※すべての記事は上の「記事一覧」で見られます。
※上の「日記」で検索すると当ブログ内の検索ができます。
※旧サイトはhttp://www1.odn.ne.jp/kamiya-taです。
※コメント・トラックバックには普段は反応・返答しませんのでご了承ください。
※メールはcbl03270(at)pop06.odn.ne.jp ←(at)を@に直してください。
※うまくメールが送れないときはこちらからどうぞ。
※お仕事の依頼や回答が必要なことなどはメールでお願いします。
2018-05-27 「安倍を支持する3割」についての想像
「安倍を支持する3割」についての想像
「安倍さんを支持する人ってどういう部分が良いと思ってるの?」というはてな匿名ダイアリーの記事があった。
安倍さんを支持する人ってどういう部分が良いと思ってるの? - はてな匿名ダイアリー
安倍政権の支持率は、どんな不祥事が出てきても3割くらいから下がらない(まあ「7割くらいは支持していない」とも言えるが)。
この3割ってどんな層なのだろうか。
勝手に想像してみる。
一つは「経済」(経済政策)
この間、福岡市で印刷会社に勤めている、娘の保育園時代のパパ友・Aさんと酒を飲む機会があったんだけど、彼の感覚では「不動産、建設がホントに景気いいですよね~」。
これは景気動向調査のようなデータとも一致するが、細かい数ヶ月単位の数字データというより、ざっくりとした景気の感覚。例えば年間の展望について建設は「首都圏再開発事業などで好況が続く見通し」、不動産は「首都圏を中心としたオフィスの大量供給が見込まれ、堅調な業績推移を予想」みたいなやつ。
http://www.tdb.co.jp/report/industry/kenchiku.html
その理由は何ですかとAさんに聞くと「まあ東京オリンピックでしょうね」ということ。
加えて福岡市の高島市政はアベノミクスの先取りをするような「アベノミクスの地方版実験場」の様相を呈している。福岡市では高島市長がやっている「天神ビッグバン」や「ウォーターフロント再整備」(要するに都心の巨大再開発)のようなものも影響しますか、と聞くと、「ああ、福岡ではそれもありますね」と答えた。
全国の企業の声を聞くとこんな感じ。
https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/201804_jp.pdf
- やはり東京五輪・パラリンピック関連の工事が増えていく(電気配線工事)
- インバウンド関係を中心に依然として民間の投資意欲が旺盛である(土工・コンク リート工事)
- 五輪関連で業界は最盛期にある(一般管工事)
- インバウンドが増加しているので、2・3年は好調が続くと予想(貸家)
- 東京五輪関連の仕事が継続する(土地賃貸)
- 消費税増税を控えて駆け込み需要が予想される(内装工事)
- 1年後には、リニア関連が本格的に動き出すと考えられる(一般土木建築工事)
どれもこれも政策がらみである。
「だから不動産・建設が安倍政権を支持している」というつもりはない。
もっと大ざっぱな枠で。
つまり、建設とか不動産に限らず、景気のいい業種はホントに景気がいいんだろ、と思う。そうなると「このまま安倍政権が続いてほしいな」と思うのはある意味でフツーの感覚ではないのか。学生などが就職の好調を理由に安倍政権(自民党)を支持するという話を聞いたこともあるが、それはある意味でわかる気がする。
そういう人には、「文書改ざん」「ご飯論法」「日報隠蔽」という話をしてもなかなか響かない……というのは、それなりに理屈が通る。
過熱しているビジネスに身を置いている人の感覚と、そこをまったく除外して民主主義の文脈だけで語っている人の感覚のズレが、「まだ3割も支持している」という歯ぎしりにつながっている……これがぼくの想像。
もちろん、わかるよ。これが2020年(あるいはそれ以前の消費増税や不動産バブル崩壊)までのカンフル剤に近いという不健全性は指摘できる(この「不健全性」についてはこの記事の最後に「余談」として付記しておく)ってことは。松尾匡も『そろそろ左派は〈経済〉を語ろう――レフト3.0の政治経済学』でも2020年が終わったらとんでもない破綻がやってくるんじゃないかという不安を書いていた。
そして実感のない人には全くないってことも(後述)。
だけど、安倍は2020年のオリンピックまでがんばって首相の座にしがみついて、できれば改憲を成し遂げ、「歴史的名宰相」という称号を手に入れて去ろうとしている。その後で大崩落が起きてもカンケーないのである。そこまで保てばいい。むしろ安倍が去った後に大崩落が来るほど、自分の価値は上がるんじゃないか。
二つ目は「保守色」
むろん、こうした経済政策だけではない。
憲法改定をはじめとする復古的・タカ派的な安倍政権の対応を、熱狂しているコアなファンもいるのだろう。
「WILL」とか「Hanada」とか読んでる人ね。
この前、弁護士の懲戒請求問題に絡んだ人たちの年齢が話題になっていたよね。
ぼくが前の団地で町内会活動をいっしょにやってきた70代の男性がいる。彼なんかはiPadを購入してネットに日常的に触れる環境ができて、国際的・歴史的な問題で急速に右翼的な発言が増えていっていた。もともと歴史好きで新書などを読んでいたからその素養はあったんだけど。(ただ、左派のぼくともふつうに付き合ったし、彼は「赤旗」を勧められて読んでいたりしていて、iPad購入後もずっと続けていたようだった。)
どの年齢層に多いってことじゃなくて、全年齢層にいる感じがするけど、中高年は、若い人以上にけっこうこじらせている人が多いなあという気はする。いずれにせよ、こういう保守色を求めて安倍政権を固く支持している層は確かにある。
いわば「経済政策」と「保守色」という2つの理由が安倍政権支持のコアにあるのではないか。
そして「他に人がいない」という理由
この2つの理由をコアにして、その外側にこれらをライトに支えるのが、「他に(首相となるべき)人がいない」というものだ。一般的に「他に人がいない」というのではなく、「経済」「保守色」で良いと思っているコアがあるので、「色々まずいかもしれんけどこの2つでとりあえずいい感じなので、他に人もいないし」という支持理由。
いや、わかるよ。そういう「理由」に以下のように反論したくなるのも。
安倍はあんなひどい民主主義破壊やっているんだから、安倍以外だったら誰でもいいじゃん、と。
だけど、それが大きな流れになって見えていない。
自民党は「経済政策」と「保守色」という2つの理由があるから、「まあ安倍でいいんじゃない」と思っているんだろう。
野党は統一した政権の姿、オルタナティブをいまだに打ち出せていない。
まとめる。「安倍さんを支持する人ってどういう部分が良いと思ってるの?」という答えは「経済政策」と「保守色」という2つの理由に、「他に適当な人がいない(と思っている)」というプラス1の理由だ――これがぼくの答え。
「景気回復」を「実感している」は、日経の世論調査で18%、朝日で16%(2017年11月)、読売で20%(2018年1月)。だから、圧倒的多数は「経済がいい」とさえ思っていない。しかしまあ逆にいえば、景気回復を実感し、経済政策がいいと思っている人がだいたい2割いるってこと。保守色がいいというので~10%。あとは「うっすら支持」が増えたり減ったり。こんな感じじゃないですかね。
念のため
あっ、断っておくけど、ぼくは安倍政権の経済政策がいいとは思っていないよ。
また、「野党は統一した政権の姿、オルタナティブをいまだに打ち出せていないから安倍政権は続いたほうがよい」とも思っていない。早く退陣すべきだと思って、デモにもいっている。野党が統一した政権の姿を出した方がいいとは思うけど、出せない現時点でも安倍政権は倒れるべきだと思う。民主主義にとって危機的だからであり、条件さえあれば自民党内のグループと連携して一致して倒してもいい。
そして、現状でも「安倍政権が倒れない」とも思っていない。つまりこの状態で安倍政権が倒れる可能性はあると思う。
ぼくがさっき説明したのは、「3割ほどいる安倍支持層は何を支持しているのか/なぜ支持しているのか」という憶測・想像である。そこを自分なりに説明しただけだから。3割の支持が残っていても倒れるときは倒れるし、「他に人がいないから」というライトな支持層は今後剥がれる可能性はある。
だって、景気回復の実感なしが7割とか8割になっているし、アベノミクスを「評価しない」というのも「評価する」より高いし。
ここで「経済」で支持されているという推察をしたからと言って、「やっぱり左翼はアベノミクスを見習うべきだよ」というふうに単純にやっちゃいけないと思う。慌てすぎ。
あくまで「3割いつも残る支持はどういう層なのか」という分析(想像)にすぎないのだから。
念のため。
余談
低成長経済しかできなくなった成熟資本主義は、バブルをどうしても求めてしまうものであり、その典型が不動産投資だという話。
イタリアの歴史社会学者、ジョヴァンニ・アリギは『長い20世紀』(1994年)のなかで、現代の資本主義社会にとってバブル経済がいかに避けがたいものであるのかを論じました。
なぜ避けがたいのかといえば、高度経済成長が終わって低成長の経済になると、投資の利益率も低下しますので、それをおぎなうために金融的な投機が拡大するからです。
低成長になってマンションやオフィスビルなどの需要が低下すれば、当然マンションやオフィスビルは売れなくなります。それをおぎなおうとすれば、「かならず値上がりするから」といって買い手を開拓するしかありません。
このとき、もし買い手の開拓がうまくいって、多くの人が「値上がりするだろう」という見通しのもとマンションやオフィスビルを購入してくれれば、その結果、実際にそれらの需要が高まり、マンションやオフィスビルが値上がりします。
そうして値上がりがつづけば、今度は銀行などの金融機関が融資へのハードルをさげて、より多くの人にマンションやオフィスビルの購入のためにお金を貸してくれるようになるでしょう。その場合、金融機関は、買い手が購入する不動産価格の上昇に見合った金利を受け取ることができるからです。
そうなると、さらに多くの人が将来の値上がりを見込んでマンションやオフィスビルの購入にむかい、結果としてさらに価格も上昇します。
こうして、実際の需要とは別にマンションやオフィスビルが売買され、価格も上昇するようになり、バブル経済が生み出されていくのです。
資本主義経済は、より多くの利益を売るために資本を投下(つまり投資)する、という運動によってなりたっています。
そうである以上、経済成長率が低下していくと、より高い利益率を求めて金融的な投機が拡大してしまうのは、資本主義経済にとって不可避的な傾向です。(萱野稔人『社会のしくみが手に取るようにわかる哲学入門』p.100-102)
高島市政が「天神ビッグバン」という看板で福岡都心部でのビル30棟建て替えをさせる目標を立て、容積率の緩和などのメニューや目玉拠点施設をつくって誘導しようとしているのは、まさに短期的なバブルを引き起こしたいためだろう。
インバウンドを当て込んで「ウォーターフロント」を再整備して、IR(カジノがついていると言われる統合型リゾート*1)だの巨大回遊型ペデストリアンデッキだのホテルだのを建設し、博多駅から港まで都市型ロープウエーをつくるのだと息巻いている。これも同じことだ。
高島市政のこうした政策は、インバウンドを増やし開発をして地価を引き上げトータルの経済成長を生み出しているという点では「うまくっている」。バブルの熱狂を引き出しているのだ。(ただし、市内の雇用者報酬や家計可処分所得が下がっているので、市民にはこうした政策は還元されておらず、それどころか、市内の渋滞、バス運転手不足、学校・保育園の圧倒的不足、民泊でのトラブル・犯罪などのコストを市民は支払わされているのであるが。)
- 14 http://b.hatena.ne.jp/entry/s/anond.hatelabo.jp/20180527190259
- 8 https://t.co/h14fWnAaVM
- 6 https://www.google.co.jp/
- 4 https://t.co/
- 3 http://search.yahoo.co.jp/
- 3 https://t.co/36FseI3AIm
- 2 https://www.google.com/
- 1 http://b.hatena.ne.jp/?iosapp=1
- 1 http://b.hatena.ne.jp/entry/b.hatena.ne.jp/entry/s/togetter.com/li/1231256
- 1 http://b.hatena.ne.jp/entry/d.hatena.ne.jp/kamiyakenkyujo/20180527/1527436514