INTERVIEW

いま、UKジャズがおもしろい! 野田努×小川充が語る、南ロンドンの熱気(前編)

ジョー・アーモン・ジョーンズ『Starting Today』、ユナイティング・オブ・オポジッツ『Ancient Lights』

  • 2018.05.28
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いま、UKジャズがおもしろい! 野田努×小川充が語る、南ロンドンの熱気(前編)

いま、UKジャズがおもしろい――最近、音楽ファンたちがそんな話をしているのをよく耳にするようになった。その決定打となった作品は、南ロンドン・ジャズ・シーンのドキュメント的コンピレーション『We Out Here』、そしてシーンの精神的支柱であるシャバカ・ハッチングス率いるサンズ・オブ・ケメットがインパルス!から発表した『Your Queen Is A Reptile』という二つの作品だろう。

そんな状況に拍車を掛けるのが、奇しくも同日にリリースされたジョー・アーモン・ジョーンズの『Starting Today』と、ティム・デラックスことティム・リッケンのバンドであるユナイティング・オブ・オポジッツの『Ancient Lights』だ。そこで、この二つのアルバムをきっかけに、南ロンドンを中心としたUKジャズ・シーンのおもしろさについて、ele-king編集長・野田努とライター・小川充という二人の識者に話を訊いた。5月30日(水)には野田と小川が編集した〈UKジャズの逆襲〉を特集に掲げた「別冊ele-king」も刊行。まさに、ベストなタイミングでの対談となった(記事の末尾には〈New British Jazz Invasion〉プレイリスト付き!)。

JOE ARMON-JONES Starting Today BROWNSWOOD RECORDINGS/Beat Records(2018)

UNITING OF OPPOSITES Ancient Lights Tru Thoughts/BEAT(2018)

 

クラブ・ミュージックが身近にあるのが、いかにもイギリス

――まず、ジョー・アーモン・ジョーンズのデビュー・アルバム『Starting Today』はいかがでしたか?

小川充「南ロンドンのシーンの熱気が伝わってくるようなアルバムで、すごくタイムリーな作品だと思いました。2月に『We Out Here』というコンピレーションが出ましたが、そこでコンパイルされていたのは、ロンドンのストリートのジャズですよね。いわゆるジャズ喫茶とかジャズ・クラブとかで聴くのとは違う、ストリート発のジャズが『We Out Here』にも、ジョー・アーモン・ジョーンズのアルバムにも入っていると感じました」

野田努「〈アシッド・ジャズ以降〉って言ってもいいと思うんですけど、UKらしい音楽をそのまま受け継いでいる感じがしましたね」

小川「いわゆるクラブ・ジャズや、クラブ・シーンとのつながりも深い人ですしね。彼のルームメイトがマックスウェル・オーウィンで、去年、『Idiom』というEPを一緒に作った人なんです。彼からエレクトロニック・ミュージックをいろいろと教わって、そういった音楽に興味を持ったと言っていました」

野田「クラブ・ミュージックが身近にあるっていうのが、いかにもイギリスだね。80年代のニューウェイヴ時代からの伝統ですよね。5月30日に出る別冊ele-kingでは、〈UKジャズの逆襲〉という特集を組んだんです。いろいろと調べるとおもしろかったんですが、やっぱりUKにも〈ジャズ・ポリス〉っていうのがいるんだよね(笑)」

――〈これはジャズじゃない!〉って非難する人ですね。

野田「そう。だから、〈ジャズ・ポリスにめげず、若い感性を信じてみよう〉という論調でメディアは擁護する。そういうところも含めて、UKっぽいなって思ったんだよね。要するに、ジャズ・ポリスが潰す前に、俺たちが擁護するんだと。ジョー・アーモン・ジョーンズ本人も〈ラッキーだ〉って言っていたけど、すごく恵まれているなかでデビューできたと思います」

小川「タイミングが良かったんですよね。ジャイルス・ピーターソンが自分のレーベルのブラウンズウッドから『We Out Here』やシャバカ・ハッチングス(サックス)の前作(シャバカ&ジ・アンセスターズ『Wisdom Of Elders』、2016年)、ユセフ・カマールのアルバム(『Black Focus』、2016年)をリリースして、南ロンドンのジャズをプッシュアップしていた流れにうまく乗ったというのもありますよね」

野田「そうなんだよね。それは、良くも悪くもジャイルス・ピーターソンの〈うまさ〉ですよ。やっぱり、ああいう業界の仕掛け人みたいな人がロンドンにいることの強みというか」

小川「アシッド・ジャズが盛り上がってきた頃と同じ打ち出し方ですよね」

野田「そうですね。あと、〈南ロンドン〉っていう地名が出てくるじゃない? それがUKジャズのおもしろい特徴を表していると思うんです。これだけインターネットが発達した社会で、地名というものがどこまで通用するのか、ローカルな力がどこまで通用するのかという問題があるとしますよね」

――ええ。

野田「チルウェイヴが出てきたとき、イギリスのメディアはものすごく批判したんです。要するに、音楽っていうのは常に場所と共にあるんだと。シアトルにグランジが生まれ、デトロイトにテクノが生まれ、マンチェスターにマンチェスターの音楽が生まれたようにね。音楽は、インターネットやSNSから生まれるものじゃないんだと。

ジャズ・ポリスの攻撃から若いジャズを擁護するUKのメディアが、チルウェイヴのときはムキになって批判したんです。それは、UKのなかに古いものへの愛着がぬぐえないものとしてあるということなんですよね。そういう意味では、UKにはすごく引き裂かれたところがある。新しいものを取り入れて、折衷的にミックスしていけばいいというオープンなところがありつつも、その一方で古きものに対する愛着もあるんです」

ジョー・アーモン・ジョーンズの『Starting Today』収録曲“Starting Today”

 

UKらしい折衷音楽としてのユナイティング・オブ・オポジッツ

――なるほど。では、ユナイティング・オブ・オポジッツのアルバム『Ancient Lights』についてはどうでしょう?

小川「野田さんが言ったような、古きものと新しいものとの折衷という点では、ユナイティング・オブ・オポジッツは、その最たるものだと思います。このアルバムには、60年代から活動しているクレム・アルフォード(シタール)が参加しているんです。彼はインド音楽に通じている人で、60年代のようなサイケデリックな音楽と現代的なものをうまく、UKらしい折衷のしかたで融合させているのが、この作品ですね。

あと、サラシー・コルワルの『Day To Day』(2016年)というアルバムを思い出しました。彼はインド出身で、これはUKにやって来て作ったアルバムなんですけど、そこにシャバカ・ハッチングスも参加していたんですよね。だから、その流れも見えてくると思います」

野田「ティム・デラックスは、動きが早いよね。トレンドを読む力があるっていうか。でも、あまりにも早く〈南ロンドン〉っていうキーワードに飛びついたなって(笑)。例えば、シャバカのようにずっとそのシーンで頑張っていて、いま脚光を浴びている人とは違う」

小川「ただ、ティム・デラックスは前のアルバムの『The Radicle』(2014年)でも近いことをやっていて、それ以前からDJは辞めて、キーボード奏者にスイッチしています」

――そのようですね。

野田「ユナイティング・オブ・オポジッツは良いよね。アルバムを聴いているとカレーを食べたくなるんですよ(笑)。僕はロンドンに行くと必ずインド料理屋に行くんですけど、ロンドンって、エスニック料理というか、他の民族のレストランが多いでしょう。なかでもインド料理屋が多い。だから、UKの街ではシタールの音が日常的に鳴っているんですよね」

小川「自然にある音のひとつなんですよね」

野田「確実にロンドンのある場面を描写しているアーバン・ミュージックだよね」

――ユナイティング・オブ・オポジッツには、ロンドンの若手ミュージシャンも参加していますよね。

小川「エディ・ヒック(ドラムス)とアイドリス・ラーマン(クラリネット、サックス)が参加しています。エディ・ヒックは、ルビー・ラシュトンというグループや、アシュレイ・ヘンリー(ピアノ)のバンドで演奏するほか、サンズ・オブ・ケメットのニュー・アルバム(『Your Queen Is A Reptile』)にも参加しています。

バングラデシュ系のアイドリス・ラーマンは、イル・コンシダードや、トム・スキナー(ドラムス)と一緒にワイルドフラワーというバンドをやっていますね。アフリカ音楽とジャズをミックスした、いわゆるスピリチュアル・ジャズ系の音楽をやっているグループです」

ユナイティング・オブ・オポジッツの『Ancient Lights』収録曲“Mints”

 

ジャズ・ミュージシャンが21世紀、どうやって食っていけるのか?

野田「ユナイティング・オブ・オポジッツは、ジャズっていう感じじゃないんですよね。ダウンテンポ系の気持ち良さもあるし」

小川「まあ、ちょっと亜流ですよね」

野田「UKジャズ自体が亜流なんですけど(笑)。そう考えると雑種っぽくて、UKジャズらしいのかもしれない。ロンドンでジャズっていうと、実はほとんどの場面では、いまだにマイルス・デイヴィスの昔の曲のカヴァーをパブやカフェで演奏しているようなものなんですよ。だから、ジョー・アーモン・ジョーンズとか、こういう人たちって、UKのジャズのなかでも特殊なんです」

小川「異端でしょうね。コンサヴァティヴなジャズ・クラブでは演奏できないので、クラブとか、ウェアハウス・パーティーみたいなところで活動する機会を得てきたみたいです」

――〈ジャズ・リフレッシュト〉というイヴェントがあるそうですね。

小川「それもそのひとつですね。〈ジャズ・リフレッシュト〉は、西ロンドンのブロークン・ビーツとの繋がりもあったイヴェントおよびレーベルなんです。そこがカイディ・テイタムやリチャード・スペイヴン(ドラムス)の作品を出していて、次第にいまのヌビア・ガルシア(サックス)やダニエル・カシミール(ベース)といった若い人たちにも活動の場を与えていったんです。

もうひとつヴェニュー的なところでは、北東ロンドンのトータル・リフレッシュメント・センターという場所でもミュージシャンのアフターアワーズ・セッションのような感じで、通常のギグの後にフリーで参加できるジャム・セッションをやっているようですね。ティム・デラックスにインタヴューしたときに、他のミュージシャンとの交流がそこで生まれていると言っていました」

野田「〈戦略〉という言葉をあえて使わせてもらうと、ジャズの演奏者がサヴァイヴする戦略として、それはすごく有効だと思うんですよね。そこを、UKはうまくやっている。ジャズのミュージシャンが21世紀、どのようにして食っていけるのか?という問題に対して、いつまでも50年代のジャズを酒場で演奏するのか、あるいはもっと別の表現でやっていくのか、二つ選択肢があると思うんです。

後者は、いろいろな人たちと交流して、しかもエレクトロニック・ミュージックや他の音楽とも交流することによって違うものを生んで、そこに自分たちの演奏の場もちゃんと作っているように見えるんですよね」

 

アメリカより密な、ジャンルを超えた交流

野田「小川さんが作ってくれた別冊ele-kingの〈UKジャズ人脈相関図〉を見ると、中心がないんだよね。誰かが束ねているのではなくて、ものすごくリゾーム的に交流しているというかさ。それが、いまのUKジャズのすごくおもしろいところであり、掴みづらいところではあるのかもしれないけど。でも、これから作品が出てくるから、もっとわかりやすくなるとは思うんですけど」

小川「そうですね。アメリカでは、NYにロバート・グラスパーとその周辺がいて、LAにサンダーキャットやカマシ・ワシントンがいて、という感じで、NYとLAとじゃすごく距離が離れているじゃないですか。イギリスは、ロンドンという東京都とほぼ同じくらいの面積の街にいろいろな人たちがひしめき合っているという印象で、より密な交流がある感じです。ジャズ以外にも、キング・クルールとかトム・ミッシュとか、シンガー・ソングライターやラッパーがいて、ジャンルを超えた交流があります。

それは、実はイギリスのジャズについて昔から言えることで、60年代はジャズとブルースとロックの融合が非常に盛んでした。例えば、カンタベリー・シーンのソフト・マシーンとかがそうですし、キング・クリムゾンにしてもジャズ・ミュージシャンが参加していた時代があります。ローリング・ストーンズのチャーリー・ワッツは、もともとジャズをやってた人ですしね。だから、いまの南ロンドンのジャズ・シーンは、UKの音楽の歴史をそのまま表しているかなと思います」

野田「いまは、細分化したものが一気にまた集合して、20世紀の頃より過剰になった感じもありますよね。例えば、ヘンリー・ウー(カマール・ウィリアムス)みたいにヒップホップ育ちのハウスのプロデューサーもそこに絡んでいるわけで。それにしても、アシッド・ジャズのときはDJが主導して、ブロークン・ビーツのときは打ち込みのプロデューサーが主導したわけだけど、今回のUKジャズの特徴は、演奏家がとても多いということ。

これは、エレクトロニック・ミュージックが一般化した現代に対するなんらかの抵抗じゃないかと思えるぐらいの状況です。ドラマーだけでも3〜4人はすごい演奏家の名前がすぐ挙がるとか、さっきの〈古くて新しい〉という話にも重なることですが、DJや打ち込み系よりも、楽器奏者たちの勢いがすごくないですか?」

小川「そうですね。おもしろいのは、女性が多いっていうことで、ヌビア・ガルシアもそうですし、彼女が参加しているネリヤというメンバーが全員女性のバンドもいます。他のシーンと比べて、女性がすごく多いと思います」

野田「ココロコとかね」

小川「ええ。それはやっぱり、〈トゥモローズ・ウォリアーズ〉の影響がすごくあるんです。ジャズ・ウォリアーズというバンドが80年代にいて、そのベーシストだったゲイリー・クロスビーが91年に発足させたジャズ・ミュージシャンの育成機関みたいなところです」

――ジャズ・ウォリアーズは、コートニー・パイン(サックス)が参加していたバンドですね。

小川「ええ。〈トゥモローズ・ウォリアーズ〉は無料で参加できるシステムで、基本的には黒人などの有色人種や女性ミュージシャンを育成するというのを目的としています。そういったところからヌビアやザラ・マクファーレン(ヴォーカル)が出てきたという感じですね」

 

シャバカ・ハッチングスとサンズ・オブ・ケメット

野田「ドラマーもこれだけいるのかという感じじゃないですか? 今日のUKジャズを特徴づけているものに、やっぱりアフロビートがあるんです。例えば、モーゼス・ボイド(ドラムス)がトニー・アレンにレクチャーを受けている動画がありますよね。UKのアフロ・ディアスポラって、基本的にはカリブ系が多かったんですけど、21世紀に入ってからはナイジェリア系とかのアフリカ系が多くなったっていうのがひとつあるんです。

アフリカ系移民が作った音楽でいちばん大きいものってグライムなんですけど、それこそヒップホップのようにある世代に限定されがちなものですよね。だから、UKのなかでジャズという音楽がアフリカを表現することって、すごく重要なことなんじゃないのかなって思いますね」

小川「ジョー・アーモン・ジョーンズが参加しているエズラ・コレクティヴというバンドは、アフロビートから強く影響を受けているバンドなんですよね。だから、アフリカ音楽やカリビアン、中近東の音楽からの影響が非常に強いのがUKジャズの特徴のひとつだと思いますね」

――確かに、UKジャズはビートやリズムの多様さが特徴ですよね。

小川「シャバカが参加しているユニットは、ユニークなものが多いですよね。サンズ・オブ・ケメット、メルト・ユアセルフ・ダウン、コメット・イズ・カミング、南アフリカの人たちと一緒にやったアンセスターズもあります。野田さんはサンズ・オブ・ケメットの『Your Queen Is A Reptile』をすごく評価していますよね。僕もすごく良いアルバムだと思うのですが、どのあたりが良かったんですか?」

野田「一言で〈アフロ〉と言ったときの、ある種のステレオタイプ化に対しての抗いというか……。〈アフロ〉がこれだけ多様なんだっていうことを提示したところですよね。小川さんも言っていましたけど、シャバカっていろいろなところに参加していて、年齢も30代前半で、さっきも言ったように、すごく苦労人だと思うんです。インタヴューで〈いま、UKジャズに勢いを感じる〉と言うと、それは彼からしてみるとすごく違和感があるみたいなんだよね。たぶん〈俺らはずっとジャズをやっていたんだ。いまだけ光を当てないでくれ〉っていうことだと思うんだけど。

彼は、さっき話に出たジャズ・ウォリアーズにも参加しながら、エヴァン・パーカー(サックス)とかの前衛、フリー・ジャズの人たちとも共演してきて、本当に真面目にやってきた人なんです。だから、UKジャズの作品がインパルス!というアメリカの老舗ジャズ・レーベルからリリースされることのおもしろさを語っていましたね。やっぱりアメリカのジャズとは似て非なるものですから」

――なるほど。小川さんは、サンズ・オブ・ケメットの新作についてはどうですか?

小川「前二作も良かったんですけど、今回はMCを入れて、よりレゲエ/ダブやダンスホールに近づいて、サウンドシステム的な音楽になっていると思いました。共同プロデュースをしているのがディーマス(ディリップ・ハリス)なんですけど、彼はガリアーノやヤング・ディサイプルズのミキシング・エンジニアもやっていて、トゥー・バンクス・オブ・フォーっていうグループにも参加していたんです。昔からクラブ・ミュージックに関わってきた人がプロデュースすることによって、ジャズとクラブ・サウンドがよりコミットしたアルバムになっていると思いました。

フローティング・ポインツも、モーゼス・ボイドやエズラ・コレクティヴのミックスを手掛けていますが、〈ミキシング・エンジニアが作る音楽〉というのがUKにはあるんですよね。それこそ、エイドリアン・シャーウッドの時代から。マッド・プロフェッサーとか……」

野田「本当にそう。デニス・ボーヴェルとかね」

小川「ディーマスも、そういったうちの一人なんですよね」

サンズ・オブ・ケメットの2018年作『Your Queen Is A Reptile』収録曲“My Queen Is Harriet Tubman”

 

UKジャズとサウンドシステム文化

――ジョー・アーモン・ジョーンズは、昔のジャズのミキシングは「クラブのような環境では良い音に聴こえなかった」とインタヴューで言っていました。

野田「普通のジャズってアコースティックなものじゃないですか。だから、音を電気的に加工したりはしないわけですよね。それこそオーセンティックなジャズの伝統主義者からしてみたら、ディレイをかけるなんてありえないわけじゃないですか。でも、サンズ・オブ・ケメットは、サウンドシステムをジャズに導入したわけですよね」

小川「UKジャマイカンにとって、サウンドシステムって一種のカーニヴァルでもあるんです。音楽の祝祭性というか、そういったものを表現したものでもあって、例えば、ザラ・マクファーレンもサウンドシステムの影響を受けて『Arise』(2017年)っていうアルバムを出しました」

野田「やっぱりサウンドシステム文化ですよね。サウンドシステムって、UKの音楽文化、シーンですごく大きな装置としてあるんです。もともとジャマイカのサウンドシステム文化って、飲みに来た客を喜ばせるためのものなんですよね。だから、耳の肥えたリスナーに理解してもらおうっていうよりは、そこに遊びに来た人たちをどれだけ満足させるかっていう文化なんです。

ジャズってリスナーがエリート的になってしまうところがあるじゃないですか。それに対して、サウンドシステムは真逆であって、そこに来た大衆をどれだけ喜ばせるかというものなんですね。シャバカに〈コートニー・パインから学んだいちばん大きなことは?〉って訊いたら、〈サウンドシステム文化だ〉と言っていました。コートニーはサウンドシステムを理解していて、それをすごく意識していた人らしいんです」

小川「ジャズ・ウォリアーズには、アスワドのサポート・メンバーが参加していましたね。他にも、コートニーはキャロル・トンプソンとラヴァーズ・ロック(“I'm Still Waiting”、90年)をやったりしてたじゃないですか。だから、いわゆる〈高尚な〉ジャズもやるけど、民衆の音楽もやっている人なんです。確かに、シャバカにもそういう〈二面性〉って言うのもおかしいですけど……」

野田「いや、二面性ですよね、完全に」

小川「ええ。フリー・ジャズ的なこともやれば、サンズ・オブ・ケメットみたいなこともやると。それはコートニーにも近いですよね」

野田「シャバカは、コートニーがやっていたことをさらにラディカルにしたというか、アップデートさせた感じがありますよね」

ザラ・マクファーレンの2017年作『Arise』収録曲“Fussin' And Fightin'”

 

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