Q.まずは、天文学者というのがどんな仕事なのかを教えて頂けますか?
平松:天文学者の中には大きく分けて2つのタイプがあって、ひとつは望遠鏡を使って天体を観測する研究者、もうひとつはコンピューターや紙と鉛筆で頭の中に宇宙をつくり、理論的に研究する人で、私は前者のタイプです。たいていの場合両者は分業されていて、研究をする時にはその両者がチームをつくって一緒に進めていきます。研究者それぞれが「これを知りたい」というテーマを持っているわけですが、私は星が生まれるメカニズムを知りたいと考えているので、生まれたばかりの星や、これから星が生まれそうなところを色々な望遠鏡で観測しています。観測するためには、提案書を出して採択してもらう必要があるのですが、望遠鏡ごとに締め切りが決まっているので、そこに向けて、「この望遠鏡で観測することで、これがわかるはずだから使わせてほしい」ということをまとめた提案書をつくります。
Q.望遠鏡の数には限りがあるから、ある意味取り合いになるということですね。
平松:例えば、アルマ望遠鏡という電波望遠鏡がチリにあるのですが、ここには世界中からおよそ1500程度の提案書が集まり、そのうち300~400が採択され、1年間でそれらを観測していきます。うまく観測ができたら、その画像やデータをコンピューターで処理して、論文にまとめて発表するというのが研究のサイクルです。また、アルマ望遠鏡のようなものは簡単にはつくれないので、次世代のために望遠鏡を開発するということも天文学者の仕事のひとつです。アルマ望遠鏡は欧米や日本など22の国と地域が協働で開発・運用していて、構想から30年をかけて完成したのですが、そろそろ自分たちの世代が次の望遠鏡を考えなくてはいけない時期になっています。私がいる国立天文台では、国内外の天文学者に使ってもらう望遠鏡をつくり、オペレーションするということも業務になっています。
Q.天文学者にお休みはあるのですか?
平松:基本的な勤務体系として、土日は休みです。もちろん、休日関係なく研究をしている人もいますし、観測に入ると割り当てられた日であれば日曜日だろうと関係ありません。いま日本には大学院生も入れると、約1000人程度の天文学者がいるのですが、天文学でお給料がもらえる職業というのは限られています。基本的に天文学者には、好きでやっている人が多いので、データ解析をしていて気づいたら徹夜をしていたというのを聞いたこともあります。ちなみに、天文学者になった人は、自分も含めもともと天文少年で、星空を見ればすぐに星座がわかるタイプと、ブラックホールや素粒子など物理的な興味から入っているタイプがいます。<続く>