広がる「人狼ゲーム」の輪…イベント盛況、フリーマガジン、専用スペースも登場し、社員研修にも活用
近ごろ巷に流行るもの会話と推理で楽しむ心理ゲーム「人狼(じんろう)ゲーム」がテレビやインターネット上で話題を呼び、ファンらの交流も盛んになっている。大阪市で今月開催された「人狼文化祭」には、関西を中心に全国から2日間で約1150人が参加。昨年末には専門のフリー月刊誌「WEREWOLF(ウエアーウルフ)」が創刊され、週末は専用スペースも人気だ。一方で、ゲームでは人間観察力も問われるため、ビジネスの世界にも活用できるとして社員研修に取り入れる企業もあるという。
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「人狼文化祭」の会場となったクリエイティブセンター大阪(大阪市住之江区)。2、3階の両フロア(計約1500平方メートル)には、全国から集まったサークルや団体などによるゲームスペース約30カ所も設けられ、参加者らがゲームに興じていた。クイズ王やプロの女性マージャン士らもゲスト参加し、交流の輪を広げていた。
人狼文化祭は平成26年に初めて開催され、今年で5回目。参加者は年々増え、日本最大級の人狼ゲームの祭りとしてファンの間で認知されている。同文化祭企画局代表の人狼ネーム「かのきち」さん(40)=男性=は「昨年は約600人の参加があり、こちらから参加を断ることがあったので、今年は期間を2日間にしました」と説明する。
かのきちさんは人狼文化祭を始めたきっかけについて、「当時の関西はサークル活動が中心になっていたが、サークルごとにルールが微妙に違っていたので、これを一緒の場所に集めたら面白くなるのではと思いました」と話す。
人狼ゲームは参加人数が10人程度と多いほど奥深さが楽しめるが、最短でも1時間ほどかかる。だが、日常でこうした環境を作るのは難しく、「文化祭に参加すれば同じ趣味の仲間を見つけられ、人狼ゲームファンたちの交流にもつながる」と力説する。
かのきちさんの本業はシステムエンジニアで、文化祭開催はあくまでも趣味という。「人とのコミュニケーションが楽しめる」とゲームの魅力を語り、「今後もプレーヤーをもっと増やしたい」と意気込んだ。
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人狼文化祭会場の一角に物販コーナーが設けられ、人狼ゲームから派生したカードゲームやグッズ類などが販売されていた。そのなかに、人狼ゲームを専門に扱うフリー月刊誌「WEREWOLF」があった。同誌は昨年12月に創刊。2千部を発行し、全国約100のサークルや団体などに配布しているという。
同誌を発行する人狼ネーム「ながれ」さん(39)=佐賀県唐津市、男性=は「人狼ゲームに参加する人は、対面型とインターネット型の2種類に分かれる。この2つをつなぐ役割として、紙媒体が必要だと思いました」と話す。
4月15日発行の4月号には、全国のサークルや団体が開催したイベントリポートや、人狼ゲームができるスポットなどを紹介。さらには、人狼ゲームがビジネスコミュニケーションの場でも活用されていることを報告した記事も掲載。「鹿児島県の団体が提唱しましたが、人狼ゲームで勝ち抜くディスカッション力や人間観察力が、ビジネスの世界にも活用できるとして、社員研修などにも取り入れられているそうです」とながれさん。
ながれさんもコンピューターエンジニアの会社を経営しており、趣味が高じて雑誌発行に至ったという。「広告はないので、印刷代を含めすべて自腹です。記事を提供する団体もボランティアで書いてくれています」と話している。
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気軽に人狼ゲームが楽しめる専用スペースも登場した。
大阪市中央区難波の「人狼HOUSE大阪店」では週末の午後、数十人の来店客が集まり、人狼ゲームが行われていた。
同店は平成28年2月にオープン。東京の渋谷店に次ぐ2号店で、計約40人がゲームに参加できるスペースがある。店長の「ばたこ」さん(27)=男性=は「(人数が多いほど楽しめるのに)参加者を集めるのが難しいゲームなので、それならば自分たちで集めようとオープンしました」と話す。店内にはゲームを仕切る「ゲームマスター」がスタッフとして常駐し、多い日には約50人もの客の対応をしている。
ばたこさんは人狼ゲームの魅力を「人と話をするコミュニケーションツール。参加するのに道具は必要ないし、ルールさえわかれば老若男女を問わずに参加できること」と話していた。 (格清政典)
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【用語解説】人狼ゲーム 「村人チーム」と、村人に化けた「人狼チーム」に分かれて行う。プレーヤーはそれぞれが村人と人狼となり、正体がばれないように他のプレーヤーと交渉して正体を探るという頭脳ゲーム。ゲームを仕切る「ゲームマスター」の進行で半日単位で行われ、人狼は夜間に村人1人を襲うため、プレーヤーは昼間に話し合いをして誰か1人を追放する。これを繰り返し、人狼全員が追放されれば村人チームの勝ち、人狼と同じ人数に村人を減らすことができれば人狼チームの勝ち。人狼かどうかを見分けられる「占い師」や、人狼チームの味方をする「裏切り者(狂人)」などを加えることで、ゲームがより奥深くなる。
■人狼HOUSE大阪店 大阪市中央区難波4の8の6山下ビル2~4階。電話06・6585・9139。