小売と金融の一体化で稼ぐ丸井のビジネスモデルにあるビジョン

丸井がかっこよすぎて、はまっているマンです。簡単に調べたことをまとめてブログにしてみました。

小売は客寄せパンダ

15年3月期において、小売事業の営業利益が81億円、カード事業の営業利益が201億円で、小売事業の2倍を超えている。売上高は、小売店舗事業が3076億円で営業利益率は2.6%、カード事業が706億円で利益率は28.5%。カード事業の利益率の高さが際立つ。
小売業から新規顧客が入ってこなければ、顧客ベースの数は小さくなっていく。それは、金融サービスを売る顧客数が少なくなることを意味している。丸井は、金融事業のための顧客基盤を堅固なものにし直すために、小売業のビジネスモデルを変えようとしているのだ。

小売はただの客寄せパンダで、クレカ発行の1つのチャネル。

ショッピングはあくまで集客の手段であり、その結果として構築された顧客ベースをもとに金融サービスを実行する。粗利益率が低く、在庫リスクも高く、販売経費も高い小売業の低利益性は、利益性の高い金融サービスを創造することで正当化される。これはこれで、ひとつのビジネスモデルとしてよいのだろう。
問題は、小売業が始める金融業は、小売業で構築した顧客ベースが基本ということだ。顧客ベースは、常に新規客が入ってこないと長期的に小さくなっていく。小売業が不振で新規客が減ると、顧客ベースも小さくなる。楽天の言葉でいえば、経済圏が縮小してしまうのだ。経済圏に入ってくる顧客の数が減ることで、循環する顧客ベースが次第に縮小していってしまう。
だから、シアーズのように本業がダメになったからといって、「じゃあ、小売業をやめて金融サービス会社になりましょう」ということにはならない。反対に、「利益を出している金融事業を売却して、そのお金で小売を立て直しましょう」となるのだ。

引用:「金融業者化する」マルイ、ショッピングセンター化を加速

カード会員新規獲得の多チャネル化

では、丸井のクレカビジネスをどう捉えているか、どう伸ばそうとしているかは明確に決算に書かれている。

まずは2012年の決算で中長期のカード事業の取り組みを記載。丸井以外のチャネルをいかに増やして接触ポイントを持つかが鍵と認識している。

さらに、丸井がない地域でCMも実施し、丸井以外の加盟店でもカードを使えるようにして、金融事業の拡大を続けている。

はたして、札幌の人がこのCMを見たら大きな疑問符がつくのではないでしょうか? カードをつくろうと思っても、マルイの店舗という新規加入の窓口はなく、すでにエポスカードを持っていてスリーピング状態となっている人は極めて少数でしょうから、その掘り起こし狙いというわけでもないはずです。
では、なぜこのような一見無駄とも思えることをしているのでしょうか?
エポスカードは、マルイ店舗以外での外部利用を促進するため、他の事業体との提携カードの発行や、各種割引などのサービスを充実させようとしています。そこで、パートナーとなる企業を増やそうと懸命になっているのです。
例えば、エポスマークの付いた提携カードでは、「ノジマエポスカード」「シダックスエポスカード」「アパエポスVISAカード」などがあります。
つまり、商圏外でのオンエアは、魅力あるサービスの確立と加入者拡大の下地をつくることが目的なのです。そこで、こうしたCMが流れていれば、提携を検討している企業の担当者と商談をする際も「CMで見るエポスカード」の印象を持ってもらえれば、スムーズに進むというわけなのです。
そしてまた、マルイの店舗のない地域では、こうした提携先の店舗を窓口として入会を促すこともできるのです。

引用:有名タレント起用という「諸刃の剣」、商圏外での放送…“大胆”CM戦略はなぜ成功?

17年3月期の総取扱高は1兆7232億円に達し前年比17%増だった。07年3月期の3549億円から年平均で17%伸びている。取扱高が増えているのは、丸井の「売り」である分割販売を拡大しているためだ。今まで分割利用の可能な加盟店は約1万店だったが、16年3月から一気に100万店以上に拡大した。その結果、加盟店でのリボ・分割の利用が前年比27%増加した。

引用:丸井はもはや「百貨店では無い」8期連続増益の理由

2017年の決算に書かれていることも同じ。店以外でのチャネルをいかに掴むかを重点としている。

与信が無い人と、与信を一緒に作っていくビジョン

在日外国人へもクレカ事業を展開していることを見ると、単純な若者へのサービス提供ではなく、「与信が無い人と、与信を一緒に作っていく」というビジョンが本当であることがわかる。

創業者の言葉に、「信用はお客さまに与えるものではなく、お客さまと一緒に創っていくもの」というのがあります。それはわれわれがクレジットカードを作りたいという顧客を審査して、「あなたはスコアがいくらなので、限度額がいくらです」と決めつけるものではないということです。
具体的に言うと、エポスカードの与信限度額が分かりやすいでしょう。大薗先生は社会的に信用の高い方ですが、実は社会人1年目の若い女性と、カードの限度額は同じところからスタートします。年齢、収入、勤め先、家族構成、持ち家か借家かなど、そういう評価基準では決まらず、一律低いところから始まります。

当初も「若者」を狙ったのではなく、「消費者として認知されていない」人を狙っていたことがわかる。

そして当時の常識に反していたのは、そうした若い人たちにクレジットカードを次々と発行していったことです。丸井がそういう選択をしたのはなぜでしょうか?
顧客の属性に特にこだわりがなかったのです。小売と金融の一体ビジネスを展開するわけですから、独身の若い人にクレジットカードを発行してもいいじゃないかと考えていました。
そのころの日本の小売業界では、若者は消費者としてあまり認知されていませんでした。顧客といえば大人という固定観念があったので、われわれも「大学生にカード発行して大丈夫なの? 商売になるの?」とよく言われました。

引用:丸井がクレジットカードの即時発行にこだわる歴史的な理由 (1/6)

金融に特化することも考えられるが、あくまで小売と金融ビジネスの一体化であることにこだわっている。

大薗:あくまで小売と金融をセットにして考えるのは面白いですよね。一般的に小売は薄利で浮き沈みがあります。より安定的で利益率の高い金融を切り離した方がいいと思いがちですが、丸井にとっては一緒なことに価値があると。
青井: 当時、丸井は間違った選択をしたのではないか、大手の傘下に入って金融に特化したほうがよいのではないかと多くの人に言われました。実際、バブル崩壊後は十数年間業績が低迷した一方で、クレディセゾンなどは伸びました。その状況を見て、社内でも金融に絞ったほうが良いのではという声が出ましたが、私自身はこれまでのビジネスモデルを捨てずに進化できたのが丸井のユニーク性で、それが他社に代わることができない価値だと信じていました。今になってみると、企業規模ではクレディセゾンに負けていますが、収益効率では勝っています。どの局面で見るかが大事なのです。

引用:丸井がクレジットカードの即時発行にこだわる歴史的な理由 (1/6)

まとめ:金融と小売の一体化

小売が金融を自社で行うことで、高い収益性を実現することができ、その収益を小売事業に還元し、より魅力的な店舗を作り、人を呼び込み、さらに金融事業の新規会員を獲得する。

引用:小売×金融のビジネスモデル

小売、金融は切っても切り離せない関係である。第3の革新は一体何なのか、どんな小売と金融が一体化した未来を提示できるのか。丸井が描く未来にわくわく。