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【社会】

柳瀬氏、官邸の本気示す 加計学部開設 県・市呼び奮起促す

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 学校法人「加計(かけ)学園」の獣医学部開設を巡り、二〇一五年四月二日に柳瀬唯夫首相秘書官(当時)が愛媛県や今治市の担当者と異例の面会をしたのは、学部開設を加速させるため、国家戦略特区の申請者となる県や市に官邸の「やる気」を示す目的だったことが政府関係者らの証言で分かった。学部開設が官邸主導で進められた疑いが強まり、一連の問題に対する学園の説明や安倍晋三首相の答弁の信頼性がさらに揺らぐ形となる。 (中沢誠)

 複数の関係者によると、柳瀬氏は、国家戦略特区を使って学部開設を実現しようと学園と協議。県と市にも今後の方策を伝えておく必要があり、特区を仕切る藤原豊・内閣府地方創生推進室次長(当時)に引き合わせた上で、官邸に呼び出す段取りを組んだという。

 政府関係者は「その段取りを組んだのが、柳瀬氏と学園関係者が官邸で協議した一五年三月二十四日だった」と話す。

 証言を裏付けるように、県が二十一日に国会に提出した四月二日の面会文書では、「本件は首相案件となっており、何とか実現したいと考えている」と「首相」の名を引き合いに出し、柳瀬氏の方から学部開設への強い決意をにじませていた。その上で、同席した県や市の担当者に「自治体がやらされモードではなく、死ぬほど実現したいという意識を持つことが最低条件」と告げ、「県も市も首長がやる気になっているのか」とただしている記載がある。

 県や市は当時、構造改革特区による学部開設を目指していたが、申請しても毎回却下される状況で計画は低迷していた。ある政府関係者は「官邸のやる気を示し、県や市を本気にさせるためだった」と柳瀬氏の狙いを明かす。

 県の新文書では、学園側からの情報として「安倍総理と加計学園理事長が会食した際に、獣医師養成系大学の設置について地元の動きが鈍いとの話が出た」と紹介。その首相会食を受け、学園が県や市に柳瀬氏面会の同行を求めたとされる記載もあり、実際に四月二日は県や市の担当者も柳瀬氏と面会している。

 柳瀬氏が地元自治体を「やる気」にさせるために官邸に呼んだとすれば、こうした首相と加計氏とのやりとりを受け、柳瀬氏と学園側が県と市の官邸訪問を設定した可能性があり、「学園の計画を初めて知ったのは一七年一月二十日」との首相の答弁の信頼性が揺らぐ。

 柳瀬氏は今月十日の国会の参考人質疑で、四月二日の面会を設定したことを否定。安倍首相は二十二日の衆院本会議で、「(加計氏に)これまで何度もお目にかかっているが、獣医学部の新設について話をしたことはない」と答弁。学園は二十六日になり、新文書に記載した首相と加計氏との面会は「県と市に誤った情報を与えてしまったように思う」と否定している。

 

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