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野外コウノトリ抱卵か 越前市、54年ぶり誕生に期待

抱卵していると推定されたコウノトリのペア=越前市大塩町で

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 越前市大塩町の人工巣塔で営巣する国の特別天然記念物コウノトリの雄三歳と雌五歳のペアが産卵し、抱卵に入ったと推定される、と市が二十八日、発表した。野外コウノトリの県内産卵は昨年の別のペアに続き二年連続、ひな誕生となれば五十四年ぶりの自然繁殖となる。

 市農政課によると、市が二十一、二十二の両日に撮影した映像や目視での行動観察の記録を、県と兵庫県豊岡市のコウノトリの郷公園の専門家が解析し、二十六日には同公園の研究者が現地で視察し、判断した。

 記録では毎日七時間の観察で、ペアのどちらも巣にいない状態がほとんどなく、どちらかが巣に伏せている時間が全体の八割以上だった。映像からも卵を抱くような伏せ方をしていることが確認され、判断した。卵の個数などは分かっていない。ペアが産卵の兆候を見せたのは十日ごろで、卵が有精卵の場合、ふ化は六月十日ごろとみられる。

 市産業環境部理事でコウノトリ共生推進担当の坂田秀毅さんは「順調にふ化することを願っている。温かく、マナーを守って見守ってほしい」と話した。同所に定着の可能性もあり、コウノトリの飛来や生息が多い白山地区以外での朗報に「大塩町での抱卵が、市のコウノトリの舞う里づくり構想がさらに広がるきっかけになれば」と期待した。

 巣塔の場所を提供した地元の高山弘和さん(66)は「素晴らしい。五十四年ぶりの快挙に期待してる」と喜ぶ。高山さんは農園を経営し、巣塔周辺で十年以上にわたって有機栽培のコメ作りに励んでおり、「自分の田んぼでコウノトリが餌を食べれば、住民の誰もがうれしい気持ちになる。定着をきっかけに、自分もやってみようという輪が広がってほしい」と願った。今後は市や県と話しながら、ふ化や定着に向けて対応するという。

 (山内道朗)

 

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