(英フィナンシャル・タイムズ紙 2018年5月26・27日付)
トルコ南部ハタイ県を訪問中、シリア東グータで政府軍の包囲下で空爆に遭い片目と母親を失った男児のカリム・アブドラちゃんを抱き上げるトルコのレジェプ・タイップ・エルドアン大統領(右、2018年4月1日撮影)。(c)AFP PHOTO / TURKISH PRESIDENTIAL PRESS SERVICE / KAYAN OZER〔AFPBB News〕
トルコのエコノミストらは、通貨リラは国に唯一残された本格的な野党だと冗談を言うことを好む。リラは確かに、恐るべき敵だ。
5月23日、通貨安を食い止める対策に何週間も抵抗した末に、レジェップ・タイイップ・エルドアン大統領は市場の力に屈し、中央銀行による利上げを容認することを余儀なくされた。リラ相場は年初来、対ドルで20%も下落していた。
ただし、このジョークは少々ミスリーディングだ。
トルコ国外では、エルドアン氏はストロングマン(強権的な指導者)や独裁者として描かれているが、国内ではまだ、強引な統治スタイルを正当化するために選挙で勝たなければならないからだ。
ここ数週間の大混乱は、6月24日に実施されるいちかばちかの議会選挙・大統領選挙に先駆けて起きた。
選挙で勝利すれば、エルドアン氏が向こう何年も権力の座にとどまる道が開け、近代トルコの建国の父、ムスタファ・ケマル・アタチュルク以来、最も重要な指導者になる夢が確実になるかもしれない。
これが、エルドアン氏がいつになく激しく利上げに抵抗した理由を説明する助けになる。
利上げはインフレを落ち着かせ、リラ相場を下支えするために必要だが、選挙をわずか数週間後に控えて住宅ローンの返済コストとクレジットカードの支払い額を膨らますことにもなるからだ。