今回試乗したのは4速ATモデル。
エンジンはこれまでと同じ、最高出力82kW(112ps)、最大トルク151Nm(15.4kgm)を発生する1.6リッター直列4気筒DOHC16バルブだ。
なんてことはないエンジンだが、排気量のわりに低回転からしっかりトルクを発し、ATがそれを上手く増幅させていて、出足でグンと前に出るし、1~2速のギア比が適度に接近しているので、市街地では走りやすい。
まあ、ATが4速であることには違いなく、2-3-4速間で変速すると大きくガクンと回転数が変わるのだが、かつてのように不可解なシフトダウンをしたり、妙に引っ張ったりする印象が薄れた点は良くなった。でも、もう1段あるとだいぶ違うだろう・・・。
さらに、サスペンションやステアリングなど、目に見えない部分にも改良が施されており、走りのフィーリングも従来と比べ結構変わっていた。
まず、電動パワステは適度なしっかり感が備わった。センターからの切り始めにやや不感帯はあるのだが、従来の軽すぎて頼りないステアフィールに比べると大きな進歩だ。
2006年に登場した現行ルーテシアの初期モデルに乗った際、前期のATやステアフィールの問題はあるものの、足まわりについてはなかなかよい印象を持ったと記憶している。
しなやかに路面からの入力をいなし、不快な振動を車内に伝えず、フワッとした中にもシャキッと芯のあるキビキビとした走りに、フランス車に乗る醍醐味を感じさせた。
けっして日産側の車種が悪いというわけではないことを断っておきたいが、同じプラットフォームでも、これほど違う「らしさ」を出せるものだと感心したものだ。
それが今回、全体としてはややスポーティな方向に振られたという感じ。持ち前の乗り心地の良さを損なうほどではない中で、ダンピングをやや強めに効かせ、路面からのインフォメーションを伝える味になった。
速度をある程度上げたほうが、フラット感が増して印象がよくなるという新しいルーテシア。
日本でもハッチバック車が徐々に市民権を得て、国産車、欧州車ともども選択肢が増えてきた中で、ひとまず価格設定が同セグメントの国産車とそれほどかけ離れていなくてよかったと思う。
そして、国産車やドイツ車にはない、ルノー車らしいユニークさこそ、このクルマならではの持ち味。そのベースには、欧州で高く評価されている実用車としての優れた素性もある。そもそもスタイリングが好みなら、それだけでも大いにけっこう。
興味を持った人は、まずはぜひ実車に触れてみて欲しいと思う。