朝鮮日報

【コラム】北朝鮮の体制保証と「韓国並みの繁栄」は同時に可能なのか

 事実であるかのようになってしまった北朝鮮の伝説が2つある。解放(日本による植民地支配からの解放=日本の終戦)後、親日派を徹底的に排除したという伝説と、歴史清算によって1970年代初めまで韓国を上回る経済発展を成し遂げたという伝説だ。これらの伝説は、韓国で北朝鮮政権擁護論が今日まで生き延びる基盤となった。北朝鮮には「歴史的正統性」と「繁栄の可能性」があるから、敵対政策をやめて支援すれば「過去の栄光」を取り戻す自生力があるという論理だ。

 北朝鮮の粛清の歴史は悲惨だ。国内の民族主義者、生え抜きの共産主義者はもちろん、親中派や親ソ連派まで一掃した。ところが、親日派を粛清したというはっきりとした痕跡はない。北朝鮮は韓国のように親日派清算のための特別法を作ったこともないし、誰をどのように断罪したかも記録していない。その代わり、韓国左派の基準で「明白な親日舞踊家」とされる崔承喜(チェ・スンヒ)が北朝鮮に渡って20年以上も活躍していた事実はよく知られている。1956年の8月宗派事件の時、反対派が金日成(キム・イルソン)総書記に向かって「土窟の中の人民が飢えと病魔に苦しむ経済の現実」と共に「親日派重用」を批判したという事実も歴史に残っている。日本植民地時代に君臨していた日本人技術者を、解放後に独立運動家以上に優遇したという証言も記録されている。

 「親日清算」伝説は「過去の栄光」伝説と同様、コインの裏表の関係にある。韓国とは違って、解放後の北朝鮮には日本の巨大な産業施設があった。当時の日本が北朝鮮地域を軍事基地化した結果だったが、それ以前に野口遵のような日本の産業界の大物たちが大陸で事業拡大を試みたことも一役買っていた。北朝鮮政権支持者たちは「これらの資産は6・25戦争(朝鮮戦争)時に米軍の爆撃によりほとんど破壊された」と言う。だが、これは北朝鮮が裸の土地から自ら復興したと美化するためのうそだ。戦争直後、北朝鮮の工業生産は戦前の60-70%程度だった。それも共産陣営の全面的な支援により数年後に回復した。世界の脱植民地化の中で、1950年代の工業的生産構造を持つ地域は北朝鮮が唯一だった。日本が残した産業設備や戦後の国際支援があったからだ。北朝鮮政権の業績があるとすれば、そのために親日派を重用し、日本人を優遇した「柔軟性」くらいだろう。

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