【日本のアパレル産業を支えているのは……】
技能実習を終えた外国人がさらに5年間働ける、新たな在留資格の創設に政府が着手する。日本は外国人が在留資格を得るのが難しい国のひとつだで、労働力確保のためには緩和すべきだといわれながら、議論も制度改革もすすまない。実際には移民の労働力に頼りきりな日本の現実について、ライターの森鷹久氏がレポートする。
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九州某県の国道沿いに佇む、周囲は田畑に囲まれたかつて飲食店だった建物。午後10時ころ、十数人のアジア系の女性が建物から出てくると、そのまま列をつくって数百メートル離れた場所にある寂れたアパートへ向かう。一部屋に三人ずつほどだろうか、アパートの全四部屋にそれぞれ分かれて入っていった。こんなところになぜ多くの外国人が……、と違和感を覚える光景だが、近隣住民にとっては見慣れた日常だ。
「ああ、Aさんの縫製工場のこと? 外国人の若いお嬢ちゃんが研修に来とらすんよ。もう10年以上経つねえ。以前はみんな中国人やったけど、最近はベトナム人が多かごたるね」(近隣住民)
主に婦人向け衣料を仕立てているA氏の工場。世界的に有名な高級ブランドのアイテムも取り扱っていて、「こんな田舎であの有名ブランドの服が作られているとなんて、と驚かれる」と話すA氏だが、アパレル業界に吹き荒れる安い「ファストファッションブーム」や、超大手衣料品店との競合に疲弊し、財務状況はとても良いといえる状態ではない。
「十数年前から“外国人技能実習制度”を利用し、中国やベトナム、タイなどから若い女性の研修生を迎え入れている。研修生にはうちの高い技術を覚えてもらい、国に帰って産業発展に貢献してもらう……というわけですが……」
以前は日本人のスタッフと研修生の比率は5:1程度だったが、現在では逆転し1:5。その日本人スタッフも、全員がA氏の親族で、もはや研修生なしでは会社が回らないといった状況。A氏が苦々しい顔で続ける。
「研修生なんて呼び方だけで、はっきり言えば安い労働力として来てもらっている。うちはフルタイムで働いてもらっても月に10万円も出せない。そんなんじゃ日本人は誰も働いてくれませんから、研修生に頼っている。研修生には国からの補助金も出るし、それで差額を埋めている、といった感じでしょうか」