辛子高菜 品切れ 「博多ラーメン」“名脇役”に異変 福岡県
2018年05月30日
「博多元気一杯‼」でラーメンを提供する土井さん。山盛りに辛子高菜を入れていた器は今は空っぽだ(上)
辛子高菜の扱い中止を知らせるポスター(ともに29日、福岡市で)
福岡県名物「博多ラーメン」に欠かせない、「辛子(からし)高菜」の不足が深刻だ。コンビニ各社がおにぎりの具に採用したことを皮切りに、原料のタカナは全国で需要が急増。特に国産原料の引き合いが強い。旺盛な需要に対し、供給量は他品目への切り替えで漸減。漬物メーカーは「長期的に品不足が続きそうだ」と見通す。(金子祥也)
「当店から高菜が消えました」。福岡市内の人気ラーメン店「博多元気一杯!!」で5月、こんな紙が張り出された。豚骨スープの博多ラーメンに欠かせない辛子高菜は、どの店でも卓上に置く重要なトッピングだ。
同店はこれまで「スープの味を邪魔してしまう」として紅ショウガやこしょうは一切置かず、スープを引き立てる国産の辛子高菜だけを卓上に置いていた。高菜を出せないのは同店にとって、客足に関わりかねない問題だ。
中国産なども試食したが、スープに雑味が出てしまうなどラーメンとの相性が納得できなかった。店主の土井一夫さん(57)は「がっかりするお客が多く、いつ再開するのかと毎日のように聞かれ、申し訳ない」と表情を曇らせる。
国産はタカナ独特の「えぐ味」が少なく、輸入物には替えられないと判断した。土井さんは「不足を受けて中国産を使う店も多いが、今後せっかく農家が作ってくれても、受け入れ先がなくなってしまうと困る。また扱える日を地道に待ちたい」と話す。
辛子高菜の不足に苦しむのは同店だけではない。漬物メーカーの樽味屋(福岡県春日市)は「取引しているラーメン屋でも置けない店が次々と出てきた」と明かす。ここ数カ月はこれまで取引がなかったラーメン店からも、月に10件以上の問い合わせがあるという。
同社は「漬物全般の消費が先細りの中、辛子高菜だけが異質だ」と評する。10年前は300トンだった販売量は、現在700トンに膨れ上がった。
不足の背景には、ここ数年盛り上がるブームがある。コンビニエンスストア大手3社が相次いで辛子高菜のおにぎりを発売。九州限定だった販売エリアも、一部商品は全国区に広がった。他にもチャーハン、カップラーメンなど、辛子高菜を使った商品は枚挙にいとまがない。
安全・安心な国産が輸入物並みの価格で手に入るのも、逼迫(ひっぱく)に拍車を掛ける。辛子高菜は国産と中国産原料のものが市場を二分するが、価格は大差ない。鹿児島県内のメーカーは「大手外食チェーンから、辛子高菜を使ったメニューを全て国産に切り替えたいと打診があった」と明かす。
家庭での利用も広がっている。首都圏で139店を展開するスーパーのいなげやでは2015年に売り上げが1・5倍に急伸。16、17年も前年比を上回ったという。日本最大の料理レシピサイト「クックパッド」(cookpad)での検索頻度も5年で1・5倍超に上昇した。同社は「漬物としても料理の食材としても、家庭に受け入れられている」と分析する。
需要が拡大する一方、国産タカナは生産者の減少や不作続きなどの理由から、供給量が減少している状況だ。主力産地の長崎県JAごとうは、最盛期だった13年に3700トンあった生産量が今年は約2400トンと、5年で7割以下に落ち込んだ。JAは「冷え込みなど、天候の影響で作柄が悪い年が2、3年続いている」と説明する。
かつて一大産地だった福岡県JAみなみ筑後では、高齢化による引退やセロリやナスなどの園芸品目に転換する農家が増えて漸減。栽培面積は10年前の3分の1まで減った。JAは「これだけ減っても業者の買い取り価格は1割も上がらない。作り手が出てこない」とこぼす。原料品薄を受けて、鹿児島や大分の一部では、漬物メーカー主導で産地化を進める動きも出始めている。
質高い国産争奪 漬物店も対応苦慮
「当店から高菜が消えました」。福岡市内の人気ラーメン店「博多元気一杯!!」で5月、こんな紙が張り出された。豚骨スープの博多ラーメンに欠かせない辛子高菜は、どの店でも卓上に置く重要なトッピングだ。
同店はこれまで「スープの味を邪魔してしまう」として紅ショウガやこしょうは一切置かず、スープを引き立てる国産の辛子高菜だけを卓上に置いていた。高菜を出せないのは同店にとって、客足に関わりかねない問題だ。
中国産なども試食したが、スープに雑味が出てしまうなどラーメンとの相性が納得できなかった。店主の土井一夫さん(57)は「がっかりするお客が多く、いつ再開するのかと毎日のように聞かれ、申し訳ない」と表情を曇らせる。
国産はタカナ独特の「えぐ味」が少なく、輸入物には替えられないと判断した。土井さんは「不足を受けて中国産を使う店も多いが、今後せっかく農家が作ってくれても、受け入れ先がなくなってしまうと困る。また扱える日を地道に待ちたい」と話す。
辛子高菜の不足に苦しむのは同店だけではない。漬物メーカーの樽味屋(福岡県春日市)は「取引しているラーメン屋でも置けない店が次々と出てきた」と明かす。ここ数カ月はこれまで取引がなかったラーメン店からも、月に10件以上の問い合わせがあるという。
同社は「漬物全般の消費が先細りの中、辛子高菜だけが異質だ」と評する。10年前は300トンだった販売量は、現在700トンに膨れ上がった。
コンビニ注目 価格輸入並み 生産者減少
不足の背景には、ここ数年盛り上がるブームがある。コンビニエンスストア大手3社が相次いで辛子高菜のおにぎりを発売。九州限定だった販売エリアも、一部商品は全国区に広がった。他にもチャーハン、カップラーメンなど、辛子高菜を使った商品は枚挙にいとまがない。
安全・安心な国産が輸入物並みの価格で手に入るのも、逼迫(ひっぱく)に拍車を掛ける。辛子高菜は国産と中国産原料のものが市場を二分するが、価格は大差ない。鹿児島県内のメーカーは「大手外食チェーンから、辛子高菜を使ったメニューを全て国産に切り替えたいと打診があった」と明かす。
家庭での利用も広がっている。首都圏で139店を展開するスーパーのいなげやでは2015年に売り上げが1・5倍に急伸。16、17年も前年比を上回ったという。日本最大の料理レシピサイト「クックパッド」(cookpad)での検索頻度も5年で1・5倍超に上昇した。同社は「漬物としても料理の食材としても、家庭に受け入れられている」と分析する。
需要が拡大する一方、国産タカナは生産者の減少や不作続きなどの理由から、供給量が減少している状況だ。主力産地の長崎県JAごとうは、最盛期だった13年に3700トンあった生産量が今年は約2400トンと、5年で7割以下に落ち込んだ。JAは「冷え込みなど、天候の影響で作柄が悪い年が2、3年続いている」と説明する。
かつて一大産地だった福岡県JAみなみ筑後では、高齢化による引退やセロリやナスなどの園芸品目に転換する農家が増えて漸減。栽培面積は10年前の3分の1まで減った。JAは「これだけ減っても業者の買い取り価格は1割も上がらない。作り手が出てこない」とこぼす。原料品薄を受けて、鹿児島や大分の一部では、漬物メーカー主導で産地化を進める動きも出始めている。
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[狙う日本市場 豪州の戦略 1] 米(上) 低コスト・安定生産 コシ系短粒種 急拡大
米国を除く環太平洋連携協定参加国による新協定(TPP11)で、農産物の対日輸出額が最大のオーストラリア。高付加価値の牛肉生産や米のブランド化戦略を構築し、日本市場に照準を定める。日本政府がTPP11の年内発効を急ぐ中、オーストラリアの輸出戦略を追った。
1筆30~50ヘクタールの巨大な水田が延々と広がるオーストラリア南部のリベリナ地域。同国の主力稲作地帯だ。今月上旬、2018年産米の収穫が終盤を迎えた。同地域モーラメーン地区で220ヘクタールを手掛けるピーター・ケイロックさん(59)は、稲を眺め、「これが日本に輸出される米だ。高収量とともに高品質を実現した」と誇らしげだ。
ケイロックさんは日本向けの短粒種米に特化して生産する。シーズンを通し、家族と従業員を含めた5人で、日本の平均作付面積の100倍以上に及ぶ水田を管理する。
作業は機械化や先端技術を駆使して、省力化を追求。400馬力のトラクターに10条以上の播種(はしゅ)機を取り付けて乾田直播(ちょくは)をして、追肥にはセスナ機を使う。圃場(ほじょう)の水位はスマートフォンで管理し、収穫は衛星利用測位システム(GPS)を搭載したコンバインをフル稼働させる。
こうした作業体系を確立し、低コスト生産を実現した。労働費や物材費などを含めた生産費は10アール当たり200~250豪ドル(1万7000~2万円)と、日本の平均の6分の1に抑える。
日本向け米生産は、オーストラリアの米農家が抱える課題の解決にもつながる。干ばつ頻発地帯の同国では近年、水利費が上昇。生産費の大半を占めるなど経営を圧迫している。
そこで、水の利用効率を高めようと、ケイロックさんが18年産から導入したのが、同国独自品種で日本向けの短粒種「うららか」だ。前年産まで作付けの半分を占めていた中粒種から切り替えた。ケイロックさんは「水の課題さえクリアすれば、生産量を飛躍的に増やせる」と理由を説明する。
コシヒカリ系の「うららか」は、生育期間が他品種より1、2カ月短く、使う水の量を抑えられる利点がある。同国の米生産(1トン)に使う水の量は1000キロリットルと、世界平均の50%だが、「うららか」は40%(800キロリットル)と少ない。10アール収量は800~900キロ(もみ重量)で日本の約1・4倍に上る。
同国では、17年産から「うららか」の生産が急拡大している。稲作農家イアン・メイソンさん(58)も「中粒種が中心だった稲作経営を過去10年間で短粒種に変え た」と話す。
日本向け品種への切り替えが着々と進む。これまで干ばつの影響で不安定だった生産が安定する強みがある。
「後はTPPが承認されるのを待つだけだ」(オーストラリアの米業者)。日本での輸入米のシェア拡大に向け、準備が進んでいる。
<メモ>
オーストラリア農業資源経済科学局によると、2018年産の国内の米生産量は79万トン(8万ヘクタール)の見込み。干ばつで生産が落ちた2年前に比べると3倍に上る。全生産量の8割を世界約50カ国に輸出する。生産者数は約1000戸。
2018年05月29日
硫黄山噴火 作物転換を重点支援 種子、農機に助成 農水省
農水省は23日、硫黄山噴火に関する支援策をまとめた。米の作付けができない地域には、大豆や飼料作物などへの転換を促し、水田活用の直接支払交付金などを支払うことで対応。作物転換に取り組む産地には種子や種苗の購入、農業用機械のリース、レンタル費用の一部を助成する。畜産農家が稲わらや粗飼料を地域で確保できなくなった場合、調達にかかる輸送費相当分として1トン5000円を助成する。
2018年05月24日
カーネ 販売苦戦 直前まで引き強まらず 「母の日」向け取引 総括
2018年の「母の日」(13日)向けの生花取引は、期間を通じて安値基調だった。主力花材のカーネーションの日農平均価格(各地区大手7卸のデータを集計)は、「母の日」直前まで1本40~60円と、前年の1、2割安で推移。小売りの仕入れが直前に集中したため、それ以外の時期は取引が盛り上がらなかった。ドライフラワーを瓶詰めしてアルコールなどに浸した商品「ハーバリウム」の贈答での人気が高まり、生花の販売が押されたことも響いた。
今シーズンの国産カーネーションは、3月以降の好天で生育が進んだ。例年であれば2週前の5月に入って出荷が増えてくるのに対し、2週間ほど早く4月下旬から増量。需要とずれがあり、序盤の相場は前年を1割前後下回った。
取引ピークとなる5月2週目(3営業日前から)は、雨天の影響で出回りが減少。それでも2営業日前までは相場が前年を割り込んだ。卸売会社は「消費者からの注文が固まる母の日直前まで、市場からの仕入れを控える動きが強かった」とみる。例年だと直前の営業日は安値で取引されることが多く、そこを狙って仕入れを増やそうとする業者もいたという。
このため、直前の営業日(11日)は入荷減と間際需要が重なり、日農平均価格は1本70円で前年比11%高と、過去3年間で最高値を記録。市場関係者は「直前で高値がつくのは異例の展開だ」と振り返る。
鉢物カーネーションも販売が苦戦した。東京都中央卸売市場の「母の日」の9営業日前から直前までの入荷量は80万鉢と、生育前進の反動で前年比19%減。一方、平均単価は2~5割安にとどまり、卸売会社は「需要期に量がそろわず、他の花材に注文がシフトした」と指摘する。
国産の安値相場を受け、輸入量は少なかった。農水省の植物検疫統計によると、4月4週から5月2週までの輸入量は2960万本で前年比9%減だった。
「母の日」商戦で生花の販売が苦戦したのは、「ハーバリウム」の人気の高まりがありそうだ。今年から「母の日」向けにギフト商品を取り扱う小売店が増加。首都圏のホームセンターは「初めて売り出したが、ギフト全体の売り上げの2割を占め好調だった」と明かす。市場関係者は「ハーバリウムは持ち運びが楽で手入れも不要なので、生花の需要を奪いつつある」と指摘する。
2018年05月29日
「農の語り」薄っぺらになった 紡いだ価値見失うな 百姓・思想家 宇根豊
もうずいぶん前からのことだが、農業の語り方が薄っぺらになっているような気がしてならない。特に近年はさらにひどくなったようだ。まず、その軽薄な語り方の特徴をみてみよう。
(1)結果ばかり、つまり生産物の価値ばかりを語り、育てる過程、仕事のうれしさを語らない。
(2)生産物も経済価値につながる性質ばかりが強調され、非経済価値は語らない。
(3)現代の人間から見た有用性ばかりが強調され、有用性がないと思われることは語らない。
(4)数値を多用し、客観的で冷たく、情に訴える「物語」がない。
要するに、農業の価値を知らず知らずに「他産業並」に合わせてしまったのだ。そのために、農業ならではの世界が見失われようとしている。
例えば、「同じものなら、安い方がいい」と平気で言う。なぜなら低コストで生産性が高いからだそうだ。しかし、コストを下げることによって、仕事の喜び、生きものや風景へのまなざし、作物への情愛が薄れていくなら、「安い」という評価は犯罪的かもしれない。そもそも工業製品並みに「同じもの」と言い切る感覚が、食べもの(生きもの)である相手に対して失礼であろう。
資本主義巣くう
実はこうした鈍感さが、経済のグローバル化に対抗する精神を行方不明にさせている。もう少し百姓や農業関係者は、生産結果よりもその過程を語るべきではないか。生産物は資本主義経済に投げ込んでも、仕事の内実は別の仕組みで評価しなければならない。
では、なぜ「他産業並」に合わせなければならないと思い込んだのだろうか。これは案外と根が深い。
(1)資本主義の発達によって、経済尺度でものを考える習慣が農業にまで及んでしまった。
(2)物事は科学的に、合理的に説明でき、それが進歩した社会であるとする「近代主義」に洗脳されてきた。
(3)これまであるものを深めるよりも、常に新しいものを外部から持ち込み、その結果を披露することに慣れてしまった。
(4)百姓仕事を単なる「労働」とみるようになり、短い方がいいし、むしろ人間がしない方がいいと考えるようになった。
わが家の苗代では、今年もシュレーゲルアオガエルとトノサマガエルのオタマジャクシが泳ぎ回っている。種まきから35日間、ひとときも水は切らさないようにしている。この仕事と気持ちはコスト計算すべきものではなく、米の価格には反映できない。それでいいはずがない、どうにかしなくてはならない、と考えようではないか。
他産業並に侵食
百姓の日常会話の語りにまで、この資本主義の影響は及んできている。この流れを食い止めないと、農業を「他産業並」に扱い始めた国民の心を、揺さぶり覚ますような「語り」を紡ぎ出せなくなる。
思い出すといい。かつての「農の語り」は、生きものとの付き合いを、天地自然のメッセージ(物語)として伝えてきたではないか。
<プロフィル> うね・ゆたか
1950年長崎県生まれ。農業改良普及員時の78年から減農薬運動を提唱。「ただの虫」が田畑で一番多いことを発見。「農と自然の研究所」代表。農本主義三部作『農本主義が未来を耕す』『愛国心と愛郷心』『農本主義のすすめ』を出版。
2018年05月28日
1週間農村滞在推進 議員立法国会提出へ 超党派PT
超党派の国会議員でつくるプロジェクトチーム(PT)が、子どもたちに農山漁村での体験活動を促す議員立法の案をまとめた。主に小・中学生を対象に、農山漁村に1週間程度滞在し、体験活動することを基本理念に掲げた。国や地方自治体に対し、体験活動が具体的に行われるための基本方針や計画策定を求める。今国会に提出する。
2018年05月26日
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辛子高菜の不足に苦しむのは同店だけではない。漬物メーカーの樽味屋(福岡県春日市)は「取引しているラーメン屋でも置けない店が次々と出てきた」と明かす。ここ数カ月はこれまで取引がなかったラーメン店からも、月に10件以上の問い合わせがあるという。
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需要が拡大する一方、国産タカナは生産者の減少や不作続きなどの理由から、供給量が減少している状況だ。主力産地の長崎県JAごとうは、最盛期だった13年に3700トンあった生産量が今年は約2400トンと、5年で7割以下に落ち込んだ。JAは「冷え込みなど、天候の影響で作柄が悪い年が2、3年続いている」と説明する。
かつて一大産地だった福岡県JAみなみ筑後では、高齢化による引退やセロリやナスなどの園芸品目に転換する農家が増えて漸減。栽培面積は10年前の3分の1まで減った。JAは「これだけ減っても業者の買い取り価格は1割も上がらない。作り手が出てこない」とこぼす。原料品薄を受けて、鹿児島や大分の一部では、漬物メーカー主導で産地化を進める動きも出始めている。
2018年05月30日
[活写] 棚田の風感じて 心身オープンに
長野県上田市豊殿地区にある「稲倉の棚田」を、眺めが良い軽トラックのオープンカーで巡る観光ツアーが人気だ。
参加者は、1971年に造られた屋根もドアもない軽トラック「バモスホンダ」に乗車。運転手を兼ねるガイドから地域の歴史や見所の情報を聴きながら、高低差が約60メートルある約300枚の水田の間をゆっくり進み、一般の車は入れない約4キロの農道を30分ほどかけて巡る。
地域活性化に取り組むNPO法人・まちもりが、景観を観光資源に生かそうと今年4月に始め、これまでに30人ほどが楽しんだ。
東京都目黒区の主婦、堀内ゆき子さん(68)は「風や土の匂いを感じながら美しい棚田の景色を満喫できた。稲刈りの時期にも来たい」と喜んでいた。料金は1台貸し切り(1~3人乗り)で6000円。11月まで続ける予定。(木村泰之)
2018年05月28日
狩猟ビジネスで学校 捕獲から開業みっちり 千葉県君津市
農林業への鳥獣害が深刻化する千葉県君津市で、次代の捕獲者を育てようと「君津市狩猟ビジネス学校」が始動した。2018年度の1年間、受講者は鹿やイノシシ、キョンの解体、くくりわなの仕掛け方、ジビエ(野生鳥獣の肉)料理店の運営などを総合的に学ぶ。4、5月の入門編を終え、6月から人数を絞り込んで専門編が始まる。
同市周南公民館で今月、2回目の講習があった。50人の募集に対し受講者は60人に上り、県外からが3割ほどを占めた。年齢も20~70代と幅広い。
市内から参加した春木政人さん(36)は兼業農家で、イノシシの被害に悩まされてきた。「猟や止め刺しをする人が足りない現状で、自分も動かないとまずいと思った。市がいい機会で学校を始めてくれた」と動機を語った。
隣接する木更津市でレストランを営む野口利一さん(36)は、一般的な洋食の他に季節のジビエ料理を出す。「店でイノシシや鹿を扱うが、猟師としての視点も欲しい」と、弟の晃平さん(29)と受講した。
今回の講習はイノシシの解体。当日朝、公民館近くに仕掛けた箱わなに子どものイノシシがかかり、内臓を取り出す「腹出し」作業から実習した。午後は林業について学んだ。
講習を取り仕切る原田祐介さん(45)は「もちろん技術も教えるが、メインではない。いかにお金にするかだ。ビジネスに特化した狩猟学校は初めてではないか」と話す。狩猟に農業や林業を組み合わせ地域で生計を立てられる人材を育てるため、実技だけでなく座学にも時間を割く。
原田さんが代表を務める「猟師工房」は、埼玉県飯能市を拠点に狩猟や野生鳥獣の調査研究などを手掛ける。君津市にも解体処理場を置く縁で、市から学校の開校に際して声が掛かった。
同市の農作物被害は、16年度で4900万円を超え県内最多。捕獲者の高齢化、担い手不足で駆除が追い付かない。市内には全国的に珍しく獣肉処理施設が3カ所あるが、捕獲物の活用にも限界がある。
そこで市は、地方創生交付金を生かし同学校を立ち上げた。来年3月まで全12回を予定する。1、2回目の入門編は50人を募集。6月からの専門編では30人に絞り込む。過去2回の参加者から回収したアンケートなどを基に“本気度”を見定めて人選。プロレベルの解体法や野外活動の知識などを身に付けてもらう。
市外からの移住を含めた捕獲従事者をはじめ、多彩な狩猟ビジネスの担い手を育てる構想だ。市農政課鳥獣対策係の岡本忠大係長は「学校で学んだ人がジビエレストランを目指し、市内で取れる肉を使ってもらえれば、有効利用の一つになる」と期待。捕獲増に伴う販路拡大も見据える。
2018年05月28日
震度5強 きのこや水田被害 長野県栄村
震度5強の地震が襲った長野県栄村で一夜明けた26日、農業用施設や家屋の被害が発生している。2011年3月の長野県北部地震から復興した農家が再び被害に遭い、落胆する声が聞かれた。
気象庁によると、25日午後9時13分ごろ県北部を震源とするマグニチュード5・2の地震が発生し、同村で震度5強を観測した。
同村で米や菌床シイタケを生産する関澤和美さん(52)のきのこ栽培施設は、約4000個の菌床を載せた棚が損壊する被害に遭った。突き上げるような激しい地震の衝撃で2階にある培養室の栽培棚の支柱が折れ、棚板が落ち菌床がつぶれた。壊れた棚で培養室のドアが開かず、外側からはしごを使って培養室に入ったという。関澤さんは「7年前に多くの人の支援を受けてなんとか立ち直ったのにつらい」と涙を流す。
この他、水田の畦畔(けいはん)の亀裂や水漏れなどが発生。農業用水路も被害に遭い、応急処置で田植えに間に合わせている。家屋や公民館では、壁のひび割れやガラスが割れる被害が報告されている。
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インスタ映え 京の茶スイーツ 全農京都×女子大生
JA全農京都は、関西の女子大生と連携して、色彩豊かな茶のスイーツを開発した。大手百貨店の高島屋京都店(京都市)にある全農京都直営の飲食店「みのる食堂」で販売を始めた。JA京都やましろ産の茶をふんだんに使ったパフェやプリンなど7種を用意。インスタグラムといったインターネット交流サイト(SNS)に投稿したくなる“インスタ映え”にこだわり、若い女性に茶をアピールする。7月まで販売する予定だ。共同開発に関わったのは、関西の女子大生らでつくる団体「Team(チーム)KJ」。企業とコラボし、商品開発などに取り組んでいる。代表を務める関西大学3年の石角優奈さん(21)は「若い女性は飲食店を探すのにインスタグラムをよく使う。若い女性へのアピールにはインスタ映えが重要」と強調する。
みのる食堂で17日から開いている「お茶スイーツフェア」に合わせて販売。特に開発に力を入れたのが、「京のお茶パフェ」(1080円)だ。JA管内産の抹茶とほうじ茶のゼリーや生クリームを重ね、抹茶やほうじ茶、南丹市美山産の牛乳で作った3種類のジェラートなどを盛り付けた。府内産の米を使ったライスパフも入れた。
全農京都生産資材部の川勝昭紹部長は「若い人に京都産の茶を知ってもらう機会にしたい」と話す。
2018年05月26日
楽しく笑顔で 原木シイ住民が挑戦 高齢化進む鳥取県智頭町芦津地区
鳥取県智頭町芦津地区の住民が原木シイタケの栽培に挑戦し、収益を地域の維持費や福祉費用に役立てようと取り組んでいる。高齢化が進む中で、家にこもりがちな冬場に作業ができ、住民の健康と交流につながることに着目。農業の新たな担い手、地域活性化のモデルとして注目が集まる。(柳沼志帆)
冬場健康・交流に貢献
芦津地区の人口は210人。2人に1人が65歳以上の「限界集落」だ。周囲を森に囲まれた中山間地域で、2017年1月には1メートルを超える雪が降り積もり、車が立ち往生する事態も発生した。
「雪が降るとお年寄りは家から出てこない。じっとしているとふさぎ込み、健康にも良くない」と語るのは、栽培を提案した綾木章太郎さん(66)。「シイタケ栽培ならハウスの暖かい所で話しながら体を動かすことができ、小遣いにもなる」(綾木さん)ため、住民福祉と新しい産業に育てようと考えた。
収益一部は地域へ還元
地区のほぼ全戸が参加する認可地縁団体芦津区会で取り組むことを決定。1300ヘクタールの森林を管理し、木材を売った利益を地域に還元している智頭町大字芦津財産区が資金を捻出した。
17年に試験的に400本の原木を購入。県から3分の1、町から6分の1の補助を受けて、ハウス2棟を建てて栽培を始めた。試験栽培のため販売できる量は限られたが、出来は住民に好評だったという。手応えを得て18年はさらにハウスを3棟増やし、地域で伐採したミズナラなどを使い、原木を3000本に増やす。
住民は販売用に原木シイタケを栽培した経験がないため、研究や担い手育成などを行う日本きのこセンター(鳥取市)が開く講座を6人が受講。その他の住民も協力しながら植菌や収穫を行ってきた。現場責任者の寺谷謙二さん(62)は「温度や水分の調整などは難しいが、勉強して良いものを作れるように頑張りたい」と意欲を見せる。同区会会長の武田彰弘さん(64)は「面白おかしい、笑いが絶えない村にして、みんなが元気で長生きできるようにしたい」と強調する。
担い手確保モデル事例
取り組みを支援する智頭町と日本きのこセンターは、地域自律型循環維持モデル「智頭モデル」として名付け、他地域にも広めていく考え。既に、同県八頭町で同様の活動が始まっている。林野庁特用林産対策室の金子直樹課長補佐は「高齢化で林業、特用林産物に携わる人が減っている。モデルは担い手の裾野を広める取り組みで、今までシイタケ生産に携わったことのない方も取り組んでいただけるとありがたい」と評価。今後、他県へも情報提供し、周知していく考えだ。
2018年05月26日
牛乳 生産基盤弱体化 今夏猛暑なら… 品薄?
今夏、牛乳の品薄を心配する声が強まっている。中でも沖縄県では生乳生産量が過去30年間で最も少ない水準で推移する一方で、猛暑が予想されている。近年は乳量が減る夏場に乳業メーカーが商品出荷を制限しており、今年も不安が大きい。酪農経営が減った影響で、学校給食の牛乳を一時的に加工乳に変えるケースも出始めた。東北など都府県でも生乳生産量が減少傾向にあり、夏場の生乳逼迫(ひっぱく)を懸念する声も出ている。(塩崎恵、松本大輔)
離農、F1飼養増加響く 沖縄
農水省の牛乳乳製品統計によると、沖縄県の2017年の生乳生産量は2万4758トン。前年を4%下回り、直近のピーク時(2000年)と比べ4割少ない水準だ。
県酪農協は「高齢化などの影響で離農が進んでいる」と説明。乳用牛に黒毛和種の精液を付け肉用の交雑種(F1)を生産する酪農家が増えていることや、乳用牛が高騰していることも響いている。対策として既存農家の規模拡大などを後押しするが、「今年も夏場の不足が心配だ」という。
生乳不足の影響は、乳業や給食、小売りなど多方面に広がる。西原町の沖縄森永乳業は「夏場の生乳不足は年を追うごとに厳しさを増している」と説明。「需要があるのに商品出荷を制限せざるを得ない」と対応に苦慮する。例年、九州から生乳を移入して急場をしのいでいるが「九州でも生乳が不足している上、移入すれば輸送費がかさむ。夏場は台風が発生しやすく到着しないリスクもある」と頭を悩ます。
夏場に限らず牛乳の確保が難航する事態も生じ始めた。離島の宮古島市では今年、島内で唯一、酪農を営んでいた業者が廃業。そのあおりで、市内33の小・中学校が2月から給食の牛乳を加工乳に変更した。保護者らの要望を受け、4月には本島から運ぶことで牛乳の提供を再開したが、県全域で生乳が不足する中、継続できるか心配する向きもある。
生協のコープおきなわは16年、主力商品「コープおきなわ牛乳」の商品名を「コープ牛乳」に改めた。「将来的に県産の原料だけで製造できなくなる恐れがある」との不安が背景にあるという。
減産傾向に追い打ち 東北
東北でも高齢化などの影響で年々生乳の生産量が減少しており、猛暑による夏の生産量減少への懸念の声も出ている。
東北地方の2017年の生乳生産量は、55万8323トンで、ピーク時(93年)と比べ4割減っている。東北生乳販売農業協同組合連合会の17年度の生乳受託乳量は、52万6860トンで前年度比98・1%。同連が業務を開始した01年度と比べ3割減だ。出荷戸数は17年度末で2100戸で前年度比95・8%。01年度と比べると高齢化などで半減した。18年度の生乳受託乳量は17年度からさらに減り、98・8%を見込む。
今年は猛暑が予想され、同連は夏の生乳の逼迫に危機感を持つ。「東北でも5月で気温が30度を超える日があった。猛暑になると生産量に影響が出るため心配している」と気をもむ。
通常、東北地方に牛乳などの製品を出荷する雪印メグミルクの子会社、宮城県大崎市のみちのくミルクは、全国の需給状況によって、大消費地である関東へ出荷する役割を担っている。「東北も生乳生産量が厳しい状況には変わりなく、天候次第だが夏は影響を受ける可能性がある」と話す。
担い手確保 急務
農水省の3月の牛乳乳製品統計によると、2017年度の全国の生乳生産量は729万810トンと、1985年以降で最も少ない水準となっている。高齢農家の離農などを背景に、都府県を中心に飼養頭数が減っていることなどが影響した。
農業経営に詳しい中村学園大学(福岡市)の甲斐諭学長の話
酪農家の減少は沖縄県だけの問題ではなく、北海道を除く都府県の酪農地帯の生乳生産量は不足傾向にある。労働負担の軽減など、担い手確保に向けた対策が急務だ。
2018年05月25日
苗物出荷に交換台車 輸送効率化へ県域システム 鳥取県
鳥取県は花壇苗と野菜苗の出荷効率化を目指し、台車交換システムの仕組み作りに乗り出した。集出荷時に苗を載せた台車と空の台車を交換し、台車ごと苗を出荷することで手間を省く。県によると、県域で台車交換システムを導入するのは全国初の取り組み。
2018年05月24日
八百屋さん?レストラン? 新鮮野菜その場で料理 食の情報発信拠点に
野菜や果実を買うだけでなく、農産物を使った料理をその場で食べることができる“八百屋レストラン”が活況だ。人気シェフが店内で腕を振るったり、生産者と消費者との交流の場を設けたりと、農産物の魅力を直接伝える青果店ならではの方法で生産者を後押しする。青果店が年々減少する中で、おいしい料理や情報を提供して付加価値を向上させ、他業態との差別化や国産農産物のPRにつなげている。(齋藤花)
国産振興後押し 規格外活用も
東京都台東区に3月にオープンした「OKATTE(おかって)」は国産有機野菜などを販売する青果店だ。店の奥に併設したクッキングスペースでは青果物を使ったランチを提供する他、生産者やシェフを講師に招き、消費者向けの料理教室や食のイベントを開く。
初の企画「熊本野菜を食べる会」には、都内の20~50代の女性5人が参加。港区のイタリア料理店のシェフ、中村嘉倫さん(44)が調理するフダンソウのソテーなど、県産野菜を堪能した。フダンソウを栽培する熊本市の農家の西孝弘さん(55)も駆け付けた。
「どうやってこんなに大きくておいしい野菜を作るのですか」などの質問に、西さんは土壌改良など技術を明かし、「交流できてうれしい」と笑顔を見せた。
同店は、農産物のブランド化などを支援するジャパン・アグリ-カルチュア・マーケティング&マネジメント(JAMM)が運営する。齊藤幸男代表は「生産者、料理人、消費者など食に関わる人が集まって交流し、情報交換すれば農業振興になる」と語る。参加した東京都国立市の会社員、大貫恵子さん(59)は「食事をしながら生産者やシェフにレシピまで教えてもらえた」と喜び、帰り際に店頭のフダンソウを購入した。
併設レストランで地元農家の規格外野菜を有効利用する青果店もある。九州産青果物をインターネット販売する大分市の石川青果は、今年2月に同市長浜町に「八百屋レストラン洗濯船」をオープンした。13人収容の店でディナーを提供。店頭では昼間に日替わり弁当と野菜も販売する。
ディナーは毎日満席。約30種類の青果物を使う日替わり弁当は予約制で、多い日は約100食も出る。果実のデザートをレストランで食べた直後に、同じ生産者の贈答用果実を注文する消費者も多い。調理を手掛ける店主の横山田吾作さん(49)は「形は規格外でも味の良い果実はデザートに使える。農家あっての小売業だから、生産を後押ししたい」と意欲的だ。
付加価値高めて他業態と差別化
青果小売業を取り巻く環境は厳しい。流通形態の変化や野菜消費量の減少などを背景に、青果店の数は減少の一途をたどる。経済産業省の商業統計では、2004年には2万7709軒あった野菜・果実小売業が14年には1万5220軒に減っている。
青果店を含む優良経営食料品小売店の表彰事業を行う食品流通構造改善促進機構の穴見恵美担当の話
小売業の存続が難しい中、青果店のレストラン併設は、商品を調理・加工することで付加価値が出せ、情報を提供するという点で他の販売網との差別化が図れる。青果店は農産物のおいしい時期、食べ方の知識が豊富なのが強み。さらに質の高い飲食物を提供できれば店舗の価値が上がるし、国産青果物の効果的なPRにつながる。
2018年05月23日
田植え後の稲無残 2年連続大雨襲う 農家の落胆大きく 秋田市
18日から19日にかけて秋田県を襲った大雨は、田植え作業真っただ中の農家を直撃した。降り始めからの24時間雨量が156ミリと観測史上最高を記録した秋田市では河川が氾濫し、水田が冠水した。水が引いた田んぼには、石や木の枝が散乱し、泥が付着した苗の生育に心配の声が上がる。米依存脱却から県が推進するエダマメも冠水し、根腐れの懸念も出ている。同県では、昨年も夏の大雨で川が氾濫した。2年連続の被害に農家の落胆は大きい。(塩崎恵)
生育心配…代わりの苗もない
秋田市上新城地区では、18日午後1時40分に新城川が氾濫危険水位に達した。同地区では、一部の田んぼが冠水した。田植え直後だった水田では、苗の間に直径20センチほどの石や木の枝が散らばっていた。
同地区で水稲3ヘクタールを生産する渡辺豊美さん(76)も、田植え真っただ中で被害に遭い20日は、水が引いた田んぼから懸命に木の枝やビニールを取り除いた。育苗ハウスも浸水。苗が泥をかぶり、田植え前に水で泥を落とす作業に追われた。
渡辺さんは「昨年も夏に豪雨で水田が冠水し、収量が減った。今年こそはと臨んだが、また被害に遭い、気持ちが落ち込む」と、肩を落とす。
同市雄和地区では19日午前6時に雄物川が氾濫し、一部水田が冠水した。「田植えの時期の被害は経験がない。葉に泥が付着して、生育にどう影響するか分からない」と気をもむのは、水稲4ヘクタールを生産する同地区の60代の農家だ。農家は、15日に田植えしたばかりの2・2ヘクタールが冠水した。水が引いた田んぼの畦畔(けいはん)の草は泥で茶色くなり、20日も苗は水に漬かったままだった。
昨年の豪雨でも2度冠水し、収量は10アール当たりわずか2俵(1俵60キロ)。収穫した米は等外で収入はなかった。「苗がないので田植えをやり直すこともできない。今年も諦めるしかないのか」と、途方に暮れる。
秋田県が米依存からの脱却を目指し、年間出荷量日本一を目指すエダマメでも被害が出ている。
秋田市下新城地区で水田転作でエダマメ3ヘクタールを生産する30代の農家は、5月上旬に種まきした圃場(ほじょう)約1ヘクタールが、冠水した。保温シートの上には泥がたまり、エダマメも、土をかぶった。「根がやられているかも。ほぼ駄目だと思う。念のために病気対策で殺菌剤をまく」と、シートを剥がす作業に汗を流した。
東北地方の日本海側や北陸地方では18、19日にかけて、低気圧や前線の影響で記録的な大雨が降った。秋田市では18日午後10時までの24時間雨量が156ミリと、観測史上最高を記録した。
林地崩壊など 農林被害1億7600万円
秋田県は21日、18日からの大雨による農林関係の被害額が、21日午後3時現在で1億7600万円に上ると発表した。被害額が確定されていない部分が多く、被害額はさらに大きくなる見込みだ。
同県は秋田市や大館市などで林地の崩壊や林道の路肩の崩壊が見つかり、これらの被害額が1億7600万円となった。
秋田市など県内4017ヘクタールの圃場で冠水や浸水があった。また「水田畦畔の崩落など」が38カ所、「ため池の損壊など」が4カ所など、各地で農業被害が確認されており、今後も被害額は増える見通し。
2018年05月22日