満足度:80点
【ネタバレ危険】 表面と裏面 複雑な男心と女心を描く・・
(視聴されていない方はスクロールされぬようご注意ください)
【目次】
Prologue プロローグ
Chapter1 簡単なストーリのあらすじ
Chapter2 ストーリの全貌(時系列)
Chapter3 "ミスリード" を仕掛けるトリックムービー
Chapter4 錯覚させているのは・・(時系列のトリック)だけではない
Chapter5 説① 辰也は「DV男」だった説
Chapter6 説② むしろ繭子のほうが「出産を拒絶していた」説
Chapter7 説③ 繭子・・メンヘラ説
Chapter8 "みえみえ" な繭子の行動という・・メタファー
Chapter9 これは、繭子と辰也 "2人の闇物語"
Chapter10 ラスト、裏面:辰也の "表情" に注目
Chapter11 最後に・・
・・Prologue・・
ミリオンセラーの恋愛小説が映画化され
原作はくりぃむしちゅーの有田哲平が「最高傑作のミステリー」と評し
多くの芸能人からも人気を博し話題になっていたようです
ラブロマンスだというのに
なぜか
「謎解きミステリー」という
"異色の作品" なにより、
前田敦子 と
松田翔太
この2人の存在感が魅力の作品だと思います
前田敦子さんの
"終始思わぶせりな表情" といい
生真面目でありながら
"残念な男" という
複雑な役を松田翔太さんもうまく熱演されていると思いました
感想を箇条書きにするとこんな感じ
・確かに、最後の
"ドンデン返しは意外" だった
・オチは
"まったく" 予想できなかった
・前田敦子の
"ハマり役" が意外にも群を抜いていた
興味深いことに、
物語自体の
「カラクリ」は劇中のラストで
その "すべてがネタバレ" されています
というわけで、
考察のポイントはこの3つ です
・なぜ?
子供を中絶したのか・・
・物語真相は・・
辰也と繭子「2人の心の闇」・(繭子ではなく・・)
辰也ラストの "表情" に注目※尚、原作を読んでおらず、
解釈に相違がありましたらすみません。。
Chapter1
簡単なストーリーのあらすじ
舞台は、バブル真っ只中の1980年代の静岡
<A面:鈴木夕樹> 【Side-A】1987年 7月10日~
富士通 に内定していた大学生の
鈴木夕樹 は合コンで
成岡繭子 と出会う
その際、繭子の左手の薬指には
「ルビーの指輪」(当時の大ヒット曲が「ルビーの指輪」)
合コンの最中に、繭子は
『ルビーの指輪は自分で買った』(と嘘をつく)
ここからラブストーリーが始まる・・ようにはみえますが
(既に・・ Side-Bの、辰也との恋愛は始まっています)奥手であった辰也だったが、繭子との初めての恋愛は順調に進み
二人は結ばれる
1987年12月24日
辰也と繭子はクリスマスプレゼントを交換し合い
辰也はこの上ない幸せと共にホテルの前ではしゃぎながら
マイケルジョーダンのスニーカーを履いて走り出すのであった・・・
<B面:鈴木辰也> 【Side-B】1987年 6月19日~
マイケルジョーダンのスニーカーのジョギングから、B面が始まる・・
(時系列は、こちらのSide-Bのほうが先に進行しています)
遠距離恋愛で「B面」に突入・・かと思いきや
Side-A ⇒ Side-B に継続していている(ように観客をミスリードさせています)
大手企業 を蹴り静岡に就職していた
鈴木辰也 は
1987年6月19日(B面スタート)のこの日、本社の異動通達を受ける
(辰也と繭子は、このB面スタート時点で一年ほど交際しています)
東京に異動した辰也は、同僚の石丸美弥子と出会い
二股交際 が始まる
繭子に
『美弥子』と呼んでしまい二股が発覚、 繭子と辰也は破局
1987年12月24日
辰也は、
繭子がいまだ自分を待ち続けているのではないか、と心配になり
キャンセルした静岡のホテルへと向かう
そこには・・ 無邪気に微笑む繭子と
『タッ君』と呼ばれる(Side-A)の見知らぬ男の姿があった・・・
Chapter2
ストーリの全貌 (時系列)
【Side-0】 本編以外の話 (ラストのネタバレで明かされる内容)
【Side-A】 本編 (夕樹との恋愛編)
【Side-B】 本編 (辰也との恋愛編)
【Side-0】1986年 4月25日
辰也と繭子 合コンで出会う
【Side-0】1986年 8月 2日
辰也と繭子海に行く『タッ君と呼んでいいですか?』
【Side-0】1986年11月14日 辰也は繭子に「アインシュタインの世界」の本を渡す
【Side-0】1987年 2月 4日
繭子、辰也にエアジョーダンをプレゼント『誕生石はルビーだよ』
【Side-0】1987年 4月 1日 辰也、静岡に就職
【Side-B】1987年 6月19日 辰也はエアジョーダンを履いてジョギング
(ここからSide-Bが始まる)
【Side-B】1987年 7月 1日 東京へ異動(引越し)海藤
『これ高校時代のスーさん、スマートだねえ』
【Side-B】1987年 7月 2日 繭子誕生日 辰也、ルビーの指輪をプレゼント
『覚えていてくれたんだ』【Side-B】1987年 7月 6日 辰也の本社の部署勤務開始 美弥子と出会う
【Side-B】1987年 7月10日 辰也、本社の部署で歓迎会
【Side-A】1987年 7月10日
夕樹と繭子 合コンで出会う (ここからSide-Aが始まる)
【Side-B】1987年 7月11日 辰也、繭子のワンピースを買う Side-A和美が辰也に
『イカすにゃ~』
【Side-B】1987年 7月13日 辰也は繭子と7月18日に海に行く約束をする
【Side-B】1987年 7月14日 辰也、美弥子の大学の後輩と飲み会 演劇を見に行く約束をする
【Side-B】1987年 7月16日 演劇の約束を優先し、繭との海をキャンセルする
【Side-B】1987年 7月18日 演劇「アインシュタインかく語りき」を見に行く
【Side-A】1987年 8月 2日 繭子と夕樹 合コンメンバーで海に行く 繭子は夕樹に電話番号を教える
【Side-B】1987年 8月 8日 辰也
『あれ?お前焼けてない?』 繭子は友達と海に行ったという
【Side-B】1987年 8月 9日
妊娠の可能性を辰也に告白 車内でコーラをこぼす
【Side-A】1987年 8月 9日
夕樹が繭子に初めての電話 スカートのコーラを拭きながら話す
【Side-B】1987年 8月10日 辰也が同僚の美弥子に告白される
【Side-A】1987年 8月14日
夕樹と繭子、初デート 『タッく』・・(夕樹→タッくん 二股発覚防止)
【Side-A】 ? 夕樹のバイクJOGと辰也の赤い車スターレットがすれ違う
【Side-0】1987年 8月16日 夕樹のバイクJOGと辰也の赤い車スターレットがすれ違う【Side-A】1987年 8月21日 夕樹は繭子に本4冊を渡す
【Side-B】1987年 8月23日 病院で妊娠3ヶ月と判明
『こんな高い本買いやがって』と本を投げる
【Side-A】1987年 8月26日 繭子が夕樹に電話 お腹をさすりながらデートキャンセル
【Side-B】1987年 8月30日 子供を中絶(1日入院後)退院
【Side-A】1987年 9月 4日 繭子は夕樹に
『便秘だったんだ』と言って、ピザを食べる
『一泊入院してやっとよくなったんだから』と嘘をつく
【Side-B】1987年 9月 4日
辰也と美弥子 初H ラブホに行く 美弥子との二股交際が始まる
【Side-A】1987年 9月15日
繭子と夕樹 初H アインシュタインの辰也の本が本棚にある
【Side-B】1987年10月31日 辰也
『おい美弥子』で二股発覚
辰也と繭子、破局
【Side-B】1987年11月 4日 繭子からルビーの指輪が宅配で返送されるてくる
【Side-B】1987年11月 5日 イブのホテル予約を思い出す 辰也
『キャンセルしないと・・』
【Side-0】1987年11月14日 辰也、ホテルをキャンセル
【Side-A】1987年11月14日 夕樹、クリスマスのホテルを予約
【Side-B】1987年12月18日 辰也は間違って繭子に電話をかけてしまう 繭子
『もしもしタッ君?』
【Side-0】1987年12月18日 繭子は夕樹に電話する
『もしもしタッ君?今電話した?』
【Side-A】1987年12月24日
繭子、夕樹にエアジョーダンをプレゼントする
夕樹
『来年の誕生日に僕が指輪をプレゼントしてあげるよ』
夕樹
『繭ちゃんのために痩せるよ』と走りだす
映像はSide-Bへ⇒
【Side-B】1987年12月24日 辰也は美弥子の家に訪問するが、繭子が気になりホテルに向かう
その先には Side-Aの夕樹 が居た・・・
< 補足(撮影エピソード)>
・イルミネーションは電球で再現したもの(現在のイルミネーションはLED製のため)
・ルビーの指輪を購入した「ジュエリーTSUTSUMI」は堤監督のTSUTSUMI
・堤監督は松田翔太に別れた後の車のシーンで
「殺人犯のような顔をしてくれ」と注文している
Chapter3
"ミスリード" を仕掛けるトリックムービー
この作品は
"時系列のトリック" をうまく利用したシナリオに
観客は度肝を抜かれてしまう・・ といった仕様なのですが
Side-A(A面) ⇒ Side-B(B面) に移行する際
(鈴木夕樹)が痩せて ⇒ (鈴木辰也)に変身する
(このような流れにみせかけて観客を
"ミスリード" させています)
タッくんが 同じ人 だったと思いきや
実は
(別人だったー) という大どんでん返しで幕を閉じます
【ミスリードの大きなポイントは2つ】
・勇樹と辰也を
同一人物 と誤解させること
・
A面:勇樹編を 87年 B面:辰也編を 88年 と誤解させること
【ミスリードさせる主なアイテムは3つ】
・ルビーの指輪
・エアジョーダンの靴
・ハートのネックレス
(その他のトリックアイテム)
マグカップ・・ (A面のタッくんが割ってしまったのに、B面では割れてない)
アインシュタインの本・・ (A面繭子がアインシュタインの本を持っている)
タッくんの車 ・・ (A面とB面で車種が違う)
ワンピース・・ (B面タッくんが買ってくれたワンピース、どこかでみたような・・)
アインシュタインかく語りきのチラシ・・ (開催日の曜日は87年)
・・など
【ミスリードさせる台詞】
も随所に散りばめられています 台詞は以下 青地部分 参考
【ミスリードしてしまう主なポイント】・1987年 7月 2日(B面のはじめ)
繭子の誕生日 辰也は
(ルビーの指輪)をプレゼントする
繭子
『あの話(誕生石はルビーだよ)覚えていてくれたんだ』
(この言葉で
勇樹⇒辰也 に繋がっているかのように錯覚させる)
・1987年12月24日(A面のおわり)
繭子はルビーの指輪を失くしてしまったと
(嘘をつく)
勇樹『じゃあ、来年の誕生日に僕が指輪をプレゼントしてあげるよ』
繭子
(エアジョーダンのスニーカー)をプレゼントする
(スニーカーと指輪で
Side-A⇒Side-B に繋がっているかのように錯覚させる)
・1987年12月24日(A面のおわり)
夕樹は
(ハートのネックレス)をプレゼントすると・・
繭子
『これって中につけるタイプだよね ずうっと肌身離さずつけておくね』
(B面では
ずっと洋服の中に していると錯覚させる)
「タッ君」こと
夕樹 は・・
理学部 数学科 である
夕樹
『断面積は1/4になるからいつもの4倍の煙吸ってるってことになるんじゃない』 繭子
『すっごい、さすが数学科』 「タッ君」こと
辰也 は・・
理学部 物理学科 である
辰也は繭子に「アインシュタインの世界」の本を渡す
辰也の同僚海藤
『スーさん物理学専攻だったでしょ』この作品は
伏線が多く、観客を錯覚させるトリック が随所にみられるものの
海外の大どんでん返しムービーののトリックに比べてしまうと
それほど複雑ではではない印象です
なぜならストーリーが 「完結してしまう」 から
だからこそ、あのラスト、
・映画の最後にはなんと、およそ5分間の
ネタバレ解説編 が挿入され
・
エンドロールでは80年代の
バブル回想 といった
どことなくコミカルな展開で幕を閉じます
そもそも、ラスト5分の
"解説編" で
トリックそのものがネタバレされてしまっているわけですから
一見複雑にみえるシナリオの謎解きが
ラストの5分間でコンパクトに解説されてしまうという
面白い仕様になっています
Chapter4
錯覚させているのは(時系列のトリック)だけではない
ミスリード(=錯覚)は
(時系列のトリック) からくるもの
"だけ" ではなく
「人物描写」や「映像」にもそのメタファーが隠されています
劇中には
(あれっ・・) と思えるような不可解なシーンが
随所にでてくるのも見所だと思います
ここからは
3つの仮説 から物語の謎解きを試みたいと思います
説① 辰也は「DV男」だった説
説② むしろ繭子のほうが「出産を拒絶していた」説
説③ 繭子・・「メンヘラ」説
この物語は
ラブロマンス&ミステリーなのですが
男と女のバイオレンス劇場なのか・・ と思わせるほどに
その
"裏面" その真相は
繭子と辰也の
「心の闇」 として複雑に描かれています
Chapter5
説① 辰也は「DV男」だった説
成岡繭子は、A面夕樹、を誘う際にこのように言っています
『私~ 女の人を器用に扱える人って
今まで一体何人の女をを泣かせてきたのか って思っちゃうんです
だから~ 真面目で不器用だけど嘘なんてつけないような人 がいいな
って前から思ってて』
「嘘なんてつけないような人がいいな」といいながら
繭子こそ劇中でずっと嘘をついている という
皮肉な話・・なのではありますが・・
ただ、よくよく考えてみてほしいのですが
逆説的に繭子の心理を想像すれば
・どんなにイケてる男でも
"やな男にだけは" 泣かされたくない・・
・それこそが
(辰也である・・)という思いがあった
このことを
暗示 しているようにもみえなくもありません
【Side-B】のスタートは 1987年 6月19日
B面の辰也を「タッ君」と呼び始めるのは
「前年」の
1986年 8月 2日 です
破局した
1987年10月31日 の辰也の台詞
『1年半も続いた 恋愛のあっけなく最悪な幕切れだった』
つまり、
B面のスタート時点で
辰也と繭子2人の交際はおよそ
1年ほど 経過していた ことになります
劇中には
辰也がブチ切れるシーンが2回 出てくる
① 『こんな高い本買いやがって』 と本や文房具を投げつける時
② 『お前は(東京に)一度も来ねえじゃねえかよ』
と部屋の家具などを蹴り上げたりしている時
まるで殴りかかるような勢いでブチ切れ
『俺が悪いって言うのかよ』 と繭子の胸ぐらをつかみます
繭子に
『暴力しないで』『殴らないで』と言われてしまう
一方、
A面の夕樹 が繭子に本を渡す際の台詞
『やっぱり(4冊)いっぺんには重いよね』
"本の重ささえも" 気にするシーンが出てくる
けれども、その重い本数冊を
B面の辰也 はおもいっきり投げてしまうのだ
ここでも
タッくん2人の対比 が浮き彫りになるのですが
・当たり所が悪かったらお腹の子にも影響があるかもしれず・・
・勢いあまって繭子に向かって文房具も飛んでいってしまうという始末
(繭子は目の上を怪我する)
ここで辰也の
"DV癖" が露呈されているようにも見えなくありません
ちなみに、辰也に
"暴力癖" があるのではないか、というメタファーは
同僚の海藤を寮で突き飛ばしてしまい
怪我をさせてしまうシーンにもみうけられます
おそらく辰也と繭子、この2人の言動と行動から推測するに、
B面に突入する前の辰也と繭子交際期間
およそ1年 のあいだ
辰也は、些細なことで度々キレていた可能性もあり
どこかで殴りかかろうした(もしくは殴られた)といった可能性も否めず
だから、辰也と繭子が別れるシーンで
繭子は
『殴らないで・・』とつぶやいたのかもしれず・・
つまり、
繭子はそんな
"イケてるけど、やな男" の素性に
心の底では正直、うんざりしていたのかもしれないのです
だから、男を切り替えようと思った・・
まさにこれは美弥子の語った
『イニシエーションラブ=恋愛通貨儀礼』DV男との最悪な恋愛の結末は・・
(繭子における恋愛通過点だったー)というオチで結末を迎えるのです
ちなみにブチ切れた際の映像はこちら
投げられた文房具は・・なんと
"ハサミ" のようです


ココ↑ ハサミです
ハサミの "刃先" が繭子の目を目掛けてぶっ飛んでいくという・・
なにげにこの物語の
「裏面」はバイオレンスに展開しているようです
(((( ;゚Д゚))))ガクガクブルブル
おそらくこの描写で
"DVメタファー" はほぼ確定なんじゃないのかなと・・
右目の上を怪我していますが
ハサミの傷・・ だったということになりますね
Chapter6
説② むしろ繭子のほうが「出産を拒絶していた」説
この物語は一見すると
(辰也のほうから「堕ろそう」と施した)かのような文脈にみえますが
特筆したいのは、
1987年 8月 9日
繭子は妊娠したかもしれないことを辰也に告白するシーン
辰也
『もし子供出来てたら・・するか結婚』
繭子
『・・・・』
辰也
『・・嫌なのかよ!』
繭子
『だって、妊娠したからって結婚するって、なんか・・』
辰也
『そんなこと言ったってさあ、じゃあどうすんの?他になにができんの?!』
動揺した辰也は繭子の缶コーラに触れてしまい、車内でコーラをこぼしてしまう
辰也は、この時点である意味
プロポーズ しているともいえるわけですが
子供を身ごもったと聞き、強く動揺はしているものの
辰也はというと「少し時間をくれ・・」などと迷うことなく
およそ即答で
『するか結婚』と回答している
けれども、繭子からは "前向きな" 回答は得られない・・
辰也
『じゃあどうすんの? 他になにができんの?!』
この言葉から推測するに
辰也は
この時点で "子供を堕ろす" などという発想すらなかった ともとれます
一方、
繭子
『だって、妊娠したからって結婚するって、なんか・・』
なんだか回りくどい言い方ではありますが
要は
(できれば私・・あなたの子供、生みたくないわ・・)の
遠まわしな暗喩のようにもみえます
病院で検査し、妊娠したことを告げられた時の繭子の反応は
辰也からは
「するか結婚」と告げられていたにも関わらず
結婚など眼中になく、かなり落ち込んだ様相・・

ゲッソリとした表情から察するに
"悲壮感漂う" いわば撃沈状態ですね
辰也が繭子と別れる際の最後の言葉
1987年10月31日
『2ヶ月前あの日、終わってたんだよ、俺たち』
↑ここでいう
「2ヶ月前のあの日」 というのは
1987年 8月30日 病院で子供を中絶した日 のことであり
1987年 8月 9日 妊娠の可能性を告げられ
辰也は
『するか結婚』といわばプロポーズするものの
ある意味
(断られてしまう)
それを畳み掛けるような、
子供の中絶・・端的に言ってしまえば
むしろ、繭子のほうが出産を拒絶していたと想定しても、決して過言ではないようにもみえます
1987年 8月23日・病院で
妊娠3ヶ月 と判明
・帰宅すると、辰也
『こんな高い本買いやがって』と本を投げつける
・その夜、辰也
『逃げてごめん、もう逃げないから、決めた・・・・堕ろそう』
一連の流れから推測するに、
辰也が
「もう逃げないから」と添えて
「堕ろそう」と
決断に至るまでの間に、繭子とのなにかしらの対話もあったはずである
辰也が、果たして何から
「逃げていた」 かといえば
繭子の
(中絶したい)とほのめかす思い によるものだったのではないだろうか?
むしろ辰也のほうこそが
最後の最後まで、子供を中絶することを、ためらっていたのではないか
中絶のタイムリミットは21週といわれているらしいが
一般的には、倫理性と母体に負担がかからない
「初期中絶手術」と呼ばれる
妊娠12週まで がよいといわれているようです
つまり、医師からすすめられるリミットは
およそ3ヶ月
2人は、リミットぎりぎりの段階で決断に迫られていたことになる
拓也はそのぎりぎりで
『逃げてごめん、決めた・・・・堕ろそう』
と苦渋の決断をしたのではないだろうか・・
Chapter7
説③ 繭子・・メンヘラ説
そこで、不可解になってくるのが、繭子の一連の行動である
1987年 2月 4日
繭子
『私~男の人にプレゼントってしたことないから・・』
と言いながら
辰也に エアジョーダンをプレゼントする
1987年12月24日
繭子
『私~男の人にプレゼントってしたことないから・・』
と言いながら
夕樹に エアジョーダンをプレゼントする
繭子のこのような言動をはじめとする
数々の
"虚言めいた行動" が目に付くわけですが
行き着けのレストランは
辰也、夕樹との双方のデートで使用していたりするし
辰也に買ってもらったワンピースを、夕樹のデートで着ていたりもします
1987年 7月11日 デパートでワンピースを辰也に買ってもらう
1987年 8月14日 勇樹との初デート・・
『私~女の人を器用に扱える人って
今まで一体何人の女をを泣かせてきたのかって思っちゃうんです。。』
この繭子の言葉の真意は分からないが
繭子がいうところの
「女を器用に扱えて、泣かせてきた男」この「女を泣かせる人物」というのは、
・以前に付き合っていた
"やな男" だったのかもしれないし
・
"DV癖の疑いのある辰也" のことだったのかもしれない
だとすると
・繭子は
DV男(辰也)によってメンヘラ状態だった のかもしれず
・
(女を泣かせる男) によって負のスパイラルに陥ると悟った繭子は・・
・
優しい男「夕樹」に接近した つまり、繭子は辰也と付き合い、しばらく経ったあたりから
①辰也のDV癖に内心ウンザリしていた(実はイタい思いをしていた)
↓
②メンヘラ浮気女子に変身
↓
③夕樹に乗り換えようと行動を開始
こんな流れだってありえるのではないだろうか・・
しかも子供を宿し中絶するのと同時進行で
ケロッ・・ とした表情で夕樹を誘い交際しはじめるわけですから
その見た目とは裏腹に、繭子は重く暗い影を背負っている印象です
繭子はとある男の
"暴力めいた" 行動によって
虚勢を張る
"強かな女" にならざるを得なかった・・
とも想定できるのかもしれません
この因果関係がみえてくると
たとえば、
一方で辰也と交際が進んでいる同僚の
石丸美弥子(お嬢様)この2人の関係もまた
・避妊しないでセックス → またもや
妊娠
・交際途中で男に
DV癖 があることが発覚
・結婚を親に反対される・・
さらに又をかける最悪な結末だって考えられなくもないのだ
たった
本4冊 でブチ切れる男が
"裕福なお嬢様" との交際を、果たして順調に進められるか否かは
甚だ、疑問の残るところでもある・・
そして、気になるのは、
冒頭からいかにもみえみえな繭子の行動 である
繭子がメンヘラ系悪女にならざるをえなかったのには
彼女なりの
"要因" があったのかもしれない・・
Chapter8
"みえみえ" な繭子の行動という・・メタファー
というわけで、この物語は、冒頭から
(なんだかやけにおかしい・・ぞ!)
この違和感ははんぱなかったりするわけですが
時系列のトリック で巧みに構成されているものの
自分は
「同一人物が痩せた」ようには思えなかったところもあって・・
観賞中ずっと右往左往させられてしまいました
だって、A面タッくんがB面タッくんに変身するとは到底思えませんから(笑)
この不可解なメロドラマのイントロは
随所に垣間見える
"みえみえ" な繭子の行動 から始まります
冒頭からまるで
「ファンタジーかよw」 とツッコみたくなるのような
やけに違和感ただよう幕開けなのです
たとえば・・
繭子の周りに絡まる
お花ふわふわ~ のエフェクトといい

とってつけたような
富士山の傘雲 (CG加工ですね)
デート中の夕暮れ公園もなんだか・・
やけにカップルが多すぎないかw
なによりも・・
繭子のこの
"いかにも" な誘い方のオンパレード
(A面からなんだかやけにベタで、出来ずぎているわけですが)
これら不可解なシーンの数々は
あえて作者(監督)によって提示された
"伏線" のようにも思われ
なかなかよく出来た
映像メタファー のようにも感じられます
個人的には、繭子が夕樹に惚れているようにはなかなか思えず・・
(何か裏があるに違いない
別の目的(策略) があるのではないか・・)
と感じてしまったほど・・
あまりに出来すぎた描写は
"いかにも" といった感じですから
冒頭のわざとらしさは、どことなく「空想劇」のようでもあり
・B面に切り替わった段階で、この男2人はもしや双子なのか?
・話が進むにつれて、いやいやこの女のほうが双子なのか?
・もしやこれは・・ 「復讐劇」 なのか?!
なーんてサイコパスな結末を想像してしまったほどです^^;
「巧妙なシナリオ」が話題になっていただけに
思わず過激なシナリオを想像したりもしてしまいましたが
想像していたよりかはマイルドな印象で
・どことなく
漫画的なコミックス風味 でもあり
・むしろ
ライトテイストなエンドロール (エンドロールは笑いをも誘うようなオチで終結を迎えます)
とはいえ、この物語は
"ショッキングなシーン" もあります
「子供を堕ろす」という鈴木辰也が下した(かのような)
あまりにあっけなく残酷で、重く切ない決断・・
けれども、注目すべきは
(なぜ、どのように、2人は子供を中絶する決断に至ったのか)
この詳細が、劇中では明確に描かれていないことである
この2人が
"容易に" 中絶を決断したか、
といえばそうではなかっただろうし
2人の間にはそれなりの重い葛藤があったはずだ・・
この作品が興味深いのは
2人の複雑な心理を紐解く鍵が
劇中の様々な場所に
(メタファーとして)散りばめられていて
繭子と辰也の
裏側(裏面) に潜む心理を
あえてくっきりと描いていないところにあると思います
まさにこの物語は、
二股をかけ、かけられた
とある男と女の
"心の闇" を垣間見るような作品
ともいえるのかもしれません
Chapter9
これは、繭子と辰也 "2人の闇物語"
まず、違和感を覚えるのは
鈴木辰也 という人物像です
・
生真面目キャラであるにも関わらず
・妙に変なポイントで、
キレてしまう男
・なぜか
DV癖 を持っていたというオチ
そんな松田翔太演じるバイオレンスなシーンが見所だったりもするのですが
ブチ切れるその理由が
たった本4冊・・ というかなり残念なお知らせ
『俺がお前と会う度にどんだけ切り詰めてるかわかってるのか?
こんな高い本買いやがって』
キレ方が尋常ではなく
飛んできたハサミの当たり所が悪ければ
"失明" してしまうかのような勢い
繭子からは
『殴らないで・・』と言われてしまう
・・つまりはこの男子の設定は・・
表面: 生真面目男子
裏面: DV男(の暗喩)
いっぽう、もう一人の人物
成岡繭子 ・A面では、鈴木夕樹に
不可解に接近 していきます
・子供を中絶し号泣しつつも、一方で
なぜかケロッ としている
・メンヘラ要素ありげな
不思議ちゃん女子ラストは、
キョトン・・ とした面持ちで
「辰也」の顔を覗くシーンで幕を閉じます ・「夕樹」から借りた本を「辰也」に投げられてしまう
・しかも自分めがけてぶっ飛んでくるという
(因果応報)・「殴らないで・・」と言う言葉を (繭子は
"確信的" に言っているようにもみえ)
・ 繭子のほうが実は
"何枚も上手" だった、というオチ
・・こちらの女子の設定はというと・・
表面: けなげな従順女子
裏面: 恋愛依存症悪女(の暗喩)
成岡繭子 と 鈴木辰也
この2人には
"深い闇" がつきまとっているようにもみえてくる
劇中の後半までは、
鈴木辰也こそが "サイテー野郎" の雰囲気が漂うも・・
鈴木辰也はそれでも・・
子供を堕ろしてしまった
(罪の十字架をを背負ってしまった)
という自責の念はあるのだ
劇中で辰也はこのように語っている
『俺と繭はその日から同じ罪を背負うことになった』
しかしラスト・・
その斜め上をいく
"成岡繭子" の素行 に
観客たちは面食らうのである
ある意味、
成岡繭子も鈴木辰也もどっちもどっちなのではあるが・・
おそらく、
・この闇の諸悪の根源は辰也のDVにあって
・よって成岡繭子をメンヘラ化させ
・繭子は二股を決行
繭子は繭子なりの
「幸せの道」 を模索しはじめる・・
つまりこの「切なき恋物語」は、
成岡繭子のイニシエーション という結末で終結を迎えます
この物語は、
80年代当時のレコードやカセットテープの
A面/B面 を連想するかの如く
複雑な男と女の深層心理の
表面/裏面 その暗示は・・
(裏面)に隠されているのかもしれません・・
Chapter10
ラスト、(裏面:辰也)の "表情" に注目
この作品の見所はいわずもがな
大ドンでん返しのラスト にあるわけですが
独断と偏見でいわせていただければ・・
ラストのキョトン顔のオチには、表面/裏面があり
表面: 繭子
裏面: 辰也 の、この構図。。
この男と女の心理を探る上で気になるのが
表面 にある
繭子の表情 よりかむしろ・・
裏面 にある
辰也の表情 なのである
その前に、整理しておきたいのが、
繭子と拓也、果たして・・このどちらが悪者なのか?といった
この2人の賛否であり、その解釈は二手に分かれるだろう
・最後の最後で
繭子の悪女っぷリ が露呈されてしまったし
・いっぽうでは
拓也のDVっぷり こそが諸悪の根源なのかもしれないからだ
まず整理しておきたい事柄として
どっちの裏切りが早かったのか、ということ
特筆したいのは、
意外にも恋人を裏切ったのは
辰也のほうが先である ことだ
1987年 9月 4日 辰也、美弥子と初H
1987年 9月15日 繭子、夕樹と初H
やってることはどっちもどっちだし、
初Hのタイミングもたった
10日で違い でたいして違わないが・・w
とはいえ、時系列的には
辰也のほうが先に繭子を裏切るカタチになっているのは事実である
しかも辰也は逆切れキャラだし
ハサミが繭子の目を目掛けて飛んでくるというバイオレンスっぷり
けれども、
辰也は実に複雑なキャラクターで
根は一環して
生真面目を貫く男である という一面も持っている
その辰也の持つ複雑な人間性は
一連の辰也の行動にも垣間見えるようでもあり・・
遡ること・・
1987年7月 1日
辰也
『俺は繭を置いて東京へと向かった
この時は俺は、繭のためならなんでも出来ると思っていた』その10日後・・
1987年7月10日 繭子はというと・・
合コンし、夕樹に接近しはじめている・・
妊娠発覚・・
1987年8月 9日
辰也『もし子供出来てたら、するか結婚・・・ 嫌なのかよ!』
クリスマス前・・
1987年11月 5日 ホテルの予約を思い出す 辰也
『キャンセルしないと・・』
1987年11月14日 辰也、ホテルをキャンセル
ここで注目したいのは
辰也はホテルのキャンセルをしていないことに気づいたものの
キャンセルするまでに
なぜか9日もかかっている・・ こと
(この時点で、
辰也はまだ、繭子のことを愛していたのではないか・・
を暗示させるような描写でもある)
クリスマスイブ当日・・
1987年12月24日 美弥子の家に訪問するも・・
辰也
『俺からの電話、(繭子が)待ってるような感じでさ・・』
と静岡のホテルに向かう
この一連の流れから推測するに
・繭子のほうは
辰也への愛がすっかり冷めてしまっている ものの
・辰也はというと
繭子への愛冷めめやらぬ といった感じなのである
それを
確信付ける のが辰也の行動であり
そして、ラストにみせる
"辰也の表情" に注目してほしい
クリスマスイブ
辰也はホテル前にいる繭子をみつけるやいなや
"満面の笑顔" で
やけに爽やかな笑み を浮かべ駆け寄っているのだ

そして、辰也は笑顔で繭子を見つめ
安堵の表情 を浮かべる・・
それに対し、繭子の
このキョトン顔 である。
(というオチ・・。)
というわけで、
「辰也は、繭子にとってのイニシエーションラブだった。」
というオチで結末を迎えるわけですが
つまり、繭子の経験した楽しくも辛い
(試練ともいうべき) "B面辰也との恋" は
" 繭子にとっての" 通過儀礼
すなわち
『(繭子の)大人になるための儀式 』 だったという物語
表裏する通過儀式、その表と裏・・
男女それぞれが抱く
(裏面) のダークな影は
(劇中ではあえてくっきりと表現されていないだけに)
この切なき恋の結末が、
よりいっそう切なく感じられるようにも思えます
Chapter11
最後に・・
この作品(映画)は男と女の複雑な心理描写を
文脈的な
時系列のトリック だけではなく
映像メタファー 等々で如実にあらわしているところが見所かと思いました
で、気になるのは
繭子と辰也の、どちらが罪人なのか・・(どっちが罪深いのか・・)
なのですが・・
まあ、どっちもどっちでしょうね^^;
細かな心理を探れば、
どちらにも否があり、どちらにも同情できる要素はあるようにも思えました。。
私は原作を読んでいませんが
原作のほうは複雑な女心を
赤裸々にリアルに描いている印象がありましたが
(読んでないので飽くまで印象ですが・・)
映画においては
堤監督作品ということもあって
どことなく虚構タッチのダークテイストな印象で
実に興味深い仕上がりになっていると思います
表面は、 とても観やすく、コミカルでライトな映画
裏面は、 実は・・ダークサイドな(暗黒面を語る)物語・・
「あなたは必ず2回観る」 のキャッチコピーのとおり、
2回観賞すると・・
ぐっと
「裏面(B面)」がみえてくる・・
そんな作風が魅力的な作品です
尚、独断と偏見、個人的解釈になりますので
あくまで
仮説 であることをご了承ください。。
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