ぼくは、こんな何やってるかわからんやつではあるけど、一応都市計画畑の出身ではあって、いまもそういうのを追いかけてはいる(ときどき仕事にもなるし)。で、最近の都市計画がらみで流行というと、スマートシティってやつ。スマートシティ開発します、こんどのナントカはスマートシティ、あれやこれや。日本のインフラ輸出の一環でも、スマートシティを作りますとかいうのがある。
が、結局それって何なのよ、というとよくわからない。スマートシティと称するもののパンフを見ると、暮らしやすい街作りとか、あーだこーだ出てくるんだが、でも「じゃあ、どこらへんがスマートなんですか」というのを探そうとすると、なかなかわからない。だいたいありがちなパターンとしては
スマートメーターとか入れて消費量とか最適化したり、ソーラー発電とか自前で持ったりして、場合によってはスマートシティ全体で電力会社と契約して仮想発電所とかそういうのでエネルギー消費を抑えます。
全域にWIFIとか入れてネット使い放題みたいな〜
家にジジババどもの見守りサービスみたいなのをあらかじめ組み込んでおきます
なんかそんな程度。で、この手の腐った図がコンセプトと称して出てくるのね。この手の図を苦し紛れにでっちあげた経験が山ほどある身としては、近親憎悪をのようなものをビシビシ感じてしまうのだ。
で、先日、柏の葉スマートシティというところの説明会に行ってきたわけだ。この開発自体は、それなりによいものではある。東大工学部の柏キャンパスのあるところね。昔は東大生に柏送りといえば、なんかソ連時代のシベリア送りみたいな感じだったけれど、かなりいい感じになっているし、つくばエクスプレスのおかげでそんなに遠くないし。東大その他のキャンパスとの提携でいろいろ産学協同みたいなこともできるし、雇用創出で単なるベッドタウンではない起業とか職場とかの可能性もある。開発としても、まだ新しいから駅前に空き地とかあってアレだけど、でもだんだん新しい店とかもできてきて、いい感じではある。
でも、どのあたりがスマートシティなのかというと……ちょっとしたエネルギー管理みたいな話と、ジジババどもの見守りサービスみたいなのと、そのくらいなのだ。
コントロールセンターで、集中的なエネルギー管理は排出管理をして、災害時には電力融通みたいなのは考えていると。それから、実証実験のところに、まあちょっとしたユビキタスがどうしたとかいうのはあるけど……あんまり大きくないよね。
で、実際に説明会にいっても、あまりそういう「スマートシティ」みたいなのは前面に出ないで、住民に優しい、暮らしやすさの追及を、高齢者にも配慮を、職住近接でインキュベーションシェアオフィスみたいなのも作って、みたいな説明で、各種関係者間の協議会を開いて地道な意見調整を通じた街作りを、というようなこと。そして、登壇者はしきりに「スマートシティとかいうのは好きじゃない」「ITが前面に出るのはよくなくて、人が中心」というようなことを述べ、柏の葉の欠点は、古い店がないとか、昔からの畳屋とか居酒屋が賃料があがったので残れない、多様性がアレで問題だとか、そういうことをしきりにいっている。
さて……人が中心とか、暮らしやすさが大事とかいうのは、ぼくもお題目としては当然ありだと思う。が、スマートシティというのは、それを何かITのゴリゴリ活用で実現しちゃうよ、というのがメインだったのではないの? ついでにいうと、畳屋さんの営業が続かないのは、賃料がどうしたいう以前に、そもそも和室が減ってきて畳の需要が限られてるからでしょ? 新規開発で賃料があがらなくても、早晩消える運命にあるよね? それは都市開発で面倒見るべきことなの?
この説明会は、不動産や都市開発関係の学会というか専門家会議みたいな、Urban Land Institute というのが主催したものだった。で、この日は重慶の都市開発関係者が大挙してやってきていた。かれらは本当に、こんな通りいっぺんのお題目を聞きたかったんだろうか? かれらの質問は、高齢者のための住戸とか多世代居住に適用した住戸プランとかはあるのか、その見守りサービスはどんな形で集約されて医療機関と結ばれているのか、ということ、さらに交通のオンデマンド配車も含めた交通へのIT活用はあるのか、各種のITサービスは収支的にもとがとれてるのか(とれてないって)といったことだった。その雰囲気からして、かれらはホントにスマートシティというものについて、IT活用について知りたかったと思うんだよね。たぶんがっかりしたと思うなあ。
そして、比較的優秀なスマートシティとされている柏の葉がこういうレベルなら、日本がインフラ輸出でやろうとしているスマートシティって、どうなのかなあ、という感じではある。スマートシティの看板あげるなら、ホントにもっとITをエグイくらいに使わないと。実はここ、あの矢野「データの見えざる手」和男のいる日立の研究所なんかもあるので、そっちがらみでもっと、ビッグデータで住民の完全操縦、みたいなのを期待していたのだ。こう、住民全部をスマホで追跡して、そのインタラクションが下がると犯罪率があがるし起業も含めた経済活動が停滞するのがわかっているから、インタラクションが一定水準以下に落ちたら、インタラクションを刺激する居酒屋や公共施設の割引券をどんどん市内でばらまいて、デベロッパー主催の無料でビールでも配るイベントでも開催して、するとインタラクションがあがって経済活動が回復するんですワッハッハ、みたいな。本郷でちょいと無料サービス券ばらまいただけで、馬鹿な東大生がどんどん柏にやってきて、ちょろいもんです人間なんて、ビッグデータの神の前にはゴミクズですわ〜、とかね。
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スマートグリッド/スマートメーターも、実は言われてるほど大したもんじゃなくて、少なくとも一部では全然効果ないってことだし、するとやっぱ、スマートシティって何なのよ、というのは改めて考えないと、ダメだなあ、とは思う。
そしてたぶん、そのためにはもっと、上でいったような完全人間コントロール作戦とか、完全自動運転オンデマンドとか、その手のとんでもないと思われている話を実際に色々試してみないとダメではないかとは思うんだよね。まあ日本で実際の人間でそれをやるのはなかなか日本ではつらいから、中国の完全顔認証監視都市とかみたいなのには絶対にかなわなくて、日本がインフラ輸出の目玉にできるほどのものをホントに作れるのか、というのはなかなか絶望的ではあるんだけど。
これは皮肉ではなくて、本当のスマートシティはこういうものであるはずだとは思うのだ。