日大アメフト選手に学ぶ“不正の後始末”

権力が強さではなく弱さに宿るで困難乗り越える

2018年5月29日(火)

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記者会見に臨む日大アメフト部の宮川泰介選手(写真:AP/アフロ)

 このコラムが公開される頃、日大アメフト部の問題はどうなっているのだろうか?

 権力、不正、服従、正当化、自己保身、ウソ、無責任、密室性、心理的抑圧etc……。
 これまで研究者たちが検証を試みた「心のメカニズム」が、見事なまでに再現された“事件”だった。
 内田正人前監督と井上奨コーチの節操なき会見は、「権力が強さではなく弱さに宿る」ことを知らしめる象徴的な会見だったし、先だって行なわれた日大アメフト部の選手の言葉には、「不安という感情が人を弱くも強くもする」ことが赤裸々に表れ、切なかった。

 今回のような事件は、どこの組織でも起きるし、起きてきた。過去には何人もの、“内田氏”、“井上コーチ”、“日大アメフト選手”がいたし、“外野席”にいる私たちも例外じゃない。

 そして、手を染めてしまった“あと”を、左右するもの。
 SOC。Sense Of Coherence。直訳すると「首尾一貫感覚」。

 SOC とは人生であまねく存在する困難や危機に対処し、人生を通じて元気でいられるように作用する「人間のポジティブな心理的機能」。このコラムで何回か書いてきたとおり、SOCは生きる力であり、ストレス対処力だ。

 平たく言うと、どんな状況の中でも、半歩でも、4分の1歩でもいいから、前に進もうとする、すべての人間に宿るたくましさだ。

 真のポジティブな感情は、どん底の感情の下で熟成される。この究極の悲観論の上に成立しているのが、SOC理論である。

 勇気ある20歳のアメフト選手の言動は、SOCを理解する上で最良の教材である。

 そこで今回は、「アメフト事件に学ぶたくましさと愚かさ」をテーマにアレコレ考えてみる。

 本題に入る前に、
 なぜ、権力者はのうのうとウソをつくのか?
 なぜ、権力者に従ってしまうのか?
 について、説明しておく。

 まず、前提として権力者が度々ウソをつくことは、世界の膨大な研究結果が一貫して証明している。

 私たちは一般的に、「ウソをつき、責任を回避すると、イヤな気持ちになる」と考える。ところが、ウソを貫き通すことができると、次第に“チーターズ・ハイ”と呼ばれる高揚感に満たされた状態に陥り、どんどん自分が正しいと思い込んでいくのだ。

 権力者の周辺に漂う「もの言えぬ空気」が、権力者の権力を助長し、やがて権力者自身がルールとなり、彼らは「このウソは必要」だと考え、正当化する。その確信が強まれば強まるほど、チーターズ・ハイに酔いしれ、共感も罪悪感などいっさい抱かない「権力の乱用」が横行するのである。

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「日大アメフト選手に学ぶ“不正の後始末”」の著者

河合 薫

河合 薫(かわい・かおる)

健康社会学者(Ph.D.)

東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。産業ストレスやポジティブ心理学など、健康生成論の視点から調査研究を進めている。働く人々のインタビューをフィールドワークとし、その数は600人に迫る。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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