Elon Musk(イーロン・マスク)氏率いるTesla,inc.(テスラ)について、先日の決算会見対応のまずさや業績不振が伝えられています。
先日、Teslaの展示をみましたが、かなりのスタイルの良さでした。Musk氏のカリスマ性とTeslaという企業自体の先進性もあり、筆者のTeslaに対するイメージは非常に良いものです。
しかし、カリスマ性・イメージだけでは企業は存続していけないことも事実です。
今回は、Teslaの決算についてみていくことにしましょう。
スポンサーリンク
報道内容
最近はTeslaに対してネガティブな報道が続いています。
いくつか報道をみていきましょう。
「テスラが経営破綻」 イーロン・マスクCEOの冗談で株価下落
2018.4.3 サンケイビズ
米電気自動車メーカー、テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が1日、「テスラが経営破綻した」とツイッターに投稿した。エープリルフールの冗談だが、事業の先行きに対する懸念が高まっていることを受けて2日の同社の株価は下落した。投資家は「株主のためになることをしてほしい」などとツイッターに反応を寄せた。
(以下略)
以上のような冗談で株価が下落するのは、冗談にならない可能性があると投資家が考えているからといえるでしょう。
テスラ「3万5000ドル版」に発売中止説、財政地獄が深刻に
5/24(木) フォーブス・ジャパン
テスラが「モデル3」の予約者から予約金1000ドルを受け取り始めてから2年が経つが、同社が3万5000ドル版を納品できるかは依然として不透明だ。イーロン・マスクCEOは、大衆向けEVに対する想いを長年に渡って語ってきた。しかし、3万5000ドル版のリリースは、テスラの財務状況に致命的なダメージを与えかねない。
マスクはこの数週間、カリフォルニア州フリーモントにあるテスラの工場で寝泊まりをし、組み立てラインの改善に取り組んできた。そのマスクは先週末、モデル3のハイエンド版を選ぶことのメリットについてツイートした。ハイエンド版は全輪駆動で、価格は7万8000ドルもする。テスラは、モデル3の航続距離が長いバージョンを既に発売しているが、価格はオプションを含めると5万ドルを超える。
マスクはツイートの中で次のように述べている。「生産においてはまず目標台数をクリアし、次に効率を高めて目標コストを達成しなければならない。3万5000ドル版を直ちに出荷することは、テスラにとって損失を出して死ぬことを意味する。会社を存続させ、3万5000ドル版を無事出荷するには週産5000台を達成してから3~5カ月を待たなければならない」
テスラは、2四半期連続で過去最高の赤字を出している。同社が1台10万ドル以上する高級EVを販売するニッチメーカーから、大衆車メーカーに転換する体制が整っていなかったことが改めて浮き彫りになっている。最良のシナリオでも3万5000ドル版の納品は年末になり、最悪の場合は生産中止に追い込まれる可能性もある。(以下略)
Teslaは量産車モデルの「モデル3」の生産を軌道に乗せられておらず、過去最高の赤字を出している現状について伝えられています。
テスラ株急落、変動が我慢できないなら買うなとのCEO発言に反応
Craig Trudell電気自動車メーカー、米テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は、テスラ株の変動に耐えられないなら買わなければいいと、投資家に告げた。投資家はどうやら言われた通りにしたようだ。
1-3月(第1四半期)決算発表を受けた2日の電話会議は奇妙で白熱したものとなり、ここでのマスク氏発言が株価急落の引き金となった。マスク氏がアナリストの質問を遮る場面もあり、3日の米市場では一時、8.6%安まで下げ幅を拡大した。
マスク氏(46)はこれでテスラを窮地に追い詰めた可能性がある。年内に資金調達を行う必要はなく、それを希望しないとの見方を繰り返したが、テスラ強気派ですら資金繰り状況に疑問を抱いている。大手投資銀行のアナリストの一部はこれまで、マスク氏が抱く壮大な野望を賄う巨額の資金調達を支えてきたが、マスク氏はこの電話会議でそれらのアナリストをあざけり、恩をあだで返すこともいとわない姿勢を示した。
ロバート・ベアードのアナリスト、ベン・カロ氏はブルームバーグ・テレビに出演し、マスク氏は「また資金調達を行うことはないとあらためて述べた。今では誰も彼の言葉を信じていない」と述べた。電話会議の前にマスク氏は投資家に宛てた文書で、第3・4四半期にはキャッシュフローと純損益を黒字化させると述べた。テスラ株は急伸した後に伸び悩み、マスク氏がアナリストから受けたのは「退屈、間抜け」で「クールじゃない」質問だと電話会議で言い捨てた後、大幅下落した。
このようなTeslaに対する一連の報道は、Teslaの本業が苦戦していることに起因しているものと思われます。
では、Teslaの業績がどうなっているのかを以下で見ていきましょう。
業績概要
以下、Teslaの2018年1Q(1~3月)の決算について概要を確認します。
<Tesla2018年1Q決算のポイント(単位百万USドル)>
自動車関連売上高 2,735(前年同期比+19%)
エネルギー・電池関連売上 410(同+89%)
サービス等 263(同+37%)
合計売上高 3,409m(同+26%)
自動同社関連費用 2,196(同+32%)
エネルギー・電池関連費用 375(同+147%)
サービス等費用 381(同+78%)
合計費用 2,952(同+46%)
売上総利益 457(同▲32%)
研究開発費 367(同+14%)
販売管理費 686(同+14%)
営業損益 ▲597(同ー%=前期赤字、実額▲339)
最終損益 ▲785(同ー%=前期赤字、実額▲388)
以上が決算の概要です。
Teslaは自動車関連の費用が大幅に増加する一方で、売上拡大は費用増加ペースを下回っているため、売上総利益が更に減少しています。
まさに前述の報道が述べているようにモデル3生産のための準備でコストが膨らんでいるといえるでしょう。
Teslaは研究開発費や販売管理費もセーブはしていない模様であり、営業損益の赤字額は大幅に拡大しています。
期間の損益は上記の通り赤字となっていますが、財務内容はどのようになっているのでしょうか。
<Tesla2018年3月末のバランスシートのポイント(単位百万USドル)>
総資産 27,271(2017年12月末比▲5%)
現預金 2,666(同▲21%、制限のついた現預金除く)
在庫 2,566(同+13%)
土地建物 10,519(同+5%)
株主資本 4,451(同+5%)
<Tesla2018年1Qキャッシュフロー(単位百万USドル)>
営業キャッシュフロー ▲398(前年同期比▲328)
投資キャッシュフロー ▲729(同+153)
財務キャッシュフロー +372(同▲1,227)
現預金増減 ▲745(同▲1,404)
このバランスシート・キャッシュフローを含めたポイントは以下の通りです。
- 現預金が3か月で約2割減少
- 在庫が約1割増加
- 株主資本は4,451百万ドル残っており、第1QのCF▲745百万ドルとの比較では残り1年強は現在と同程度の赤字が続いても債務超過には転落せず
所見
Teslaは7月以降にモデル3の生産も軌道に乗りキャッシュフローも改善するとしています。
この可否については筆者は判断がつきません。
しかし、 車が売れず、支出が続く環境が続くならば、いくらTeslaといえども持ちこたえることはできなくなります。
ただ、先行費用の赤字が続くにしろ、Teslaから現預金(キャッシュ)が流出している状況には変わりがありません。
このキャッシュの流出が止まらなければ、Teslaは増資をするか、社債発行もしくは銀行借入等で資金を調達するしかありません。
しかし、生産を軌道に乗せられないメーカーに資金を簡単に出すでしょうか。
上述の通り、このままの現金流出スピードが続くと1年超でTeslaは行き詰ることになるのです。
TeslaのMusk氏は強気を貫いているようですが、投資家・銀行等を惹きつけ続けるためには、きちんとキャッシュの流出を止めるという結果を出さなければなりません。
今後の半年間程度で生産を軌道に乗せられるか、そしてモデル3が本当に売れるのか、注目されます。