アメリカのDIYといえば、今も昔も「自宅ガレージ+ジャンク部品」のイメージである。Youtuberの動画を見てもジャンク屋で買ってきた部品を使ってガレージで突拍子もないものを作っているのをよく見かけるし、AppleやGoogleなど、大手企業が最初はガレージで創業したという話もよく語られる。
ガレージについては動画に出てくるしイメージが湧くのだけど、一方でアメリカ人が買っているというジャンク屋についてはあまりイメージが湧かない。いったいどういうところなのか、この目で見てきた。
インターネットユーザー。電子工作でオリジナルの処刑器具を作ったり、辺境の国の変な音楽を集めたりしています。「技術力の低い人限定ロボコン(通称:ヘボコン)」主催者。1980年岐阜県生まれ。
前の記事:「マンボNo.5のリズムに合わせてCDトレイを開けたり閉めたりする」 人気記事:「チーズ across ハンバーグ」 > 個人サイト nomoonwalk ここ数年、5月中旬にあるDIYの祭典、Maker Faire Bay Areaでヘボコンを開催するために毎年渡米している。
今年のヘボコンの様子
毎回タイトなスケジュールなのだけど、最終日に半日だけ自由時間ができる。去年はサンフランシスコ弾丸観光に連れて行ってもらったので、今年は趣向を変えてギークっぽい場所に行きたいと思い、現地在住の知人にコーディネートをお願いした。
今回一緒に来てくれたおふたり。右が現地在住の河合さん。左はMaker Faireで日本から渡米していた木下さん
タイトルにあるジャンク屋に加え、電子部品店と最新ガジェットショップまで、3軒をめぐることができたので、順にご紹介したい。
場所は、いずれもサンフランシスコから南に数十キロ、いわゆるシリコンバレーと呼ばれているあたりだ。GoogleのあるマウンテンビューやAppleのあるクパチーノも近い。 なお、なにぶん短時間なので(あと英語が片言なので)細かい取材はできず、単なる観光記であることをご了承いただければ幸いです。 巨大ジャンクショップ「HSC Electronic Supply」まずは訪れたのは、今回のメインテーマである巨大なジャンクショップ。
ちょっと写真に入りきらないサイズ
窓のない大きな建物は、外観から見るに、完全に倉庫。店内に入ると…
ジャンク!
正面の棚にはびっしりと大小の機材が並べられ、そして奥にの棚には小箱に分類された部品が山ほど。
これがうわさに聞く、アメリカのジャンクショップか…! 引きの絵では小箱に見えるが、実際入っているのはこんなでかいモーターとかだ
裏へ回るとピカピカの工具のコーナーなんかもある
何に使うのか全く分からないような部品や機材の数々。すごくいい雰囲気だ。
とはいえ思ったより小ぎれいで、そして大きさもそこまで巨大ではないな……。 と思うのもつかの間だった。実はこれはまだほんの入り口に過ぎないのであった。 出入り自由の倉庫もう一枚ドアをくぐるとそこに巨大な倉庫が
見渡す限りのジャンク!
扉の奥に広がるのは、倉庫兼店舗というか、店舗兼倉庫というか、とにかく物がびっしり積まれた広い空間だった。
棚が高すぎて全貌を映すことが困難なのだが、日本のスーパーマーケットくらいの広さはある印象。 その中にもう大小さまざまなジャンク部品がうずたかく積み上げられているのだ。 オシロスコープとかかな?大きくて重そうな機材から
細かく仕切りされたトランジスタコーナー。最高の眺めだ
こんな細かいコネクタ類まで膨大な種類がある
右の棚はぜんぶ銅線。なんでこんなに種類があるんだ
棚に乗りきらなくてさらにラックで積まれているものも
左、巨大な抵抗。大きすぎておもちゃみたい(よく見る右のは1/4ワット、大きいのは2ワット)
この棚は奥まで全部ACアダプタ
最奥の壁はシャッターに。倉庫なので搬入口があるのだ
日本の秋葉原でジャンク店というと圧倒的にジャンクPCショップが多いように思うが、この店はそれよりもかなり雑多だ。電話機から真空管、液晶モニタまである。
ひときわゴチャッとしていたエリア
これはカメラかな?こんなものまで
逆にノートPCやスマホ・タブレット、デジカメみたいな最新精密機器はあまりなかったように思う。オールドスクールなジャンクショップという感じだ。それがイメージの中のアメリカっぽくて、またいい。
ジャンクがかわいいジャンクショップというといかにも武骨でオタクっぽい印象を受けてしまうが、今回行ってみての感想は、「ジャンクが思いのほかかわいい」というものだ。
これはコイルの棚。寄りで見ると…
カラフル!
銅線の棚もいろんな色があって、何となくキュートだ
機材単体でも、レトロ製品特有の見た目のかわいさ
このデザインのスマホケースが欲しい
こちらは真空管。カラフルな小箱に入っている
中でも僕が魅了されたのは真空管コーナー。上の写真の4~5倍くらいの棚を占めていて、半分以上は紙箱に入っている。その箱がまた、ヴィンテージっぽいデザインですごく良いのだ。なお箱は経年劣化が激しく、雑に扱うとすぐバラバラになるので取扱注意。
さらに、真空管自体もかわいい。 曲線的なフォルムと、持ってほどよいサイズ感
形も色もいろいろある
似たような形のものもちょっとずつ中身が違う
一番左の真空管、黄色いペイントにUNITED AIRLINESと書いてあるのが分かるだろうか。もしかしたら飛行機部品だったのかもしれない。右のはRCAと書いてあって、調べてみると現在GEに買収された部品メーカーらしい。
製品チェックのコーナー。右側にもカラフルな真空管の箱がたくさん敷き詰められている
いいな、真空管。中の構造がガラスに包まれているので、小さな水槽の中に機械を閉じ込めたような、そんな風情がある。これがかわいいのだ。今まで触れたことがのない部品だったけど、一気に好きになった。
時代とサービス精神を感じる店内設備商品自体もいいんだけど、店内の設備も「これこそアメリカのジャンク店!」といった感じで、楽しくなってくる。
動作チェックのためのカウンター。広い
この買い物カゴがまたアメリカっぽくていいのだ
スタッフオンリーだけど2階もあるようだ。入りたい…!
長居してもいいように、コーヒーのセルフサービスまである。泣けるサービス精神
さらに店内めぐりながら動作チェックできるように肩ひも付きのテスターも!……と思って撮ってきたんだけどいま見たらこれは売り物っぽいな(欠陥品・ノーリターン、とか書いてある)
もう何もかも良すぎてついつい長居してしまいたくなるのだが、時間のない旅である。そろそろお会計の時間だ。
若きスティーブ・ジョブズも来た店買い物の際は専用の用紙に値段をメモっていくという、わりと客の良心に委ねられたシステムである。ジャンク好きに悪人はいないということだろうか。
僕は真空管が気に入ったので、記念に2本買っていくことにした。売り場に値段が書いてなかったのだが、その場合は型番を写真に撮ってレジで見せると調べてもらえる。1個3ドルくらいだったかな。 会計時の雑談で、今回案内してくれた河合さんが、僕らが日本からの来客であることを店のおじさんに話した。 そうすると、記念にいいものを見せてやるということで、すごいものが出てきたのだ。 スティーブ・ジョブズが来た時の伝票だという
1969年の伝票ということで、調べてみると当時スティーブ・ジョブズは14歳である。
食い入る河合さん
この時ジョブズは自分のお金じゃなくて他人名義の小切手を切っていったそうで、つまり14歳の若さにしてバックにスポンサーを抱えていたわけである。彼の商才はこんな若い頃からすでに開花していたんだね……というようなことを店のおじさんに言われた気がするのだが、こちらの拙い英語力のため真偽のほどは曖昧である。
こんな感じで、いやほんととにかく楽しいところで、時間がないにもかかわらず2時間くらい店内をうろうろしてしまった。ここの2FでAirBnBを始めるとものすごい人気になるのではないだろうか。 とにかくDIY好きの方には是非お勧めしたい観光スポットである。 僕が買ったUNITED AIRLINEの真空管(右)と、左は真空管じゃなくてヒューズだったらしい
二人にも買ったものを見せてもらった。木下さんはサイレン。電源つなぐとウーウー鳴ると思われる
河合さんはコネクタ類たくさん。工作に使うとのこと
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