ごとに「価値観村」のようなものが出来てしまっている例とかよく見かけませんか?(近寄り難い開発部とか) スマニューにはそういう分断が全然無いんですよね。
あと、社内にコーヒースタンドのような人が混ざり合う空間があったり、 Slack でパブリックに会話する文化が根付いていることがそういう雰囲気作りに影響しているのかもしれません。
こういった社内異文化コミュニケーションが成立しているところは、新参者としてもスマニューに入っていく中で非常に有り難く感じました。
会社の雰囲気作りに悩んでいる経営者の人は、ぜひ「社員の憩いの場」と言いますか「タバコの無い喫煙所」のような空間を設けてみるといかがでしょうか?
世界への挑戦
国内では有数のアプリになってきているスマニューですが、みんな現状にまだまだ満足しておらず「ようやく世界での挑戦権を手に入れた」というのが社内の雰囲気です。
僕もこれからスマニューの世界展開の中で少しでも貢献していけたらいいなと思っています。
今現在の僕の仕事は、グロースハックといいいますか、マーケティングをエンジニアリングの力で自動化、最適化していくみたいなことをやっています。 海外では Marketing Technology などと呼ばれる領域で、グローバル進出を目指すスマニューにおいて今後力を入れていく領域になるんだと思っています。
こういうこと一緒にやりたい人がいたら是非連絡ください!
エンジニアが足りない
スマニューでは今新しいプロジェクトが次々と始まっていて、エンジニアがまだまだ足りません!
id:mizzusano が今温めている企画もかなり面白そうだし、今めちゃくちゃ面白い仕事がたくさんあるので、面白いことやりたいエンジニアの人ぜひ一緒に仕事しませんか?
最後に
長々と書いて来ましたが、僕は元気に楽しく働いています。
エンジニアの人は、ぜひスマニューの社食で一緒にランチでもしませんか?
(おまけ) ピクトリーはこれからも続きます!
色々と事業の失敗についても書きましたが、ピクトリー自体は順調に運営されており、これからもサービスは継続していきます。
ただ、今後はよりピクトリーを発展させるためにも僕らよりも適したプレーヤーにピクトリーを譲渡することを検討しています
僕自身非常に思い入れのあるサービスですので、みなさまこれからもピクトリーのことをよろしくお願いいたします!