中古車市場には、20年前の車でも100万円を超えるものがたくさんあります。そんなことは誰でも知っていますよね?中古車にはプレミア価格が付くものがあって、トヨタ2000GTという車種はなんと1億2千万円です。そんな中古車市場の理解に苦しむ価値観について記事にしてみました。
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道具としての車
これからは私の車の使い方とその価値観について話を進めていきます。この中にどうしても理解に苦しむところがあるので、その部分を一緒に考えていただけたらな?と思います。
私が道具として車を使う理由
私が車を選ぶポイントは、サーキットを走っていて、楽しいかどうか?そしてそれプラスタイムも出ればいいな。という感じです。かなり特殊な使い方をしているのですが、そんな使い方を車に求めている人は、多くは無いのですが、いるにはいます。
そして日本にはそれ専用に市販車として商品化している車種があります。それはホンダがこだわり続けているタイプRという仕様の車です。
タイプRには主にふたつの車種があります。シビックとインテグラです。NSXという車種にも設定があるのですが、この車種については一般的ではないので省きます。
サーキットを目的とした場合の車の評価基準
サーキットを走ることを前提とした場合、車に求める性能は、ざっくり言うと1番目はラップタイムです。そして細かく言うとエンジンパワーや、ボディー剛性、車体重量、コーナリング性能、サスペンション性能です。
??タイプRの不思議??
先に紹介したホンダが世に送り出してきたタイプRには、この評価基準が当てはまりません。ラップタイムがいいタイプRが一番人気ではないんです。不思議なことに。というより歴代タイプRの中で最もラップタイムが低いものが一番人気なんです。そしてなんとラップタイムが一番高いタイプRはかなり人気が低いんです。
最も人気の高いタイプRとその不思議
最も人気の高いタイプRは初代シビックタイプRのEK-9(イーケーナイン)です。この車およそ20年ほど前の車ですが、最高値で、250万円ほどします。当時での新車時の販売価格は209万円なので、新車の価格を20年経っているのに、中古車の価格の方が上回ってしまっています。
そしてこのタイプRは歴代タイプRの中で最小排気量で、わずか1600ccです。馬力もわずか185PSです。車重が低く1,050㎏で、それは魅力的なのですが、やはり非力は否めません。サーキット走行をしても、ラップタイムは歴代タイプRの中では、最も遅いのがこのEK9なのですが、なぜか非常に高い人気があります。不思議ですね。
ベース車という位置づけ
サーキット走行を考える場合、ほとんどの車はそのまま(ノーマル)では使うことはありません。サスペンションという部品を交換したり、マフラーやタイヤ交換は当たり前です。
そしてこのEK-9はなんとエンジンを取り換えてしまうことが、当然のようにされていたりもします。当然ですがエンジンは車の中でも最高に高い部品の一つです。
エンジンの価格は、EK-9の場合、工賃も含めると100万円前後です。なぜこんなことをするのかというと、EK-9は前述のとおり1600ccで馬力が低いため、インテグラタイプRの1800ccのエンジンに乗せ換えるんですね。そうすることにより馬力が200PSになって面白い車が出来上がるのですが、200万円の中古EK-9を買ってエンジンが100万円。それだけではサーキットを走っても不足を感じるので、最低サスペンションは取り換える必要があります。それを入れると20万円前後、そしてタイヤもそれ専用にする必要があります。
EK-9でサーキットを走る場合、320万円ほどが必要になってくるんです。しかも20年ほどの前の車です。不思議なチョイスだなと思うのは私だけでしょうか?
おそらくタイプRで2番目に人気の高い車種
歴代タイプRでEK-9の次に人気の高い車種はDC-2と呼ばれているインテグラタイプRです。この車も20年ほど前のもので、最高値が200万円ほどです。このDC-2も人気が高くて、20年前の車なのにこんな高値が付いています。馬力は1800ccということもあってEK-9よりは高く200PSですが、サーキット走行をしても、ダントツには速いというわけではありません。なぜ人気があるのか理解できない車なんです。
実はこっちが2番目かもしれない3番人気のタイプR
次に人気なのが、シビックタイプRFD-2です。このタイプRはタイプR中最も生産台数が低くて、わずか13049台です。この生産台数は新しく設定された排ガス規制の基準をクリアできなかったためと言われています。
このFD2はちょっと乗ってみるとスポーツカーとしては、非常に魅力的に感じるポイントがいくつもあります。それはまずエンジン音、車内に聞こえてくるエンジン音は正にレーシングカーのそれを想像させるサウンドです。そしてサスペンションセッティングは、サーキットしか走れないでしょうという、ガチガチに固めた作りになっていました。
このFD2にちょっとだけ乗るとスポーツカー好きにとっては、一瞬で心を鷲掴みにされてしまいます。実は私もその魅力に取りつかれてFD2を買ってしまいました。ここに買ってしまいました。と表現した理由を書いていきます。買ってしまいました。というのは買って後悔したという気持ちを表しています。
なぜこのFD2を買って後悔したのか?それはパッと乗った印象は、サーキットを走るとどんどん崩れ去っていったからです。そして私はこのFD2をサーキット走行わずか1回だけで手放そうと思いました。
サーキットを初めてFD2で走った、その時の正直な印象は遅い!でした。えっ?こんなもんなの?と感じたのが正直な感想でした。冷静になってよく考えてみると、当たり前だというところが理解できるのですが、試乗した時にはすごいと感じてしまうエンジン音と硬いサスペンションに心を奪われて冷静ではなくなっていたんでしょう。
なぜこのFD2はサーキットで遅いと感じたのか?それは私が、これとは別のタイプRでサーキットを走っていたことがあって、そのタイプRと比べると、コーナリングスピードが明らかに低いと感じたからです。実際タイムもそのタイプRとは、かなりの開きがありました。
なぜこのFD2はすごいという印象を与えるのに、実際のサーキット走行では遅いのか?それはFD2のボディーのせいです。歴代タイプRでは、最大で最も重いという点が本来のタイプRの魅力をスポイルしてしまう原因でした。
1270kgという歴代タイプRでは最も大きくて重いボディーのせいで、本来のタイプRの魅力の運動性能が影をひそめてしまったためです。そして、サスペンション設計のせいなのか、4輪の接地性が悪く、常におかしな挙動を示していました。
これは、アフターパーツと呼ばれている後付けのサスペンションを取りつけると、更にその部分の欠点が拡大されて、ほとんどサーキットでは使えない代物になってしまいます。常に足はバタバタしていて、車体が暴れて、コーナリングどころではない状態に陥ってしまいます。
ノーマル(無改造)状態ではかなりバランスがいいように感じるのですが、実はノーマル状態でも若干この現象は見られます。FD2の足(サスペンション)は難しいと言われている要因がこれです。
多くのサーキットマニアたちが、FD2のサスセッティングで悩んでいます。何度も数十万もするサスを買い替えていいたりする人もいて、それでもまともにサーキット走行をすることが難しい状態に陥っています。
一見すごくいい車のようですが、手を入れれば入れるほどバランスが崩れて、ノーマルよりも遅い車になってしまうこともあるほどです。そして非常に扱いにくくなってしまいます。
タイプRのコンセプト
なぜホンダはタイプRという車を世に送り出し続けているのか?それはホンダ技研の創設者、本田宗一郎の意思です。その意思とは、サーキット走行という魅力的なことを、もっと多くの人たちに体験してもらいたいということ。
そしてもっと気軽にサーキット走行できるように、価格は安くてもサーキット走行を充分にできる車を世に送り出そうという本田宗一郎の思想から生まれたのがこのタイプRなのです。
ちなみにその当時買ってそのままの車をサーキットで走らせて充分性能が発揮される車は市販車では世界中探してもありませんでした。それは今でも貴重な存在だと言えます。その当時よりそんな車は少しずつ増えてはいますが。
この本田宗一郎の思想は多くの若者に受け入れられて、DC2やEK9には高い人気が集まりました。ところが残念なことに、スポーツカーは世界中から徐々に人気が無くなっていって、2台目インテグラタイプR(DC5)そしてFD2の人気は決して高くはないという状況になってしまいました。
しかしタイプRへの本田宗一郎の思想は、今でも多くの人たちに受け入れられて、まだまだタイプRに魅力を感じている人もいるというのはうれしいことです。
タイプRのコンセプト2
タイプRのコンセプトを探ってみると、タイプRに求める性能が見えてきます。だれでもが気軽にサーキット体験ができる車。この誰でもがというところが重要です。誰でもがという場合、価格が高い場合、そのコンセプトから外れてしまいます。その価格帯は高くても200万円前後でしょうね。
そして誰が乗ってもある程度早く、そして楽しくサーキット走行ができる車。このコンセプトから紐解くと、構造が簡単で、ある程度高性能のエンジンが搭載してあること。そしてそのエンジンの性能を十分に引き出すことができるもの。というのが見えてきます。
どうなるかというと、車体はできるだけ軽量。そしてエンジンの性能を十分に引き出すためには、FFが最適だということ。モータースポーツが好きな人で、FFを好きになれない人もいますが、2リッタークラスではかなり多くが公式のレースでもFFが採用されていて、そして実績もあげています。以前の考え方では、FF=モータースポーツではない!というものが無くなっていて、FF=モータースポーツという意識が既に多くの人たちに根付いているのは事実です。
FFはなぜエンジンのパワーを充分に引き出すことができるのか?それはエンジンから、ほとんど直接といってもいいほどパワーの伝達系がシンプルな構造になっているからです。
FFのパワーの伝達はエンジン→クラッチ→ミッション→ドライブシャフト→タイヤで。ほとんどダイレクトにエンジンパワーがタイヤに伝達できる構造になっています。
一方根強い人気のFR車は、エンジン→クラッチ→ミッション→プロペラシャフト→伝達を直角にするためのベベルギヤ→ドライブシャフト→タイヤと、FFに比べ非常に複雑になってしまいます。当然その分パワーがかなりロスしてしまいます。
そして、なんといってもフロントにあるエンジンパワーをわざわざ後ろに持っていくために、不可欠なプロペラシャフトと呼ばれる部品はそれだけで数十キロもあって非常に重い部品になっています。それを回すだけでもエンジンパワーは相当ロスしてしまいます。
F1はそのロスをなくすために、後ろにエンジンを積んで直接エンジンがタイヤを回す仕組みになっています。ミッドシップというレイアウトになっているのですが、このミッドシップエンジンの重さを中心に持ってくるという役割と同じくらい、タイヤを直接回して、エンジンパワーをできるだけ有効に使うという考え方も含まれています。
実はFFという仕組みはこのエンジンパワーをできるだけ有効に使うための手段としては、最適な駆動方式とも言えます。別の言い方をすれば前にエンジンがあるミッドシップと表現してもいいと今では感じるまでになりました。
かく言う私も以前FFはスポーツカーではないという人の一員でしたが、それはタイプRに乗って覆されました。そして今ではFFこそがミドルスポーツカー(2000cc前後)では最高のエンジンレイアウトで、前にエンジンのあるミッドシップと思えるまでに至っています。
この考えは実際にサーキットを走って感じたことです。
??最速タイプRは人気最低タイプR??
多くのタイプRファンからあまり人気のないタイプRがあります。それは2代目インテグラタイプRDC5です。
このDC5は歴代タイプRの中ではサーキット、少なくとも鈴鹿サーキットでは最速です。でもこのDC5はタイプRマニアにとってはあまり評価がされていません。ある有名チューニングショップの人はこの車は全然サーキットで使い物にならないと多くのお客さんに話しているほどです。
サスペンションの構造と、ステアリングの構造が干渉してタイロッドという部品の加工が多少必要なのですが、このDC5は、サスペンションとタイヤを交換してスピードリミッターをカットするだけで、鈴鹿サーキットを2分30秒を切るという性能を発揮する優れた車なのです。
それにかかる必要な費用は2~30万円ほどです。
でもこのDC5は不人気で、多くの人たちから低い評価を受けている車なのです。何で?????と思ってしまいます。
同じようなタイムを別のタイプRで出そうとすると、
EK9の場合エンジン交換も含めると150万円ほど
DC2の場合エンジンパワーが低いのでエンジンのパワーを上げる必要があり、50万円以上は必要でしょう。
そしてFD2になると、難しいサスペンションセッティングをまず完璧にするために、多くの時間と費用が必要になってきます。そしてギヤ比が鈴鹿に合わないため、ミッションを交換する必要があります。
あるチューニングショップに鈴鹿でタイムを出すための費用を見積もってもらったら、250万ほどが車体とは別に必要でした。そしてそのショップは難しいと言われている、FD2のサスペンションセッティングを完璧に近い形まで出していて有名なショップのひとつです。
このサーキット走行に必要な費用とかを見た場合、そしてタイプRのサーキットを楽しく走れるというというコンセプトを生かすなら、どのタイプRが理想的なのでしょうか?
私はこれらを考慮すると歴代タイプRの中で、そのコンセプトに一番近いものはDC5だと考えています。そして、このDC5不人気車なので、中古車市場では価格が低いため、気軽に購入してサーキットに持ち込むことができます。そしてタイプRの魅力を一番味わえる車でもあります。
なぜこのDC5は不人気なのでしょう?????しかし、不人気がゆえにリーズナブルなので、それはかなりありがたい現象だと言えるのですが?
個人的な体験
私は13年ほど前かなり本気でサーキット(鈴鹿)を走行していました。その時の車はDC5でした。そのころからDC5の評価が低く、何でDC5にしたの?とか、EK9やDC2にした方がいいよと何度となく説得されたことがありました。
でも私はDC5で鈴鹿を走っていて、それを不満に感じるところは全くありませんでした。むしろその魅力にどっぷりはまっていました。そのサーキット走行をもっと面白くしたいと思ったこともあり、多くの人がサーキットを走ると面白いと言っているポルシェに目が向くようになりました。そしてその体験をより深めるためにポルシェを買う決意をしました。
でもその時の状態ではポルシェを買うことなんて夢のまた夢なので、ポルシェを買うためにその収入が得られる仕事をする必要があって、そのためにネットビジネスを選びました。ポルシェを買うという強い思いが後押しをしてくれたおかげで、奇跡的にポルシェを買うことができるようになったのですが。
ポルシェを手に入れたとき、正直信じられない思いでいっぱいでしたが、嬉しいという気持ちも同時にありました。そして、このポルシェを手に入れた理由を体験するために鈴鹿サーキットに持ち込んで走ってみると、正直、あれ?????という思いでした。直線は速い?早すぎるのですがサーキットの醍醐味コーナリングが全然気持ち良くないんです。
DC5で感じた、あのわくわく感が全然伝わってこないんです。正直ポルシェってこんなん?って思いました。そしてあの時のDC5でのコーナリングが忘れられないため、その当時より最新のタイプRに目が行くことになりました。
FD2です。DC5より新しいタイプRなんで、DC5よりもっとわくわくできるんだろうな?と考えて、サスペンションとタイヤを交換リミッターをカットして、そのFD2をサーキットに持ち込んだのですが。ポルシェの時と同じように、あれ?????という気持ちが湧き出来てしまいました。明らかにDC5のコーナリングのほうが速いんです。
冷静に考えると買う前に解るのですが、その音とサスペンションセティングにやれれてしまいました。全く手を付けていないのノーマルの状態でこんなんなら、ちょっと手を入れるだけで、すごいことになるんじゃないか?と冷静な判断をその魅力に奪われてしまっていました。
その奪われた判断はサーキット走行によって浮き出てくることになります。車体の重量とその大きさがです。それがネックになってエンジン性能がスポイルされてしまいます。FD2は一回だけサーキットを走っただけでこのFD2を手放して、13年前に夢を与えてくれた、DC5を再び手にれることになりました。そしてこのDC5に以前にもまして満足しています。
こんな車が以前の本田では売っていたんだという感謝の気持ちと、今ではもう絶対に買うことができない車だと思うと、悲しい気持ちも芽生えてきます。
まとめ
車に求める理想は人それぞれだと思っています。そして当然ですがこの記事で書いたタイプRに求めるものも、人それぞれでしょうが、タイプRのコンセプトを考えると今のタイプRへの評価は、ちょっと???だなと感じています。
ちなみに最近知り合った、スーパー耐久レースとかに参戦していた人の話ではタイプRで最速はDC5だと話していました。でもこのDC5は中古車市場で100万以下で売られていたりもします。不思議ですね?????
今回の記事では、現行のタイプRと、ひとつ前の世代のタイプRは入れてありません。それはなぜか?いまのタイプRは、タイプRの本来のコンセプトから大きくかけ離れてしまっているように感じているからです。だれでもが気軽にサーキットを走れる車とは言い難い車になっています。それは500万円近い価格や1500㎏近い車重、構造が複雑になるターボなどが搭載されているからです。
500万円という価格帯は高級車の部類に入るではないでしょうか?果たしてこんな車をタイプRと呼んでもいいのでしょうか?