慌てて、床に崩れ落ちた古泉五妃を助け起こす。

 どうした? 朝倉に襲われたのか? 

「いえ。すみません……活動室の方へ」

 活動室? えーと。そうだ、長門に教えて貰ってたな。

 

 部室と地続きの書庫からドアを開け、倉庫を通り、もう一つドアを開けたところが活動室。

 古泉五妃を肩で支えながら辿り着くと……ほとんど何もない部屋。

 ドアを入って正面に黒板。その手前に教壇。教卓は窓際にある。

 廊下側の片隅にデカいアップライトピアノと黒塗りの箱が幾つも積み上げられているのが異様といえば異様。その横にはギターケースらしきモノも幾つか転がっている。

「コレを……」

 言われて気づいた。ドアの陰にマット。体育とかで使うマットではなくベッドに使えスプリングマットが幾つか壁に立てかけてあった。

 何故にこんなモノが?

 と、疑問を問うよりも早く五妃はマットの1つを床に倒した。

 よろめく五妃を支えようと近づく。と、オレの身体が宙に浮いた。

 おわっと! 何が起きたっ?

 五妃に投げ飛ばされたと気づいたのは背中からマットに着地してから。

 何をする気だっ?

「すみません……お相手願えますか?」

 五妃はもどかしげに上着を脱ぎ捨て、ついでにブラも投げ捨ててオレの上へとのしかかる。瞬間、スカートが捲り上げられ……って、アナタ。ノーパンじゃないですか?

「ええ。悔しいですけど、朝倉の言うとおり……いままでこの状態で過ごしてました。そんなコトより……」

 五妃はオレの上に……

 再び、嵐のような時が過ぎ去っていった。

 

 

 時が過ぎ、落ち着いたらしい五妃はオレの肩に頭を乗せて息を整えていた。

「すみません。耐えられると思っていたのですが……ごく小規模なH空間が発生しまして」

 どこにだ? この近くにか?

「ええ。よりによってこの学校の校庭に。仕方ないのでボク1人で『処理』しました」

 ……それはお疲れ様。

「規模としては昨日の10分の1程度でしたが……朝のアナタの『悪戯』で疼いていて……刺激を求めるような状態にもなっていましたから……すみません」

 まあ……気にするな。

 全てはハルヒが……

 

 と、ハルヒの声が響いた。

「あれ? 長門だけ? キョンは? お弁当があるじゃない。何処に行ったの? 活動室?」

 慌てて服を着る。きっちりと着た直後に……活動室のドアが開いた。

「アンタ達、何してたのっ?」

 まあ、そうなるわな。

 オレはなんとか服を着終わってはいるが、古泉の姿は上はブラだけ、下はスカートだけだ。

 文字どおり「スカートだけ」というのは中を確認しない限りは解らないだろうが。

 横にマットが意味ありげに転がっている。

 ハルヒでなくてもその疑問はもっともだろう。

「すみません。新しい『見せブラ』を付けてきたモノですから、男性から見てどうか、感想をお願いしていたところです」

 冷静に響く古泉五妃の声に振り返ると……五妃はブラだけを付けた姿で軽くポーズを取っている。

 そのブラは……さっきは確認できなかったが、カップ周りに小さなフリルと白地に花柄がプリントされたレトロな水着っぽいヤツで中身のボリュームを際立たせているような品であった。

 おい。そんな説明でハルヒが納得する訳がないだろうが?

「あら。そうなの」

 って、あれ? 何故に納得されるのですか?

「奇遇ね。ワタシも新しい『見せブラ』を付けてきていたのよ」

 と、ハルヒも制服(上だけ)を脱ぎだした。というか既に脱いでいる。

 ハルヒの『見せブラ』はピンクの地に赤と黄色と黒で蝶が刺繍されたモノで人並み以上には豊かでかつスレンダーなハルヒのスタイルにはマッチしているようないないような……って、何を分析している。オレは。

「キョン。どっちが扇情的かつ可憐かつキュートだと思う?」

 何を聞きたい? 扇情的と可憐とキュートというのは両立するのか? 若干、意味が被ってないのか? 別々だとすればどれにどうポイントを振り分ければいいんだ?

「有希も見せブラ? 見せてみて」

 入り口で佇んでいた長門は「仕方ない」というかのように溜息を一つして上着を脱いだ。

「あら、有希。そのビスチェ、可愛いじゃない。うーん。可愛さは有希に譲るわ」

 改めて見れば……って、さっきは見ていなかったから初めて見ればだ。長門が身に付けていたのは白と赤のチェック地に水色と黄色の小さなフリルが飾られたビスチェであった。

「……可愛さだけではない実用的でもある」

「何が? ビスチェって脱ぎにくいんじゃない?」

「……ココにスリットがある。実用的」

 長門はビスチェとカップの間を指で捲り、広げた。可憐な乳房の下半分が露わに……

「へぇ……って、キョンっ! 見るなっ!」

 慌てたハルヒによってオレの目は塞がれ、ついでに勢い余ったブラ姿のハルヒのフライングボディアタックによりマットへと押し倒された。

「涼宮さん? 学校でそういうコトはマズイと思いますけど?」

 冷静なる五妃の声がオレの上に乗っかってしまっているハルヒの顔を真っ赤にさせている。

 その『マズイコト』をさっさ、このマットの上でしていたのは誰だ?

 ……とは声には絶対出せないが。

「こらぁっ! キョンっ! アタシの下にいるなんて団則違反よっ!」

 逆上したハルヒに平手で思いっきり叩かれてしまった。

 おい。物理法則に従う限り、オマエがオレを押し倒して乗っかったんだろうが。

 

 

「あー。実に下らないことをしてしまったわ。お昼にしましょ」

 先頭を切って部室へと戻るハルヒの耳が紅い。

 一昨日とはずいぶんと違う。別人のようだと……素朴に思う。

 ハルヒに叩かれた頬がハルヒの手の形に紅くなっているであろうと思い、長門にどうにかして貰おうかなと近づいたオレに長門が小さく囁いた。

「……遮音フィールド展開済みだった。ついでに位相固定もドアに施していた」

 ん? 何が言いたい?

「……涼宮ハルヒは無意識下でアナタの居場所を捕らえていた。位相固定も無意識下で破壊した」

 長門が施した位相固定を何気に破壊した?

 言われなければ判らないが、相変わらず非常識なヤツだ。ハルヒは。

「……だが、アナタを下敷きにしたときは物理法則に従っている。不可解」

 気にするな。アイツはそういうヤツだ。

 ……と、ここでオレはあることに気がついた。

 遮音フィールドを展開していた?

 ということは長門さん。アナタはオレと古泉五妃が何をしていたのか知っておられる?

 声には出さずに脳裏で疑問を展開していると長門が呆れているような視線でオレを見上げて呟いた。

「……後でコーテングの状況を確認したい」

 すみません。その要請には従いたいと思います。はい。

 

 

 図らずも昼休み開始のチャイムが鳴った。

 部室に戻り、弁当を広げ、中身を突く。

 ハルヒは購買で買ってきたらしいミックスサンドと野菜ジュース。

 長門はカレーパンとパックの牛乳。

 古泉はと見ればチャイムと共に水城さんが届けたバスケットの中から出してきたのは厚手の布ナプキンで包まれた……なんですか?

「フランスパンのスライスとキャビアバターとシュリンプソースとスティックベジタブルですね。まあ、ホテルのレストランに頼むとこうなってしまいますよね」

 ああ、そうか。オマエはホテルに住んでいたなと思考の全てをそれに振り向けようとするのだが……

 現実に引き戻される。

 どういう現実か? 全員が下着姿という現実にである。

 正確には上がブラ姿で下がスカート。ただし、そのうち1人、古泉五妃はノーパンである。

 弁当がうまく喉を通っていかない。

 何故だ? どうして全員が疑問にも思っていないんだ? 下着なんだぞ?

 と、オレの脳裏で疑問がサスペンスドラマのオープニングカットのように渦を巻いていたとき、ドアを開けて入ってきたのは……朝比奈さんであった。

「ごめんなさい。遅れてしまいました。あ……」

 そうだよな。驚くよな。普通は。

 言っときますが、朝比奈さん。この状況はオレが望んだ訳ではなくハルヒとかが勝手にですね……

「きょうは『見せブラの日』でした? ごめんなさい。直ぐ用意します。置きブラがありますから着替えますね」

 はい? 何を仰られてます? 置きブラ? そんな制度があったなんて知りませんでしたよ。って、何を考えている。オレは。

 朝比奈さんはパタパタと小走りにロッカーへと向かい……上着を脱ぎ、ついでにブラを換えているようだ。

「キョン? 『見せブラ』は見てもいいけど、着替えは見たらダメでしょ?」

 あのな。ハルヒ。オマエの位置からは見えるかも知れないが、オレの位置からは部室と書庫との間に残っている壁が邪魔して見えねーんだよ。

 そりゃ、見たいと言えば見たいが。

「そっか。ソコからは見えないのね。残念だって顔に書いてあるわよ」

 ハルヒの冷たい視線がオレの邪心諸共、射貫く。

 慌てて視線をハルヒから逸らしたのだが、逸らした視線が別のモノを捕らえた。

 それは長門のスカートのポケットから除いている布。

 えーと。オレの記憶を遡ると……それは長門のショーツのハズである。

 長門はオレの視線に気づいたようで……オレの顔から視線をたぐり、自分のスカートへと辿り着いて……耳を紅くしている。立ち上がり書棚の向こうに行き、数秒後に食後に読もうと選んで持ってきましたという雰囲気で背表紙に「楽譜解説集」とか書いてある分厚い本と共に戻ってきた。

 訂正。ノーパン娘は1人ではなく2人でした。今は1人ですが。

 いやいやいや。そんなにコトはどうでも良い。

 なんだ? この状況は?

 

 見せブラに着替えた朝比奈さんがそそくさとお茶を入れ、いつものように配ってくれる。

 何度も言うが、上はブラで下はスカートである。

「はい。お茶どうぞ。キョンくん? 顔色が悪いですよ。寒いの? エアコンの温度上げるね」

 ありがとうございます。そうですね。ちょっと考え事をしていて部室にエアコンがあるなんてコトも知りませんでしたよ。はははは……

 は? エアコン? いつの間に?

 まあ、それはアレだ。森園生さんが講師として講義していた関係で付いているのだろう。

 問題はそんなコトではない。

 

 しつこいようだが改めて言おう。

 全員がブラ姿である。

 

 オレの脳裏に谷口の言葉が甦ってきた。

「SOS団? セクシーでオシャレな下着で過ごす団だろ?」

 ああ。谷口よ。バカにして悪かった。今、正にそういう状況にあり、SOS団の全員(オレを除く)が、そういう状況を疑問に思っていない。

 女子更衣室に意図せずに紛れ込んでしまったかのような状態に戸惑うだけである。

 

 朝比奈さんはピンクと水色の水玉が可愛いブラが豊かすぎる中身にはミスマッチなのだが反ってマッチしているような……いや、とにかくブラ姿で全員にお茶を配り終えるとオレの横で可愛いお弁当箱を広げて慎ましやかに食べている。

 長門はビスチェ姿でカレーパンを両手で掴んで味を確認するようにゆっくりと食べている。

 いつもならば数口で食べ終えるはずなのだが、カレーの香辛料の配分でも解析しているのか……かなり時間をかけている。

 ハルヒもブラ姿で何やら不機嫌そうにミックスサンドを数口で食べ終えて、野菜ジュースをすずっと啜っている。

 古泉五妃はパンにキャビアが入っているというバターを塗って食べていたが、食べ飽きたというような感じでスティックベジタブルを囓っている。

「ダメですね。ホテルのランチなんて頼むモノじゃありませんね。そう思いませんか?」

 誰に言うともなく言ったと思うのだが……視線はオレに向けられている。

 えーと。どの様な答えを期待してますか?

 悩むオレに対する助け船のつもりなのかハルヒが割り込んできた。

「ホテル? 五妃ちゃん、またホテル住まいになっているの?」

「ええ。姉の披露宴の場所を決めるために泊まり込みで料理を確認してます。でも、こんな料理が続くと飽きてしまいますね」

 ハルヒのこめかみ辺りに怒りマークが浮かんで見えたのは……オレだけの幻想ではないはずだ。

「ふーん。そんなにカロリーが高いモノばかり食べていたら脇腹の贅肉になるわよ」

「残念ながら、この胸の元となってはいるようですが、ウェストとかには回ってきません。何故でしょうね?」

 白々しい言動は女になっても変わらんな。だが……

 何処か……部室の床下辺りから竜と虎が戦いの始まりを伺っているかのような気配を感じる。

 気配を察知したブラ姿の朝比奈さんがオレに小声で話しかけた。

「そこ、退いた方が良いですよ」

 はい? なんのコトでしょう?

 言われてみれば……オレの座り位置は五妃の真ん前である。

「キョン。そこ退いて。五妃ちゃん? 今日こそ白黒ハッキリ付けようじゃない」

「望むところです」

 なんだ? 何が始まる?

 というか、五妃。オマエはハルヒの機嫌を損ねるなと自分で言っていたはずだぞ?

 何故に煽る? 言動が真逆だぞ。

 などと考えている間に、竜虎の戦いの気迫を背負ったハルヒがオレの背後に辿り着き「キョン? ちょおっと、退いてくれる?」と迫力のある声を響かせる。

 そそくさとハルヒに席を譲る。

 情けないが仕方ない。不必要な戦いに巻き込まれるという趣味は持っていないんだからな。

 自分で自分に言い訳していると……朝比奈さんが五妃の後ろのロッカーからオセロを取り出して前に並べた。

 長机の真ん中に端のほうから置いたせいで団長席へと移動したオレの視界ではスカートの下から朝比奈さんのお尻がちょろっと見えた。

 って! 朝比奈さんっ! アナタもノーパンでしたか!

 再訂正。ブラ姿少女4人中、先程までノーパン少女は3人で、現在は2人です。

 そのうち3人とは本日、『関係』致しました。

 いやいやいや、そんなことはどうでもいい。

 

「有希。今までの対戦成績は?」

 両手でカレーパンを持ち、囓っていた長門は口を1回閉じてから告げた。

「……共に14142戦中6897勝6897敗348分。ちょうど同成績」

「ふふん。いいわね。今日で決着を付けるわよっ」

「敗因を今の内から考えておいて下さいね」

「五妃ちゃん? ワタシの辞書には敗因なんて言葉はないのよ?」

「では、その言葉を辞書に刻ませてあげましょう」

 

 後から確認した話だが……

 この「2年後の世界」ではハルヒと五妃は何かにつけて争っているらしい。喧嘩腰でゲームや勝負に熱中するというのが日常茶飯事なのだという。

 しかし、そのコトにまだ馴れていないオレとしては心休まる時間ではなかったと釈明しておく。

 何故に釈明が必要なのかはオレ自身が解らないが。

 

 鋭い音を立ててオセロの石を置いていく2人。

 呆然とかつ恐々として眺めているオレ。

 お茶を入れ直し、配る朝比奈さん。

 それらと全く関係なく、カレーパンを食べ終え、両手で持った牛乳パックの中身を飲み終えたのちに袋などをゴミ箱へ捨てると傍らに置いていた分厚い本を取り、読書に耽る長門。

 状況としては平和だろう。

 オレの心理状態とオレを除く全員がブラ姿だということを除けばだが……

 

 どういう顔をしていればいいのか悩む状況下で真面目な顔の朝比奈さんがそっと耳元で囁いた。

「あの……ちょっと相談したいことがあるんですけど」

 なんでしょう? 朝比奈さんの頼み事でしたら何なりと……

「ショーツ。ドコに行ったか知りません? 授業に遅れそうで慌てていたから探しきれなかったの」

 ……えーと。記憶にありません。とはいえ、場所としてはキッチンルームだろう。

 探しますよ。ええ、探しましょう。何となくこの状況にはいたくはないモノですから。

 

 キッチンルームへと行き、見渡す。

 えーと。どっちにしてもソファの辺りだよなと見れば、ソファにタオルが畳まれた状態で数枚重なっている。あれは確か長門が用意したヤツで……そこかな?

 予想したとおり、一番下のタオルの間に目的物はあった。

「ありましたよ」と振り返ると朝比奈さんは「よかったぁ」と微笑んでから……真っ赤になってショーツを奪うかのように取り、ちょっと奥へと移動し後ろ向きで穿かれた。

 女心というものは今ひとつ解らん。

 

 さて、部室に戻ろうかと向きを変えたオレの視界に飛び込んできたのは……ハルヒの笑っていない笑顔だった。

「何してたの? アンタ達?」

 何してたって……えーと。

 正直には言えない。でまかせを言うにも頭が回らない。

「えーとだな。朝比奈さんが……」

「みくるちゃんが?」

「母乳の……」

「ミルクの?」

「保存方法はコレでいいのかと尋ねられてだな」

「保存方法? 冷蔵庫でいいんじゃないの? 冷凍庫に入れちゃった?」

 ハルヒの眉がちょっとだけ怒りモードから通常モードの位置へと降りてくる。

「ちょっと、みくるちゃん。キョンにそんなコトを相談していたの?」

「って、いうかハルヒ。母乳の受け入れ先なんて探してあったのか?」

 ささやかなる反攻を開始する。防御だけではハルヒの攻撃はかわしきれないだろうからな。

「そんなのインターネットで……」

「まさかとは思うが、朝比奈さんの顔写真入りで募集するつもりじゃないだろうな?」

「う……」

 図星だったらしい。

「そんなのどうでもいいじゃない。みくるちゃん。どれだけ搾れたの? 冷蔵庫の中?」

 相変わらずオレの話を聞かずにマイペースで進行するヤツだ。

 ハルヒは冷蔵庫を開け、中にあるビーカーを取り出し「じゃ味見するわね」と……半分ほど一気に飲んだ。

 おい。引き受け先を募集するんじゃなかったのか?

「んー。母乳ってこんな味だったの? キョン、アンタも飲んでみる?」

 いや、オレは先程、直に飲んで……って、危ねえっ! 声に出しそうだった。

 心の中で慌てたオレの横を何やら半端なショートボブが通ったと思ったら、長門がハルヒからビーカーを受け取り、残りの半分、つまりは元の1/4ほどを飲んだ。

 長門は無言で振り返り、オレの背後から事態を冷ややかな微笑みで見ていた五妃と視線を合わせる。

 五妃は「必要在りません」とばかりに巨大なる胸を突き出し……ハルヒと長門は無言のうちに怒りマークを髪に飾って……ハルヒが不機嫌そうに腕組みし、長門はハルヒと一瞬だけ視線を合わせ、互いに頷いて……長門は残りを飲み乾した。

 この間……数秒。 

 居心地が悪かったのはオレと朝比奈さんだけであった。

「それにしてもみくるちゃん。良くこんなに搾れたわね。搾乳器は便利だった?」

「それが良く搾れなくて、キョンくんに手伝って……あ」

 朝比奈さんっ! ここでそういう言い間違いをしなくてもっ!

 いや、事実だからして言い間違いではありませんが、ここでそういう事実を……

「へぇ? キョンが手伝ったのね? どういう風に手伝ったのか教えて貰えるかしら?」

 ハルヒの視線が絶対零度を目指して凍てついていく。五妃の視線もまた寒々と……

 あのな。長門。オマエまでそういう冷たい視線をオレに向けなくてもいいだろう?

 朝比奈さん。真っ赤になって下向かなくていいですから何とか言ってはくれませんか。

 いや、搾乳器は取りだしてこなくていいですからっ!

 

「こんにちは。お邪魔します。あれ? どなたもいらっしゃらないの?」

 八寒地獄へと落下しかけているオレに救いの声が。

 朝倉涼子の声だった。

 いい。この際、誰でもいい。

 地獄へと転げ落ちている我が身としては朝倉が地獄からの使者であったとしても天国からの祝福の鐘の音のように感じられた。

 

 SOS団全員を前にした朝倉涼子の第一声は以下の通りである。

「入団テストをして貰おうと思って来たんだけど……どうして皆さんブラ姿なんですか?」

 そうだよな。普通はそういう反応だよな。

 いかん。

 朝倉涼子が一番まともなような気がしてきた。

「今日は『見せブラ』の日なのよ。朝倉さん。アナタは今日どんなブラ? 見せられないようだったら今日はダメね。後日改めてテストを行うことにするわよ」

 えーと。そんな展開でいいのか? ハルヒ。

 オレとしては追試なしの門前払いの方が良いのだが……先程、助けられたこともあるから、情状を酌量し、追試を認めてやってもいい。一回程度ならば。

「あら。そうだったの。偶然ね。あたしも見せブラをつけてきてたの」

 そういって上着を脱ぎ始めた。

 えーと。何故にそういう展開になるのだろうか。

 まあ、考えてみれば朝倉は長門のコピーというかバックアップだったからして、予備知識はあったんだろうな。と推測しておくことにする。

 でだ、朝倉涼子はどんなのをつけてきていたかというと……妖艶であった。

 紫の地に赤と白で薔薇か何かの大柄の花柄がバストトップに飾られた……一言でいって外国映画に出てくる超高級娼婦役の妖艶な美女が身に付けているような……その様なブラを優等生然とした朝倉がつけておられた。

 ついでに言えばカップの中身はかなりなボリュームであった。五妃未満、ハルヒ以上という所だろうか。(何を見ているんだ? オレは)

 はっきり言って……ハルヒ以下全員が引いていた。(オレと長門を除く)

 長門は予想の範囲内であったらしく(当然と言えば当然)、オレは引く以前に呆れていただけであったが。

「きゃほーっ! アレなんだい? ハルにゃん達。そんな格好で何をしようって言うんだい?」

 冬将軍をも吹き飛ばすかのような元気な声で入ってきたのは……誰在ろう。SOS団名誉顧問の鶴屋さんである。

 いや、その、あのですね。鶴屋さん。こんな格好はハルヒ……じゃない五妃が言い出したことに皆が……

「あ、そっか。今日は『見せブラ』の日ね。奇遇だねっ! あたしも今日は見せブラなのさっ!」

 あろう事か鶴屋さんまで上着を脱いでいる。

 なんなんだ? この世界は? 2年後はランジェリー世界なのか?

 羨ましさを遥か遠くに通り越して既に頭痛の領域に達している。

「きゃははは。見せブラっていうよりはただのアウター兼用のビスチェだけどね。それで何しようとしてたんだい?」

 鶴屋さんの下着とは……純白の絹製らしきビスチェであり、スレンダーながらもそれなりには豊かな鶴屋さんには見事にマッチしていた。

 何となく安心した。

 いや、鶴屋さんまで妖艶な下着だったらどうしようかと……

 いえ、なんでもないです。

「初めまして。朝倉涼子と申します。今日はこれからあたしの入団テストをして頂けることになっていますの」

 朝倉の丁寧な挨拶に鶴屋さんは「かははははっ! SOS団に入りたいのかい? それはいいことだよ。人生が10倍楽しくなることは請け合いだね。それでどんな試験なんだい? ハルにゃん」と……受験を認めてしまわれていた。

「……仕方ないわね。入団テストの受験は認めるわ」

 そうだよな。如何にハルヒといえども、言ったことを実行されてしまい、さらには名誉顧問に促されてはこれ以上の難癖はできなかったようで受験を認めてしまった。

 仕方あるまい。オレとしては残念だが。

「それで試験ってなんですか?」

 朝倉の疑問ももっともだが……当然ながらハルヒが事前に用意していた訳はなく、単なる思いつきであろう言葉を声にした。

「そうね。実演でどうかしら? こっち来て」

 

 全員が移動した先は活動室。

 ハルヒは壁から離して置いてあるアップライトピアノの蓋を開け……あれ? 鍵盤が2段になっている。

 よくよく見れば、このアップライトピアノは異様にデカい。厚さというか奥行きもあるし幅もある。ついでに高さも2mを越えている。そして2段になっている鍵盤がちょっと左右にズレている。

 なんだこのピアノは?

「よく判りません。鍵盤も上下それぞれ8オクターブ分在りますし、弦も奥の下から上の手前側へと斜めに張られています。調律師が言うには連弾専用のピアノらしいですよ」

 よく知っているな、古泉。オマエが持ち込んだのか?

「いえいえ。始めからこの部屋にありました。ボクは涼宮さんから調律とかの管理を依頼されているだけです。調律師も「初めて見る」と首を傾げていましたよ。設計者のサインはイタリア語、制作者は日本人。どうやらずいぶんと古い時代のモノらしいです。好事家が見たら垂涎の品なのかも知れません」

 良くそんなのがここに置いてあるな。

「ええ。だって仕方ないでしょう? 重くて動かせないほどなんですから」

 五妃は説明を終えるとオレの耳元で誰にも聞こえないように囁いた。

「間違いなく涼宮さんが望んだからこそここに存在する。そういう品なのですよ。コレは」

 あー。そうだった。オマエはハルヒ創造神論者だったな。

「ソコ黙って。静かにして。弾くからね」

 ハルヒは小声で話しているオレを睨んでから、やおら弾き始めた。

 ジャズっぽい曲調だが……よくよく聞けばそれは「ネコ踏んじゃった」である。

 もったいぶった割には手頃な曲だ。

 一通り弾き終えると朝比奈さんとかが拍手で答えた。

「朝倉さん、何か弾ける?」

 やめておけ。朝倉や長門だったら超絶技巧百番だってソラで弾くだろう。

 弾いてしまったら女性初。楽譜なしなら人類初になってしまうのではないか?

 マスコミが大挙してきたらどうするんだ。

「一通り弾けますけど、ピアノなんかでいいの?」

 おー。自分でハードルを上げたぞ。コイツ。

 ハルヒは笑顔のままでむっとしたようでピアノの横の黒い箱の1つを開けた。

 中から出て来たのはバイオリン。

 まあ、形からして予想はしていたが、バイオリンね。ずいぶんと難しい楽器を出してきたな。ハルヒは弾けるのだろうか?

「じゃ、有希、軽く何か弾いてみて」

 やっぱりな。自分では弾けないから長門に役目を流したな。

 長門はバイオリンを受け取り、弓で開放音を確認していたが……急に予告なしに弾き始めた。

 なんの曲だ? それ?

「バイオリン24の奇想曲。1番のアンダンテですね。予想はしていましたが実に見事です」

 横にいた古泉五妃が感心して呟く。

 ありがとよ。クラッシックには縁がないのでな。解説してくれるとは有り難い。

「どういたしまして。おや? 今度は2番のモデラートですね」

 長門は大したコトではないというような無表情のまま、弾き終えて、バイオリンを朝倉に渡した。

「さて。お手並み拝見と行こうかしら?」

 ハルヒ。バイオリンが難問のつもりらしいがそれは無駄だと預言しておこう。

 案の定、朝倉は見事なまでに重音を響かせ始めた。

 これは?

「24の奇想曲、17番のソステヌートですね。ここまで弾けるのは見事の一言でしょう」

 朝倉は「この曲はもう充分でしょ?」と言わんばかりに途中で曲は変えた。今度はかなり気分を入れているのがクラシック音痴のオレにも解る。お気に入りなのか?

 この曲はなんだ?

「同じく24の奇想曲の中の13番のアレグロ。別名『悪魔の微笑み』です」

 古泉は引きつった笑いを浮かべている。

 悪魔の微笑みね。朝倉らしい。

 最後に24番のクワジ・プレストというらしい曲をさわりだけ弾いて朝倉の演奏は終った。

「ブラボー。凄いねっ。いいね。ハルにゃん、即戦力じゃないかっ。これで秋の文化祭も断トツ間違いなしだっ」

 あのー。鶴屋さん? 『文化祭で断トツ』なんて言う言葉をハルヒに軽々しく言わないでくださいませんか? そうでなくても無限軌道暴走原子炉トラクター並みに突っ走るんですから。

「んー。でもね。やっぱりそう簡単に入団を認める訳には……」

 ん? ハルヒにしてはずいぶんと慎重だな。

「どうして? こんなに頑張ったのに? ダメなの?」

 朝倉は涙声だ。

 演技だ。演技に決まっている。

 とはいえ、合否を引っ張るのは何故だ?

「じゃあ、即興で合わせてみて」

 ハルヒは朝倉には改めて別の楽器、ビオラとかいう大型のバイオリンみたいなヤツを渡し、バイオリンは長門の手に戻した。そしてピアノの前に立ち、五妃にも目で合図した。

 何を始める気だ?

「せーのっ!」

 ハルヒが弾き始めたのは……やはり「ネコ踏んじゃった」ハルヒ流ジャズアレンジであった。

 またかい。と呆れようとしたら五妃が連弾して低音エリアで音を重ねていく。

 協奏? いや狂奏曲と当て字した方が良さそうな大幅に賑やかなジャズだ。

 振り返ると長門がそれに合わせてバイオリンを奏で始める。こっちもずいぶんとリズミカルだ。

 朝倉は流石に呆然としている。

 だが……メロディがリピートした途端、朝倉のビオラが加わった。

 ちょっとした室内ジャズ楽団である。(そういう言い回しがあるのかは知らん)

「へぇー。朝倉って子、ヤルねぇ。キョンくんがスカウトしてきたのかい?」

 ニコ顔で感心している鶴屋さんから尋ねられても……オレとしては苦虫を噛み潰した顔の上に無理矢理の笑顔を乗せるしかない。

 ラストの決めもきちんと決まり、観客と化していたオレと鶴屋さんと朝比奈さんは拍手を送る。

 オレは若干ダレ気味だったが。

 ここまで決められては仕方ない。入団を認めるしかあるまい。

 と……それでもハルヒは不満顔だった。

「うーん。今のが決まっていたのは認めるけど……入団はどうかしら」

「おい。ハルヒ。いい加減にしろ。ここまで決まったんなら認めてやれよ」

 あれ? 何故にオレが朝倉の援護を?

 まあ、あれだ。さっき助けられたし、長門のコピーである以上は長門ができるモノは全てそつ無くこなすだろうし、結論としては何をやらせても合格点に達するであろう。

 つまり、どんなテストをしても時間の無駄である。

 認めてやれ。

「ふん。ま、キョンがそこまでいうなら認めてあげる。ただし……」

 ただし? 何を言い出すつもりだ?

「ワタシは団長。五妃ちゃんは副団長であり、企画部長。みくるちゃんは広報部長兼マスコット。有希は情報部長兼文芸部長。加えて鶴屋さんは名誉顧問。ついでに言えば……」

 ぐるりと説明した後でオレに視線を向けニカッと笑った。

「キョンですら総務係長なんだから」

 他が部長でオレは係長かいっ! せめて課長にしてくれ。

 いや、そういうコトではなくオレは団員その1だったハズだが? 気紛れで昇進させやがったぞ。コイツ。

「つまり、朝倉さん。アナタはただの平団員ね。それでいい?」

「わぁ、ずいぶんと特進ですね。ありがとう」

 朝倉は晴れやかな笑顔で喜んでいる。

 はて? 特進とは?

「だって、仮入団テストだったんでしょ? 認められても仮入団かなって思っていたの。正式に認めてくれるなんて。これもキョンくん。アナタの御陰ね。ありがとう」

 ははは。そうだったな。仮入団で良かったんだ。

 ハルヒも何故か残念そうな顔をしているが、認めてしまった以上は仕方在るまい。

「じゃ、上司のキョンくん。晴れて部下となりましたので御指導宜しく」

「ちょっと待って。なんでキョンがアンタの上司なの?」

「だってあたしは平団員なんでしょ? それにキョンくんは総務係長。普通、新入社員は研修が終るまで大抵、総務部預かりでしょ? つまりあたしはキョンくんの部下。違うの?」

 おーい。勝手な解釈で話を進めるな。

 勝手に進めたらハルヒの機嫌が悪化してしまうじゃないか。

「はははは。よかったじやないか。キョンくんに部下ができて。これでSOS団も更なる活躍間違いなしだっ」

 鶴屋さんが大声で認めてしまわれた。

「あの鶴屋さん? あんまり勝手に話を進めないで下さいね」

 鶴屋さんといえども勝手に話を進めるというのはハルヒにも認めがたいコトのようだ。

 大変だ。不機嫌ゲージが上がってしまうっ!

「じゃあ、今夜はあたしの家で記念パーティを開いても良いですか? あたしが御馳走します」

「仕方ないわね。ただし、パーティの内容によっては仮入団員に差し戻すわよ」

 不機嫌ゲージがMAXに達しようかとしていたのを朝倉の提案が押し止めた。というか、あっさりとハルヒが方向転換した。

 騒ぎ好きのハルヒの性格をよく御存知のようだ。

 やれやれ。まあ、自分で蒔いたタネは自分で刈り取って貰おう。朝倉にさ。

「はい。あ……でも、あたしの家はまだ引っ越し荷物がいっぱいだったな。長門さん、部屋を貸してくれます?」

 朝倉の提案を長門は溜息で受け止めて、数ミリだけ頷いた。

「ありがとう。長門さん。いえ、長門先輩。これからも宜しくね」

 わざとらし過ぎる朝倉の会釈を長門は視線をそっぽに向けて受けていた。

 

「さて、落ち着いたところでいいかな? ハルにゃん。キョンくんを借りてっても」

 はい? なんの話でしょう? 鶴屋さん。オレの肱辺りをがしっと掴んでハルヒに承諾を得ているのは何故ですか?

「あ、そうだったわね。キョン、これから鶴屋さんについていって。いい? 団長命令よ。鶴屋さんにの指示には絶対服従。いいわね?」

 イヤだと一度断ってみたいところだが、やめておこう。

 しかしだ。そろそろ昼休みが終るし、午後の講義があってだな。

「そんなの谷口にでも代返させとくわよ。いいから鶴屋さんについて行きなさいっ!」

 はいはい。解りました。

 

 

 余談だが……

 古泉五妃が出かけようとする鶴屋さんに右手を差し出してこう言った。

「家の方はお互い色々と騒がしいようですが、私と先輩は……手を結びましょう」

 どういう意味だ?

 鶴屋さんも、暫し真顔だったが、にかっと真夏の太陽のように笑い手を差し出した。

「そだね。五妃ちゃんとは終生、SOS団仲間ってコトでいこっかっ!」

 固く握手している。

 よく判らんが……資産家関係者同士、色々とあるんだろう。

 一般庶民のオレには解らんような何かがさ。

 

 

 更に余談だが……

 ハルヒ以下、クラシックジャズの見事なる演奏の音が昼休みの校内の広範囲に響きわったった為にオレと鶴屋さんと入れ違いに吹奏楽部の顧問とかが来て、朝倉とか長門とか五妃とか、ついでにハルヒに吹奏楽部への入部というか兼業、つまりはレンタル移籍を強く勧めたらしいのだが……

「ワタシ達をレンタル? 冗談いわないでよ。ワタシ達はレンタルされる立場ではなくレンタルする立場なのっ!」

 というハルヒの意味不明な言葉により顧問達はすごすごと引き下がったらしい。

 お疲れ様である。

 

 

 鶴屋さんとともにオレは学校を後にした。

「鶴屋さん。何をするんですか?」

「ふふふ。それはついてからのお楽しみさっ。しっかし、アレだね。あの朝倉ってコもなんか人間離れしているよね。ひょっとして有希っこの親戚みたいなモン?」

 図星である。

 ……鶴屋さん。どうしてそんなに勘が鋭いんですか?

「んー? 当たっちゃった? きゃははは。あたしの勘が鋭いのは何でだろうね? キョンくんが鈍いだけかもよ?」

 いーえ。先輩の勘が鋭いんです。

「ははは。んじゃ、そういうコトにしておこうか」

 オレは溜息をつくしかない。

 ふと……先を行く鶴屋さんの腰の辺りに何やらシッポのようなモノが見えたような、見えなかったような。

「ん? シッポ? やだなぁ。そんなのがある訳無いじゃないか」

 いーえ。先輩だったら納得しますよ。先祖が九尾の狐とかでも。

「きゃはは。そうか、玉藻の前ね。その人もかなりの美人さんだったらしいから御先祖さんだったら嬉しいかもにょろ」

 あっさりと乗ってこられても。いえ、その度量には感服致します。

「んー。そういう風に素直なのはいいことだよ。ん? どした。君達。アタシ達になんか用かい?」

 鶴屋さんが立ち止まったのは脇道から出てきた2人組に道を塞がれたからなのだが……誰かと見れば、今朝、オレを襲った光陽園学院の美少女だった。

「今朝は失礼しました。確認したいコトがあるのです」

 楚々とした美少女2人に深々と礼をされては襲われたことなど……いや、水に流せるほどにはユルくはないぞ。

 いくら何でも短刀で襲われたコトを許すほどの度量はない。

「君達、双子かい? よく似てるけど?」

 今朝のことを知るはずもない鶴屋さんは晴れ晴れ笑顔で聞いている。

 あのですね、鶴屋さん。オレは今朝、このこのうちのどっちかに襲われてですね。

「そうだったのかい? でも無事だっだんにょろ? じゃ、さっさと水に流そうじゃないか」

 いや、だからといって……いいです。解りました。水に流します。

 はあ。この鶴屋先輩にかかると天変地異でさえにわか雨程度に感じられてしまうのだろうな。きっと。

「しっかし、可愛いね。『卵に目鼻』って、きっと君達のために作られた言葉だね。うん。保証してあげるにょろ」

 ……あの先輩。話を進めてもいいですか?

「どぞどぞ。で? 何を確認したいんだい?」

 あー。進行も先輩にお任せします。

 

 光陽園美少女ツインズ(命名、鶴屋さん)が確認したいのは、オレを襲ったときに使った短刀の所在であった。

 えーと。そんなのは……確か、部室に保管してある。長門に厳重に……えーと。ロックして貰ったな。

 返して欲しいのか?

「いえ。返して頂けなくてもいいのです」

「あなたの所有となっていればそれだけでいいのです」

 どういうコト?

 オレは所有していないぞ。長門にロックして貰っているだけだ。

「長門さんという人はあなたの指示でロックしておられるんですよね?」

 そうだな。そういうコトになるか。

「でしたら、それで構いません。後で伺わせて頂きます」

「そうですね。今夜……お休み前にでも伺います。それではまた」

 就寝前に来ても迷惑なだけだ。来なくていい。というオレの言葉が耳に届いたのかどうかが判らぬままに、光陽園美少女ツインズはあっという間に路地の先へと消えた。

「ふぅん。いつの間にやらずいぶんとモテモテだね。ん。あやかりたいっ」

 鶴屋さんもモテモテでしょう? 少なくとも嫌いだという人はいないはずですよ。苦手だという人はいるかも知れませんが。

 少しだけ皮肉を混ぜて反論すると何故か鶴屋さんの顔が笑みが消え、真面目な顔になった。

 どうしました。

「ん。なんでもないにょろ。じゃさっさと行こうっ」

 鶴屋さんはオレの腕を取って引っ張っていった。

 何かあったのだろうか?

 

 

 鶴屋さんがオレを連れて行ったのはあのビルであった。

 あのビルとは?

 ハルヒに連れられて、ハルヒと朝比奈さんとで……をした部屋のあるビルである。

 しかも連れていった部屋もまたあの部屋であった。

 鶴屋さん。アナタは何を考えているのですか? いや、知っているのですか?

「さあっ! 遠慮しないで入った。入ったっ!」

 力尽くで連れ込まれるというか引きずり込まれると……部屋の様子が違う。

 ベッドはそのままだが、ソファが違う。

 前のは大きいだけのソファだったが、今あるのはファニーというようなタイプ。

 そして何より違うのは……部屋いっぱいのウェディングドレス。ほとんどが純白だが、ピンクや水色、ほのかな紫っぽいのや、オレンジっぽいのやら、果てには黒のまである。

 黒いウェディングドレスって……どんな趣味?

 それらの奥に見えるのは白無垢も幾つか。

 なんですか? いつから結婚式場の倉庫になったんですか? ここは?

「きゃははは。やっぱり、そう思うにょろね。あたしも第一印象はそのまんまさ」

 どこかしら無理したような笑顔で鶴屋さんはベッドに身を投げて大の字になった。

 オレはどうしていいか解らずにベッド横のソファに座った。

 なんですか? このドレスは?

「んー? あたしのさ。見合い相手が送ってきたにょろよ。返事もしていないのにさ。サイズなんかね、ドコでどう測ったのか知らないけどね、全部っ、ぴったしこんこんちきなんだよ。参ったね。ははは」

 鶴屋さんは笑っている。笑っているけど……無表情だ。

 長門の真逆。

 アイツは無表情の範囲内で笑ったり悲しんだり呆れたりするけど、鶴屋さんは笑顔のままで無表情となるみたいだ。

 結婚……するんですか?

「そだね。五妃ちゃんトコと一緒さぁ。父方のじーさんの御命令でね。さっさと結婚して跡継ぎをつくれってさ。笑っちゃうよね。まだ未成年でさ。今度、成人式だってのに。成人式に着ていくのが振り袖じゃなくて留め袖になっちゃんよ。ははは。馬鹿馬鹿しくて……笑い涙が出ちゃうってね」

 片腕で両目を隠して笑っている。口は見事なまでの半円だったが……きっと目の表情は違うだろう。

 それで……オレになんか用事ってなんですか?

「そそ。忘れてたにょろん。コレ着てさ、一緒に写真撮らない?」

 はい? 何でまたそんなコトを?

「いいからいいから。さっさと着た着た。あ、そっちに礼服あるからさ。着替えてね」

 そういって鶴屋さんは制服を脱ぎ、手近にあったドレスを頭から被った。

 ああ。純白のビスチェはこのためでしたか。

「そだよん。あ、パンツ姿見たな? きゃははは。はいはい。さっさと着替えた。着替えた」

 ちなみに純白のショーツであり、これまた純白のストッキング(太股丈。ビスチェからガーターベルトで吊っておられた)と見事に似合っていた。

 

 

 用意されていた礼服はオレには若干大きかったが、それでも鶴屋さんはデカいデジカメを三脚にセットするとタイマーモードでオレと並んでいる写真を撮り始めた。

 

 全てのドレス+白無垢で写真を撮り終えると……鶴屋さんはベッドに大の字に寝転がった。

 今着ているのは純白のドレス。スカートがフレアで……ボリュームのあるAラインというかプリンセスラインとかいうタイプ。肱上までのロンググローブも純白で更に純白の刺繍が施されている。

 なんの知識もないオレから見ても高そうなドレスだ。

「ははは。こんなのはどうでもいいっさ。ね? キョンくんも横になりなっ」

 言われてオレも横になる。

 これで用事は終わりっすか?

「そだね。終っちゃったね」

 沈黙が部屋に響き……鶴屋さんの心の中の悲しみを物語っているようだ。

「そうだっ! も1つあった」

 なんでしょ?

「キョンくん。君、みくるに『おいた』しちゃったにょろ?」

 えっ! えーと。なんでそんなコトを?

「しちゃったんでしょ?」

 笑い顔ながらも気迫で怒っている。怒りのオーラが背景で燃えたぎっている。

 下手に言い訳しても怒りの炎が増すだけだろう。

 はい。致してしまいました。

「……ぷ。ははは。そうか、『おいた』しちゃったか」

 何とも言えない寂しそうな笑顔で……鶴屋さんは起き上がった。

「んじゃさ。あたしにも『おいた』してくんないかな?」

 はい? なんでですか?

「あのさ。あたしはさ。鶴屋家の次代当主って言われててさ。それなりには自信があったにょろよ。どんな相手でもあたしが惚れた相手だったら誰にも後ろ指を指されずに済ます自信がさ。ま、指されるような相手は最初っから選ばないっけどね。でも……」

 急に見合いの話が出てきたのだという。

「驚いたよー。明日、太陽が西から昇ってもあんなには驚かんだろっねってぐらい」

 それで喧嘩して家出中なのだという。

「家出ってもさ。親の監視範囲内家出っさ。ここもウチの人達は知ってる場所だからね。でも顔は合わせたくないんさ。土曜日はハルにゃんに貸したんよ。あたしは適当に旅行してたにょろよ。そして昨日、戻ってきたら大騒ぎっさ」

 大量のドレスが運び込まれたのだという。

「どの相手でも申し分ないから、写真で選べないならドレスでさっさと決めろってさ。勝手だよねー」

 顔を覗き込むと……無理矢理笑顔が涙で濡れていた。

「だからっさ。人生があたしの思うままにならないんなら、せめてあたしの人生の経験はアタシが決めるのさっ!」

 そんなんで……と当たり障りのない言葉で取り繕うとしたのだが、続きは口からでなかった。

 鶴屋さんに押し倒されて、口を塞がれてしまったために……

 

 

 ウェディングドレスのままの鶴屋さんの中へと。

 鶴屋さんは……泣いていた。最初から最後まで。ずうっと泣いていた。

 オレの心も……泣いていた。

 鶴屋さん。こんなんでいいんですか?

 

 果てた後……

 鶴屋さんはオレの胸に顔を埋めていた。

 胸を晒し、純白のストッキングをもドレスから晒した姿で。

「どうだった? キョンくん」

 素晴らしかったですよ。鶴屋先輩。

「やだなっ! こういう時は名前で呼んでくんないかな? 『先輩』もなしでっ! 呼び捨てで宜しくっ!」

 鶴屋さんの要請に従い、名前を呼び捨てにした。

「ん。やっぱ、そういうコトだよね」

 どういうことなんだろう?

「んふふふ。いいのさ。そういうことで」

 そうですね。そういうコトでいいですね。

「そそ。そういうコト。でさ、どうだい? 他人の人妻予備軍をウェディングドレス姿のままで致した感想は?」

 そんな言い方、ずるいっすよ。

「んじゃさっ! 今度はあたしがしてあげるっ」

 鶴屋さんはオレの上へとのしかかってきた。

 長いキスをして……綺麗な半球、おわんのような乳房へとオレの手を導く。

 鶴屋さんの肌は白磁のように白くて綺麗ですべすべしてて……

「んふふ。キミのが元気になったね」

 純白のロンググローブをつけたままの手でオレのを撫で上げ……自分の秘裂へと導き、ゆっくりと腰を下ろして……オレのが秘裂へと呑み込まれた。

 鶴屋さんの中は滑らかで、奥まで届いたときにオレのをきつく締めた。

「んふ。キミのであたしの中はいっぱいだ。んあぅん」

 まだ痛いのか、それとも痛さで何かを忘れたいのか、鶴屋さんが蠢いている。

 オレは身体を起こし、鶴屋さんを抱きしめた。

「んや。キョンくん。抱いて。抱きしめて。忘れさせて」

 片脚の太股ごと鶴屋さんの腰を抱きしめる。

 太股を飾る純白のストッキングの感触がオレの中の罪悪感を煽る。

「んあ。キョンくん。きて。もっと来て。お願いにょろん……ん。あん」

 ベッドの上で抱き合ったまま……長い時を過ごした。

 鶴屋さんが果てるまで……

 

「ん……。キョンくん上手なんだね」

 果てて横になった鶴屋さんはオレを静かに見上げている。

「あ、グローブに血がついてる」

 何故か……悪戯が見つかったときの子供のような視線で純白のグローブについた紅の後を見ていた。

「そだっ! 今度はコレ着てしよっ! ねっ?」

 ドレスを脱ぎ捨て、ウエストニッパーとガーターベルトから純白の刺繍入りストッキング、そして白絹のロンググローブだけの姿で白無垢を指し振り返る。胸と秘裂が露わになった姿は……無邪気な令嬢そのままだと思った。

 そしてその姿で深紅の内掛けと共に純白に紅白の刺繍が袖と裾端あたりに入った披露宴用っぽい白無垢を上から羽織った。

 なんかミスマッチですけど……似合ってますよ。

「そうかい? 和洋折衷さっ!」

 その姿でオレを押し倒して……上に乗った。

「今度はあたしが全部すっからね。キミはそのままさ」

 元気になられたようだ。少しだけ。

 ロンググローブでオレの身体をさぐる。

 いきり立っていくオレのを確かめるように指でなぞっている。

「んふふ。こんなのがあたしの中で……『おいた』したんね。こうしてやる」

 不意に口に含まれた。舌が、舌の感触が心地いい。

 上手っすよ。

「んふ。ありがと。んじゃ、入ってきてね」

 オレのが再び秘裂の中へと呑み込まれた。

「キョンくん。……胸、いじめてくんないかな」

 手を伸ばし白無垢と内掛けの向こうに見え隠れしている見事な半球の乳房に触れる。

 弾力が心地よかった。

 腕が白無垢に隠れていて なんとなく……腕の自由を奪って胸を悪戯しているような錯覚が……

「んふふ。そのまま悪戯してて……んあ。ん……」

 鶴屋さんが……自分で果てるまで……ずっとそのまま……錯覚を楽しんでいた。

 

 

「ん。君の優しさは反則だね」

 オレは果てた後、添い寝している鶴屋さんの胸を弱く撫でながら顔を見てた。

 そうですか? そんなに優しいってコトはないと思いますけど。

「そうかい? まだ……中が痛いんだけどさ、キミに胸を弄られていると……痛さも心地よくなってくるんよ。反則だね」

 そおっすか?

「反則だよ。なんかさ……」

 起き上がりオレの胸の上に乳房を乗せて……

「あーんなに悩んでいたんがさ。馬鹿馬鹿しくなってきたよ。ずるいね。キミは」

 どういう意味か解りませんけど?

「んふふ。ほんと。キミって鈍感だよね?」

 オレの反論はなかった。

 反論しようとした口を鶴屋さんの口で塞がれてしまった。 

 鶴屋さんの舌は細くしなやかで……なんかオレの舌と指相撲するかのように絡まってくる。

 長い沈黙の後……鶴屋さんが離れてニカッと笑った。

「舌相撲はあたしの勝ちっ」

 その笑顔はオレの心の中の罪悪感をも吹き飛ばした。

 なんの話ですか? 舌相撲って。

「んふふ。いいじゃないか。そういうモノだよ」

 起き上がり、小首を傾げる。いつもの鶴屋さんに戻ったみたいだ。

 オレも起き上がり……何気に鶴屋さんの肩を抱いた。

「ん。やっぱ、キミの優しさは反則だね」

 オレの肩に頭を預けて鶴屋さんは時間を楽しむかのように呟いた。

「結局、あたしの我が儘なんだろうね」

 そんなコトはないと思いますよ。

 なんの気なしに反論している。鶴屋さんは黙ってオレの顔を見ている。次の言葉を待っておられるようだ。

 えーと。

 色々あって、混乱しているかと思いますけど、それはそれで。鶴屋さんは鶴屋さんが考えるとおりで良いと思いますよ。家のこととか、結婚とかは。

「そう? そかな?」

 そうです。鶴屋さんの人生なんですから。

「そか。……でも」

 でも?

「キミに説教されるとは思わなかったさ。年下のクセに生意気だねっ」

 オレの額をぺちんと指で叩いた。

「ま、キミの説教されるあたしも同じだね」

 と、オレの手を取って額の前へと……

 何を?

「鈍感だねっ! 同じように叩きなっ! それでおあいこさっ」

 仕方なくぺちっと額を叩いた。

「ははは。何してんだかね。あたし達はっ」

 笑い合った。

 まだ……鶴屋さんはどことなくぎこちない笑いだった。

「そか。あたしの人生だもんね……」

 そう呟いて、オレの肩に暫くの間、頭を預けた。

 

「ん。あれ? おあいこだとダメだにょろ」

 そうですか?

「そだよ。んー。そだ。キョンくん。お尻叩いてくんないっかな?」

 はい? なんですか? それは? ……今朝のことを知ってるんですか?

「今朝のこと? なにそれ? へぇ? そんなコトが? んふふ。あたしがして欲しいのはそんなコトじゃないにょろよ」

 と、オレの膝の上に身体を預けた。

「こうして、お尻を折檻して欲しいにょろ」

 自分で白無垢を腰まで捲り上げられて、白くやや安産型のお尻が剥き出しになる。

「ささっ。叩いて。あたしのお願いは『団長命令』にょろよん?」

 悪戯っこみたいに笑う。

 そりゃ、叩けと言われれば叩きますけど。

 ぺしぺし……ぺしぺし……ぺしぺし……

 こんなんでいいっすか?

「もっと強く。干したお布団を取り込むときに叩くみたいにっ!」

 下から睨まれた。

 解りました。解りましたよ。

 ぱしっ……ぱしっ……ぱしっ……

「もっとっ! 強くっ!」

 ばしっ、ばしっ、ばしっ……

 力を入れて叩く。望まれるままに。

「んあっ。そんな感じ。もっと……」

 鶴屋さんがオレの片手を掴み、自分の胸へと……

「こっちも苛めて……もっと叩いて……」

 望まれるままに叩き、乳首ごと胸を弄り苛めた。

 鶴屋さんが「あぅ」と蠢き、オレの平手は……尻ではなく秘裂を叩いてしまった。

「あぃひぅん!」

 鶴屋さんが仰け反り、痙攣してしまった。

 だ、大丈夫っすか?

「……そこで優しくしないで欲しいにょろよん」

 痙攣の後で鶴屋さんがオレの膝の上に乗り……口づけしてきた。

 そしてそのまま……ベッドへと倒れ落ちた。

 

 

「日が暮れちゃったね」

 あの後は……ただ抱き合ったままで時を過ごした。

 窓から見える空は夕焼けに紅く染まっていた。

「あ、キョンくんはパーティだったね。朝倉ってコの入団記念パーティ。早く行かないとダメにょろ? ささ、起きて。行った。行った」

 あれ? 鶴屋さんは行かないんっすか?

「ん? あたしはいいにょろよん。ここで……」

 満面の笑みに物寂しげな影が混じった。

 ダメですよ。鶴屋さんはSOS団の名誉顧問じゃないですかっ! 名誉顧問が行かないと始まりませんよっ!

「そう? そうかな?」

 そうっすよ。さっさと行きましょう。鶴屋さん。先輩はSOS団のパーティには不可欠なんですから。

「あのね。キミに1つだけいいたんだけど」

 笑顔のままの怒り顔でオレの耳を引っ張った。

 は、はい? なんか変なことをいいましたでしょうか?

「キミと二人っきりの時は、名前の呼び捨てでっ! 名字とか、『先輩』とかの敬称は略でっ! いいにょろ?」

 はい? はい。解りました。

「んじゃ、言い直して」

 えーと。………、パーティに行こう。みんなが待ってますよ。

「ん。じゃ、いこっかっ!」

 

 

 長門のマンションへと向かう道すがら、鶴屋さんは何度かよろめいていた。

「ははは。キミに叩かれたお尻が痛いにょろよん」

 勘弁して下さいよ。って、あれ?

「どした?」

 不意にあることを思い出した。

 あれ? 鶴屋さん。父方のおじいさんは無くなったとか言ってませんでした?

 ほら、オレが一年の時の冬。朝比奈……えーと。朝比奈みちるさんをお願いしたとき。

「え? あー。そっか、そんな2ヶ月前の……いや? 2年と2ヶ月前のことを良く覚えているね。記憶力いいねーっ! それはアレさ。生前葬ってヤツだ。うん。そういうコトさ」

 言い直した。

 そか。予想はしていたけど、鶴屋さんの中にも「2年後」の今と2年前の「現在」が混在しているんだろうな。

 改めて……2年後に跳ばされたということを実感した。

「どした? 納得できないにょろ?」

 いえ。納得しました。鶴屋さんの家では何でもありなんだなと実感致しました。

「なんでもあり?」

 はい。なんでもありなんですね。鶴屋さんトコは。

 オレの言葉を聞いた途端、鶴屋さんは何かを発見したかのようなぽかんとした顔になり……悪戯っ子ぽい笑みを浮かべてオレの耳元でこんなコトを囁いた。

「キミね。『年上の女房は金の草鞋を履いて探せ』って諺は知っているよね?」

 ……知ってますけど、ソレが何か?

「んふふふ。やっぱキミは鈍いっ! 決定だねっ!」

 はい? なんのコトやらさっぱりです。

「ははは。じゃ悪いけど抱っこして。お尻が痛くて歩けないにょろよん」

 オレは仕方なく、いわゆる『お姫様抱っこ』をして道を急いだ。

 途中からは腕が保たなかったので、普通のおんぶに変えさせて貰ったがな。

 

 そして、長門のマンションへと辿り着いた。

 何となくイヤな予感のする場所へと。

 

『狂乱の月曜日 夜編』へと続く

 

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