ついに、副業禁止の禁止が動き始めたみたいですね!うれしい!めでたい!パチパチパチパチ。
これで日本の凋落にも歯止めがかかるのではと、期待をしているのです。その心は?問題をいくつかに分解して、順に論じたいと思います。

一億総働いてるフリ社会

少し前のエントリーでも触れましたが、わたし最近Voicyにはまっております。Voicyの人気Voicer(そんな風に言わないか?)であるサウザーさんが以前、「勤め人、みんな本気で働いてない。働いてるフリしてるだけ」みたいなことをおっしゃってたんですね。これを聞いた時、かなり衝撃をうけたんですよ。鋭すぎるって。今まで、そんな切り口ありましたっけ?多分ないはず。

もちろん、ここでいう「みんな」ってのは大多数を意味する言葉だと思うので、「いやいや、この人を見なさい。どう考えても一生懸命働いてるでしょ」みたいな反例出しは左スワイプします。肉球で。

で、サラリーマンのお給料って、会社が稼いだお金をみんなでシェアするってのが基本ですよね。
シェアのルールとしては、役職間の差は大きいんだけど、同じ役職内で成果に応じてつく差は小さいみたいな感じではないでしょうか。人の2倍働いたからって給料2倍にはならないでしょう。けど、会社の利益が2倍になってパイが増えたら給料は結構上がりますよね。たぶん。そして部長の給料は平社員の3倍とか4倍とかある。
つまりは、サラリーマンの年収は、会社が上げてる利益と、自分の役職で決まると。

ベンチャーみたいに会社の規模が小さければ、1人のすっごい頑張りが会社全体の利益を押し上げたりし得るんで、本気で働くんだと思うんですよ。けど自動車メーカー大手のT社みたいな何十万人って社員がいる大企業になると、1人がどんなに頑張っても、会社の利益に与える貢献ってミジンコみたいなもんで、ほとんど変わんないですよね。為替の影響の方が遥かに大きいみたいな。

個人の力でパイ自体を増やすことが難しいとなると、給料を上げるための基本戦術は早く役職を上げることになると思います。優秀な人は良い成果を出してそれを実現しようとするんでしょうけど、、、その他の人だって負けてられないでしょう。まさにアピール合戦の様相を呈してくるんですよね。「俺は徹夜で頑張った」とか「自分の立ち上げた新規事業は、今は利益を上げていないが10年、20年のスパンで見たときは、会社に大きな貢献をするはずだ」とか。
こういった違う切り口からくるアピールって、横並びで公平に評価するのは結構難しいじゃないですか。
 となると、「とりあえず課長くらいまでは、全員横並びで、特定の年齢になったら役職の階段を上がるようにしよう。」といった、妥協的人事が行われることになるんですよね。

その結果大企業では、個人の頑張りで会社全体の利益を大きく上げることはできない。さらに、同一役職同一賃金みたいな給与体系。役職はある程度の年齢にならないと上がらない。みたいな状況になる。

となると優秀な人が一生懸命働くインセンティブがない。課長くらいから本気出せばいっか。みたいな感じにならざるを得ない。
賢い会社はやりがい搾取戦略で、うまく若くて優秀な人をつかってくんでしょうけどね。
そして雇用規制がある日本では、優秀ではない人が仕掛けてくる牛歩戦術(残業代稼ぐためにチンタラ働く)も有効過ぎるんですよね。ここが大した成果もないのにお金を持っていく。
どちらにしても、若いうちは働いてるフリが最適戦略みたいな感じになっちゃってるんではないんでしょうか。

これが、サウザーさんが喝破した「一億総働いてるフリ社会」の構造であると考えます。

ブラック企業は働いてるフリなのか

一億総働いてるフリって言うけど、ブラック企業も働いてるフリなの?一生懸命働いてるやん!むしろ一生懸命働き過ぎやん?って声も聞こえて来そうです。

これについても、Voicerサウザーさんが過去に勤めたられた企業のお話が参考になります(第49話〜第51話のあたり)

サウザーさんが勤められた最初の企業は、強烈なブラック企業とのことでした。厳しいノルマを課せられて、皆、上司に罵倒されながら必死に商材を売る会社であったと。ヘトヘトになるまで働かされたと。

この会社では、皆、一生懸命働いているように見えます。働くフリでは無いように見えます。表面上は。ただ、働くの定義をどのように捉えるかですよね。働く=世の中に価値を提供する、と定義したらどうでしょうか?

サウザーさんは他のエントリーで「壺よりエグいもん売ってましたからね」ともいっておられます。つまり、世の中に対して価値を提供してる仕事ではない(むしろ害?)。

世の中からなくなっても困らない会社を、その会社に属する人たちが食べていくためだけに回していく。これは、働いているとは言えないのではないでしょうか。会社まるごと働いてるフリだと思います。

なお、ブラック企業の事例からは管理職にとっての最適戦略もよくわかります。役職が上がりきった人は、部下の集団を酷使して会社自体の利益増に邁進する。それにより全体のパイが増える。それでもって自分の給料が増える。もちろん、新規事業を立ち上げて、それを成功させて会社の利益に貢献するみたいなまっとうな方法もあります。でも、長年働いているフリに染まった人がそんなことできないですよね。

副業禁止の禁止の効果

では、副業禁止の禁止が何故に「一億総働いてるフリ」の構造を破壊するのか?
第1は、若くて優秀な人が課長になれる年齢に達するまで待っている間にも、給料を増やす方法を手に入れられるためです。

たいして差もつかない査定のために頑張るより、大企業で働いてることをセーフティネットとして、外では実力勝負できる副業にチャレンジするのが良い戦略になると思う。その状況においては、本業においては効率を突き詰めて早く退社して、副業にコミットできる時間を増やすことになるんじゃないですかね。やりがい搾取されるより、自分にリターンがあるやりがいの方が良いに決まってますし。何れにしても、働いてるフリとは無縁の生活になる。

しかしながら、大企業としてはこの状況は困りますよね。今まで優秀な若者が安い給料でフルコミットしてくれていたからこそ、会社の利益があったのに…彼らのパワーがほかに使われてしまう!一方で牛歩戦術で残業代を持っていく奴もいる。そのままだと大企業潰れちゃうかもしれない。

で、会社が生き残りのために変化せざるを得ないってのが、第2の構造破壊要因となります。

会社の対応は以下の3つが有望と思います。

1.優秀な奴はバンバン昇進させる。昇進を餌にフルコミットさせる
2.残業規制強化の風潮に乗っかって牛歩戦術をブロック
3.仕事ごっことしてやっていた、会議という名の雑談とか、決裁書スタンプラリーゲームとかをなくして、ほんとの仕事だけにフォーカスする

どれもむちゃ簡単なことですね。でも、副業解禁とかのきっかけがないと、こういったこともできないんですよ、そして茹でガエル的に死んでいく。
だから、副業の禁止の禁止は、日本の企業を救う施策としてとても有効と思います。
おそらく、解雇規制の撤廃とかよりも有効なんじゃないでしょうか?ここでは詳しく論じませんが、貧富の差の拡大とか失業率上昇からくる治安の悪化とかを考慮すると、解雇規制撤廃のリスクはデカそうです。

牛歩戦術ブロックは無能社員を殺すか?

副業禁止の禁止はとても良さそうですが、牛歩戦術の実践者には不利益しかないように見えます。しかしながら私は、副業禁止の禁止+牛歩戦術ブロックは、皆をハッピーにする可能性があると考えます。
それはなぜか?牛歩戦術がブロックされたら、皆、生産性をあげることを意識するだろうということが1つ。生産性をあげるためには賢くならないといけないと思いますが、賢くなると仕事も楽しくなるもんです。

もう1つは、副業で好きな仕事やれるってことです。キッザニアのリアル&大人版。牛歩戦術で好きでもない仕事をダラダラやってたよりは、人生楽しいんじゃないでしょうか?ロードバイク好きなら自転車屋で働くとか、コーヒー好きならProbatとかで焙煎してるようなコーヒー屋で働くとか面白そうじゃないですか?大工やったり土木工事やったりとかも意外に面白いかも。
残業代減った→家族を食べさせられない→バイトしなきゃ→深夜のコンビニや牛丼屋でバイト、とかのコースになると確かに辛いんですけど(そうなりがちだと思うんですが)、工夫や自分の意思次第で楽しくお金かせぐこともできると思います。

BI(ベーシックインカム)の議論がたまに発生しますが、完全なBIって難しいと思うんですよね。財源は?ってなるので。副業解禁後の世の中では、本業の収入がBI的な役割をはたせるような気がします。それに加えて、、本業でバリバリ働くも良し、副業でバリバリ働くも良し、副業はゆるく楽しむことを重視しても良し。
すごく多様だし、個々の能力を引き出せるんではないでしょうか。

ということで、安倍総理!早く副業禁止の禁止をしてください!