新宿三丁目に位置する新宿マルイ本館1階に、Apple新宿がオープンした。アップルファンにとっては待望の新店舗となったが、正面には老舗の伊勢丹新宿店、並びにはティファニー(Tiffany)、近隣にはルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)とバーバリー(Burberry)の大型店。気がつけば、ラグジュアリーが増えたような......。
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ファストファッション激戦区からラグジュアリーの中心地へ 新宿三丁目が変わった理由と歴史
百貨店とファッションビルが続々進出
日本三大歓楽街の一つ歌舞伎町の発展から繁華街として知られている新宿だが、実は百貨店の地としても歴史が長い。関東大震災から3年後の1926年に百貨店の先駆けとなるほてい屋(1935年に伊勢丹が買収)が開業。次いで29年に三越新宿店(2012年3月閉店)、33年に伊勢丹新宿店が新宿三丁目にオープン。その後、64年に京王百貨店、66年に小田急百貨店、96年には高島屋が進出し、新宿駅をぐるっと囲むように大型デパートがズラリと並んだ状況は「新宿百貨店戦争」と形容されることも多かった。
そこに1970年から80年代にかけて、ルミネ新宿や新宿ミロード、新宿アルタなどの若い女性をターゲットにした駅ビルやファッションビルが参入。当初は働く女性などをターゲットにしていた駅ビルだが、ギャルの聖地「渋谷109」で支持されてきたいわゆる"マルキューブランド"が多く入るマイシティ(現ルミネエスト)の影響などもあり徐々に客層が変化。現在では、若年層から西口エリアのオフィス街に通う女性、そして外国人観光客まで幅広い層を引き寄せる東京ファッションと文化を発信する地へと変貌していった。
従来までは百貨店と駅ビルが新宿ファッションを牽引してきたが、2008年に新宿三丁目と渋谷、原宿、池袋を一本で繋ぐ副都心線が開通したことでさらに環境が変化。これまで渋谷や原宿で買い物をしていた若者を新宿三丁目に呼び込むきっかけとなったことで、開通1年後にはH&Mの路面店や、低価格ブランドを集積した新宿マルイ カレンがオープン。2010年にはフォーエバー21(FOREVER 21)の大型店が進出するなど、新宿三丁目がファストファッションの激戦区としても知られるようになった。
ルイ ヴィトン出店が契機に
転機が訪れたのは2013年。東横線と副都心線の直通運転開始のタイミングで新宿三丁目交差点にルイ ・ヴィトンの大型路面店が出店したこと。もともと一等地として扱われていた交差点だが、ルイ・ヴィトンの出店を機に"超一等地"に格上げされたこと、また同じタイミングで約100億円という巨費を投じて改装を行った伊勢丹新宿店がリニューアルオープンしたことで、新宿通りの様相が変化していく。翌14年にはコーチ(COACH)とティファニーが、15年にはバーバリーが新宿通り沿いに路面店をオープンするなど、高級ブランドが続々と集結。今年4月6日にはグッチ(Gucci)が旗艦店を移転し、その翌日にアップル新宿がオープンするなど、それまで高級路線を一手に引き受けていた伊勢丹新宿店の周りに出店が相次いだ。
5年という短期間であっという間に高級ブランドストリートへと変貌を遂げた新宿通りだが、高級店だけではなくファストファッションなども加えた老若男女に対応しているのが特徴。電気店や映画館、多国籍な飲食店なども点在し、多種多様な目的を満たしてくれるこの街の様相は、高級ストリートの代名詞「表参道」というよりどことなく「銀座」に近いと言えそうだ。
これからの新宿三丁目
そんな出店ラッシュの新宿三丁目が抱えている問題は、「物件不足」。明治通りと新宿通りがぶつかる交差点で新宿三丁目を4つに分けると、北西は伊勢丹新宿店、南東には新宿マルイアネックスや世界堂などの大型店が構えている。そしてH&M新宿店裏に広がる居酒屋・バー激戦区の北東エリアは、「本当に物件がない」と地元の不動産屋が嘆くほど新規出店が難しいという。近年では老朽化したビルの建て替えも進んでいるが「賃料が高騰するため出店できるのは体力のあるチェーン店のみかもしれない」という状態だ。
そこで密かに注目を集めるのが、新宿三丁目交差点から見た南西エリアだ。大通りから一本入ればレコードショップや楽器店が点在していることからもともと音楽好きが集まる地だったが、2016年には新宿南口エリアの開発に続き、ルミネが国道20号高架下に食とカルチャーの拠点として「サナギ 新宿」をオープンするなど街の方向性を模索し始めている。メイン通りの新宿中央通りは、行列が絶えないラーメン屋「一蘭」やスニーカーショップなどインバウンドを意識した店が並び、16年には長年中央通りに店舗を構えていたビームス ジャパン(BEAMS JAPAN)が"日本"をキーワードにリニューアルを行うなど外国人観光客を意識した店舗が目立つのも特徴だ。このエリアは他のエリアに比べ小さく分けられたスペースが多いため、資本力がそこまでなくても出店できる余地が残されている。そのため"新宿区のブルックリン"として新しいカルチャーを発信する可能性を秘めているとも言えそうだ。
次から次へと新しい顔を覗かせる新宿三丁目。中心にある伊勢丹新宿店は、新たに100億円をかけて今年から新しく改装を始めると発表している。"眠らない街"はどう変わっていくのか、今後も注目したい。
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