安住紳一郎 日曜夕方の閑散としたアナウンスセンターのお煎餅バトルを語る

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安住紳一郎さんがTBSラジオ『日曜天国』の中で8年前の日曜日の夕方、閑散とするTBSアナウンスセンター内での出来事についてトーク。当時険悪な仲だった某女子アナウンサーとのお煎餅を巡るバトルの話をしていました。

本場草加煎餅 (42枚入)草加せんべい★

(安住紳一郎)私の放送局で仕事をしてからとても好きなエピソードがひとつあるんですけど。8年ぐらい前ですかね? 日曜日の夕方、机仕事をしていたんですけども。ちょうど『日曜天国』を終わってから夕方、時間が空きますのでね。日曜日の夕方、机仕事をしていたんですけども。私たちアナウンサーのいるところというのは60人ぐらい入れる大きな部屋を割り当てられているんですけども。

(中澤有美子)はい。

(安住紳一郎)日曜日の夕方4時すぎだとほとんど人がいなくて。いても1人か2人、多くても3人、4人ぐらいですね。で、その時は3人いたんですよ。私と男の先輩と女性の後輩の3人だったんです。

(中澤有美子)ええ。

(安住紳一郎)日曜日、赤坂はほとんどお店がやっていないんで、お昼ご飯を食べられるところもあまりなくて。私もそうだし、他の2人もそうだったと思うんですけど。お昼を食べて、とりあえず仕事を終わらせて帰って。で、家で昼夜兼用を食べればいいやみたいな感じ、腹づもりでいるわけですよね。で、当然お腹が空いているんだけど我慢をしているというような状態が続いていて。いまは局内にコンビニエンスストアができたので、そこに行ってちょっとなにかお菓子を買うみたいなことがあるんですが、当時はまだなかったので。まあ、「お腹空いたな。誰か何かくれないかな」みたいな感じで仕事をしているんですよね。

(中澤有美子)はい。

全員空腹のアナウンスセンター

(安住紳一郎)そしたら私の机にいただきものの草加煎餅の詰め合わせが箱に入ってあったんですね。1枚1枚透明の袋に小分けされていて15枚ぐらい入っていて2000円とか2500円ぐらいで売っているものですけども。そのお煎餅の詰め合わせがあって。お腹が空いたんでこれ、包装を開けて1枚食べようと思ったんですが、ただ静かな部屋で自分だけ草加煎餅をバリバリ食べたら、ねえ。ちょっとさすがに他の人たちに申し訳ないからということで、私の左斜め前の先輩に、机のシマをくるっと回って箱ごと持って歩み寄って「お煎餅いただいて、いま私これから食べるんですけど一緒に食べますか?」って聞きますよね。社会人としては当然ですよね。

(中澤有美子)うん。

(安住紳一郎)で、「おお、悪いな」って。安東弘樹さんなんですけども。「おっ、安住。悪いな」なんて。で、安東さんもお腹が空いているから食べるじゃない? 「悪いね。いいね」とか。で、お煎餅が3種類あったんですよ。普通の醤油味のお煎餅とごま入りのお煎餅。美味しそうですね。醤油味のお煎餅とごま入りのお煎餅、そしてもうひとつはなぜか抹茶ペーストを表面に塗ってある変わり種ね。

(中澤有美子)ああー。

(安住紳一郎)ちょっと見たこともないお煎餅で。

(中澤有美子)甘じょっぱい。

(安住紳一郎)甘じょっぱいのかわからないけど、海苔も巻いていなくてうぐいす色のなんかセメントを塗ったような感じの。で、あんまり私はそれ、好きじゃないんですけど。で、「安東さん、どうですか?」「ごまかな?」なんて言ってごまを食べて。で、当然もう1人いる女性の後輩にもすすめるべきなんだけど、ちょうどその女性後輩と私が仕事のやり方を私が注意したことをきっかけにお互い険悪な感情を持っていた時なんですよ。

(中澤有美子)うんうん(笑)。

(安住紳一郎)私がその彼女に仕事のやり方を注意したことをきっかけにね。で、10才ぐらい後輩だから、すれ違っても向こうは挨拶してこないし。で、あからさまに俺を避けていることが伝わってくるから。こっちもね、10年年長としてのプライドがあるから。向こうが謝るなり、新しい決意表明を持ってくるまでは話す必要はなし!って思っていたんですよね。それはそれで問題ありませんよね?

(中澤有美子)まあ……そうですね。ちょっと厳し目の先輩としては正しい立ち位置かもしれません。はい。

(安住紳一郎)しかも、その時安東さんと私がいる机は比較的手前の方で、2人は近かったんです。で、彼女がいる席は2人から最も遠い机のシマの、しかも向こう側の壁側の机に突っ伏して、ふて寝をしているんだかパソコンを見ているんだかわからない。雑誌の山とかに隠れて上半身を机の上に伏して寝ているわけ。で、たぶん俺がいるから気配も消しているだろうし……みたいな雰囲気なの。そんなところでわざわざ10年先輩の俺が「おう、お煎餅食べる?」って持っていく必要はないでしょう?

(中澤有美子)そうですね。

(安住紳一郎)まあ、持っていってもいいんだけど。まあ心が狭い俺としてはさ、持っていく必要はないと私は判断して。

(中澤有美子)その距離感ですね。

(安住紳一郎)で、安東さんも「まあ2人は険悪な雰囲気だからそういう感じなんだろうな」って思って、関知していないから。で、日曜のお昼を抜いている2人だから、その静かな部屋でバリバリバリバリお煎餅を食べたわけですよ。

(中澤有美子)フフフ(笑)。

(安住紳一郎)で、2人とももう2枚目とかに入っちゃって。で、またごまの匂いがね、余計に香りたちますからね。そしたら、ついに我慢ができなくなったその壁の向こうの方にいる後輩の女性がいちばん向こうからヒールをツカツカいわせて俺のところに来るわけ。もうイメージしやすいんで言っちゃいますけど、田中みな実さんなんですけどね。田中みな実さんがこっちにガッ!って近づいてくるわけ。で、私も本当に底意地が悪いから。こっちに来るっていう気配はわかっているんだけど、机の横に立たれても全く気配を感じないみたいな感じでデスクワークをずっと続けているわけね。

(中澤有美子)フフフ(笑)。

(安住紳一郎)で、「向こうが謝るまで絶対に口を聞かないもんね!」ってものすごい意地になっていて。肩にものすごい力が入っていて。

(中澤有美子)アハハハハハッ!

(安住紳一郎)で、ついに彼女が1年半ぶりに私に口をきくんですよね。

(中澤有美子)長っ!(笑)。

(安住紳一郎)長いんだよ。アナウンサー同士がこじれると長いからね。職場の異動がないから。1年半ぶりに田中みな実さんが私に口をきくんだよね。「私にも1枚、お煎餅をください!」って。

(中澤有美子)アハハハハハッ!

「私にも1枚、お煎餅をください!」(1年半ぶりの会話)

(安住紳一郎)いや、相当お腹が空いていたんだと思うんだよね。で、安東さんと俺がバリッバリバリッバリ静かな部屋で2枚も3枚もお煎餅を食っているから。もう我慢できなくなって私との険悪な雰囲気を忘れて、ついに意を決して「私にもお煎餅1枚いただけますか?」って言ったのね。で、私のこの底意地が悪さも図抜けているから、私はその箱の中から人気のない抹茶テイストの煎餅を目も見ずに「はい」ってあげたわけ。意地が悪い。底意地が悪いよね。

(中澤有美子)アハハハハハッ! がんばって折れてきたのに。

(安住紳一郎)で、そしたら田中さんはそのうぐいす色の煎餅を持って自分の机の方にまた戻っていくわけね。

(中澤有美子)「ありがとうございます」って。

(安住紳一郎)って言ったかな? ちょっとわからないけどね。それで、向こうの方で雑誌を積んだ影の方で一口食べたなっていう音は聞こえたんですよね。そうすると、またツカツカツカッ!ってさっきよりもスピードを上げてこっちにまた戻ってきたの。

(中澤有美子)アハハハハハッ! なんだなんだ?

(安住紳一郎)みなさん、想像つくと思いますけども。「私にもごまのをください!」って。

(中澤有美子)フフフ(笑)。抹茶は嫌だった。

(安住紳一郎)その時、もう「私にもごまのをください」って言った時に3人はこらえきれずに大笑いになっちゃったの。

(中澤有美子)フハハハハハハッ!

(安住紳一郎)そう簡単に許さないと意固地になっていた私も、2人の険悪な空気を察して余計なことを言わないようにしていた安東さんと、若いなりに孤立するのを覚悟で自分を貫こうとしていた若手。当時の田中さんと。それぞれの意地があったわけですけどもね。まあ、それぞれの考えがあったんですけど、職場のお菓子の誘惑に負けて、それぞれが意地を曲げるというね。

(中澤有美子)そうですねー。お菓子、偉大ですね。

(安住紳一郎)お菓子、偉大ですよ。あんなに鼻っ柱の強い田中みな実さんの気持ちをお煎餅が曲げたんですから。

(中澤有美子)そうです、そうです。ここはもう折れて、お煎餅をもらいにいこうと。いまだ!って思ったんでしょうね。

(安住紳一郎)そうです。その後、どんな話をしたのかよく覚えていないんですけども。またね、もう2人とも会社を辞められているので確認する術もありませんけども。私は仕事をした中でこのエピソードが大好きなんですよ(笑)。

(中澤有美子)フフフ(笑)。

(安住紳一郎)うーん、かわいいよね。

(中澤有美子)かわいいですねー。本当。

(安住紳一郎)そうですよ。仕事でぶつかって、1年半も口をきいてなかったのに「ごまの煎餅をください」って言ったんだから(笑)。

(中澤有美子)フフフ、勇気出したんだろうなー。

(安住紳一郎)勇気出したんだろうね。しかも、抹茶じゃダメだったんでしょう。

(中澤有美子)もう1回行くっていうね。

(安住紳一郎)もう1回来るっていうのがさ、もうどうしてもごまを食べたかったんですよ。

(中澤有美子)そうでしょうねー。

(安住紳一郎)みなさんからズルい話、お待ちしています。

(中澤有美子)フフフ(笑)。

<書き起こしおわり>