楽しんでくれたら幸いです。
五月も中旬になった頃のこと、俺遠山金次は神奈川武偵高付属中学校の3年に進級し、年齢的に割りと優秀な成績を修めていた俺はインターンとして武偵高に来ていた。
ちなみに武偵とは凶悪化する犯罪に対抗して新設された国際資格で、武偵免許を持つ者は武装を許可され逮捕件を有し警察に準ずる活動が出来る。
ただし警察と違うのは金で動くことだ。金さえ積めば武偵法が許す限りどんな荒っぽい仕事でも下らない仕事でもする、いわば『
俺は神奈川武偵高の掲示板から、迷子の動物探しといった簡単な
「おう遠山、こっちやこっち!」
この声は、つい先日生徒へのやり過ぎた暴力が問題になり、大阪武偵高をクビになって神奈川武偵高に流れてきた。香港マフィア組長の愛娘で香港に於いて無敵を誇った武偵の蘭豹だ。
その声に気付き視線を向けた俺は──
「………ッ………⁉」
絶句してしまった。
なぜなら、扉の前にいる蘭豹はタンクトップにカットジーンズ、そして編み上げブーツと普段の服装ではなく、白いワンピースを着てる。髪形もポニーテールを解いてロングヘアにしてある。
ああ、そうか。今日は合コンがあるって
そう思った時、蘭豹はM500を抜き銃口を俺に向けた。
「笑たら殺す。ええな」
「は、はい!」
「ほな、ついてこい」
俺は蘭豹についていきながら質問する。
「……あの、俺に何か?」
「ああ、長期の秘匿任務や、詳しい事は
蘭豹がそう締め括りそのまま黙って歩いていると、なぜか蘭豹はガチガチと震えだした。
どこかおかしくなったかと思ったら、校門の所に黒塗りの高級車──ベンツの前に紺色のスーツを着用し、無地のネクタイをした20代後半と思われる男が姿勢良く立っていた。
この男が俺の依頼主か。
「頼まれた通り、遠山君をお連れしました」
遠山君、だと⁉
決して蘭豹が口にしない言葉を聞いた俺は全身に鳥肌が立ってしまう。
「出掛ける予定の所を頼んでしまい悪かったな。しかし武偵高の教師にも君のような清楚な人がいたのか」
「まあ、清楚だなんて、同僚が野蛮なだけですわ」
野蛮筆頭の教師であるお前が何を言ってやがる⁉
それと先程の蘭豹の言葉で分かったが、蘭豹のヤツ、この男に惚れたな。
なんか頬も少しばかり赤いし。
(この男も可哀想に……)
名前の知らない男に俺は同情する。
「どうぞ、名刺です。姓は蘭、名は豹で蘭豹と申します」
「ご丁寧にすまない、自分は防衛省の烏間惟臣と言う者です」
防衛省………?
それにしては妙だな。
俺には分かるが、この男の内面からは自衛官上がりの防衛職員とは思えないほど、圧倒的で途轍もない鋭利なムードが潜んでいる。
この女は検察官──検事か。
防衛省の人間が検事を運転手に出来るか? 答えは──否。
つまりコイツは防衛職員じゃない。恐らくこの男も検事だ。
しかしただの検事ではない。この父さんにも匹敵するであろう存在感は
武装検事とは法治国家の日本に於いて、職務上で人間を殺害しても罪に問われる事の無い……いわゆる『殺しのライセンス』を持った国内最強の公務員だ。
俺がそれに気付いて目を丸くすると、蘭豹と烏間の会話が終了してた。
「それじゃあ、遠山君。私は行くけど烏間さんに
本性をバラすなって事だろ? 分かってるよ。
それに今はお前より所属を詐称した烏間の事で頭がいっぱいだ、蘭豹の事なんか話題にはしない。
蘭豹が去っていくと烏間は鋭い目で俺を見据える。
「君が遠山君か。ふむ………」
何か言いたい事がありそうな感じだが、それは言わない様子だ。
そっちが何も言わないならこっちから質問してやる。
「それで天下の武装検事様が、いったい俺にどんな依頼があるんだ?」
「ほう、どこで見抜いた」
俺はこの言葉に運転手をチラリと見る事で答えた。
俺の視線を追った烏間は得心がいったらしく頷いてる。
「所属を詐称する理由は?」
「詐称してる訳じゃないんだが、その話には国家機密も関わるから中で話そう」
そう言って烏間は車のドアを開けて中に入っていった。俺もそれに続くようにして入る。
ドアを閉めると女性の検事がゆっくりと車を発進させた。
「……どこに行くつもりだ?」
「案ずるな。近辺をグルリと1周走るだけだ。聞かれたくない話だからな」
さっきも国家機密がどうのとか言ってたから当然と言えば当然か。
「月が7割消し飛んだのは知ってるな?」
「ああ」
答えながら俺はゆっくりと走る車の窓から、薄暗くなってきた空に浮いてる三日月を見る。
先月の初めにそんなニュースが全世界を駆け巡ったが、実際に月が消失したのは先々月の3月中旬だったハズだ。
「月を爆破したのはコイツだ」
少し前の事を思い出していたら烏間が胸ポケットから1枚の写真を取り出した。
それを見ると俺は固まる。
「…………冗談、だよな?」
「冗談で済めばどれほど良かったか」
その写真には黄色いタコのような生物が写っていた。
「写真のコイツは月を爆破しただけでは満足せず、来年の3月には地球も爆破すると言っている」
「………軍とかは動かないのか?」
「動かしたいがコイツの最高速度はマッハ20、殺しに来ればその速度で逃げると脅された」
マッハ20か。当たりそうな兵器は大陸間弾道ミサイル──ICBMぐらいだが、今日日そんな物を打ち上げたら戦争が勃発しかねない。
「どうするんだ?」
「ああ、困ったが驚く事にコイツはある条件を出してきた」
「条件?」
俺の言葉に1度頷くと烏間は答えた。
「殺されるのはイヤだが、ある中学校の担任ならしても良いとな」
「………何を考えてんだソイツは?」
「知らん。だが、これは好機だ。約30人もの人間がヤツを殺せることになる。従ってそこの
「生徒達にも?」
イヤな予感がしつつも俺がその単語を拾うと烏間は頷いた。
「そうだ。君への依頼はここの生徒達と一緒にコイツの暗殺だ」
やっぱりか!
国家機密を俺に話し出した時から、もしかしてそうかもなと予想はしてたんだが、面と向かって言われるとな。
「暗殺って、武偵法9条は? 『
武偵法9条、武偵は如何なる状況に於いても、その武偵活動中に
「君はこの写真の姿を見て人だと断言出来るか?」
「………………」
写真の姿が人間に見えず俺は黙り込む。
「つまりコイツに9条は適用外だ。問題無い」
成る程、そういう事か。
「じゃあ次の質問だ。なんで武偵に依頼するんだ? 普通は暗殺者だろ?」
「最初は暗殺者に依頼していたが、ヤツは襲い来る暗殺者達を
ここまで聞いといて拒否出来るワケねぇだろ!
記憶消去とかも恐いし受ける道しか残ってない………。
「分かった受ける。でも学校にはどうやって説明するんだ?」
「ああ、表向きは彼女の護衛として来て貰う事になってる」
そう言って取り出した写真にはポニーテールをしたカワイイ女の子が写っている。
「彼女は
訳ありって、まあ別に良いか。
しかし彼女は危ないな。確実に
「暗殺場所と成功報酬は?」
「椚ヶ丘中学という場所だ。従って任務中の住居や必要経費などはこちらで用意する」
あれ、椚ヶ丘中学ってあの人がいる場所じゃないか?
「それと暗殺が成功した場合の報酬は100億だ」
ひゃっ、100億ってスゴいな。さすがは地球規模の任務、報酬も桁違いだ。
「帯銃はしても?」
そう言いながら俺は腰のホルスターに収めてあるベレッタM92Fに触れる。
これは先日、購買で米軍が制式採用してて横流し品が多く、拳銃本体やパーツが安かったから購入したものだ。
「ああ、護衛だから構わないが無闇に発砲するなよ。生徒は防弾制服を着てないからな」
「その辺は分かってる」
「それとヤツには通常兵器は効果が無いからこれを使うように」
烏間が取り出したのは、緑色のゴムのような物質を弾頭にした
「君用に作らせた装備だ。生徒にはその物質と同じ素材のBB弾とゴム製のナイフを渡してある。それから俺が防衛省に所属してる理由だが、コイツの暗殺が終了するまで出向しろと上に言われたのだ」
そんな理由だったのかと納得した時、突然停車した。
「それでは諸々の準備を済ませて3日以内には椚ヶ丘中学に登校するように、それと俺はそこで体育教師をしてるからな。今日は許すが転入後は敬語を使うように、それでは住居の場所など不明な点があればメールしてくれ」
俺が頷き車から降りたのを見計らうと走り去っていった。
それを見送った俺は銃の改造の為に
ストックがあるので2話目は明日の0時00分に投稿します。