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「銀行はもうすぐ終わる」という安易な未来予測が見落としていること

最後に残る「銀行の価値」とは

銀行という産業が大きな転換期を迎えている。今までの銀行業ではビジネスモデルとして立ちいかなくなっている。

筆者はメガバンクで企画部やホールディングカンパニーも含め計27年勤務してきたが、その現場の経験も生かして、今後の銀行業の可能性について考えてみたい。

 

銀行の苦境は外部環境のせい

銀行の経営環境は極めて厳しい。

銀行の収益や株価というものは、基本的にはその国の経済成長率(景気)に連動するものである。

経済の成長は“企業”が中心となり、個人部門へ給料の形で流れていき、個人消費となっていく。その企業の成長においては借入(銀行側からは貸出)が重要な役割を果たしている。すなわち経済成長率と銀行貸出というものは基本的には連動し、貸出によってさらに経済成長が促進されるという構造だ。

足許、日本の経済成長率は低い。少子高齢化によって長期的に景気が低迷している。

さらに、日本銀行は量的・質的金融緩和、しかも、長短金利操作付き量的・質的金融緩和を行っている。短期金利(無担保コールレート翌日物金利)をマイナス0.1%、そして長期金利(新発10年国債利回り)を0%に誘導しているのである。

ここまでの低金利は歴史的には無かった。そして、この低金利こそが銀行の収益率を著しく低下させたのである。

金融庁も2017年3月期の地銀の過半が本業(貸出と手数料ビジネス)で赤字と報告している。日本銀行の黒田総裁も、通常と逆で金利を下げれば下げるほど、金融機関の収益が下がる「リバーサルレート」と述べている。

この、そもそもの経済成長率の低下と超低金利という外部環境によって、銀行の収益は著しく悪化しており、産業として立ち行かなくなっているのである。