ネットフリックス、世界同時配信の裏側

【特集Part1】ユーザー獲得は細部に宿る

2018年5月28日(月)

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 瀟洒な邸宅が建ち並ぶシリコンバレー屈指の高級住宅地、ロスガトス。パロアルトやマウンテンビューのような沿岸部とは異なり、森と丘、ビクトリア様式の建物に囲まれた美しい街だ。3月のある日、日付が変わる寸前だというのに、ロスガトスの一角では明かりが煌々と灯っていた。米動画配信大手、ネットフリックスの本社にある“War Room(作戦司令室)”である。

 この日の深夜0時、ネットフリックスは新テレビシリーズ、「ジェシカ・ジョーンズ・シーズン2」を世界190カ国で同時配信した。「ジェシカ・ジョーンズ」はアメコミで有名なマーベル・コミックに登場するスーパーヒロイン、ジェシカ・ジョーンズを主人公にした実写版テレビシリーズ。配信の際のトラブルに備えて同社のエンジニアがWar Roomに待機していたのだ。

 そして、午前0時の配信を前に始まったカウントダウン。さぞや大きな歓声が沸き起こるだろうと思ってみていると、上がったのはまばらな歓声だけだった。コンテンツの世界同時配信はネットフリックスにとってはもはや日常で、大騒ぎするようなイベントではないということだろう。War Roomの光景はネットフリックスがグローバルに拡大している一つの象徴である。

ジェシカ・ジョーンズ

 インターネットのDVDレンタルサービスとして1997年に産声を上げたネットフリックス。今では動画のストリーミング配信だけでなく、テレビシリーズなど人気コンテンツの制作を自社で手がけるまでに成長した。1日に再生される映像は平均で1億4000時間に達する。ニュースやスポーツ中継は手がけていないが、コンテンツ制作力や配信網を考えれば新時代の「テレビ局」といっても過言ではない。

 足下の業績は絶好調だ。2018年1-3月期の売上高は37億ドルと前年同期比で40%増加した。会員数は全世界で1億2500万人。お膝元の米国もさることながら、米国以外の国々の伸びが大きく、米国外の会員数は約6800万人と米国内を既に上回っている。広告収入に依存していないネットフリックスにとって会員増こそが成長のドライバー。市場も同社を「勝ち組」の一社と見なしている。

 DVDのネットレンタルからストリーミング配信に大きく舵を切った2007年を第二の創業、自社コンテンツの制作に乗り出した2013年を第三の創業だとすれば、世界展開が加速している今は第四の創業と言える。その急成長の背景にあるのは、魅力的なコンテンツはもとより、視聴体験の向上にかける飽くなき執念とデータ活用、そして最先端のテクノロジーである。

 世界中に配信網を広げる裏側で彼らは何をしているのか。そしてアキレス腱は何か――。その内部に取材班が潜入した。

(ニューヨーク支局 篠原匡、長野光 =敬称略)

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「ネットフリックス、世界同時配信の裏側」の著者

篠原 匡

篠原 匡(しのはら・ただし)

ニューヨーク支局長

日経ビジネス記者、日経ビジネスクロスメディア編集長を経て2015年1月からニューヨーク支局長。建設・不動産、地域モノ、人物ルポなどが得意分野。趣味は家庭菜園と競艇、出張。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

長野 光

長野 光(ながの・ひかる)

日経ビジネスニューヨーク支局記者

2008年米ラトガース大学卒業、専攻は美術。ニューヨークで芸術家のアシスタント、日系テレビ番組の制作会社などを経て、2014年日経BPニューヨーク支局に現地採用スタッフとして入社。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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