今回は、特に個人にとって、投資アドバイザーは不要で且つむしろ有害なのではないかという意見を述べてみたい。金融業界、運用業界に長く関わって来た筆者が最近辿り着き、思い付いた本人も少々驚いている仮説である。
ここで言う「投資アドバイザー」とは、顧客からお金(ないし有価証券)を預かって、多くの場合、預かり資産残高に応じたフィー(手数料)を取って、資産クラスの配分や投資銘柄・ウェイトなどをアドバイスしたり、顧客に代わって直接運用したりするサービスの提供者を指す。
ビジネスとしての形は、投資顧問会社、信託銀行、ファイナンシャル・プランナー、IFA(証券仲介業者)、ロボアドバイザー、バランス・ファンドなど様々であり得る。加えて、運用商品を販売する銀行、証券会社、保険会社などのセールスマンやコンサルタントなども、実質的にアドバイザーの役割を果たしていると見ることが出来よう。
個人にとって、彼らの9割以上は要らないのではないだろうか。
もちろん、投資アドバイザーが不要であるとして、個人投資家がどうしたらいいのかについての具体的な解決方法はあるので、心配は要らない。
それにしても、多くの金融マンや金融アドバイザーを敵に回しかねないし、加えて筆者自身の自己否定にもつながりかねない穏やかではない仮説だ。
なるべく丁寧に説明してみよう。【図1】は、投資アドバイザー・サービスと個人顧客、金融商品、金融市場の関係を描いた概念図だ。
個人は何らかのアドバイザーに自分のお金の一部を預ける。この場合、全財産を一業者ないしは一つの商品・サービスに預ける人は少ないだろう。
アドバイザーの機能は、概ね、アセットアロケーション(資産クラスの配分決定)と資産クラス毎の投資商品選択に分解することが出来よう。
そして、一般的には、「アセットアロケーションは、大変重要なプロセスだが、素人には難しい」と言われる。「だから、プロにお任せ下さい」と言いたいのだろう。
但し、言うまでもないことだが、アドバイザーに対しても手数料の支払いが必要だし、運用対象となる金融商品でも手数料が発生する場合がある。
【図1】投資アドバイザー・サービスを利用する場合の個人の資産運用
では、個人がアドバイザーを抜きに自分のお金を運用するケースについて考えてみよう。同じように図にしてみたので、【図2】と【図1】を比較してみて欲しい。
個人にとって、アセットアロケーションが重要であることについて異論はない。特に、①リスク資産に運用資産を幾ら配分するのかの決定が重要になる。
そして、②リスク資産の対象商品の組み合わせと、③概ね無リスクな資産の選択とを決めることが出来ると、運用は完成する。
敢えて付け加えると、その後に④運用を見守りつつ必要があれば運用を調整するといいのだが、調整を要する局面はあまり無いだろうし、①、②、③のやり方が分かっているなら④は簡単にできるはずだ。