関東学連の会見での発言

記者会見で、関東学生アメリカンフットボール連盟の柿澤優二理事長は「5月6日に起きた、ルールを逸脱するという表現ではとてもおさめきれない卑劣なプレーによって、関西学院大の選手に大きなけがをさせてしまったこと、主催した関東学連として、また日大を持っている連盟としてまずおわびさせていただく。誠に申し訳ございませんでした」と述べ、最初に謝罪しました。

記者会見で、関東学生アメリカンフットボール連盟の規律委員会の委員長を務める森本啓司専務理事は、29日開いた臨時の理事会で、日大の内田正人前監督と井上奨前コーチについて最も重い「除名」処分にすることを決めたと発表しました。
事実上の永久追放に相当する「除名」処分は、関東学生連盟に加盟するチームの代表が集まる総会の承認を経て正式に決まります。
また、森琢コーチは「資格のはく奪」の処分にしたと発表しました。

また、反則行為を行った日大の選手とチームを、今年度のシーズンが終了する来年3月31日まで、「公式試合の一定期間出場資格の停止」処分にすることを決めたと発表しました。
そのうえで、選手とチームには処分を解除できる条件を設けていて、選手は反省文を連盟に提出したうえで、規律委員会との面談で再発の危険が払拭されたことが確認され、理事会で承認されることが条件となっています。
また、チームについては、今回の問題の原因究明を行って実効性のある再発防止策を策定して実施すること。
また、抜本的なチーム改革・組織改革を行ったうえで、チーム改善報告書として理事会に提出し、十分な改善がなされたことが検証委員会で確認されたうえで理事会で承認されることを条件となっています。

森本啓司専務理事は、関係者およそ20人に聴取を実施したうえで、日大アメリカンフットボール部の状況について、「内田前監督が就任してからチームの雰囲気ががらりと変わった。『白いものも内田さんが黒といえば黒なんだ』というコーチもいた。大学の人事担当でもある内田さんの言うことは絶対だった」と説明しました。
森本啓司専務理事は「内田前監督は活躍しそうな選手を精神的に追い込む指導を行っていた。全員の前で名指しして、『結果を出さなければ干すぞ』と圧力をかけ、ひたすら厳しい条件を課した。選手の間では『はまる』と表現され、当該選手も『はまった』と言える。『はまった』選手の精神的重圧は相当なものであった。当該選手が全員の前で名指しで叱責されることもあった。顔つきが変わったと指摘されたこともあった。監督の意にそっている井上前コーチにこのことを言えることはなかった」と指摘しました。

反則行為のあった今月6日の試合当日の試合前のやりとりについて、「選手はポジション練習の時、監督に直接、『相手クオーターバックをつぶすので試合に出してください』と言ったところ、監督が『やらなきゃ意味ないよ』と伝えた。
さらに選手は井上コーチに「『クオーターバックに1プレー目からリードしないで突っ込みますけど、いいんですね』と確認したところ、『それでいけ。思い切り行ってこい』と言われ、『できませんじゃ済まされないからな』と耳打ちされた」と説明しました。

試合に至るまでの経緯として「5月3日の練習の時に当該選手はやる気がないとして練習から外された。翌日には内田前監督から日本代表を辞退しろといわれ、当該選手は理由もわからずに内心、不満に思っていても監督のいうことは絶対で、不満を口にできなかった。その後、井上前コーチからは『監督から相手のクオーターバックをつぶすなら試合に出していいと言われた。相手と知り合いじゃないならけがして秋に出られなければ得だろ』と指示され、当該選手はけがをさせる意図と受け取った」と指摘しました。

クオーターバックをつぶせいう指示をめぐる日大の選手と前監督、前コーチの間の認識のかい離について、「アメリカンフットボールで思い切りぶつかるのは当然で、それを3年生のレギュラー格にわざわざ指示したのは不自然だ。思い切りいけと指示するだけなら『相手と友達か』と確認する必要がない。こう考えると、『つぶせ』は、友達にはできないようなことをしてこい、けがをさせろ、というニュアンスの指示であったのであり、認識のかい離などそこには存在しないと断定する」と説明しました。

日大の内田前監督が会見で「ボールを追っていて見ていなかった」と話した最初の重大な反則行為について、「内田前監督と井上前コーチはボールの方向ではなく、反則の様子をサイドラインからしっかり見ていたことが映像から確認できる。また反則のあと、日大側は不自然なほど淡々としていた。当該選手に対して声をかけるようすも見受けられなかった」と指摘しました。

日大の内田前監督が反則行為の指示を否定していることについて、「一連の会話について、内田前監督や井上前コーチより、当該選手の説明の方が具体的で合理的だ。どちらを信頼すべきかは明らかで、内田前監督の『やらなきゃ意味ないよ』ということばは立派な指示だ。内田前監督が自身の関与について話していることはおよそすべてに信ぴょう性がないと考えている」と指摘しました。

井上前コーチを最も重い除名の処分に決めた理由について、「反則行為をした選手に日々、コーチとして携わっていた。選手を追い込んでいたのは、井上前コーチに大きな原因がある。選手と一緒に高校のアメリカンフットボール部から大学に移ったにもかかわらず、態度が急変し、内田前監督の指示に従うようになった。そういう意味では責任は重大だ」と説明しました。
また今回の処分の決議について、「20人の理事のうち16人が賛成、4人が反対だった」と明かしました。

関東学生アメリカンフットボール連盟の柿澤優二理事長は、今回の問題が日本のアメリカンフットボール界に及ぼした影響について、「連盟や所属する大学に、『大学でフットボールをやろうと思っていたが、やめる』などというクレームがあり、夢を消し去ってしまったところもある。フェアプレーの精神とルールの順守で、非常に楽しいスポーツになるということを今後、アピールする必要がある。フットボール経験者として今回のプレーはフットボールのタックルではない。経験者なら誰もが認める」と話しました。

森本啓司専務理事は、反則行為を行った日大の選手の処分について、「反則行為をやったのは彼本人であり、どんな圧力があっても許されることではない。ただ、彼は名前を出し、顔を出し、謝罪会見を開き、若いながらに社会的な制裁を受けたのではないかと思う。また再起のチャンスを与えないことは、教育をモットーとする連盟としてはありえないのではないかと判断した」と説明しました。

柿澤優二理事長は調査について、「およそ20人の関係者から話を聞いた。早く解決したい気持ちはあったが、本人たちがやったとか、やっていないという話をしている中で、予想や推測では結論を出すことはできない。時間がかかって申し訳ないと思っているが、必要な時間だったと思っている。断片的に見たとか、聞いたとかいう方々からの話が当該選手の会見での説明とほぼ一致した」と話しました。

関東学生アメリカンフットボール連盟の寺田昌弘監事は記者会見で、内田前監督を最も重い除名の処分に決めたことについて、「悪質なタックル行為は指示があってやったものだと認定した。選手本人は『やらない選択肢がなかった』と話していて、そういう状況に追い込み、かつ、相手選手をけがをさせるような指示をしたことは、許されない。指導者失格と判断した。また、私たちの調査にも事実を正直に語っていないという印象だった」と説明しました。

記者会見の最後に、関東学生アメリカンフットボール連盟の柿澤優二理事長は「このようなプレーが2度と起きないように指導者に対してフェアプレーやルールの順守を徹底し、アメリカンフットボールがルールに守られた真剣勝負のスポーツだと宣言できる状態にもっていくことが、我々の責任だと思っている。危険なスポーツであるという誤解が解けるようにあらゆる場面で啓発活動に専念していきたい」と話しました。