さらに同マガジンは国際労働機関(ILO)の数字を引用し、「米勤労者は日本人よりも年間137時間、フランス人より499時間も長く働いている」と書いた。
年次の記述はないが、米国人の労働時間が一般的に思われている以上に長いことは間違いなさそうだ。
前置きが長くなった。それではなぜ、米国では高プロを廃止しようとする動きが起きないのか。廃止よりもむしろプロフェッショナルであれば、無制限で仕事に没頭すべきとの考えがあるのはなぜなのか。
労働契約の徹底が理由の1つ
大きな社会問題にならない理由の1つが労働契約の徹底がある。雇用者が社員を雇い入れる時、通常は書面での契約に署名する。時には口頭のこともあるが、書面には細部にわたって労働条件が記されている。
同時に契約書の中に「雇用者はいつでも被雇用者を解雇できる」といった項目があることもあり、ケースバイケースで内容を精査する必要がある。
契約時に年俸や労働時間について決めるため、実際の労働条件が契約内容に沿わない場合はクレームをつけられる。
「モノ申す」ことを厭わない文化も手伝い、満足のいかない長時間労働を強いられる状況では、自分に過大な負担がのしかかる前に雇用者と協議して解決策を探ることができる。
さらに米企業は職務ごとに社員を雇用するため、自分のペースに合った仕事を遂行できることが多い。同じ部や課の同僚が残業していても、自身の職務が終われば1人だけで帰宅できる流れは日本とは違う。