東芝に自己株買い1.1兆円要求、増資は今や「過剰資本」-香港ファンド
伊藤小巻、Gareth Allan東芝株を保有する香港の投資ファンド、アーガイル・ストリート・マネジメント(ASM)は28日、車谷暢昭会長兼最高経営責任者(CEO)宛てに、6月27日の株主総会前に1兆1000億円の自己株式買い戻しの実施方針を示すよう書簡を送付した。
ブルームバーグが入手した書簡によると、2017年12月に行った6000億円増資は、東芝メモリ(TMC)売却が完了しないまま、18年3月末に債務超過に陥る事態に対処するためであり、売却が確定した現段階では必要のない「過剰資本」と主張。自己株買い戻し要求額の1兆1000億円は、東芝が試算するTMC売却後の正味現金額に基づいており、米原発子会社ウエスチングハウス(WH)問題が発生する前のレベルの堅固な現金残高と株主資本比率を維持できるとしている。
これと同時に東芝に時期尚早な合併買収(M&A)は回避するよう求めている。ASMは書簡で、経営陣は既存事業の再編にコミットすればよく、WHやIBMのPOS事業など、これまでの買収は株主価値の破壊をもたらしており、経営破たんの危機に直面させてきたと指摘。「将来のM&Aの機会に備えて現金を保有することは、信頼が回復するまで株主は歓迎しない」との見方を示した。
東芝は米原発事業で発生した巨額損失を受け、2年連続の債務超過で上場廃止となるのを避けるため、稼ぎ頭である東芝メモリの一部売却を決めた。6月1日に米ベインキャピタルを軸とする日米韓連合への譲渡が完了する予定で売却額は2兆円。今後5年間にわたる「東芝Nextプラン」の検討方針も発表しており、一部保有を続けるTMCを含めた半導体関連のほか、社会インフラ、エネルギーなどに分社化された4部門の成長戦略を練り直す。
ASMは、これまでにTMCの売却価格2兆円は著しく低く、第三者に評価作業を依頼した結果、3兆3000億円ー4兆4000億円が適正と主張しており、ベイン連合との再交渉を開始するため、契約を解除するよう求めていた。ASMは東芝株の保有株式数を公表していないが、自らの主張に追随する株主はいるとしている。