ソフトウエアの開発業務では特にテスト工程の人手が足りなくなることが多くあります。
大抵の場合、派遣のテスターを雇うのですが、一度とても苦労させられたことがありました。
テスターに期待すること
派遣のテスターに期待する仕事、それはもちろんテストで一番手間がかかる仕事であるテスト仕様書の作成です。
仕様書を読んで、テスト仕様書に落とす。
テスト仕様書とはご存知の通り、基本的にテスト入力に対するテスト出力を定義した書類で最も基本的な形は以下なような感じだと思います。
テスト番号 | テスト入力 | テスト出力 | 確認日 | 確認者 |
---|---|---|---|---|
1-1 | 手順xxxの操作 | 画面がxxxの状態になる | ||
1-2 | xxxとyyyの組み合わせを入力 | 結果がxxxとなる | ||
・・・ | ・・・ | ・・・ |
プログラムの仕様からどのようなテスト入力し、どのようにテスト出力を確認すればテストが成り立つかをテスト仕様書に記述していくわけです。
この大変な手間がかかる仕事をテストのプロである派遣テスターにやってもらおうというわけです。
テスト仕様書さえできてしまえば、テストの実施作業は誰でもやれます。
というよりテスト仕様書を作る過程で、上の例でいえば確認日と確認者の箇所は埋まっていき、仕様バグ、設計ミス、基本的な動作確認ができてしまうのが普通です。
派遣テスターの主な仕事がテスト仕様書の作成であることは派遣会社にも派遣される本人にも説明しました。
なぜテスターがテスト仕様書を作るんですか?
実際に派遣されてきた本人に一通りの説明をし、作業に入ってもらいました。
ところがいつまでたってもシステムを触っているばかりで、テスト仕様書を作る様子がありません。
理由を聞くと「なぜテスターがテスト仕様書を作るんですか?」と逆に質問されました。
思えば人材のミスマッチが明白になったこの時点で、派遣会社にクレームを入れ、別の人を派遣してもらうべきでした。
そうしなかったことが後の大混乱を生んでしまいました。
仕様書は読んだことがない
テスト仕様書を作ってもらうために来てもらったんだから、と説得し作成を進めてもらうことになりました。
ところがまたシステムを触るばかりで、テスト仕様書を作る様子がありません。
そのプロジェクトのテスト仕様書はテンプレートもあり、フォーマットも決まっていて仕様書さえ読めば、すぐに作れるようにしてあります。
しかし、よくよく話を聞いてみると仕様書は読んだことがなく読んでもわからない、とのことでした。
いやだってテスト仕様書の作成経験があるということで来てもらっているのに一体なぜ?
どうも前の派遣先では仕様書を読まず、テスト仕様書も作らず、適当にシステムを触って不具合のようなものがあれば報告する、というような仕事をしていたことがわかりました。
つまり、テスト仕様書の作成経験はなかったということです。
さらに私の職場ではテスト仕様書を使わないテストはテストとは呼んでいなかったため、テストの経験もゼロだったことになります。
嘘も100回言えば真実になる
当時の上司に報告したところ、テスト仕様書作成経験者に交代してもらう、ということになりました。
派遣元に連絡したところ、代わりの要員を探すのでしばらく待って欲しいとのことでした。
交代要員が見つかるまでの間、騙し騙し彼女(派遣に来たのは女性のテスターです)を使うことになりました。
この間、派遣会社から彼女に連絡が行ったと思います(このような場合、必ず派遣元の会社が間に入ります)。
そして彼女がとった行動、それは派遣で働いている人達に「噂話」を広めることでした。
- テスト仕様書は派遣でなく、正社員が作るもの。
- 仕様書も読まず、テスト仕様書を作らず、適当にシステムを触ったほうがバグがたくさん発見できる。
- タバコ部屋で正社員のxxさんが私が必要でずっと契約すると言っていた。
もちろんすべて「嘘」なのですが、嘘も100回言えば真実になるようで派遣の人達のモチベーションや成果に負の影響を与えてしまいました。
「タバコ部屋で正社員のxxさんが・・・と言っていた」については、念のため本当にそんなことを言ったのか確認すると一様に「そんなこと言ってない」という答えでした。
テスト仕様書なしでテストすると何が起こるか?
短い期間とは言え、「なぜテスターがテスト仕様書を作るんですか?」と質問する人が担当した箇所がどうなったか?
これです。
そもそも品質を語るレベルではないのです。
まずマニュアルどおりに動かないのですから。
実際、そんなしょーもない製品のユーザーになってしまった経験がある人もいると思います。
開発者の一人としてそんな製品に対して「一体どういう開発体制ならこんな製品がリリースできるんだ?」と疑問に思っていたのですが、やっと理由がわかりました。
テスト仕様書を作れない人達が適当にシステムを触る、それがテスト・・・。
そういう体制で開発している人達がいるんだということです。