新潟市で小学生の女の子がさらわれ、殺害された挙句、遺体を線路内に遺棄されるという痛ましい事件が起こった。
殺害した遺体をバラバラにしたり、遺棄したりする事件は、その悪質さゆえに社会の耳目を集め、大きな怒りと不安を呼び起こす。まして、被害者がいたいけな子どもであればなおさらのことである。
今回の新潟の事件は、被害者を殺害した後、その遺体を列車に轢かせることで、証拠の隠滅を図ろうとするなど、その悪質さにおいては際立っている。
事件の概要が明らかになるにつれて、近隣住民を始め人々が驚愕したのは、この容疑者が、以前にも女子中学生を連れまわすという事件を起こしていたということである。
このような前歴があったことから、容疑者は早い段階から捜査リストに上がっており、それが逮捕につながったと報じられている。
子どもを標的とする憎むべき事件は後を絶たないが、この種の犯罪をどのように防止するか、社会はどのように対処すべきか。
これを真剣に議論することは、今後、同種犯罪を防止するためにもきわめて重要な課題である。
子どもを標的にする犯罪には、どの国も頭を悩ませている。そのため、さまざまな対策が講じられている。
今回の事件を受けて、海外で実施されているいくつかの対策を、わが国にも導入すべきであるという意見が発せられている。
たとえば、類似事件を起こした容疑者がいれば、それを早い段階で地域住民や小さい子どもを持つ保護者に周知すべきであるとの意見がある。
米国では、子どもを対象とした性犯罪を起こした者について、その氏名、住所、犯罪の内容などを登録し、顔写真付きでそれらの情報にインターネットでアクセスできるようになっている。
1994年に施行されたメーガン法という法律によって性犯罪者の登録が行われるようになり、次いで1996年のジェイコブ・ウェッターリング法によって登録された性犯罪者情報の公開が行われるようになった(法律の通称は、いずれも被害者の名前にちなんでいる)。2006年現在、全米で約56万人の性犯罪者が登録されている1。
また、GPSなどの方法を使って、このような犯罪者を常時監視すべきとの意見もある。より強硬な方法としては、一生涯拘禁すべきであるとか、薬物による「化学的去勢」をすべきとの意見もある。
これらの措置については、対象者の人権と社会の安全を天秤にかけ、どちらをより重視するかとの観点からの議論が必要であるが、なにより重要なことは、その対策には果たして効果があるのかという「科学的エビデンス」に基づいた議論である。