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6月11日以降、Google Maps APIによる地図表示が薄暗くなる/エラーになるケースも――「Google Maps Platform」移行でいったい何が変わる?

利用者は、APIキーと課金設定の確認を

 登場以来さまざまな変化を遂げてきた「Google Maps」だが、6月11日(日本時間6月12日)に最大の変化があると言っても過言ではない。5月2日、Googleの公式ブログにて「Google Maps Platform」の提供開始が発表されたのだ。

 Google Maps Platformとは何か? ユーザーへの影響と価格、そして、ついに廃止となる“APIキー”なしでのリクエストについて、Google Mapsパートナー(販売代理店)である株式会社ゴーガの市川真利氏が解説する。

「Google Maps Platform」とは何か

 「Google Maps」が2005年に登場し、その革命的な成長は月間アクティブユーザーが10億人を超えていることで証明されている。それと同時に「Google Maps API」の利用者数も年々増え続けており、社内システムをはじめ、店舗検索ページや見守りアプリなど、普段の生活にも欠かせないものとなっている。そんな中で、Google Mapsをさらに使いやすくするため、サービス開始から13年目にして、生まれ変わろうとしている。

 これまで「Google Maps APIs Premium Plan」(有償版)と「Google Maps APIs Standard Plan」(無償版)が存在しているが、もっと使いやすくシンプルにするため、この2つのプランが統合され、「Google Maps Platform」となって登場するのだ。

 また、価格帯も、Premium Planは最低価格が1万USドルとなっていたが、Google Maps Platformでは、Googleが提供するクラウドサービス「GCP」と同様、ユーザーが使った分だけを支払うというモデルになる。さらに、すべてのアカウントに対して、毎月200USドル分[*1]が無償枠で提供される。便利なGoogle Maps APIの活用を、価格で断念せざるを得なかった企業にとっては、これ以上ない、導入のチャンスと言える。

[*1]……当月に利用したすべてのAPIの合計から200USドルの無償枠が適用される。Maps JavaScript API(Dynamic Maps)のみリクエストした場合は、月2万8000回分に相当する。

 APIごとに単価が異なるため、どんな利用用途で、どのAPIを利用するかで想定される必要なリクエスト分を支払うことになる。APIごとの価格帯は、以下のページで確認ができる。

例)

  • Directions
    ルート検索でウェイポイントが10個までのルート作成が可能。
  • Directions Advanced
    ルート検索でウェイポイントが25個までのルート作成などが可能(その他機能もあり)

 これまでのAPIと名称が少し異なっているが、対応表はここから確認ができる

Google Maps APIの既存ユーザーへの影響は?

Premium Planユーザー

 すでに有償版のPremium Planを契約し、Google Maps APIを活用している場合には、2018年9月以降、既存の契約が満了するときに、Google Maps Platformへ移行することになる(例えば、既存契約の満了日が2019年1月31日なら、2019年2月1日からGoogle Maps Platformへ移行)。

 Googleのドキュメントによると、Google Maps Platformへの移行に伴うシステム側の変更は不要のようだ。ただし、Google Mapsパートナー(販売代理店)との契約内容や、価格、利用規約が変わることになる。従来、Premium Planユーザーの多くは、契約しているライセンスのほとんどのクレジット数を使い切っているが、その一方で、限定的な利用でクレジット利用数が少ない企業にとっては、今後、ライセンス費用を削減できる可能性が高い。

Standard Planユーザー

 Standard Planいわゆる無償版のユーザーには価格面で大きな影響があるといえる。

 Maps JavaScript APIを例にすると、これまでは、1日2万5000リクエストまでが無償枠で、無償枠を超えた場合は、クレジットカードを登録し、超過分は0.5USドル/1000リクエストで使用が可能だった。これに対してGoogle Maps Platformの場合は、無償枠が、Maps JavaScript APIだと月間2万8000リクエスト(1日平均933リクエスト)となり、大幅に減少することになる。なお、他のAPIを利用する場合には、合算で200USドルが無償枠となるため、使用するAPIが多い場合には、それぞれの利用状況も把握する必要がある。

 月200USドルの無償枠を超過する可能性がある場合には、直ちに課金を有効にする必要がある。課金を有効にせず、月200USドルの無償枠を超過した場合には、APIのリクエストがエラーとなる。

 なお、課金を有効にする方法は2つ。自社にてクレジットカードを登録するか、もしくは、Google Mapsパートナーへ連絡し、代行で手続きを進める方法がある。株式会社ゴーガもGoogle Mapsパートナーとして、Google Maps APIライセンスの販売およびGoogle Maps APIの開発を得意としており、Google Maps Platformの代行手続きを受け付けている。

いよいよ、“APIキー”なしのリクエストは完全廃止へ

 皆さんは、2016年に行われたStandard Plan(無償版)のポリシー変更を覚えているだろうか。APIキーなしで地図をリクエストすると地図が表示されないので、APIキーを必ず設定することが必要になったというものだ。

 ポリシーが発表された2016年6月22日の時点で「新たなドメインでAPIキーなしで地図を呼び出そうとすると、エラー画面となり地図が表示されない」、一方で「6月22日以前からGoogle Maps APIを利用しているドメインでAPIキーの設定がないまま地図を呼び出すと、地図は表示されるが、警告が出る。いつまで地図が表示されるか保証はない」というもので、2016年6月22日以前から利用しているユーザーにとれば、継続して使用可能というものだった(詳細は、2016年11月11日付記事『Google Maps API無償版のポリシー変更、猶予期間が10月12日で終了、地図が突然表示されなくなる可能性も』参照)。

 それが今回の発表で、その具体的な期限が示されたかたちだ。2018年6月11日にAPIキーなしのリクエストが完全廃止され、以降、APIキーなしのすべての地図のリクエストは、地図上にグレーのフィルターがかかって表示されることになる。地図の表示以外のAPIではエラーになる可能性が高い。

 企業のウェブサイトでアクセス情報のページや店舗検索ページにおいてもGoogle Mapsを表示しているサイトは多く存在するが、Google Maps APIを利用しているにもかかわらず、APIキーなしのリクエストがまだまだ多い。これらAPIキーなしのリクエストがすべて廃止となり、地図にグレーのフィルターがかかって表示されることになる。

 ウェブ担当者および制作会社は、担当しているサイトでGoogle Maps APIを使用している場合は、APIキーが設定されているか早急に確認することを強くお勧めする(APIキーの取得・設定方法についても、前述の2016年11月11日付記事『Google Maps API無償版のポリシー変更、猶予期間が10月12日で終了、地図が突然表示されなくなる可能性も』参照)。

なお、株式会社ゴーガでは、定期的にGoogle Mapsに関する説明会、セミナーを開催している。案内を希望される場合は、同社の問い合わせフォームから、必要情報と、「Google Maps Platformに関する説明会、セミナーを希望」の項目にチェックを入力すれば、今後の案内を受け取ることができる。