アジア株が軒並み下落 イタリア政治不安受け

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30日のアジア株式市場は軒並み下落した。イタリアでの政局混迷への投資家らの懸念が強まった。

イタリアで総選挙が再び開かれ、欧州連合(EU)懐疑派の政党がさらに勢力を増す可能性が、単一通貨ユーロの安定性への不安感を高めている。

欧州は近年、債務危機や英国のEU離脱を決めた国民投票という困難に直面してきた。

イタリアの短期国債の利回りは29日に26年ぶりの水準まで上昇。イタリア政府の利払い負担を上昇させている。

アジア株式市場では、米国が6月半ば過ぎに、500億ドル(約5兆4200億円)相当の中国からの輸入品に25%の関税を課す方針を示したことも不安材料となった。

日経平均株価は前日終値比1.52%安の2万2018.52円で30日の取引を終えた。韓国の総合株価指数(KOSPI)は同1.96%、香港のハンセン指数も同1.37%、それぞれ下落している。

OANDA(オアンダ)のアジア太平洋地域トレーディング部門責任者スティーブン・イネス氏は、「イタリアの政局混迷に依然として注目が集まっており、(アジア)地域の(株価)下落に通常つながるリスクアセットへの不安が高まっている」と語った。

ユーロ圏で3番目に大きな経済を持つイタリアでは、今年3月に行われた総選挙で勝利した欧州懐疑派のポピュリスト(大衆迎合主義)政党と、EU寄りの考えを持つ主流派政治家たちの間で対立が起きている。

当時の水準にはほど遠いものの、債務返済をより困難にさせる利回りの上昇は2011年のユーロ圏債務危機を彷彿(ほうふつ)とさせている。イタリアの政府債務は現在、同国の国内総生産(GDP)の130%に達している。

一部のアナリストらは、イタリアの政治不安は米国の中央銀行、連邦準備制度理事会(FRB)による利上げペースにさえ影響するかもしれないと指摘する。FRBの金融政策はドルやほかの通貨の為替レートに影響を及ぼす。

DBSグループ・リサーチは顧客向け報告書の中で、「イタリアの政治不安が、2011から12年にかけてユーロ圏が直面した困難と同様のものに発展し、FRBを金融引き締めにより慎重にさせることへの懸念がある」と指摘した。

30日のアジア株式市場の下落は、前日の欧米株式市場の下落を引き継いだ。米S&P500種株価指数は前日終値比1.2%下落し、ダウ平均株価は同1.6%安となった。

欧州の主要株式市場では、銀行株の下落が相場全体の重しとなった。英国のFTSE100種総合株価指数は1.3%近く下落。ドイツのDAX指数は1.5%、フランスのCAC40指数は1.3%、それぞれ下落した。

(英語記事 Italian political crisis hits Asian stocks

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