「トロッコ問題」を実際に検証してみた結果(2018.05.27)
5人の命を助けるために、何の罪もない1人の命を犠牲にできるのか? 有名な「トロッコ問題」を実際に検証した実験が話題を呼んでいる。
■「トロッコ問題」を実際に検証
何もしないで手をこまねいていれば5人の命が奪われることになるが、意を決して目の前にある線路のレバーを引けば迫り来るトロッコを1人しかいないほうへと進路を変えることができる。アナタならどうするだろうか? ベルギー・ゲント大学の社会心理学研究チームは、マウスを使ってこのトロッコ問題を再現した実験を行なっている。
研究チームは192人の大学生に、モラル面で難しい問題を含むシナリオ上で意思決定をする一連の課題に取り組んでもらった後、このマウスを使ったトロッコ問題に取り組んでもらう実験を行なった。
大学生の半数はそれまでの課題と同じように、シナリオ上でマウスのトロッコ問題の判断を迫られ、もう半数の学生は実際に実験室でそれぞれケージに入れられた5匹のマウスと1匹のマウスに前にして判断を問われることになった。
「AllPsych」より
実験室では2つのケージにそれぞれ5匹のマウスと1匹のマウスが入れられており、入って来た学生には20秒の時間が与えられた。20秒のカウントダウンが終了すると、5匹のマウスがいるケージに強い電流が流れてマウスたちが苦しむことになると説明され、もし制限時間内に手元にあるボタンを押すと、電流の行き先が変わり今度は1匹のマウスがいるゲージに電気ショックが発生するのである(※実際のところは電気ショックはどちらにも流れていない。しかし学生はその設定を信じるしかない状況にある)。
実験の結果、2つのグループの判断はかなり違ったものになっていたのだ。シナリオ上でトロッコ問題に向き合ったグループでは、実際にマウスを目の前にしたグループよりもボタンを押す判断をした者が約2倍多かったのだ。つまりシナリオ上では5匹を救うために1匹に犠牲を強いる判断がしやすく、一方で実際に現場に直面してみればなかなかボタンは押せずにタイムオーバーとなってしまうケースがより多くなるのだ。
実験室の学生の中でもボタンを押す者はいたのだが、その際にきわめて申し訳ない気持ちになり罪悪感を感じたということだ。一方でシナリオ上でボタンを押した学生たちにはある意味で当然のことをしたという気持ちであり、良心の呵責は感じていないということである。
今回の研究で机上の意思決定は現場での意思決定を占うものにはならないことが示唆されることになった。現場での実際の判断は場合によって想定と異なってくることをこの機会に改めて確認してみたい。
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