低価格化と反日デモによる認知度向上に加え、もう1つ中国でサイゼリヤが若者や女性に支持されるようになった要因がある。それは、健康志向の広がりでサラダが支持されたことだ。
進出当時、中国では生野菜を食べる習慣が一般的でなかった。サラダを提供しているのは現地の超高級ホテルくらいしかなかった。サイゼリヤでは現地店舗に浄水器を設置するなどして、生で野菜を提供できる体制を整えていた。
中国では所得水準の上昇に伴い、美容を気にする女性が増えた。中国では「サラダ=美容によい」という考えがあり、手ごろな価格でサラダを提供していたサイゼリヤが注目された。現在でも中国の店舗では日本と比べ、サラダの出数は多いという。
このような努力で来店客数は伸び続けたが、益岡氏が現在の役職である取締役海外事業本部長に就任した09年4月当初、海外法人は慢性的な赤字体質から脱却できていなかった。
赤字の最大の原因は大規模な店舗が多く、固定費の割合が高かったことだ。中国では客席が200~300席という飲食店が多かったため、現地のサイゼリヤも同じ規模の店舗設計にしていたが、ここに大きな問題があった。
「大規模店が仮に1日に1000人のお客さまを受け入れられるとしましょう。ピーク時に作業が集中するため大量の店員が必要となるので、人件費もかかりますし、店員をマネジメントする店長の負担も増加します。また、満席時に料理を提供するまで時間がかかってしまい、お客さまの満足度が低下します」
解決策は明らかだった。1店舗あたりの席数を日本と同じ120~130席程度にして、日本と同じ標準化された作業内容を徹底することだ。簡単にいうと1000人のお客に対応できるがもうからない大型店ではなく、500人のお客に対応できてもうかる店が2つあったほうがよいということだ。
現地の日本人幹部や益岡部長はこの方針を現地社員に納得させる必要があった。現地社員は「ほかのお店は大規模店でうまくいっている」「お客さまがたくさん来るのだから、店を広くして何が悪いのか」「日本と同じ方法でうまくいくのか」となかなか納得しなかった。
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