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時代の正体〈605〉社会壊す「働き方改革」 高度プロフェッショナル制度

  • 神奈川新聞|
  • 公開:2018/05/28 11:00 更新:2018/05/28 11:00
時代の正体取材班=田崎 基】政府・与党が今国会の最重要法案に位置付ける、いわゆる「高度プロフェッショナル制度(高プロ)」の創設が月内にも衆院で強行採決されようとしている。年収1075万円以上の専門職について労働時間規制や残業代支払いの対象から外す制度の内実は、「24時間働かせ放題」法制だと批判する専門家は少なくない。政府・与党が喧伝(けんでん)する「働き方改革」は、労働時間と残業代という概念を突破する蟻(あり)の一穴となる恐れがある。そこに欺瞞(ぎまん)が透けて見える。

 「働いた時間でなく、成果で賃金を支払う仕組み」と政府が説明する高プロ。実態はしかし、歯止めなき労働者の酷使を招く。

 法文上は1日24時間、年間261日働くことを業務命令とすることも可能だ。労働基準法が定める「1日8時間、週40時間」という労働時間の枠組みを破壊し、使用者(企業)側には残業代の支払い義務もない。

 労働問題に詳しい日本労働弁護団常任幹事の嶋崎量(ちから)弁護士(神奈川県弁護士会)は「『24時間働かせ放題』と言っていい。新制度で定める『年間休日104日以上』以外は全ての時間的規制がなくなる」と指弾する。

 「年収1075万円以上」の「高度な専門職」が対象という規定も、実は際限なき労働の歯止めとはなり得ない。

 まず「年収条件」。新制度では「支払われる『見込み』」と定められている。従って労使契約の当初1075万円以上を支払う見通しが立っていればよく、実際に支払われる必要はない。

 嶋崎弁護士は解説する。

 「仮に休日を差し引いて年間261日、毎日24時間働き、年収1075万円を支払う『見込み』で労使契約したとする。割れば時給は1716円だ。だが人はそんなに働けない。帰宅し休息も取る。使用者はその日数や時間を『欠勤』と扱えば、実際に支払うのは年収1075万円を下回ることになる」

 現実の運用ではしかし、「24時間働け」という指示が出ることはない、と嶋崎弁護士はみる。むしろ懸念するのは、ノルマ(達成すべき成果)を課した上、未達成で休むとその時間を欠勤として扱うケースだ。「残業という概念が高プロには存在しないので、何時間働いても年収は増えない。だが、課されたノルマを達成できずに休めば年収を減らされることが可能となる恐れがある」

 また、対象職種である「高度な専門的職」も法律ではなく、省令に委ねられるため、改正に国会の議決は必要ない。一旦運用が始まれば厚労省が主導してルールを定めることになる。

必要性なき制度


 人間の限界を超える長時間労働を課すことができ、しかも残業代の支払い義務もない高プロ。一体誰が必要としているのか。

 労働者側のメリットとして「いつどれだけ働いても、休んでも自由。成果だけ出せばいい」と説明されるが、嶋崎弁護士は訴える。「現在でも労使契約によって成果に応じて賃金を支払う契約は有効だ。この点から高プロは完全に『必要性』を欠いている制度だと強調しておきたい」

 必要性の疑義は今月9日の衆院厚生労働委員会でも露呈した。加藤勝信厚労相に野党議員が再三問うた。

 -ニーズの把握をしているのか。

 「いくつかの企業とそこで働く方から、いろんな話を聞かせていただいている」

 -どのくらいの数の方が必要だとしてるのか。

 「十数人からヒアリングした」

 あまりに杜撰(ずさん)な政府対応。導入ありきの姿勢が透ける。

 嶋崎弁護士は「労働者側にはなんのメリットもない」と切り捨てる。「成果を課し、残業代を支払わずに、どれだけでも働かせ続けることができる制度」。それが高プロの真の姿だ。...

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