始めにいいますが、元から書くつもりでした(お、そうだな
えーと、皆さんサラリーもらってますか?ね、あと何年自分の時間の犠牲にして、スズメの涙ほどのオチンギンをいただかなきゃならねーんだよと、日々枕を濡らしていると思いますが、まあとはいえね、今朝のTVタックルでも「田舎移住はデストピア」なんて特集やっていたように(あ...記憶が...)ねえ、副業とかナリワイをみつけるったって大変ですよ。そういうのをやるものやっぱり才覚や胆力を必要とするんですから。やっぱり、今の会社にしがみついて、あたえられた場所で頑張るしかない。
今日はそういうSFです。
えと、「眉村卓」。そう「自殺卵」で有名なあの作家さんですが、彼は「インサイダーSF」という言葉を提唱していました。これは「組織の中の人間にフォーカスしたSF」ということなのですが、まこれ簡単に言えば「サラリーマン小説」です。
まあ、つまりね。SF的未来でも結局サラリーマンってやつは...
①下級アイディアマン 眉村卓
え、未来ってのはまあ、色々なァ職業というものが、新たに出てくるものですが、このォ下級アイディアマンというものはですね。まあ今で言えば電通、リクルート、ね、そういう大き会社のソリューション解決なんつってね、組織や製品に問題があればそこに提言をする。問題がなくてもあれこれ口を挟んでくる、まあ非常にやっかいな人たち、その未来版だと思っていただければよろしいかと思います。
さて、この小説の主人公であるサワイ・アキラ氏は新米アイディアマンでございます。しかもただの新人じゃございません。ドンケツの新人。この世界、アイディアマンになるには非常に厳しい訓練や試験を潜り抜けなければいけないのですが、どれもドンケツ。新人でしかもドンケツですから、いきなり水星(おSF)の研究所に飛ばされるんですね。水星の研究員もいい人たちなんですが、やっぱり主人公と同じで、ちょっと都落ち感、ドンケツ感があるんですね。でも彼らは開き直って各々の研究を行っている。すると困っちゃうのが新人アイディアマン。上司に報告します。「問題はないようにみえます」すると上司が「何を言っているんだ。問題を見つけるのが、お前ェさんの仕事じゃねえのか、え、そうだろ。見つけるんだよ、問題を」とこういうわけなんですね。
で、まあなんとか天の助け、なんていうのも変ですが、問題が起こる。自律で動くロボットが正しい動きをしなくなる。それどころか集団で研究所を破壊しにかかる。
まあ、ドンケツといえどもさすがは電通、いや下級アイディアマン。このロボットの不可解な現象の謎の真相を見事に突き止めるんですね。で見事水星から栄転...ということにはならず、上層部のトンチンカンな対応により水星は更に大変なことになってしまいます。最後は地球に戻った主人公の呼び出しブザーがなるんですね、でももうこの仕事に無力感を感じているので中々応答しようとしない。それでも、やはり彼は水星へ戻ることを進言しにいくことにするのです。結末の文を引用します。
下級アイディアマンとしての、栄光も苦しみも、みんなもとのまま抱え込んで、生きてゆくのだと、思いながら、いつか頬には、微笑みさえ浮かべていた。
句読点のカッティングの多さに、主人公の強く重い決意がにじみ出てますね。そして最後の一文。
僕が変質を遂げてまでも、作業を続けようとするあの作業ロボット、ぶきっちょで頑固な作業ロボットに、どこかにていることにその時初めて気がついたからだった。
泣くな!サラリーマン諸君。無責任時代の植木等映画でも見て、一人で傷を乾かせ!
②社員たち 北野勇作
あのさあ、サラリーマン生活ってのは不条理の連続なの。それを体現しているのが諸星大二郎御大の「会社の幽霊」であり、北野勇作の「社員たち」なんですね。半沢直樹なんて起承転結がはっきりしすぎて、まっっっっっっくリアリティがない。まあ、みなさん「パシフィクリム」と同じ感覚で見てたと思うので、まあ、それはいいんですが。
さて、理不尽。社員たちは短編集なのですが、しょっぱなの短編から不条理アクセル全開です。引用します。
敵の攻撃によって地中深くに沈んでしまった会社を残された同僚たちといっしょに堀り始めてからもう半年ちかくになるのだが、
まあ、こういう経験した方、多いんじゃないですか?(錯乱
いきなりの不条理でも主人公が気にしているのは「失業保険がなかなかでないこと」という超リアリティ、このギャップでとりあえず悶絶してください。
まあ、6Pほどの短編なので内容を説明してもあれなんですが、最後のほうにね、全サラリーマンのささやかな願いが込められています。
できれば、社員の名前をすべてそらで言えるような、そんな社員思いの社長であってほしいと思う。そうとも社員の願いなんてその程度のものなのだ。
哀しい。
最後の短編「社員の星」は内田百間の「冥土」も匂わす「彼岸小説」の白眉。
まあ、シャイン社員、シャイニングスターというパンチラインを読んだら、月曜日に備えてもう寝ろ。
③皆勤の徒 酉島伝法
さっさと次の本をだせ、でおなじみ酉島伝法の空前絶後の超ど級SF。酉島伝法版AKIRAにならないでくれよ、と思わず願わずにはいられない、それほどの傑作。
説明しようがないのでしないですが、ブラック企業に椎名誠と筒井康隆とグレック・ベア・イーガン兄弟(ではない)の脳を繋いで2千年くらい熟成したらこんな小説になります。
とにかく目の前に仕事はある。だからやる。次々くる。だからやる。でも何のための仕事かわからないし、上司に聞いても話が通じない、そもそも上司がわかっているかも妖しい。そのうち更に上のレイヤーで何かの意思決定がいつのまにかされ、仕事がペンディングになったり復活したりして、最後のほうは映像でしかみたことにない社長が更迭されていく。そんなリアリティが透けてみえるSFです。
まあでも4篇あって、残りの3篇はあんまサラリーマン関係ない純なSFなのでどーぞ。漫画化するならドロヘドロの人とかどうですか?
えー、毎回ブログの最後のほうは息切れがして、自分でもなんだかなですが。
まだ、日曜日は終わってない。これからコドモと公園イクゾォォォォォ!!!
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