ハルヒに手首をロックされている朝比奈さん(大)はいつものブラウスにタイトミニ姿でオレを膝枕している朝比奈さん(小)を視界に捕らえて固まっている。そして朝比奈さん(小)もまた朝比奈さん(大)を視界に捕らえて固まっておられる。

 当然ながら事情を知っている、古泉、長門、佐々木もまた、何をどうしていいのか解らずに固まっている。鶴屋さんもまた、ニコ顔で固まっているのは多少なりとも事情をそれなりに把握しているからだろう。何となく面白がっているのは朝倉ぐらいに見える。

 その朝倉ですら声を出さずに動きを止めている。

「さあっ! アナタ、察するに森さんの代わりに非常勤講師として招かれた人なんでしょう? 以前からちょくちょく見かけて覚えていたわ。やっと非常勤講師の口が来たって感じかしら?」

 げ? つまりハルヒはオレの下駄箱に手紙を入れに何度か来た時のいずれかを見ていたのか? 或いは最初に朝比奈さん(大)と出会った部室でのことだろうか?

 とにかく、前に見たことがあるらしい。

 そうだな。朝比奈さん(大)は朝比奈さん(小)と出会わないように細心の注意をしていただろうが、ハルヒの視界全てから逃れていたという保証はない。

「任意同行して貰ったばかりで恐縮なんだけどこのSOS団兼文芸部の顧問になって頂けないかしら? 礼は弾むわ。どうかしら? それで、お名前は?」

 朝比奈さん(大)はハルヒの尋問など何処吹く風で朝比奈さん(小)から視線が動かない。声も出ない。朝比奈さん(小)も以下同様。

 ハルヒは言うべきコトと聞くべきコトを口にしたので朝比奈さん(大)の返答を待っており、他の全員は動向を見守って声が出ない。

 やっとハルヒの呪縛から逃れて熟睡モードから脱したばかりのオレは頭が回っていない。

 だが、誰も声を出さない以上、オレが出すしかない。

 起き上がって大声を出す。

「そ、その人は……」

 えーと。事実を告げる訳にはいかない。

 何と言おうか。と悩むオレをハルヒは「まだ寝てた方が良いわよ」みたな気遣う視線から「なに? アンタが何を知っているっていうの?」という嫌疑の視線へ一瞬で変え、オレの言葉を待っている。

「その人は朝……『御厨 雛』さんだ。この文芸部のOB、いやOLで時々懐かしんで来られていた。そうだよな? 長門っ!」

 オレの無茶振りに反応できるのは長門ぐらいだろう。

 コクリとわざとらし過ぎるぐらいに大きく頭を動かして同意した。

「そう。『みくりや ひな』先輩は時々ココに来て懐かしんでいた」

 長門。誰も気づかなかったかも知れんが棒読み過ぎる。誰も気つかなかったようだからどーでも良いが。

「そう? その割りにはワタシは見ていなかったけど?」

「そうか? じゃ、何でオマエは見かけた記憶があるんだ?」

「ぐ」

 自己矛盾を偶然にも即座に突くことができた。

 ハルヒは見慣れた不機嫌モードだが、レベルとしてはローだ。なんとかなるかも知れん。

 いや、何とかしないと。

「んじゃ。言いかけた『朝』ってのは何よ?」

 疑問で返された。

 そりゃ「あさひなみくる」から言いかけた「あさ」を取った残りを並べ替えて一部の語感をユルめたのが「みくりや ひな」だからだ。なんて脳内演算を素直に言う訳にも行かんから別の理由を探さねばならん。

 えーと。

「そりゃ、朝に会ったからだよ。その時のオレは、知っての通り死にかけて、古泉もオレを助けるのが精一杯でろくに挨拶すらできなかった。御厨先輩、朝は失礼しました。そうだ、不動産屋を探しておられましたよね? いまから行きましょう。良い物件が無くなってしまいますっ!」

 オレは飛び起き、ついでにハルヒの手から朝比奈さん(大)の手首を奪い取り、さらにささっと部室を後にした。

(長門っ! 後は古泉と巧く口調を合わせてくれっ!)

 振り返らずにテレパシー通信で長門に依頼る。

(了解。いま古泉五妃が涼宮ハルヒを説得している。推定される成功確率は40%)

 低いな。それでも時間を稼がねばならん。

 オレは『御厨 雛』さんの手首を掴み、生徒用玄関へと突き進む。

 そして、自分の下駄箱に着き、あけると……やはり手紙があった。だが、今となってはどうでも良い。上着のポケットにねじ込み、さっさと退去する。ちょうど、朝比奈さん(大)が穿いていたと思われるローファーもあった。

(古泉五妃が巧く説得している。成功確率60%)

 おお。こんな短時間で確率が上昇している。頼むぜ。古泉。オマエのハルヒ感情察知能力を発揮してくれ。

 オレは部室の状況を無視して問答無用で朝比奈さん(大)の手首を掴み、外へと。

 ハルヒを説得しても朝比奈さん同士を長時間接触させる訳にはいかない。

 とはいえ何処に向かおうか。

 宣言したとおり、取り敢えずは駅前の不動産屋へと向かうべきだろうか?

 いや? 確認すべきコトが1つあった。

「御厨……いや、朝比奈さん。アナタは直ぐに未来へ帰られるんですか?」

 未来へ帰れるんだったら、別に小細工する必要もない。さっさと退去して貰おう。

「あ……ん。できないの。時間平面が予想不能な挙動を示していて、TPDDの動作が安定しない状況なんです。やっと今朝、安定したので来たんです。次がいつになるかは予想できないの。……ん。あん」

 やはりな。朝比奈さん(小)から事情を聞いて、オレの鈍い頭で予想したとおりの事態が起こっているようだ。

 しかし、その鈍い頭は別の違和感を感じている。

 何かと振り返ると朝比奈さん(大)が赤い顔をしておられる。

「どうしました?」

 急ぎすぎたか? 息も荒くなっている。

 急坂道を全力で下り歩いているの故の息切れだろうか?

「ん。ううん。何でもない。さっきはありがとう。この時間平面の私と離してくれて」

 いいですよ。それがオレ達の役目ですから。しかし……それだと暫く逗留する場所を探さないといけませんね。何処かアテはあるんですか?

「ううん。それよりもこの時間平面に来たかったから。いろいろと……心配で。だからそういうコトはコッチに来てから探そうかと……」

 おや? 口から出任せが事実であったとは。オレの勘も捨てたモノではないな。

 とはいえ、不動産ね。

 一つ二つほど心当たりはあるが、一つは危ない。古泉五妃の旧名『機関』、現名『組織』の方は以前、『未来人が来たら捕まえて話して貰いたいことがある』とか言っていたな。その未来人がこの朝比奈さん(大)なのか、朝比奈さん達の敵対勢力なのかは解らんが、取り敢えず遠慮しよう。となると、残りの一つを頼るしかあるまい。

 オレは携帯を取りだし、コールした。

 暫くコール音を聞いてから相手は出た。明るい、それでいて押し殺した声で。

『もしもし。どした?』

 鶴屋さん。頼みたいことが……

『ん。なるほど。まかしとき。あたしの部屋、知ってるよね。その隣が空いているから使って良いよ。大家さんにはアタシの方から連絡しておくっさ。駅前の……不動産。そこに行けばいいにょろ。大丈夫、ハルにゃんには聞かれてないよ。君からの電話だと解ったから奥の部屋に移動したにょろ。ハルにゃんは古泉君が説得中さっ。そろそろ納得する頃じゃないかな?』

 話が早くて助かりますよ。先輩。

『んふふ。こういう時は名前の呼び捨てでよろ? はい。言い直して』

 解りました。……っ! ありがとっ! 助かった。

『んーー。ふふふ。良いってコトにょろ。人助けは気持ちが良いからね。んじゃ』

 ふー。コレでなんとかなりそうだ。

 

 

 例の部屋の隣。

 ドタバタと上がり込んで一息つく。

 見れば長期出張者用の月極契約用のマンションらしく、家具や家電も揃っている。

 ベッドにソファとかも隣の部屋と同じ感じで在る。いや、隣の殺風景気味と違い、きちんと揃っている。

 助かります。鶴屋さん。

 朝比奈さん(大)は……赤い顔で息を粗くしておられたが、深呼吸を何度かして落ち着いたらしい。きょろきょろと見渡して、「お茶でも入れますね」とキッチンへと消えた。

 ふう。しかし、慌てたな。

「あ、お茶っぱが……あ、在った。ティーパックですけどいいですよね」

 急須と茶碗を盆に載せてソファテーブルの横に座る。なるほど。『新入居された方へ。一息セット』とか書いてある箱の中に一揃いのお茶セットが入っていた。お茶の他にも紅茶とか、インスタントコーヒーとか、さらにはトランプとかパズルなんかも。

 至れり尽くせりで助かります。鶴屋さん。

「そうですね。助かりました」

 朝比奈さん(大)は床に正座し三つ指ついて深々と頭を下げられた。

 んー。会社勤めになっても毎日こうやって出迎えられたら残業とかは無視するだろうね。

 今はまだ学生だからそんなコトは有り得ないのだが、つい朝比奈さん(大)と同じ年齢視線で考えてしまうのは何故だろう。

 それは朝比奈さん(小)と同じ学校で学生時代を過ごしているからなんだろうと結論する。思い出は美しく、妄想は現実に根ざした非日常なのだから。って、なんのことやら。

 

 いいですよ。別に。そんなにお礼をされるほどのコトではないですよ。

「ううん。さっきのコとはそれほどのコト。まさか涼宮さんに見つかって部室に引き摺られるなんて……最初に会った時のことを思い出しちゃった」

 まあ、そうでしょうね。最初に部室で会った時……あの朝比奈さん(小)が強制的な任意同行された時を思い出す。

 そういえば、オレとしては似たようなシーンも他にもう一度見ているのだが。

「そっちは……私には記憶のない世界のことですから」

 確かにね。あれは長門が暴走した時のことだからな。

 

 ……ん?

 何故か違和感を覚える。いや違和感ではない。疑問だ。

 あの時のあの世界は何処に行ったのだろうかという……根本的な疑問が。

 いやいや。そんなコトを今考えるべきではない。

 

 今考えるべきは……なんだ?

 朝比奈さん(大)が淹れてくれたお茶を飲みながら考える。

「ふふふ。随分と久しぶりですね。キョンくんにお茶を淹れるのは。おいしい?」

 ええ。美味しいですよ。本当に。

 毎日でも淹れてくれませんか。そのためには……

 いやいや。そんなコトではない。考えるべきなのは……

 

 そうだ。手紙だ。

 本人が目の前にいるのだから、聞けばいいのだろうがやはり書きしたためてくれたのだから開封すべきだろう。

「あ……開けるのですか?」

 そりゃそうでしょう。オレに宛てた手紙なんでしょう?

「うん。でも……」

 でも?

「やっぱり後で開けて。ね? お願い。何か恥ずかしいし。それに暫くはこの時間平面にいますから」

 そうですね。でも急にいなくなるかも知れないじゃないですか。

「んー。それはそうなんだけど」

 朝比奈さんはまた赤くなっている。そして息苦しくなっているらしくブラウスのボタンを1つ開けて手のひらでハタハタと扇いでおられる。

 あの……目のやり場に困るんですけど。

「あ、ごめんなさい。でも……暑くないですか?」

 ん? 暑いというよりは……どちらかと言えば肌寒いほどではないですけど、少なくとも暑くはないですよ。

「そう? 随分と急いだせいかな?」

 斜め横を向いてハタハタとブラウスの中に風を送り込んでおられる。

 ん?

 何か違和感が。

 違和感の元を探して朝比奈さん(大)を注視する。

「ん。あん。やだ、そんなに見ないで」

 何故か色っぽい吐息混じりの抗議。

 だが、オレの視線は違和感の元を見つけた。見つけてしまった。

 あ、朝比奈さん。ちょっとよく見せて下さいっ!

「はい? きゃっ! キョンくん何っ?」

 朝比奈さん(大)の両手首を掴み、左右に開く。違和感の元をよく見ようと。

 確認した。

 朝比奈さん(大)の左の乳房の麓付近。星形のほくろ。それが……

 2つ。2つある。

 朝比奈さん、ほくろ増えました? えっ?

 オレが驚いたのはそれだけではない。

 オレの手を振りほどいた朝比奈さんがそのままオレの頭を両腕で掴んで……

 あろう事か、胸に押しつけている。

「ん。ああん。だめ。ダメなの。我慢していたの。我慢していたのに、我慢できない。お願い。抱いて。抱きしめて。思いっきり。お願い。私の全てを……あん。抱きしめて。お願い。お願いだから……来て。来て欲しいの。そして、そして無茶苦茶にしてっ!」

 それからのことは……

 理性が吹き飛んであまり覚えていない。

 

 唇の弾力が、乳房の弾力が、くびれた腰が、張り出したヒップが、しなやかな腕が、程よい太股が、そして絶え間なく熱い色香を溢れだす秘裂が、オレの理性と蕩けさせた。

 まるで……熟れて落下寸前のマンゴーのような、色香と瑞々しさと弾力に満ちた美と愛の女神、妖精のようだった。

 そして妖精の全身が細かく痙攣し……オレは果てた。

 

 全てが終って……半裸でベッドの上で天井を見ている。

 朝比奈さん(大)は隠すようにオレの胸に顔を埋めている。微かな吐息を名残の旋律のように奏でている。

 

 しかし、何だ?

 何でこうなった?

 

 朝比奈さん(大)は顔を起こしてオレの顔を覗き込んだ。

 どうしました?

「ううん。何でもない。何でもないけど……嫌いになった?」

 別に嫌いにはなりませんよ。

「そう? 安心した。ずっと……思っていたの。アナタのこと」

 オレのこと?

「うん。離れてからもずっと。今頃キョンくん何しているのかな、なんて意味もなく思っていた。だから……会いたかったの」

 えーと。前にもそんなことを言ってましたよね。確か……初めて、学生ではない朝比奈さんと会った時にも。

「そうね。確かあの時も……呟いてしまった。ね。でも……」

 でも? 何です?

「こんなに淫らになってしまった。離れてから。あの頃とは違う私に」

 あれ? 変だな?

 えーと。昨日というか今朝というか、朝比奈さん(小)とは何度もしているのだが……

 あの頃、つまりはこの時間の『現在』と違いますか?

「そんなに苛めないで。だって、キョンくんと……したの今日が初めて。初めてなのにこんなに淫らになっている。淫らになってしまった。キョンくんの所為……ごめんなさい。違うわね。淫らなのは私なんだわ」

 違いますよ。それはハルヒの所為ですから。

「涼宮さんの? そうかな? 確かにいろいろとされたけど……でも、こんな感じにはならなかったのよ? どうして涼宮さんの所為だなんて言うの?」

 あれ? 話が食い違っているような。

 えーと。確認しますけど。

「はい? なんでしょう?」

 起き上がって正座された。

 吊られてオレも起き上がる。

 朝比奈さん(小)より大きいとはいってもオレよりは小さい。自然とオレを見上げるような視線となり、庇護欲をそそるというか、堪えられないオーラ、もしくは色香を惜しげもなく放っておられる。

 詳しくいえば半裸の姿……上半身は裸で豊かな乳房が呼吸をする度に揺れて、『触って』オーラを放ち、くびれた細い腰は『抱きしめて』オーラを放ち、程よいボリュームであるヒップにあるタイトミニは『中を見ないでね。お願いだから』と思わず、中を確認したくなるような妖しいオーラを放っておられ、その下のこれまたボリュームのある太股もまた『触っちゃダメ。ダメなの』とこれまた妖しいオーラを放ち、その太股の上に置かれたしなやかな指と細く長い腕は『乱暴にしないで。お願いだから優しくしてね』と意味もなく妖しくもほのかな色香のオーラを放っておられる。

 さらにはっ!

 オレを見上げる可愛い顔の瞳が『苛めちゃダメ』光線を放ち、艶やかな唇が『キスしちゃダメよ。したいの?』と軽く拒絶しながらも誘っておられるような輝きを放って……

 って、何を言っている。オレは。

 とにかく……暫し見とれてしまった。

「そんなに見つめないで。それで? 確認したいコトって?」

 あ、そうですね。えーと。

「何でも聞いて。禁則事項以外は何でも答えます。さっきは助けてくれたし」

 あれはオレというかSOS団全員が……いや、それはいい。いま議論すべきコトではない。

 では単刀直入、不躾に不遜なコトを確認しますが……

「はい?」

 アナタの初体験の相手は誰ですか?

 朝比奈さん(大)は怒ったような顔をして真っ赤になって俯き、そして押し殺した声で怒鳴った。

「アナタですっ! そんなコトを聞くなんて……ひどい」

 あ、すみません。えーと、それでですね……

「まだ何か……ううん。答えます。聞いてください。何でしょうか?」

 真っ赤になった怒り顔のまま、オレを見つめている。なんとなく、苛めている雰囲気に……。いや苛めているのか?

 まあ、いい。聞くべきコトを聞いて、後で謝ろう。

 それで……その時傍に誰かいませんでしたか? その……初めての時。

「誰もいません」

 あれ? 変だな。

「誰もいませんってばっ!」

 本当にそうですか? その……初めての時ですよ?

「だからっ! 誰もいませんっ!」

 えーと。すみません。本当ですか?

「だって、いま誰もいないじゃないっ! キョンくんと私しかこの部屋にはっ!」

 真っ赤になって抗議するように仰った。

 ……あれ? ということは?

「もうっ! 私は今のが初めてなのっ!」

 それは……変だ。

「なにが? 何が変なの?」

 真っ赤になり恥ずかしそうにしていた怒り顔でありながらも端正にして可愛い顔が冷ややかなるオーラを放ちつつある。

 言うべきコトをさっさと言ってしまおう。

 実は……

「実は?」

 冷ややかなる声に若干、ヒビリながらオレは先を答えた。

 実は、オレはアナタとしているんです。

 朝比奈さんはキョトンとした顔になって小首を傾げた。

「……さっきしたじゃない」

 あー。違います。そうじゃなくて……

「そうじゃなくて? なに?」

 再び冷たい視線となり、その温度は氷点に達しようとしている。ええい。さっさと言おう。

 この時代のアナタとオレはしています。3日前の土曜日。その時はハルヒと一緒にしてしまいました。それが……この時代のアナタの『初めて』だと聞いています。

「え?」

 ビックリして動きが止まっている。

 そしてですね、昨夜というか、とにかく数時間前にも。そして、その時……

 言いかけたオレの脳裏にあることが思い出された。

 あの蕾のような硬い秘裂。思わず……その場所を見る。タイトミニが少しめくれて秘裂がちょろっと見えている。

 朝比奈さん(大)はビックリ顔のままオレの視線の先をたどり……そして再び真っ赤になって怒り顔になった。

「何を見ているんですかっ!」

 失礼。確認したいんです。

 オレは朝比奈さんの肩を押し、倒して、もう片手で秘裂を触った。

「あんっ! そんな、急に……」

 柔らかい。何故だ?

「だめっ! そんな……あん。弄らないでっ!」

 どうしてこんなに柔らかい? 未来へ帰る時、長門に解除されたのか?

「ああん。何……なんのこと? んあ。んんっ!」

 いや、朝比奈さん。ココはどうしてこんなに柔らかい……

 ぺし

 ……朝比奈さんに叩かれた。

「ひどいっ! こんなに酷いことをしてっ!」

 涙目で怒っている。真っ赤になって恥じらってもいる。

 だが、オレの指は……もう一度、秘裂の硬さというか柔らかさを確認するために蠢かした。蠢かしてしまった。

「ああん。そんな、そんなに……ああん」

 朝比奈さんが抱きついてきて……キスされた。

「酷い。酷いことをして……お願いっ!」

 そしてそのまま再び……

 

 朝比奈さん(大)の秘裂は柔らかかった。

 いや、本来、誰もがそうだろう。だか他よりも柔らかく、そしてヒダが指に絡みつく。

 絡みつくのはヒダだけではない。乳房も腰も、全ての肌が触った指に、手に、腕に吸い付いてくる。しなやかな身体がオレの身体に絡みついてくる。そして朝比奈さんの中は……柔らかくそしてしなやかでオレのに絡みついてくる。

 まるで雛鳥の羽毛に包まれているかのように……

 そのオレのを包む羽毛がぎゅむっと痙攣し、そしてその痙攣がオレの身体を撫でるように朝比奈さんの全身を痙攣させて……オレのも痙攣していった。

 

 

 終った後で……

 朝比奈さん(大)が意地悪っ娘みたいな軽く睨んだ笑顔で吐息混じりに聞いてきた。

「この時代の私と、今の私とどちらが……キョンくんの好み?」

 あのですね。そんなコトを聞かないでください。

「だめ。聞きたいの。どっち?」

 えー。そうですね。

 口籠もって時間を稼ぎながら、有り得ない状況を思い浮かべ、答えを見つけた。

 両方です。両方が好みです。願うならば両手にお二人を抱いていたいですよ。

「そんな答えずるいわ」

 朝比奈さん(大)はちょっと睨んでから、微笑んで、キスされた。

「ちょっと……疲れちゃった。肩を貸してね」

 そしてオレの肩に頭を預けて……数分後には吐息が寝息へと代わっていた。

 オレはその寝顔を見ながら……横に転がっていた毛布を二人の身体の上に掛けて、それから考えた。

 

 どういうことだ?

 この時代の朝比奈さんとは既にしている。どういう訳か専属メイド契約までしている。

 ところがだ。この未来の朝比奈さんは今のが初めて。

 つまり?

 

 そうか。

 この時代の今現在部室というか校内にいるであろう朝比奈さんは今の『2年後の世界』の朝比奈さんで、横で寝ている未来の朝比奈さんは2年前の『現在の世界』の未来の朝比奈さんなのだ。

 やっと……オレの頭の中、古泉の頭の中、そして違和感を感じている長門と同じ感覚の人を見つけた。

 嬉しい。叫びたいぐらいに嬉しい。

 思わず、朝比奈さんが枕にしていない方の手を天井に伸ばし、拳を握りしめた。

 と、その指に……紅いモノが。罪悪感が心に広がる。

 ああ。そうか。オレは同じ人の……を2度も。

 ん? 2度も?

 ということは別人?

 この『2年後の世界』と2年前の『現在の世界』は別物なのだろうか?

 時間的には別だろう。

 

 別なことは解っている。

 それでも……何となく繋がっているような気がしていた。

 違う世界なんだなと解っていたはずなのに。

 元の世界では『古泉が男』。この世界では『古泉は女』。

 それだけで別な世界だと自覚すべきだったのだ。

 似て非なる世界なんだと。

 だが?

 全く別の世界なのか?

 

 全ての人間は同じようにいて同じようなコトをしている。

 また……嫌な感覚が戻ってくる。

 あの暴走した長門が造り出した世界に放り込まれた時と同じ感覚が。

 

 いやいや。そうじゃない。

 この世界には同じ感覚を持った古泉がいる。

 長門も違和感を感じている。

 ハルヒと朝比奈さんはこの『世界』の感覚なのだろう。

 そして同じ感覚を持った人間が4人になった。

 快哉を叫ぶべきだろう。

 横で寝ておられる朝比奈さんの寝息が叫ぶのを押し止めたが、オレとしては充分に心が軽くなった。

 

 さて。今するべきは何だ?

 

 見渡して……手紙が目に入る。

 朝比奈さん(大)には「目の前で読まないで」とは言われてはいるが、やはり見て確認しておくべきだろう。

 朝比奈さんを起こさないように頭の下に枕を押し込んでからベッドを離れる。

 そして封筒を手に取り、中を検める。と……

 なんだ? 何だコレは?

 封筒の中に更に封筒が。つかも2つ。今までこんなコトはない。

 両方開けて……便箋を取り出す。

 両方の便箋は同じモノだ。ファンシーなデザインのいかにも女性が使いそうな便箋。

 そして……内容が同じ。

『***から現在まで時間平面の挙動が不安定です。TPDDの使用が制限されています。こちらでも調査中です。原因が解り、そちらでの「作業」が必要な場合には協力をお願いしたいのです。宜しくお願いします。PS.そちらの私にもこの事を伝えてください。 朝比奈みくる』

 同じ内容の手紙を2つの封筒に入れるなんて必然性はない。全くない。

 今まで、未来からの手紙は必要最小限の情報と数だった。

 それが今回は同じ。有り得ない。

 

 だが違うことがある。便箋に記された時間だ。

 一つ目のにはこう記されている。

『約1週間前から現在まで……』

 それが二つ目にはこう記されているのである。

『約1年半前から現在まで……』

 どういうことだ?

 

 悩むオレの後ろで吐息が。

 朝比奈さんが起きたのかと思い振り返ると……っ!

 誰だ? オマエらっ!

 

 誰なのかはすぐに判った。

 光陽園学院の制服を着た双子達。鶴屋さんが「美少女ツインズ」と命名したあの二人だ。

 その二人が何をしていたのかというと……

 朝比奈さんの両側に座り、朝比奈さんの腕の自由を奪うように腕を絡め、その腕の先の手が朝比奈さんの乳房をやわやわと揉んでいる。そしてツインズのもう片方の手が朝比奈さんの太股の内側をやわやわとさすっている。

 さらにはっ!

 肱で太股を左右に開かせたまま、ツインズの指が朝比奈さんの秘裂を開き、ヒダをつまみ、秘裂の中へと指を蠢かせている。

 そしてツインズの表情は……不自然なまでに無表情。

 長門とは違い、真面目に『これが私達のするべきコト』みたいな真剣に真面目な顔だった。

「んあ。んん。キョンくん見ないで。お願い助けて。あん。そんなところを……広げないでえっ! 助けてえっ! 見ないでえっ!」

 えーと。あのですね。見ないで助けるにはどうすれば……

 などと呆然としている訳にはいかないっ!

 慌てて、ツインズから朝比奈さんを奪い取り、抱きしめた。

 直後っ!

「ああんっ! いっちゃうっ!」

 助け出されて安心したのか、それともその際にオレが変なツボを押してしまったのか、朝比奈さんは全身を痙攣されて……小さく失神した。

 

 大丈夫ですか?

「うん。ん。もう大丈夫」

 朝比奈さんの痙攣が治まるのを待ってから……

 オレと朝比奈さんはツインズと対峙した。ベッドの上で。

 誰だ。オマエ達は? どこから出てきた?

 オレが問いかけるまで黙って正座していたツインズは顔を見合わせてからオレに視線を向けた。

「私達はアナタの腕の中から来た」

「宿主様であるアナタの腕の中が私達の居場所」

 オレの腕の中?

 一体、オマエ達は何だ?

「私達は人類全ての共通した無意識下の精神世界の権化」

「つまりは妖怪、妖精、精霊、或いは魔女、天使などと呼ばれる存在」

 はい? どういうコトだ?

 名前はないのか?

「名前? 以前に呼ばれた名であるならばサッキュバス、リリス、フェアリーなど」

「この国では、座敷童、猫又、九尾の狐などとも呼ばれたことがある」

 九尾の狐? どう見たって尻尾はないが?

 人間の姿だぞ。

「その姿がお望みであるならばお見せする」

「これが……狐の姿」

 瞬きする間にツインズの姿は変わり……膝丈の襦袢を羽織った姿に。

 そして腰の辺りからいくつもの狐の尻尾がっ!

「ふう。やはりこの姿が落ち着く」

「この尻尾は我らの力の証。能力の証。人の態に納めるよりは晒しておく方が楽」

 ツインズは自分の尻尾の1つを手にとって撫で始めた。

 よく見れば頭には狐耳らしきモノまである。人間型の耳もある。全部で耳が4つ在るのだが不思議と違和感を感じない。

「この『耳』は我らの感覚の象徴。どの様なコトでも我らが聞き漏らすことはない」

「つまり我らの宿主様が不測の事態を迎えることはない」

 オレと朝比奈さんはビックリして声が出ない。

 不測の事態というならば今がそうだろう。

 というか朝比奈さんが抱きついてこられて、意味のもなくオレは夢見心地に……

 いや、いかん。そういう気分に浸っている時ではない。

 

 妖怪ツインズの話によると……

 彼女たちは人類共通の無意識下の象徴。誤解を恐れずにいえば「当りくじ」のようなモノなのだという。

「人類全てが幸運を望んでいる。だが、幸運は平等ではない。平等ではないからこそ『幸運』という。そして私達はその『幸運』の象徴」

「人類の無意識下で『幸運』が凝縮し私達が形作られた。形は様々」

「その時、その場所で望まれた形を取る。共通しているのは女性であるということだけ」

「望まれた形となった私達が訪れた人は『幸運』を得ることとなる。それが私達の能力」

「だが、当然ながら無条件では与えられることはできない」

「古では幾つかの試練の与え、それらを乗り越えた者に『幸運』が授けられた」

「我らは乗り越えた者に仕えることとなる」

 ちょっと待て。その試練ってのは……なんだ? オレの場合は。

「最初に試みたのは刀での痛み」

 あー。なるほどね。それで襲ったのか。あれは危なかったぞ。

「危なくはない。宿主様が痛みを感じ、それに耐えられた段階で試練は終了」

「私達の力で直せる程度の傷。つまりは私達が宿った瞬間に傷は完治する」

 なるほどね。だが、それは古泉によって阻止されたぞ。

「次の試練は……強制同化による体力低下」

「実質的に試練無しに同化した。この場合は著しく体力が低下する」

 あー。オレがミイラ化しかけたのはオマエ達の所為か。

「そう。そして宿主様は耐えられた」

「故に私達はこうして外に出ることができている」

 そういうコトか。でだ、オマエ達って結局何なんだ? 仕えられたらどうなるんだ?

「我らが仕えた者はありとあらゆる欲望が適い、そしてどの様な地位をも築くことができる」

「しかし、それには条件がある」

「人類が、つまりは他の者達がその者を疎み蔑む時、我らはその者から離れることとなる」

「何故ならば……我らは『人類共通の無意識』の使者なのだから」

 なるほどね。『幸運』を私利私欲に使うと周囲から嫌われて、結果としてオマエ達はその主人から離れることになるのか。

「そのとおり」

 だが……誰も試練を乗り越えられなかった場合があるんじゃないのか?

「ある。その時の話が寓話として残っている」

「この国では『竹取物語』として伝承されている」

 ああ。かぐや姫もオマエ達の形の1つか。

「そう。あの時は全ての人が私利私欲に走っていた」

「それでは私達が仕えることはない」

 ふむ。何となく判ってきた。

 だが、判らないコトがある。

「なに?」

 どうしてオレの前に現れた? 何処かでオレはクジを引いたのか?

 全くもって記憶はないのだが?

「今回は特別」

「私達がアナタを選んだ」

 何故オレが選ばれたんだ?

「それはアナタが……」

「……涼宮ハルヒに選ばれた存在だから」

 ずいぶんと昔に聞いたことがあるような言葉が出てきたな。

 確か、長門には初めて訪れた長門の部屋で言われ、朝比奈さんには川縁の公園のベンチで言われ、古泉には不完全な赤い球体の時に言われた言葉だ。

 隣の朝比奈さんもビックリしたようで、視線をツインズからオレへと変更された。

 えーと。何となくこそばゆい。

 こそばゆくて、腰が落ち着かないのでツインズへの尋問を再開しよう。

 

 何故だ?

 何故、オレが涼宮ハルヒに選ばれた存在だと解る?

「涼宮ハルヒにより重複を始めた世界の中でアナタだけは何の影響も受けてはいない」

「アナタが世界の基準、いや中心となっている。私達はアナタにお願いしたい」

 なにをだ?

「この重複する世界を元に戻して欲しい」

「それが出来うるのはアナタだけ。だからこそ私達がアナタに仕えるために来た」

 何処からだ? そうだ。腕の中に宿る前は何処から来たんだ?

「人類全てが共有している無意識下の世界」

「人間が『天国』、『地獄』あるいは『妖精の世界』と呼ぶ場所」

 まてまてまて。

 そんな場所が在るのか?

「在るからこそ私達は形作られた」

「在るからこそアナタの目の前にこうして存在している」

 あー。例えて言えば『我思う。故に我在り』か?

 ツインズは小首を傾げて異口同音に答えた。

「違うと言えば違うが、合っていると言えば合っているとも言える」

 んー? つまり間違えたのか?

 

 まあ、いい。

 オマエ達の能力ってのは? なんだ?

「私達が得意な能力はアナタの周囲の女性達にアナタへの好意を抱かせること。それが行動の基本」

「周囲の女性に好かれると周囲の人間の半分は味方となる。そして残り半分である男性は女性に阻まれてアナタへの敵意を失う」

 嫉妬して逆恨みされるという場合もあるんじゃないのか?

「そういう男性は直ぐに浮彫りとなる」

「そしてその男性をアナタに好意を抱くこととなった女性達が説得、或いは敵対して追い出すこととなる。そして……」

 ツインズはにっこりと笑って言葉を続けた。

「女性に完全に敵対できうる男性は有史以来存在したことはない」

 まあ、そうかもな。

 

 つまりだ。最近、オレがモテモテなのはオマエ達の所為か?

「違う。私達が宿ったのは今朝の未明。それ以前のはアナタの力。運命」

「だからこそ私達は納得している。アナタこそが私達を救うことができると」

 なるほどね。

 なんとなく、自転車に初めて乗れた時に母親に無闇矢鱈に誉められた時の気恥ずかしさを思い出してしまうような。そんな感じで腰が落ち着かない。

 落ち着かないのはオレを見ている朝比奈さんの瞳が潤んでいく所為でもあるのだが……

 何故に潤んでいくのかという疑問は脇に置く。

 

 えーと。それでだ……

 つまりオマエ達はオレの周囲の女性を惚れさせるフェロモンみたいなモノか?

「そう。アナタに触れた女性はすべて性的な興奮を得る」

「そちらの女性、朝比奈様は宿主様が腕を取ってからずっと私達の影響を受けていた」

 思い出す。

 朝比奈さんの腕を取って坂道を下っていた時、この部屋で腕を掴んだ時、そして秘裂の硬さを確認しようとして触ってしまった時。

 ああ。

 あれらは全てオレの責任だったのか。

 すみません。

 と、謝り見るとオレを見つめる朝比奈さんの瞳のうるうる度がアップしているっ!

 

 って、何を分析しているんだオレは?

 何となく、そういう状況から逃れるために妖怪ツインズへの尋問を意味もなく続けることにする。

 そのフェロモン効果はどんな風に効くんだ? 

「数式に表せば y=m/(x+n) となる」

「yが効果、xは相手の好き嫌いの度合い、mとnは変数」

 えーとだ。悪いがオレは数学とは相性が悪い。

「単純に言えば、アナタに対して嫌いな女性ほど効果は高い」

「そしてアナタに対して好きな感情を抱いている女性にはほとんど効かない」

 えーと。つまり、朝比奈さんはオレを嫌っていたのか?

「違う。私はキョンくんのことを嫌ってはいないわ。嫌いじゃないから、さっき……」

 朝比奈さんはそこで言葉を切ってツインズへと向き直った。

「いい加減なことを言わないで。私はキョンくんを嫌ってなどいませんっ!」

 ツインズは微笑んだ。小悪魔のような笑みで。

「確かに嫌ってはいない。だが、『制限』を自らに課していた」

「朝比奈様は宿主様と『結ばれたいけど結ばれる訳にはいかない』と自制していた。私達はその自制を解除した。そして自制の意識が高かった分……」

 ツインズはハッキリと笑った。魔女のように。

「朝比奈様の性欲は高まった」

「自制していた分だけ淫らになった。ソレだけのコト」

 はー。そういうコトか。とオレは納得してしまった。隣の朝比奈さんは真っ赤になってうつむいてしまったけどね。

 

 それでだ。

 1つ確認したい。オマエ達はさっき「重なり合う2つの世界」とか言ってたな? どういうコトだ?

「既に宿主様が感じているとおり」

「この世界は『2つの世界』が重なりつつある世界」

 なに?

「宿主様の感じる2年前の『現在の世界』と今の『2年後の世界』が融合しつつある」

「それは私達の世界、『天獄界』も同じ」

 てんごくかい?

「宿主様がさっき思考した単語を用いた」

「宿主様が思考した別の単語、『無意識下の共有精神世界』が好みであればそちらでもいい」

 いや。短い方でいい。

「では。私達の天獄界もまた重なりつつある。だが、重なりきれない。歪みが生じつつある」

「それは人間が2つの心を常に意識できないことに起因している」

「その歪みが増大しつつある。このままでは天獄界は崩壊する」

「私達の世界、天獄界が崩壊した時、それは……」

 それは?

「人類全ての精神が崩壊するコトを意味する」

「理性と本能が崩壊する。つまり……文明は崩壊する」

 なんだとっ!?

「罪悪感と幸福感が重なり合う。『してはいけないこと』をすることで幸福感を得てしまう」

「つまり全ての人類が殺人鬼へと変わる。核のボタンも喜んで押すだろう」

 あ……

「人類の滅亡は私達の滅亡」

「私達はそれを阻止したい」

 そんなコトが……阻止できるのか?

「できる。でき得るからこそ私達は来た」

「宿主様にはそれができる。私達は確信している」

 そんな大それたコトを断言されてもだな。

「すごい。凄いわ。キョンくん。やっぱりアナタは……」

 朝比奈さんがオレの手を取り喜んでいる。ははは。そんなに喜ばないでください。

 えーと。

 なんか授業参観日に従姉妹が来て意味もなくはしゃいでしまったような気恥ずかしさで耐えられない。

 話題を変えたい。いや、変えてしまおう。

 

 それでだ。

 オマエ達はさっき何で朝比奈さんを襲ったんだ?

 そうだ。言葉にしてから改めて疑問に思う。『幸運』の象徴ならば朝比奈さんを襲う理由はない。

「1つはそちらの女性、朝比奈様が宿主様を求めておられた」

「だが宿主様は別の仕事を為されていた。それで私達がお相手した」

 ふむ。手回しのいいメイドみたいだ。

 それで? 他にもあるんだろう?

 妖怪ツインズは……急に醒めた視線になった。

「もう一つは重要。朝比奈様が2つの世界を繋ぎ止めてしまった」

「2つの世界が重なっていない場所から跳躍してきた。しかしココでは重なっている」

「結果として2つの世界を連結し、止めてしまった。重なっているカードをピンで留めているようなモノ」

「また別の視点では重なりつつあるのを止めているともいえる」

「朝比奈様の身体の隅々まで調べれば重なり合うのを止めることができるかも知れない」

「あるいは重なってしまった世界を分離する方法が判るかも知れない」

「そのために調べていた」

「奥の奥まで調べたかった」

 ちょっと待ってくれ。重要なんだか、エロいんだかが解らない。

「私の身体が重なっている? どういう意味?」

 朝比奈さんはキョトンとしておられる。そりゃそうだろう。訳の判らん二人組に重なる世界の止めピンだとか、分離する方法のために調べたいとか言われても訳が判らないだろう。

 えーと。オレから説明します。

 

 それからオレは……

 朝比奈さんの胸のほくろが2つあること。そして手紙が2つ入っていて、内容が微妙に違うことを説明した。

「そんな……私が持ってきたのは便箋が1つだけのはず。あ……」

 どうしました?

「そうだ。こっちに来た時、2つになっていたんだわ。下書きを持って来ちゃったとかと思って、封筒買って入れたんだ」

 ……あのですね。

「ごめんなさい。涼宮さんに見つかったりとか色々あって……すっかり忘れてたの」

 はい。解りました。思えば……こちらの世界というか時代の朝比奈さんもハルヒにいろいろ悪戯されたり、メイドにされたりバニーにされたりしてましたからね。ドジっ娘属性も叩き込まれてもいたな。仕方在りません。全てはハルヒの所為なんです。

 でだ。

 朝比奈さんが持ってきたのはどっちですか?

 

 

 やはり、目の前にいる朝比奈さんはオレと同じ世界観だった。2年前の『現在の世界』。つまりは『1週間前』と書かれた手紙が持ってきたモノだという。

 じゃ……こっちの手紙は?

「それはこの『2年後の世界』の朝比奈様が持ってきたモノだと推定される」

「つまり、彼女の身体は2つの世界の彼女が重なっている。意識できているのは片方だけ」

 そうか。それで調べて解るのか?

「解るかも知れないが、解らないかも知れない」

 どっちだよ。

「調べれば解ること」

 そりゃそうだな。

 ふう。前進したのか混乱しているのか解らなくなってきた。

 とにかくだ。そんなあやふやな事に朝比奈さんの身体を差し出す訳には……

「私、やります」

 え?

 振り向くと朝比奈さんが両手を握りしめ決意した顔でオレを見ている。

「だって、それで私が……ううん。この世界を救えるのなら、この身を差し出します。お願いします。調べて」

 朝比奈さんはずぃっと自ら進んで妖怪ツインズの手を取った。

「貴女達がキョンくんを選んだように私もキョンくんを選んだ。いろいろとお願いもした。だから今度は私の番。全部調べて。隅々まで、奥の奥まで」

 朝比奈さんの熱意に押されたのか、妖怪ツインズも戸惑って互いの顔を見ている。そしてオレの顔を見た。

「いいのですか?」

「宿主様は先程、拒絶されましたが?」

 仕方ない。調べてくれ。

 

 

 そして……だ。

 ベッドの上で二人の妖怪が朝比奈さんの身体を調べている。オレはベッド横のソファで見守っている。別にオレが望んだ事ではない。朝比奈さんが望んだ事であり、また妖怪少女が望んだ事でもある。なんでもオレが近くにいた方が妖怪少女達は力をより発揮できるらしい。そして朝比奈さん自身もオレが近くにいて欲しいと望まれた。

 結果として朝比奈さんの調査というか診察風景を眺める状況となっている。

 

 それで。どういう状況かというとだ。

 九尾の狐もどき少女に挟まれて、朝比奈さんは身悶えしている。少女の細くしなやかな指が、朝比奈さんの胸をやわやわと、時にはぎゅっと擦り、そして握り、乳首は絞り出されたかのようにつんと上を向いて震えている。二人の腕が朝比奈さんの太股を左右に広げ、指が秘裂を押し広げ、さらにはヒダを一枚一枚擦り上げて調べていく。さらには秘裂の中を……妖怪少女が真剣な眼差しで朝比奈さんを見ている。その朝比奈さんは身悶えして小さく「いや……ん」、「あん……そんな」、「ひい……んあ」、「そんなトコロを……ああん」と吐息を。

「宿主様。再度確認しますが朝比奈様の全てを調べて宜しいですか?」

 調べてくれ。それが朝比奈さんの希望だ。

「朝比奈様。朝比奈様の全て調べて宜しいですね?」

「ああ……んあ。優しく……優しく調べて……あん」

「では……」

 妖怪少女の指が、にょろんと伸びて変形した。

 え? 何だその形は?

 変形した指は……どう見てもオレのと同じ形。太さは、ちょいと違うが。そして有り得ない長さに伸びていく。

「こちらもお調べ致します」

 そして朝比奈さんの秘裂の下の穴へと……

「ああんっ! そんなっ! そっちまで調べるなんてっ!」

 別の指も見慣れた形に変形する。

「こちらも更に調べます」

 そして秘裂の中へと……

「んあっ! そんなっ! 両方なんてっ! ああっ!」

 別の妖怪少女の指も変形した。

「朝比奈様。少し声が大きいです。せめて朝比奈様が望む形にて塞がせて頂きます」

 その指は朝比奈さんの口へと……

「ん……ぐ……んん。……ぁん」

 朝比奈さんがオレを見て悶えている。

「宿主様。朝比奈様が、宿主様のを求めておられます」

「しかし、調査中。従いまして、分身にてお相手させて頂きたいのですが」

 どういう風にだ? 解らんが朝比奈さんが望むようにしてくれ。

「では……」

 妖怪少女の一人が瞬く間に……分裂した。

 え? 3人になった?

 と、その増えた1人がオレの前へと。跪いて両手でオレのを包んだ。まるでゼリーでできているかのように一体化してオレのを包み込んでいる。

 直後っ! オレのを様々な感触がっ!

 何だコレはっ!

「朝比奈様の中の全ての感触をお伝えしております」

「つまり、口の中、秘裂の中、そして全ての穴の……」

 解った。それ以上詳しくいわなくても良い。

「そして朝比奈様にも宿主様のを……動きと感触の全てお伝えしております」

「朝比奈様が咥えておられるモノ、秘裂の中のモノ、そして後ろの……」

 解ったっ! 言わんで良いっ! って、うおっ! 凄い。締め付けというか、舌とかヒダとかが撫でる感触というか、蠢いているというか……いろいろ、全てが凄すぎるっ!

「朝比奈様? 更にお望みですか?」

「解りました。全ては朝比奈様が望むとおりに……」

 妖怪ツインズの全ての指が……オレの形に変わり、そしてにょろんと伸びて朝比奈さんの身体を撫で上げていく。

 乳房に巻き付き、乳首を擦り、細い腰に巻き付き、太股やおへその辺り、細い首やうなじや……身体の全てを撫で上げていく。そして……口の中に数本、秘裂にも数本、他のにも数本の……

 そしてそれら全ての感触がオレのにっ!

 うおおおっ! これは拷問だっ!  

 凄まじい感触の嵐にオレの意識が……

 

 そしてオレは果てた。

 果てた時に飛び出た衝動が朝比奈さんに巻き付いている妖怪ツインズの全ての指にも伝わったのだろう。

 朝比奈さんは大きく身体を痙攣させて……果てていった。

 

 

『騒乱の火曜日 宵闇編』へ続く

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