「「セクハラ罪はない」 バカバカしい(?)閣議決定はなぜされるのか(坂東太郎 | 日本ニュース時事能力検定協会検定委員 5/30(水) 10:00 )」
立憲民主党逢坂誠二衆院議員の質疑に対する「セクハラ罪はない」 という答弁書閣議決定に関し、坂東太郎氏はこう述べています。
ここまでをご理解いただいた上でペンディングしておいた「バカバカしい」かどうかの材料を拾ってみます。まず「セクハラ罪」から。質問主意書は
https://news.yahoo.co.jp/byline/tarobando/20180530-00085775/
・現行法令で「セクハラ罪っていう罪はない」という理解でよいか。
・セクシュアル・ハラスメントが強制わいせつなどの犯罪行為に該当することはあるのではないか。該当することがあるのであれば「セクハラ罪」という呼称を持たないものの、セクシュアル・ハラスメントに対する刑事法上の罪に該当するのではないか。
といった内容です。
答弁書は「現行法令において『セクハラ罪』という罪は存在しない」「セクハラが刑法の強制わいせつ等の刑罰法令に該当すれば犯罪が成立し得るが、成立するのは強制わいせつ等の罪であり『セクハラ罪』ではない」といった内容です。
まあ涙が出るほど当たり前の答えですね。これをもって質問主意書そのものが無駄であったといえるのかも。一方で答弁書の内容云々ではなく改めて麻生発言の是非、特に「犯罪でなければ何をやってもいいのか」という疑問を提起したので価値があるともいえなくもありません。
一言で言えば、“答弁内容は当たり前、質疑そのものが無駄”と評しているわけです。
しかし坂東記事に記載されてない事情を見ると、逢坂議員の質疑には重要な意味があったことがわかります。
事の発端
2018年5月4日、訪問先のマニラでの記者会見にて麻生財務相が「セクハラ罪っていう罪はない」「殺人とか強(制)わい(せつ)とは違う」などと発言したことが発端となっています。
これについては、朝日新聞や共同通信、Buzzfeedなどが報じています。
https://www.asahi.com/articles/ASL547FDDL54ULFA00P.html(朝日新聞 2018年5月4日22時54分)麻生財務相「セクハラ罪という罪はない、殺人とは違う」
しかし、麻生氏はセクハラの認定については「セクハラ罪っていう罪はない」「殺人とか強(制)わい(せつ)とは違う」などと発言。「(福田氏)本人が否定している以上は裁判になったり、話し合いになったりということになる。ここから先はご本人の話だ」とした。
https://www.iza.ne.jp/kiji/politics/news/180505/plt18050500170003-n1.html(共同通信 2018.5.5 00:17)麻生財務相「セクハラ罪という罪はない」 減給理由は「役所に迷惑」
セクハラ行為を認定した上で減給とした財務省の対応とは食い違う説明になる。麻生氏は「『セクハラ罪』という罪はない。殺人とか強制わいせつとは違う」とも発言した。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180505-00010002-bfj-pol麻生財務相「セクハラ罪という罪はない」。識者ら「何から何までおかしい」と批判や戸惑い(5/5(土) 14:47配信 BuzzFeed Japan)
そして「セクハラ罪っていう罪はないですよね。殺人とか強制わいせつとは違いますから」と発言した。財務省は4月27日、福田氏のセクハラを認定して減給処分をしているが、その点には触れなかった。
文脈を見れば、“セクハラは殺人とか強わいと違って罪にならない”と主張していることが明白です。
逢坂議員の質疑は、そこをついたものです。
平成三十年五月八日提出 質問第二七五号
セクハラ罪という罪に関する質問主意書 提出者 逢坂誠二平成三十年五月四日、訪問先のフィリピンで麻生太郎財務大臣は記者会見し、福田淳一前財務事務次官のセクハラ行為の認定について、「セクハラ罪っていう罪はない」「殺人とか強(制)わい(せつ)とは違う」(「本発言」という。)などと発言した。
消費者庁のホームページでは、「職場でのパワー・ハラスメント、セクシュアル・ハラスメントに関する通報は本法の「公益通報」(本法第二条第一項)に当たりますか」との例示に対し、「パワー・ハラスメントやセクシュアル・ハラスメントについても、そのパワー・ハラスメントが暴行・脅迫などの犯罪行為に当たる場合や、そのセクシュアル・ハラスメントが強制わいせつなどの犯罪行為に当たる場合などには、本法の「公益通報」に当たり得ます」と示している。
本発言について疑義があるので、以下質問する。一 現行法令では、「セクハラ罪っていう罪はない」という理解でよいか。
二 消費者庁のホームページ上では、「そのセクシュアル・ハラスメントが強制わいせつなどの犯罪行為に当たる場合などには、本法の「公益通報」に当たり得ます」と例示しているが、セクシュアル・ハラスメントが強制わいせつなどの犯罪行為に該当することはあるのではないか。政府の見解如何。
三 二に関連して、セクシュアル・ハラスメントが強制わいせつなどの犯罪行為に該当することがあるのであれば、それが「セクハラ罪」という呼称を持たないものの、セクシュアル・ハラスメントに対する刑事法上の罪に該当するのではないか。政府の見解如何。
四 「殺人とか強(制)わい(せつ)とは違う」という麻生大臣の発言は、「そのセクシュアル・ハラスメントが強制わいせつなどの犯罪行為に当たる場合などには、本法の「公益通報」に当たり得ます」と例示しているセクシュアル・ハラスメントが強制わいせつなどの犯罪行為に該当し得るという見解に反するのではないか。政府の見解如何。
五 本発言を鑑みると、麻生大臣は「セクハラなんて大した問題ではない」と考えているのではないか。政府の見解如何。
六 本発言の「セクハラ罪っていう罪はない」「殺人とか強(制)わい(せつ)とは違う」などの発言は不適切ではないか。女性への性的な暴力は「魂の殺人」とも指摘され、それが実際に強制的な性的行為の有無にかかわらず、被害者女性の心の中での受け止め方次第であり、「殺人とか強(制)わい(せつ)とは違う」というのは乱暴極まりないものである。麻生大臣は本発言を撤回し、真摯に謝罪を行うべきではないか。政府の見解如何。右質問する。
http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/a196275.htm
1は法律上セクハラ罪という罪が無いことの確認で、2でセクハラの概念が強制わいせつなどの犯罪行為を包含していることを確認しています。3では、セクハラが強制わいせつなどの犯罪行為を包含しているならば、強制わいせつなどの刑法に抵触するセクハラ行為があるということを確認しています。
この1~3は前提条件の確認で、本旨は4以降になります。
“セクハラと強制わいせつは違う”発言は、“セクハラの中には強制わいせつなどの犯罪行為に該当するものがある”とする見解と矛盾する
4では、セクハラは「殺人とか強(制)わい(せつ)とは違う」と述べた麻生発言に対して、セクハラが強制わいせつを包含しているという消費者庁サイト上に明記された定義と矛盾していることを指摘しています。
これは重要な指摘です。
「そのセクシュアル・ハラスメントが強制わいせつなどの犯罪行為に当たる場合などには、本法の「公益通報」に当たり得ます」と書かれているにも関わらず、“セクハラと強制わいせつは違う”と閣僚が発言するようでは、セクハラ被害者は「公益通報」に躊躇せざるを得なくなるからです。
坂東記事はこの点を全く無視しています。
5では、麻生発言全体から受ける一般的な認識として「麻生大臣は「セクハラなんて大した問題ではない」と考えているのではないか」と質問しています。この問題の経緯を踏まえれば当然の質問で、改めて確認しておく必要のあると言えます。
6も同様、麻生発言全体の不適切性を指摘するものです。
5と6は、公的立場にある者が、セクハラなどの反倫理的行為に対して現行法に抵触するか否かではなく、強く批判的な立場を示して世間に範を垂れるべきだという当然の要望です。
これを「質問主意書そのものが無駄であった」などと評するのは、はっきり言って不適切ですし、そういうスタンスであるなら、教師や警官、与野党政治家、宗教家、芸能人、皇族などが、不倫や法に抵触しない範囲のセクハラを繰り返しても一切問題視しないと宣言してほしいものです。
答弁書を書いた政府は、「殺人とか強(制)わい(せつ)とは違う」という発言をまずいと思っていた
実は、政府側は「殺人とか強(制)わい(せつ)とは違う」発言に対してはまずかったと認識していた節があります。
政府は、「殺人とか強(制)わい(せつ)とは違う」という麻生発言を否定しているからです。
平成三十年五月十八日受領 答弁第二七五号
http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/b196275.htm
内閣衆質一九六第二七五号 平成三十年五月十八日
内閣総理大臣 安倍晋三
(略)
四から六までについて
平成三十年五月四日の記者会見において、麻生国務大臣は御指摘の「殺人とか強(制)わい(せつ)とは違う」とは述べておらず、「殺人とか傷害とは違います」と述べたところである。(略)
しかし上で述べたとおり、自民党に友好的なフジ系列の報道も含めて各種報道は「殺人とか強わいとは違う」と聞き取っています(ちなみに私が下記リンク先の動画で聞いても「しょうがい」ではなく「きょうわい」と言っているようにしか聞こえませんでした。)。
www.fnn.jp
麻生財務相は「『セクハラ罪』っていう罪はないですよね。殺人とか、強わい(強制わいせつ)とは違いますから。福田前事務次官は、やったことはないと言っているわけですから。そうすると、福田前事務次官の立場、言い分等々、向こうの人と両方でやらないと、公平さを欠く」と述べた。
https://www.fnn.jp/posts/00391294CX
どうもネット上の擁護論(「強わい」ではなく「傷害」と言ったと主張しているもの)に乗っかって逃げたというのが正確でしょう。
答弁書は上記引用部に続いてこう述べています。(質疑4~6に対応する回答として)
また、セクシュアル・ハラスメントに対する同大臣の考えについては、同大臣が同年四月二十四日の閣議後記者会見において、「セクハラ疑惑につきましては、セクハラは、被害女性の尊厳や人権を侵害する行為なので決して許される話ではないということは、報道が事実だとすれば、セクハラに該当するという意味でアウト、これは最初から申し上げたとおりです」と述べたとおりである。
http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/b196275.htm
「セクハラは、被害女性の尊厳や人権を侵害する行為なので決して許される話ではない」と答弁していますが、それならば、セクハラが事実かどうかの調査を打ち切ったことや財務省としてセクハラを認定したに触れないのは不適切だと言わざるを得ませんね。
調査を打ち切ることについて「いくら(調査結果が)正確であったとしても偏った調査じゃないかと言われるわけですから。被害者保護の観点から(調査に)時間をかけるのは、かなり問題がある」などと説明。処分の理由については国会審議への影響のほか、「役所に対しての迷惑とか、品位を傷つけたとか、そういった意味で処分をさせて頂いた」とし、財務省としてセクハラを認定したことは挙げなかった。
https://www.asahi.com/articles/ASL547FDDL54ULFA00P.html
坂東氏は質問趣意書が増える傾向にあることを問題視しているようですが、メディアが上で示したような内容をろくに踏まえることもなく「質問主意書そのものが無駄であった」ような論調で答弁側を擁護するような機能不全を起こしている以上、野党としてはメディアの機能不全部分を補う形で質疑する以外ないですよね。
どんな答弁をすべきだったか
“バカバカしい答弁閣議決定はバカバカしい質問のせい”みたいな主張がまかり通っていますが、そんなことはありません。政府に誠実に答える意思があればバカバカしい答弁になどなりません。
今回の逢坂議員の質問趣意書に対するならば、以下のような内容を踏まえればバカバカしくはならないはずです。
・いわゆるセクハラを包括的に罪に問える法令は存在しないが、セクハラのうち特に悪質な行為に対しては強制わいせつなどの現行法に抵触する。
・強制わいせつやストーカー規制などの現行法に抵触する行為には、一般的にセクハラと解釈される行為に含まれるものがあると認識しており、法的な正確性を要求されない一般的な表現において、それらを指して「セクハラ罪」と呼びうることは承知している。
・5月4日の財務大臣発言は、セクハラ全般を財務省として許容し問題視しないかのような表現であったため訂正し、以後同様の発言が出ないよう全閣僚に対して周知した。
・政府としてはセクハラ行為全般に対し、現行法令に抵触するか否かに関わらず問題視しており、政府・公的機関内のセクハラ行為が根絶されるべく努力していく所存である。
・なお、財務省としては福田淳一前財務事務次官の発言がセクハラに相当すると認定し処分を行っている。
本来なら、以上のような内容を答弁書で述べるべきであり、安倍政権が出した言い逃れと責任回避に終始するような答弁書を「涙が出るほど当たり前の答え」と容認するメディアや論者の態度が安倍政権を甘やかし、答弁から誠実さを失わせてる誘因になっていることを自覚すべきだと思います。
https://news.yahoo.co.jp/byline/tarobando/20180530-00085775/「セクハラ罪はない」 バカバカしい(?)閣議決定はなぜされるのか
坂東太郎 | 日本ニュース時事能力検定協会検定委員 5/30(水) 10:00
「セクハラ罪という罪はない」(麻生太郎財務大臣の記者会見発言)や「クソ野郎」(矢野康治財務省官房長の国会答弁)といった発言に対して「現行法令において『セクハラ罪』という罪は存在しない」(矢野官房長の発言は)「信用失墜行為の禁止を定めた国家公務員法に抵触しない」という答弁を閣議決定しました。閣議決定とは行政府トップに位置する内閣(=政府)の統一見解です。
こうしたニュースに関して「閣議決定するようなことか」という反応が多くなされているという情報に接しました。そこで、こうした経緯がなぜ生じるのか。妥当性はどうかという点を考えてみました。そもそも答弁書の閣議決定の仕組みは
一部に「バカバカしい」という批判もあるそうですが、一義的に主観の問題なのでいったん置いておきます(後述します)。案外と誤解されているのは答弁書の閣議決定は内閣の義務だという点です。
公正を期すために参議院の公式サイト(http://www.sangiin.go.jp/japanese/aramashi/keyword/situmon.html)に沿って述べていきます。
「議会(注)には、国政の様々な問題について調査する権限があり、国会議員は、国会開会中、議長を経由して内閣に対し文書で質問することができます。この文書を『質問主意書』と言います。(中略)。議長の承認を受けた質問主意書は、内閣に送られ、内閣は受け取った日から7日以内に答弁しなければなりません。原則として、答弁も文書(「答弁書」といいます。)で行われます。(中略)
答弁書は、複数の行政機関にまたがる事項であっても、必ず関係機関で調整され、閣議決定を経て、内閣総理大臣名で提出されます。このため、内閣の統一見解としての重みがあります」。
※注:「議会」とは衆議院と参議院を指す。坂東太郎による
「セクハラ罪」「クソ野郎」を問題視したのは逢坂誠二衆議院議員(立憲民主党所属)で質問主意書の題は「セクハラ罪という罪に関する質問主意書」「国会における財務省官房長の野卑な発言に関する質問主意書」です。法律にしたがって内閣に送られたのですから閣議決定するのは当たり前で「するようなことか」という議論は感情の問題を差し引けば起こり得ないのです。
次に質問主意書の「特徴」について。参議院によると「国政一般について問うことができる」「法律案と異なり議員1人でも提出できる」が挙げられています。以下やや長くなって恐縮ですが具体的な意義についての説明をお読み下さい。
「議員が国政について内閣に問う場合、例えば、委員会では、各議院規則で定められた委員会の所管事項外の場合には詳細な答弁は期待できません。また、本会議や委員会での質疑の場合、原則として所属する会派の議員数に比例して質疑時間が決まるため、少数会派の議員や会派に属しない議員にとっては必ずしも望んだ質疑時間が確保できない場合もあります。これに対し質問主意書は、議院の品位を傷つけるような質問や、単に資料を求めることは認められないなど一定の制約はありますが、広く国政一般について内閣の見解を求めることができます。また、議員一人でも提出することができるので、所属会派の議員数等による制約もありません」別段珍しくない質問主意書の提出
内閣は首相と首相が任命した国務大臣によって構成されます。閣議とはこれら全員による会議で毎週火曜日と金曜日に首相官邸内の「閣議室」で行われるのです。全員一致で「決定」がなされます。
質問主意書への答弁書については閣議案件のうちの国会提出案件に属します。毎回かなりの数の案件をこなしているのです。1回の閣議でどれほどの案件を抱えているかは官邸のサイト(https://www.kantei.go.jp/jp/kakugi/index.html)で容易に確認できます。
1月22日に始まった今国会(通常国会)で衆参合わせて執筆時点(5月28日)において質問主意書はすでに400を越えています。近年、増加傾向であるのは確か。しかし主意書の答弁書はすべて閣議決定するので「セクハラ罪」「クソ野郎」が話題になるのはメディアとして伝えるべき、あるいは面白い(決して不真面目な意味ではない)と判断したからです。答弁書をいちいち報道しているわけではありません。
ここまでをご理解いただいた上でペンディングしておいた「バカバカしい」かどうかの材料を拾ってみます。まず「セクハラ罪」から。質問主意書は
・現行法令で「セクハラ罪っていう罪はない」という理解でよいか。
・セクシュアル・ハラスメントが強制わいせつなどの犯罪行為に該当することはあるのではないか。該当することがあるのであれば「セクハラ罪」という呼称を持たないものの、セクシュアル・ハラスメントに対する刑事法上の罪に該当するのではないか。
といった内容です。
答弁書は「現行法令において『セクハラ罪』という罪は存在しない」「セクハラが刑法の強制わいせつ等の刑罰法令に該当すれば犯罪が成立し得るが、成立するのは強制わいせつ等の罪であり『セクハラ罪』ではない」といった内容です。
まあ涙が出るほど当たり前の答えですね。これをもって質問主意書そのものが無駄であったといえるのかも。一方で答弁書の内容云々ではなく改めて麻生発言の是非、特に「犯罪でなければ何をやってもいいのか」という疑問を提起したので価値があるともいえなくもありません。
「クソ野郎」はどうでしょうか。質問主意書はこうした「野卑な発言」を国家公務員法第99条の「職員は、その官職の信用を傷つけ、又は官職全体の不名誉となるような行為をしてはならない」(=信用失墜行為の禁止)に相当するのではないか。「議院の品位」を傷つけてはいまいかと問いました。答弁書は官房長の以前の発言についての報道で発言の一部のみを引用され、批判された点について述べたものであり信用失墜行為の禁止に抵触しないとし、「議院の品位」は国会法の定めで国会の運営に関するため、政府として答える立場にないとしています。
後段の「議院の品位」は三権分立の建前上当然でしょう。前段も妥当といえば妥当。逢坂議員がマスコミ向けに仕掛けたパフォーマンスと非難してもいいし、記事になっただけ野党としては立派だとほめてもいいというところでしょうか。何しろワンサカある答弁書のなかからニュースとして取り上げられたので。過去にみられた「これはどうか」という質問主意書
「セクハラ罪」「クソ野郎」の質問主意書と答弁書だけを考察すると確かにバカバカしい部分は存在します。ただ背景にあるセクハラ被害は深刻で、主意書を肯定的に受け取るならば、そこに焦点を当てたといえなくもないのです。
その意味でバカらしさをあえて問うならば「格上」がいくつも見受けられます。報道すらされなかったものは除き、最近に限定してみると昨年、小西洋之参議院議員(民進党=当時)の「安倍総理の存在そのものが国難であることに関する質問主意書」が挙げられましょう。衆議院解散の理由として首相が挙げた「国難」そのものの妥当性を問うのかと思いきや憲法の趣旨も知らない首相の存在こそ国難ではないかと難癖に近い内容でした。
逢坂議員が白い目で見られるのも仕方ないかと思わせた主意書もあります。「未確認飛行物体にかかわる政府の認識に関する質問主意書」というものでニューズウィーク誌の記事をもとに「政府は、地球外から飛来してきたと思われる未確認飛行物体の存在を確認したことはあるか」「地球外から飛来してきたと思われる飛行物体の攻撃を受けた場合、存立危機事態として認定される可能性は排除されないという理解でよいか」と驚きの質問。「政府としては、御指摘の『地球外から飛来してきたと思われる未確認飛行物体』の存在を確認したことはない」「我が国に飛来した場合の対応について特段の検討を行っていない」という答弁書を作らせたのです。
先の参議院のサイトに書いてあった「複数の行政機関にまたがる事項であっても、必ず関係機関で調整され」という個所に注目してみます。「セクハラ罪」「クソ野郎」は財務省、「国難」は内閣官房、「未確認飛行物体」は外務省に割り振られ、官僚が必死に起案しなければなりません。何しろ「7日以内」の縛りがあります。
「セクハラ罪」でしたら財務省だけでなく法務省や厚生労働省と合議したかもしれないし、「未確認飛行物体」も念のため防衛省あたりに問い合わせたかも。こういっては何ですが閣議では大臣が花押(署名)するだけでしょうから、おかしな質問主意書でも大真面目に取り組まなければなりません。主権者が選んだ国会議員の正規ルートでの質問に行政を担う官僚(公務員)が土日祝日もなく対応するのは当然か、はたまた税金の無駄遣いか、議論の分かれるところです。
割と意味があったと多少評価されている「安倍昭恵総理夫人の『公人』・『私人』問題に関する質問主意書」はどうでしょうか。上西小百合衆議院議員(無所属)が提出しました。「総理夫人とは、公人ではなく私人である」という答弁が物議を醸したのをご記憶の方もいらっしゃるでしょう。
もっとも質問内容がちょっと……。いきなり「ウィキペディアで調べてみますと」と脱力のスタート。何を示しているのかわからない名詞や指示語のオンパレードです。答弁書も「具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが」の連発。一読すると小バカにしたような書きぶりですけど質問と対比させていくとむしろ答弁書(を起案したであろう官僚)が謎の日本語を必死で推理して仕上げた労作といった趣です。
平成三十年五月八日提出
質問第二七五号
セクハラ罪という罪に関する質問主意書
平成三十年五月四日、訪問先のフィリピンで麻生太郎財務大臣は記者会見し、福田淳一前財務事務次官のセクハラ行為の認定について、「セクハラ罪っていう罪はない」「殺人とか強(制)わい(せつ)とは違う」(「本発言」という。)などと発言した。
消費者庁のホームページでは、「職場でのパワー・ハラスメント、セクシュアル・ハラスメントに関する通報は本法の「公益通報」(本法第二条第一項)に当たりますか」との例示に対し、「パワー・ハラスメントやセクシュアル・ハラスメントについても、そのパワー・ハラスメントが暴行・脅迫などの犯罪行為に当たる場合や、そのセクシュアル・ハラスメントが強制わいせつなどの犯罪行為に当たる場合などには、本法の「公益通報」に当たり得ます」と示している。
本発言について疑義があるので、以下質問する。一 現行法令では、「セクハラ罪っていう罪はない」という理解でよいか。
二 消費者庁のホームページ上では、「そのセクシュアル・ハラスメントが強制わいせつなどの犯罪行為に当たる場合などには、本法の「公益通報」に当たり得ます」と例示しているが、セクシュアル・ハラスメントが強制わいせつなどの犯罪行為に該当することはあるのではないか。政府の見解如何。
三 二に関連して、セクシュアル・ハラスメントが強制わいせつなどの犯罪行為に該当することがあるのであれば、それが「セクハラ罪」という呼称を持たないものの、セクシュアル・ハラスメントに対する刑事法上の罪に該当するのではないか。政府の見解如何。
四 「殺人とか強(制)わい(せつ)とは違う」という麻生大臣の発言は、「そのセクシュアル・ハラスメントが強制わいせつなどの犯罪行為に当たる場合などには、本法の「公益通報」に当たり得ます」と例示しているセクシュアル・ハラスメントが強制わいせつなどの犯罪行為に該当し得るという見解に反するのではないか。政府の見解如何。
五 本発言を鑑みると、麻生大臣は「セクハラなんて大した問題ではない」と考えているのではないか。政府の見解如何。
六 本発言の「セクハラ罪っていう罪はない」「殺人とか強(制)わい(せつ)とは違う」などの発言は不適切ではないか。女性への性的な暴力は「魂の殺人」とも指摘され、それが実際に強制的な性的行為の有無にかかわらず、被害者女性の心の中での受け止め方次第であり、「殺人とか強(制)わい(せつ)とは違う」というのは乱暴極まりないものである。麻生大臣は本発言を撤回し、真摯に謝罪を行うべきではないか。政府の見解如何。右質問する。
http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/a196275.htm
平成三十年五月十八日受領
答弁第二七五号
内閣衆質一九六第二七五号
平成三十年五月十八日
内閣総理大臣 安倍晋三
衆議院議長 大島理森 殿衆議院議員逢坂誠二君提出セクハラ罪という罪に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員逢坂誠二君提出セクハラ罪という罪に関する質問に対する答弁書
一から三までについて
お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、現行法令において、「セクハラ罪」という罪は存在しない。すなわち、セクシュアル・ハラスメントとは、例えば、人事院規則一〇-一〇(セクシュアル・ハラスメントの防止等)第二条第一号において、他の者を不快にさせる職場における性的な言動及び職員が他の職員を不快にさせる職場外における性的な言動をいうとされているところであるが、セクシュアル・ハラスメントに該当し得る行為には多様なものがあり、これらの行為をセクシュアル・ハラスメントとして処罰する旨を規定した刑罰法令は存在しない。なお、セクシュアル・ハラスメントが、刑法(明治四十年法律第四十五号)第百七十六条(強制わいせつ)等の刑罰法令に該当する場合には、犯罪が成立し得るが、その場合に成立する罪は、当該刑罰法令に規定された強制わいせつ等の罪であり、お尋ねの「セクハラ罪」ではない。四から六までについて
http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/b196275.htm
平成三十年五月四日の記者会見において、麻生国務大臣は御指摘の「殺人とか強(制)わい(せつ)とは違う」とは述べておらず、「殺人とか傷害とは違います」と述べたところである。また、セクシュアル・ハラスメントに対する同大臣の考えについては、同大臣が同年四月二十四日の閣議後記者会見において、「セクハラ疑惑につきましては、セクハラは、被害女性の尊厳や人権を侵害する行為なので決して許される話ではないということは、報道が事実だとすれば、セクハラに該当するという意味でアウト、これは最初から申し上げたとおりです」と述べたとおりである。
https://www.iza.ne.jp/kiji/politics/news/180505/plt18050500170003-n1.html麻生財務相「セクハラ罪という罪はない」 減給理由は「役所に迷惑」
2018.5.5 00:17
麻生太郎財務相は4日、女性記者へのセクハラを報じられ財務事務次官を辞任した福田淳一氏について「役所に迷惑を掛けたとか品位を傷つけたとかいろんな表現があるが、(そういう理由で)処分した」と述べた。マニラでの記者会見で語った。
セクハラ行為を認定した上で減給とした財務省の対応とは食い違う説明になる。麻生氏は「『セクハラ罪』という罪はない。殺人とか強制わいせつとは違う」とも発言した。
その上で、福田氏がセクハラを否定していることを踏まえ「(福田氏の)人権を考えないといけない。言い分を聞かないと公平を欠く」と、これまでの主張を繰り返した。(共同)
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180505-00010002-bfj-pol麻生財務相「セクハラ罪という罪はない」。識者ら「何から何までおかしい」と批判や戸惑い
5/5(土) 14:47配信 BuzzFeed Japan
麻生太郎財務相兼副総理が、財務省の福田淳一・前事務次官のセクハラ問題について、役所の品位を傷つけたとしたが、「『セクハラ罪』という罪はない。殺人とか強制わいせつとは違う」と発言したために、批判の声が上がっている。【BuzzFeed Japan / 瀬谷 健介】5月4日、訪問先のフィリピンでの記者会見で述べた。
麻生氏は、福田氏の辞任の理由について、国会審議への影響のほか、「役所に対しての迷惑とか、いろんな意味で品位を傷つけたとかいろいろな表現があるでしょうけれど、そういった意味であの種の処分をさせていただいた」と語った。
そして「セクハラ罪っていう罪はないですよね。殺人とか強制わいせつとは違いますから」と発言した。財務省は4月27日、福田氏のセクハラを認定して減給処分をしているが、その点には触れなかった。
調査の打ち切りの方針を改めて示す
女性社員がセクハラ被害に遭ったとしているテレビ朝日は、調査の継続を求めているが、麻生氏は次のように説明し、調査を打ち切る方針を改めて示した。
「1対1の会食のやりとりについて、財務省だけで詳細を把握していくことは不可能だ」「いくら(調査結果が)正確であったとしても偏った調査じゃないかと言われるわけですから。被害者保護の観点から(調査に)時間をかけるのは、かなり問題がある」
そして、「本人が否定している以上は裁判になったり、話し合いになったりということになる。ここから先はご本人の話だ」と今後は個人の問題になるとの考えを述べた。
識者らから批判や戸惑いの声
麻生氏のこれらの発言をめぐって、識者らから批判や戸惑いの声が上がっている。
東北学院大学の小宮友根准教授(ジェンダー論)は、麻生氏が殺人罪などとセクハラを比較したことに言及し、「何から何までおかしい」と投稿した。
弁護士の渡辺輝人さんは「財務省はセクハラの事実を認定して福田氏を懲戒処分したんだが。本人が否定しても事実認定はできる」と指摘した。
ジャーナリストの江川紹子さんは「たかがセクハラ、という感覚?」とした上で、「先日のセクハラ認定した財務省の発表はどうなるの?」と疑問を呈した。
野党からも批判が上がっている。立憲民主党の蓮舫参院国対委員長は「この人には『ハラスメント』とは何かが全くわかっていないし、わかろうともしていない」と批判した。
日本共産党の志位和夫委員長は「この発言には呆れるほかない」「セクハラについてのまともな理解もない」と辞任を要求した。
https://www.asahi.com/articles/ASL547FDDL54ULFA00P.html麻生財務相「セクハラ罪という罪はない、殺人とは違う」
2018年5月4日22時54分
財務省の福田淳一・前事務次官のセクハラ問題について、麻生太郎財務相は4日、訪問先のフィリピンでの記者会見で「1対1の会食のやりとりについて、財務省だけで詳細を把握していくことは不可能だ」と述べ、調査を打ち切る考えを改めて示した。
財務省は4月27日、福田氏のセクハラを認定して処分し、調査を打ち切る方針を発表。女性社員が被害にあったというテレビ朝日は調査の継続を求めていた。
しかし、麻生氏はセクハラの認定については「セクハラ罪っていう罪はない」「殺人とか強(制)わい(せつ)とは違う」などと発言。「(福田氏)本人が否定している以上は裁判になったり、話し合いになったりということになる。ここから先はご本人の話だ」とした。
調査を打ち切ることについて「いくら(調査結果が)正確であったとしても偏った調査じゃないかと言われるわけですから。被害者保護の観点から(調査に)時間をかけるのは、かなり問題がある」などと説明。処分の理由については国会審議への影響のほか、「役所に対しての迷惑とか、品位を傷つけたとか、そういった意味で処分をさせて頂いた」とし、財務省としてセクハラを認定したことは挙げなかった。