バタフライ・エフェクト 考察
※注意:当コンテンツは映画「バタフライ・エフェクト」の完全ネタバレを含みます。
作品未見の方は、DVD等で本作を楽しんだ後に当コンテンツを読むことをお勧めします。
映画「バタフライ・エフェクト」はとてもよくできた作品です。
しかしこの映画、元になった脚本は「シナリオはよくできているが、物語的にウケないから商売にならない」という理由で制作会社をたらいまわしにされたといういわくつきの一品。
映画化された脚本は、商売として成り立つように各部に手を加えた上でラストを変更したものだそうです。
セルDVD版ではこのオリジナル脚本を元にして、あらためて作られた「ディレクターズ・カット版」が添付されているそうで。(というかディレクターズ・リメイク。)
で、ここからが本題。
劇場公開版では、脚本に手を加えたことによる矛盾が生じているという話がありまして。
せっかくなのでどこが矛盾なのか検証してみよう!ということで作ったのがこのページでございます。
まずは時系列で発生するイベントを書き出し、そこから導き出せる推論を最後に記載しています。
が。
矛盾があろうとなかろうと、バタフライ・エフェクトは良い作品です。
それでも「謎があるなら解明してみたい」という方のみお読みくださいまし~。
■イベント年表
出来事を劇中で描かれた順番でおおまかに書き出してみました。面倒なかたは考察まで飛ばしてください。
1-------------「現在」-------------
夜の病院・診察室
・ノートに走り書きをするエヴァン
2-------------「13年前」-------------
学校
・エヴァンの他にレニーとトミー・ミラーとケイリー・ミラーが存在。
・学校にて面談。(トミーがレニーをいじめている)
・殺人の絵が描かれる。エヴァンは覚えていない。(記憶消失A)
病院
・スキャン検査 父親の遺伝を心配する母(アンドレア)
・日記を書くことを薦める医師(因果a)
家
・日記「ケイリーとトミーの家に遊びに行く 本物の父親ってどんなんだろう」
・母親が目をはなした隙に、ナイフを持って立っているエヴァン。包丁を捨てて「どうしたの?」(記憶消失B)
ケイリー家
・ケイリー父(ジョージ・ミラー)がカメラを購入した とケイリーが話す
3-------------「記憶消失1」-------------
ケイリー邸地下室
・震えるケイリーとうろたえるエヴァン
病院
・検査に問題なし
・父親が原因?ということで面会提案
精神病棟 面会室
・「4/15 今日はパパに会いにいく パパはアタマがおかしい」
・父親が部屋にやってくる
4-------------「記憶消失2」-------------
精神病棟 面会室
・父親に首をしめられているエヴァン。警備員に頭部を殴られ昏倒するエヴァンの父。
墓地
・葬式 ケイリーとエヴァンと母親
5-------------6年後-------------
ケイリー邸 地下室
・地下でダイナマイト発見(因果b)
・レニーがトミーに言われて郵便受けにダイナマイト設置
・ケイリーの耳をおさえるエヴァン
・二人を睨むトミー
6-------------「記憶消失3」-------------
森
・逃げる4人
病院
・森の記憶を蘇らせようとするエヴァンと医師
映画館(森の事件の当日)
・映画「セブン」鑑賞
・ケイリーとキスしているところをトミーに見られる
・父親の折檻をうけた跡を見せるケイリー
・暴力事件を起こすトミー
エヴァン家(当日夜)
・ニュースで爆発事件報道
・雨の中、車で迎えに行くエヴァン母 「引っ越す」とエヴァンに告げる
レニー家前
・トミーはまだ怒っている
・退院したレニーを連れ出すエヴァンとケイリー
森・廃材置き場
・煙が見える
・焚き火の前で犬を袋に入れ、オイルをかけるトミー
・止めに入るエヴァンとケイリーとレニー
・棒でエヴァンを殴ろうとするが、エヴァンが避けたのでケイリーのこめかみに当たる。顔にキズは残らなかった
・火をつけようとしたトミーに飛びかかろうとする
7-------------「記憶消失4」-------------
森・廃材置き場
・目が覚めると倒れているエヴァン
・泣いているケイリー
・燃え尽きた袋
・立ち尽くすレニー
エヴァン家前
・追いかけてこようとするケリー
・「君をむかえにくる」と叫ぶエヴァン
8-------------7年後-------------
大学
・テスト 教授とパブロフの話をする。かなりフランクな関係に見えるので、このときのエヴァンは成績優秀と思われる
寮
・蟲を飼っているエヴァン
・ダンパーと相部屋 エヴァン「7年間記憶が飛んでない祝いをしよう」
バー
・傍に居たグループがダンパーのヘアスタイルをバカにする
・エヴァンが言い寄ってくる女に「虫の記憶のメカニズムを解明しようとしている」と話す
・ダンパーがグループに仕返しをする
寮
・女を連れ込む「ビールでいい?」
・ベッドの下から日記を見つけ出す女「7歳からずっとつけてる日記だ」「読んでくれない?」
・読み返すエヴァン「目の前のことを信じたくない気持ちだ」「犬のクロケットが苦しそうにキャンキャン鳴いている」
「書いている今も体が震えている」「トミーはまるでなにかにとりつかれているようだった」「瞳には憎しみがあふれていて…」
9-------------「トリップ1」→記憶消失4の補完-------------
森・廃材置き場
・倒れこむエヴァン。棒を拾うトミー。殴られるエヴァン。袋を開けようとするレニー。「ママのノドを掻っ切るぞ」
・トミーを抑えて「つかまえているから出してやれ」→ふりはらわれる
・袋に火をつけるトミー
10-------------「リターン1:リライト1」-------------
寮
・目覚めるエヴァン(記憶の補完をしただけなので、脳へのストレスなし。)
レニー家
・レニーの部屋でプラモデルの趣味について言及
・廃品置場についての記憶を問いただす
・「ロープが切れなかった」「放せ ママのノドを掻っ切るぞ」
・興奮するレニー「声をだしたらぶっ殺す」 プラモづくりに戻る
寮
・日記を読み返すエヴァン
「記憶が飛ぶ前ケイリーの耳に手をやった」
「僕は重ねた彼女の手が気になった」
「通りの向こうの郵便箱よりも」
11-------------「トリップ2」→記憶消失3へ-------------
森
・レニー「火がきえたのかな」 トミー「お前がみてこい」
・服にタバコが落ちる
・車が来る トミー「声を出したらぶっ殺すぞ」
・腹にヤケドができる(因果c)
・車から親子がおりて、郵便箱に近づく
・郵便箱を開けて爆発
・レニー硬直
12-------------「リターン2:リライト2」-------------
寮
・目覚めるエヴァン隣でダンパーがセックスをしている
・ヤケドに気がつく:因果cより
(おそらく改変前はこのヤケドは無かったものと思われる。これもリライトされた記憶になるはずだが、大きな記憶の改変ではない。
歴史を変えたのではなく穴埋めをしただけなので、エヴァンの脳にストレスは発生しない)
・レニーと電話で話そうとするが、母親に拒否される
レストラン
・母親と食事 エヴァン「ジェイソン(父)はなくした記憶をとりもどす方法とか言ってなかった?」「なくしてから何年もたってから」
「アタマのいい人だから、記憶をとりもどす方法をみつけたんじゃないかと思って」
・母「あなたぐらいの歳に、その方法をみつけたらしい」「そこから病状が悪化して、入院する直前にはあることができるようになった と言っていた」
寮
・日記を読み返すエヴァン「撮影なんてどうでもよかった」「寒くて服を着たかった」「服を脱がされ…」
サンバー「何やってんだ?」「わけがあって封印した記憶かもしれないんだから 思い出すのはやめておけ」「今よりイカレ野郎になったらどうする」
エヴァン「オレがイカレてるって?自分でもわからないのに」
ダイニングレストラン
・失敗するケイリーを遠くから見るエヴァン
・ケイリーを待ち伏せるエヴァン「信じられない…何年ぶり?」
・禁煙できないケイリー
・トミーについて聞くエヴァン ケイリー「少年院に入っていたけど、今は修理工場で働いている」
・15才で家をでたケイリー「あの父親だもの」「母は再婚した」
・記憶について聞くエヴァンは父親のつくってた映画について聞こうとするが、ケイリーに拒絶される「わざわざたずねてきたのはそのため?」
「私が好きならなぜ連絡をくれなかったの?何故迎えにきてくれなかったの」
寮
・伝言 教授「論文未提出」 トミー「妹が自殺した」
墓地
・花を手向けるエヴァン 紙に「君をむかえにくる」というメッセージを書く
寮
・日記を書くエヴァン「キズがつくれるなら消すこともできないか?ケイリーのココロのキズを」
・日記を読み返すエヴァン
13-------------「トリップ3:記憶消失1へ」-------------
ケイリー邸
・ケイリー父「地下室で撮ろう」
ケイリー邸 地下室
・父「服をぬげケイリー。エヴァンもだ。」
・エヴァン、ケイリーに「耳を塞いでいて」
・ケイリー父を罵倒するエヴァン「いい父親らしく大切に扱うんだ。もしまたこんなことしたらお前を虚勢する」「トミーをちゃんとしつけろ」
・ケイリー「二度と私にさわらないで」
14-------------「リターン3:リライト3」-------------
寮 ケイリーの部屋
・書き換わった記憶の並列化が成される(記憶リライト2:トリップした原因を覚えているので、記憶が完全に上書きされたわけではなく「並列化」。ストレス大により出血。)
リライト記憶の解析
ケイリーがエヴァンを追ってきた。
その後ケイリーとエヴァンはずっと一緒に居り、湖畔で釣りをしたりして遊んだ記憶や、テラスのようなところでキスをしている記憶が追加される。
・洗面所で、サンバーにポップコーンを投げたグループの女「グゥエン」に会う。が、女にはその記憶はない。
・ケイリーにカメラを買った事を問いただすエヴァン。「カメラは返品した」
・母親に電話するエヴァン「チャックとアンドレアです」(再婚した?)
・サンパーとすれちがう時に時間を聞くが、「うせろ優等生」と言われる。(嫌われている?)
・出し忘れた小論文について教授に聞くが「延期は認められない」といわれる(教授に認められていない?)
→このことから、リターンした状態というのはトリップした直後の時間であると推測される
・悪友からカンニングペーパーを渡される
・「ケイリーを驚かせるためになにかしたい」「候補生にやらせろよ」
寮 ケイリーの部屋
・「いつあんなテク覚えたの?」「なんどもイカされた」
・無言電話がかかる
・「どうしてこんなにうまくいってるのか?」「何故家を出て、ひっこした僕を追いかけてきたのか?」「爪先がしびれた」
・「ずっと一緒にいられると思うか?」「その約束でしょう」
広場
・候補生の教育をするエヴァンとメンバー
レストラン
・ケイリーをエスコートするエヴァン
・「今朝目を覚ましたら隣に君が居た」「残りの人生を君と一緒にすごしたい」
・「車が壊されている」 犬の首輪が車内にかかっている
・犬を殺された 「兄は父の虐待でああなってしまった。私のぶんまで殴られていた」
・「話し方も歩き方もかわった。いつもと違う」
・トミー登場
・トミーを殴り殺すエヴァン
刑務所
・面会 母親「2冊しかもってこられなかった」
・囚人リーダー各の男に目をつけられるエヴァン。日記の大半を奪われるが、数ページだけ取り戻す
・牢で日記を読み、それを同室の男に確認してもらう。「水曜に 書いた絵のことで叱られた。ママはそれを見せてくれない。」
15-------------「トリップ4:記憶消失Aへ」-------------
小学校教室
・先生「絵を仕上げなさいエヴァン」
・倒れている2人と血まみれのナイフを持って立つエヴァン(ハゲと金髪、エヴァンの服装から、どうやら囚人リーダーの二人の模様)を描くエヴァン。
・工作の針で手にキズをつけるエヴァン(因果d)
16-------------「リターン4:リライト4」-------------
刑務所
・同室の男がエヴァンの手に現れた傷を見て驚く(記憶リライト4:ストレスなし。)「突然キズが現れた」(因果dによる)
・囚人リーダーの牢に行き、取引を持ちかける…フリをして、ナイフでリーダーー2人を刺す
・同室の男が助けに来て、牢を中から閉めて外の人間が入ってこられないようにする
・奪われた日記を取り戻して読むエヴァン
・「トミーを避けて森へ入った」「煙に気づかず…」
17-------------「トリップ5:記憶消失4へ」-------------
(…のはずだが、このトリップは実際の記憶消失時点(4)よりも若干前まで戻っている。)
森(廃材置き場前)
・エヴァン「袋を破るものを探そう」→鉄片を探し出し、レニーに持たせる「あの親子にしたことを償うんだ」
・(中略)ケイリーが殴られ、エヴァンがおき上がったところから再スタート
・トミーを説得し、トミーは犬を放す…が、レニーがトミーを刺す
・起き上がったケイリーの「頬」にキズが出来ている。頭をかかえるエヴァンと目を開いたまま倒れるトミーと座り込むレニー
18-------------「リターン5:リライト5」-------------
寮の部屋
・ベッドの位置が逆になっている
・記憶リライト5(書き換えた記憶も巻き戻しているので、上書きされたわけではなく並列化であることがここでもわかる)。ストレス大。
リライト記憶の解析
湖畔で犬と遊ぶエヴァン。トミーの墓がクローズ・アップされる(トミー・ミラー 1982~1995)
スキンヘッド男の車の傍にいるケイリー「乗るか?」と聞かれている。 (スキンヘッド男は囚人リーダーにも見える)
以前エヴァンも行ったことのある病院に収監されているレニー。収監されたまま成長している。
・サンバーがやってきて救急車を呼ぶ
病院
・医師と話す母親「40年分の記憶を1年でつめこんだら、脳が破損したので修復した。それで大脳皮質が活発化している」
・医師のIDカード?を盗み、収監されているレニーの部屋にゆくエヴァン。プラモデルの飛行機の話をするエヴァン
・「おまえがあれを僕のてに握らせた時、よくないことが怒ると知っていた。僕とかわってくれ。ここにお前が居るはずなんだ」
(これがきっかけで、他人の人生も幸せにしようとしはじめたのではないか?)
大学
・日記を読むエヴァン「今日パパに会いに行くんだ 名前はジェイソン アタマがおかしい パパと呼べるかな」
19-------------「トリップ6:記憶消失2」-------------
病院面会室
・「答えて。やりなおしたいことがあるんだ」「お前にもできるのか?」
・「そうだよ。だから正しい情報が欲しい。パパから遺伝したんだ。」「使っちゃいけない。他人の人格を変えてしまう。
・「神様のマネはだめだママが死んだらどうする」「そんなことあるわけない。うまくいったら手紙を送るよ」
・ジェイソンがエヴァンの首を絞めようとする
20-------------「リターン6:リライト6」-------------
大学
・首をしめられた記憶が書き足される。(記憶リライト6)ストレスなし。
レストラン
・ケイリーの情報を得ようとするが、ケイリーはココで働いていないということを知る
・ケイリー邸に行き、ケイリー父にケイリーの居所を聞く
スラム アパート ケイリー宅
・ケイリーの顔にキズがある事を知る
・娼婦になったケイリー
レストラン
・ケイリーにトリップの話をするエヴァン
・客でも知りえないケイリー個人の情報を話すことで、ケイリーに信じさせようとするエヴァン
・怒って去るケイリー
寮
・日記を読み返すエヴァン「記憶が飛ぶ前ケイリーの耳に手をやった」「僕は重ねた彼女の手が気になった」「通りの向こうの郵便箱よりも…」
21-------------「トリップ7:記憶消失3へ」-------------
森
・郵便箱に近づく親子を制止しようとするエヴァン。他の3人がそれに続く。
・爆発
22-------------「リターン7:リライト7」-------------
寮
・目覚めるエヴァン。隣に居るのがザンバーではなくレニーになっていて、ケイリーとセックスしている
・自分の手足が消失していることに気づくエヴァン
リライト記憶の補完
手足を失い入院しているエヴァン。ともだちが常に傍におり、介護してくれていた記憶。
ケイリーとレニーがつきあうようになった記憶がつくられる。
大学
・トミーが居る。宗教にハマっているトミー。
・ケイリーと自分の仲について話すエヴァン。
・ケイリー:「あなたははじめて好きになった人。あなたが居たから父のもとに残った」
寮
・風呂で自殺しようとするエヴァン。トミーに助けられる。
病院
・母親に面会にゆくエヴァン。「僕の事故のせいでタバコが増え、肺がんで入院?」
・母:「おまえの言動、父親ににてきたわ」
寮
・レニーの手を借りて、日記を読み始めるエヴァン
「これからケイリーとトミーの家に遊びにゆく」 「本当のお父さんてどんな感じなんだろう」
23-------------「トリップ8:記憶消失Bへ」-------------
エヴァン家 台所
・台所で爆弾を解体するための道具を探すエヴァン少年
24-------------「リターン8:リライト8」-------------
寮
・記憶の補完のみのためストレスなし。
・再び日記を読み出すエヴァン「映画にでたくなかった」
25-------------「トリップ9:記憶消失1へ」-------------
ケイリー邸地下室
・ダイナマイトを見つけ出し(因果bによる)ケイリー父を脅す
・火がついて落ちたダイナマイトをケイリーが拾ってしまう(爆発)
26-------------「リターン9:リライト9」-------------
病院・精神病棟
リライト記憶の補完
裁判や精神鑑定を受けるエヴァン。(ケイリー父を脅したときの行動により、精神病ゆえの犯罪と見られたフシがある)
その後も「病んだ人間」として生活している記憶の上書きがなされている。
・医師の部屋へ行き、日記のありかを問いただすエヴァン。しかし医師は「日記などない」と言う。
「ケイリーを死なせたことの罪から逃れるために、君が創造したものだ」
「ありもしない刑務所や病気や大学の話をした」
・医師:「父親そっくりだ。存在しないアルバムを渡せと言っていた」
・母親と病気の進行について話す医師。
エヴァン「昔とった8mmもってきてくれた?」母親「そこにもってきたわ」
医師「明日の朝他の病院へ移します」
夜の病院・診察室
・「もし誰かがこれをみつけたら、失敗した証拠だ 僕はこの世にはいない もしあの最初のときに戻れたら、僕は彼女をすくえるだろう」
27-------------「トリップ10:記憶消失X」-------------
庭らしき場所
・初めてケイリーに会ったときに戻る。
・「僕に近づくな。近づいたらお前ら皆殺すぞ」
・ケイリー、泣いて逃げる
28-------------「リターン10:リライト10」-------------
リライト記憶の補完
ケイリーとトミーが母親のもとに行く。「2度とはなさないわ」幸せそうに遊ぶ兄弟
レニーの誕生日パーティーのように見えるが、トミーとケイリーの姿はない
大学卒業のトミー「両親のおかげでいまの僕らがあります」 母親と過ごしているエヴァン
寮(?)
・ベッドらしきところで目を覚ますエヴァン。同室らしいレニーが心配して駆け寄る「どうした?」
(設計机があるところを見ると、レニーは設計士の道に進んだ模様。プラモデル趣味の発展?)
・エヴァン「ケイリーは?」レニー「それ誰?」エヴァン「知らないのか?」レニー「医者にいくか?」
廃墟らしき場所
・ドラム缶に昔の荷物を入れ、ガソリンをかけるエヴァ
レニー「いいのか?」エヴァン「必要ない もう自分が誰だか思い出す必要はないだろう」
(荷物の中に日記らしきノート(中身は日記ではありえない)・8mmらしきフィルム・写真が見える。
2人写っている写真の片方はレニーのようだが、もう一人は不明。)
29-------------8年後-------------
ニューヨーク
・母親と電話しているエヴァン「患者がいたから少し遅れる」の言葉から、精神科医としてひとり立ちしたのではないかと思える。
・ケイリーらしき人間とすれ違い、振り返る
…が、後を追うことも声をかけることもなく歩き出す。
----------das ende---------------------------
■ここから考察。
疑問点1
大半のトリップにおいて、そのトリップ先が「記憶消失」の場所であることから、トリップのルールは「記憶の消失している過去に戻れる」だと思う。しかし17-「トリップ5」では記憶が存在するはずのところまで戻って改変している。(少なくとも、6-「記憶消失3」ではその部分の記憶がないという表現はされていない)
それに伴い、記憶がない事が言及されていない場面27-「トリップ10」が問題となる。
「8mmフィルムによってトリップできる」ということを思いついたということは、そこに記憶消失があったということになる。
しかし8mmフィルムの存在を思い出したということは、8mmフィルムを撮っていた記憶は消失していない。
よって『トリップ&書き換え発動のためには記憶が消失していなければならず、少なくともフィルムが撮られはじめた後の記憶が消えている必要がある』ということになる。
つまりフィルムに映し出されたケイリーとの「はじまりの記憶」が消失していなければならない。
それはケイリー自体を覚えていないということになり、エヴァンがケイリーに想いをよせる根源が存在しないことになる。
疑問点2
26-「リターン9」で医師が「日記などない。ケイリーを死なせたことの罪から逃れるために、君が創造したものだ」と言っている。
しかしケイリーが爆死したのは25-「トリップ9 記憶消失1」で、時代的には3-「記憶消失1」。
そして日記を書き始めたのはそれより以前の2-「13年前」の病院(因果a)からのはず。
つまり少なくとも2-「13年前」から3-「記憶消失1」までの間は日記を書いていたはずで、この間の日記はケイリーの爆死にかかわらず存在したはず。なのに無いことにされている。
存在さえしていれば2-「13年前」には「記憶消失B」が存在するため、そこに戻ることもできたはず。
■考察
「矛盾」という言葉がしっくりくるのは疑問点1。
8mmフィルム中に描かれたような「ケイリーとのはじまりの記憶」が存在しているなら、「記憶の無い部分にしか戻れない」というルールを破ることになる。
※トリップして補完されたはずの記憶に何度も戻っている…というのも解せないが、記憶が補完されてしまったかどうかではなく「記憶を失っていた場所」というフラグが能力発動の条件だとすれば矛盾は無いので、疑問点2は問題にならない。
■結論
記憶を失っている部分にのみトリップできるはずが、記憶の存在しているはずの部分にトリップできてしまっているということ。
記憶があるならトリップできないし、記憶が無いならばケイリーへの想いも存在しないはず。という矛盾。
でも正直こんな重箱の隅をつつく必要はない作品ですからねぇヽ(´ー`)ノ
■蛇足
友人から聴いたのですが、矛盾のないオリジナル版(セルDVD版の特典として収録されている模様)では以下の点で演出の違いがある模様。
さらに投げかけられたヒントから、、オリジナルの真・エンディングがどういうものであったのかが判りました。
(内容を確認済み。正解でした。)
以下にその違いとヒント・真エンディングを記載しておきますが、自分で確認したいかたは読まないように。
■オリジナルにおける演出
-------------<子供時代>-------------
自分の家の倉庫で父親の持ち物を発見 中には写真らしきものや、 おじいさんの死亡診断書を見つける。
-------------<場面14>-------------
母親とエヴァンは食事をする。 その後二人は占いの館に行き、エヴァンは占いをしてもらう。
占い師曰く、 「生命線がない」 「魂がない」 「あなたは生まれるべきではない」
母親は怒り狂って占いの館を出る。 母をなだめるエヴァン。
落ち着きを取り戻した母は昔のことを語る。 「あなたが生まれる前に2回流産を経験している」
「あなたは奇跡の子よ」
-------------<最後の場面>-------------
「もし誰かがこれをみつけたら、失敗した証拠だ 僕はこの世にはいない 」
「もしあの最初のときに戻れたら、僕は彼女をすくえるだろう」
■ヒント
Q1 はたして「最初のとき」とはどんなとき?
Q2 映写機から映し出される最初の場面とは?
Q3 エヴァンの能力が発揮される最初の場面とは?
Q4 過去に戻ってどうする?
Q5 彼女を救うことはできたのか?
■推理(ほぼ正答だったので反転)
Q1 はたして「最初のとき」とはどんなとき?
A1 最初のとき とは おそらくエヴァンの能力フラグが生まれてはじめて「矛盾無く」発動したときのことを指す。Q2に続く。
Q2 映写機から映し出される最初の場面とは?
A2 映写機は、もともとの役割として『エヴァンに物心つくまえの記憶フラグ』としての役割があったのだと思われる。
つまり映写機で撮影された最初の場面とは、エヴァンの通常記憶すら曖昧な時期の情景。Q3につづく。
Q3 エヴァンの能力が発揮される最初の場面とは?
A3 A2の考察により、『能力発揮の最初の場面』とは、エヴァン自身が記憶のない時代であることがわかった。
そういった時期であれば、「記憶消失フラグ」が立っていようといまいとエヴァン自身がフラグ前後の記憶を持っていないため、前述「結論」で出したような矛盾が無くなる。
エヴァンの記憶消失フラグが「子供の頃の記憶が何歳から存在するか」というのは個人差があるので特定できないはずだが、ここで重要になるのは「オリジナルにおける演出」の<場面14>「あなたが生まれる前に2回流産を経験している」という部分。Q4につづく。
Q4 過去に戻ってどうする?
A4 「記憶のない時期」という条件に「2回流産をしている」という演出を加えて考えると、映写機に映し出された最初のシーンとは「出産のシーン」なのではないか という答えにたどりつく。
そして劇中の演出より、大人の状態から子供時代の過去に戻った場合も「戻る前の記憶と感情が保持されている」ということがわかっている。
そのシーンで、その瞬間にしかできないこと…それは「生まれないこと」。
つまりエヴァンは自殺を選んだという結論になる。
Q5 彼女を救うことはできたのか?
A5 何をもって「救われた」とするかは難しいところであるが、少なくともエヴァンと関わりあうことによる不幸からは逃れることができたはず。
ということで、真エンディングはとてもダークなものだった模様。
※実際は、エヴァンは出産時に自らへその緒を首にまきつけて窒息死したそうです。救いが無さ過ぎる。
そりゃ製作会社も二の足踏むわ。
やはり劇場公開の通常エンディングが、切なくも一番しっくりくるということですな。