ある休日。

 オレは涼宮ハルヒに呼び出された。

「遅かったわね。まぁいいわ。じゃ、行きましょ」

 ドコへだよ。まったくいつまでも自分勝手なヤツだ。

 

 ハルヒに付いていった先はとあるマンション。

 その一室にズカズカと入るとハルヒは「連れてきてあげたわよ。感謝しなさい」と奥にいる誰かに告げた。

 その誰かとは誰であろう。

 朝比奈みくる、その人だった。

 殺風景な部屋にベッドが1つとと大きめのソファが数脚。それだけの部屋。

 そのベッドの上で恥ずかしそうに……何故かコートを着ていた。

「キョンくん。お願いがあります。私が……」

「みくるちゃん? 約束したわよね? ちゃんとはっきり言いなさいっ!」

 振り向くとハルヒがコートを脱いで……実に扇情的な姿になっている。

 いわゆるボンデージドレスとでも言うのだろうか、あるまじき姿で手には鞭を持っている。

 なんだ? どういうことだ? 何が始まった?

 ここは何かの異次元か?

 それともパラレルワールドの1つなのか?

「あの……キョンくん。私が……キョンくんを思ってイクところを見て下さいっ!」

 そういってコートをはだけると……裸だった。

 いや、素っ裸ではない。

 ウェストには……何というのかは知らないがくびれたウェストを更に扇情的に造形する赤い革製の何かで締め上げている。手首から肱までも同じ赤い革製の何かをつけられておられる。綺麗なおみ足もまた足首から膝までが革製の何かで……よく見れば首輪もつけられておられて……その首輪と手と足の革製のモノには金属のリングが鈍く光っている。

 そして……

 

 その大きい胸を弄りだした。

 ゆっくりと、まるで微風が触っているかのように。

 見ているだけでもどかしくなるような……そんな感じで。

「キョンくん。私……毎晩、あなたのことを思って……そして……」

「みくるちゃん? もっとはっきり言いなさいよ。『私はインランな牛マゾ娘です』って!」

 ハルヒはオレの横に来ると胸を押した。

 軽く押されただけなのに、ハルヒの毒気に気圧されていた所為か……オレは大きめのソファの1つにすとんと落ちるように座った。

 まるで力が入らない。オレの身体が人形に変わってしまったようだ。

 いつの間に? 何かが起こった? これもハルヒの能力なのか?

「キョンくぅん。みくるは……みくるは……みくるは……いつもあなたとイヤらしいことを考えている淫乱な……」

「みくるちゃん。はっきり言わないとアナタの最初の相手はこの鞭になるわよ」

 なんだ? どういうコトだ?

 見れば鞭の握りは……何処かで見慣れたような形をしている。

「ほぉら。みくるちゃん。これが欲しいんでしょ?」

 ハルヒはオレのズボンのファスナーを一気に開け、中から……

 

 中からモノを出した。

 それまでどうなっていたのかは判らないが、ハルヒのしなやかな白い指の感触を感じた途端に直立していた。

「どう? 欲しいの? 欲しくないの? はっきり言いなさいよ」

「は、はひ。ソレが欲しいんですぅ」

「コレを触りたいんでしょ?」

「さ触りたいですぅ」

「しゃぶりつきたいんでしょ?」

「しゃぶりたいですぅぅ」

「どのお口でしゃぶりつきたいの? 上? それとも……」

「は、はひぃ……ぃい、イク……」

 直後、ハルヒが振るった鞭が床を叩いた。その音に朝比奈さんはびくっと震え……小刻みに白い身体を小さく痙攣させた。

「あら? 見ているだけで勝手にイッちゃうなんて生意気ね」

 もう一度鞭の音が響く。

 その間中……ずっとハルヒの白くしなやかな指がオレのをゆっくりと擦り上げていた。

「は、はひっ! 勝手にイって申し訳ありませんですぅぅぅ」

 小さく息を小刻みに吐くように……朝比奈さんは泣きながら謝罪した。

 見れば顔は涙でぐしゃぐしゃだった。

 そして胸も……

「……え?」

 気づいたオレにハルヒは呆れたように言葉を吐いた。

「ほぉら、みくるちゃんちゃんと話さないとキョンが驚いているわよ。どうしてその大きな胸が濡れているのかしら?」

「は、はひぃい。みくるは……みくるはおっきくしようと……毎日、マッサージだけじゃ……マッサージでイクだけじゃものたりずに……お薬を飲んで……います。そして……お薬を飲んで……その副作用で……」

「副作用じゃないでしょ? みくるちゃん。キョンに呑んで貰うためにお薬を飲んでいたんでしょ?」

「は、はひぃ。キョンくんに呑んでいただくために……ミルクを出すためにお薬を飲んでました」

 その大きく形良い胸の先から……白い液体が溢れだし……胸をべとべとに濡らしていた。

「さあ? みくるちゃん。もう一度言って。キョンのコレをドコでどうしたいのかを」

「はひ。みくるは……みくるは……キョンくんの……」

 朝比奈さんの顔は紅潮し……まるで夢遊病者のようにだらしなく……視線は空を泳いでいた。

 ハルヒの鞭が床を叩き、びくっともう一度、朝比奈さんのフィギュアのような身体を振るわせた。

 そして……

 

「ど……奴隷になりた……い……で……す……ぅ」

 視線が……焦点が定まらなくなっている視線でオレのを見ながら身体が小刻みに震えている。

「あら? 告白しただけでもイッちゃうなんてなんてはしたないマゾ牛奴隷ね」

 ハルヒはオレのをしなやかな指でそそり上げている。

「もう一度確認するわ。みくるちゃん、キョンのコレ。しゃぶりたい?」

「しゃ……しゃぶりたい……ですぅ」

 朝比奈さんは一言の言葉を発する度に軽く痙攣している。

「ほら。先っぽから美味しそうな滴を出しているコレをしゃぶりたいのね?」

「はひぃ……じゃぶり……たい・・・ですぅ……ぅう……」

「駄目よ。これはワタシがしゃぶるの」

 ハルヒはそういって……オレのを口に含んだ。

 最初は軽くキスをするように。そして唇がオレのを含んでいき……舌が蠢いているのが感触として伝わってきた。

 あまりの……甘美な刺激に耐え切れそうになくなった時……不意にオレのはハルヒの唇から解放された。

「さぁ? みくるちゃん。キョンのコレをしゃぶった後はどうされたいの?」

 問い掛けるその間もハルヒの指がオレのをさすり上げている。今は唾液で……いやそれ以外のモノでもヌルヌルになっているオレのを捕らえて離さない。

「みくるは……みくるは……キョンくんに……この胸を……い、弄って……ほしいですぅ」

「あら? そうなの。でも残念ね。キョンはワタシの胸を触りたいみたいよ?」

 そういっておもむろにハルヒは胸元のファスナーを下げる。

 ハルヒの形良く、程よい大きさの2つの膨らみが飛び出てきた。

 何故か……

 何故かオレは……その2つの膨らみに手を伸ばして……弄り始めていた。

 最初は大きさを確かめるように……柔らかさと弾力を確かめるように……そして硬く飛び出している突起の固さを確かめるように……しつこく弄り続けていた。

 ハルヒはオレの手の感触を……紅潮した顔をほころばせて……楽しんでいるようだ。

「ほぉら。みくるちゃん。キョンはワタシの胸の方が良いみたいよ? アナタのただ大きくてミルクが噴き出す胸よりもね?」

「は……はひぃ。それでも……みくるのも……弄って……欲しひぃでぇすぅ……」

 何度目かの強い痙攣で全身を振るわせながらも……焦点の定まっていない瞳になっていても……オレ達の方を見ていた。

 世界の全てがオレ達であるかのように……

「それで? 胸を弄って貰った後でどうされたいの? キョンのコレをどうしたいの?」

 ハルヒのしなやかな指がさすり上げている。

「は……ひぃ……みくるは……キョンくんの……を入れて……欲しいです」

「ドコに? ドコに入れて欲しいのかをちゃんと見せなさい?」

 語尾が変だ。

 だがそれは朝比奈さんの行動が……正解を示していた。

 ふるふると痙攣する肢体をゆっくりと動かしている。

 ぺたりとベッドに座っていた膝を上げ……そして左右に離していく。

 両足がみくるというアルファベットを形作るようになり……その中心に指を伸ばし……ゆっくりと広げ……

 

 足の間に未熟な果実が指で押し広げられていく。ゆっくりと。恥ずかしさと快楽の間を広げるように。

 全ての感情と本能が入り交じった果汁を滴らせている。

「あぁら。随分と物欲しげに滴らせているのね? もっとちゃんと見せないとキョンが見えないって言ってるわよ」

 そんなコトは一言も言ってはいない。だが朝比奈さんはハルヒの言葉に身体を震わせて従っていく。

「はぁひぃ。コレで見えますかぁ……ぁひぃ」

 指で押し広げ、更に中をも広げようとしている。

 片手は自分の胸をゆっくりと弄り続け、もう片手でもどかしげに広げている。

 少しでも力を入れると気を失ってしまう。そんな加減で止まることなく……

 

 その間に……オレはハルヒに服を脱がされていた。

 シャツもズボンもそして下着も……その間に何度かオレの手はハルヒの胸の膨らみから離れたが、ずくに膨らみへと、その中心の突起へと指を伸ばしていた。

 まるで磁石に吸い寄せられる砂鉄のように……

 ソファとベッドが斜めに位置している所為でオレは目の前のハルヒの胸越しに朝比奈さんを眺める格好で……視線は朝比奈さんの中心に吸い寄せられていた。

 無垢で本能と感情の中心を……

「ふうん。みくるちゃん、ソコに入れて欲しいの? でも残念ね、キョンはアタシの中に入れたがっているみたいよ?」

 ハルヒはソファに跨るとファスナーをさらに押し下げ……自分の秘裂をオレの目の前に晒した。

 朝比奈さんほどではない無垢な秘裂がオレの目の前にある。

「ほら。証拠にキョンはワタシのにキスしたがっているわ。キョン? キスしたいのならしてもいいのよ?」

 何故かオレは秘裂の中に顔を近付け……舌を動かしていた。

「ほぉら。みくるちゃん。キョンはアナタのに入れるよりもアタシの方にキスする方が良いみたいよ?」

 舌先で……秘裂の中の突起を弄る。

 ハルヒの手がオレの頭をかきむしっている。不意にその指先に力が入り……ハルヒの秘裂が震えた。

「キョン? アナタ巧いじゃない? 御褒美に……ナニをして欲しい?」

 何をして欲しいと言える状況ではない。オレの口はハルヒの秘裂とキスをしたまま塞がっている。

「みくるちゃん。キョンが何をしたいか判る?」

「みくるは……みくるはキョンくんのをココに入れてぇ……欲しひぃ……ですぅ」

「そうなの? でもね……残念だけど」

 ハルヒはオレのを白い指で擦り上げ……自分の秘裂へと導いていく。

 ゆっくりと腰を下ろし……オレのは秘裂の中に呑み込まれていった。

 最後に……ハルヒはビクッと身体を震わせ……仰け反った。

「ぅくっ……ほぉら、みくるちやん、見える? キョンのがどうなっているのか、判る?」

「……判りますぅ」

「キョンのはワタシの中で蠢いているわ。白いミルクを出したがって震えているのよ。羨ましい?」

「……う、羨ましいですぅ」

 ハルヒの腰が蠢く。蠢いている。朝比奈さんに見せつけるように……

 オレのを貪るかのように……

「キョン? もっとゆっくりワタシの中を楽しみなさい。もっとゆっくりと……」

 オレは動いてはいない。動けない。

 いや、オレの手はハルヒの胸の膨らみを弄っている。オレの口は、舌は胸の膨らみの突起を弄っている。

「キョン? そんなにワタシの身体が良いのね? いいわよ。全てを吐き出して。ワタシの中に……」

 その言葉を待っていたかのように……オレはハルヒの中に放っていた。

 

「……早いわよ」

 頬を引っぱたかれて……混沌とした意識が現実へと戻りかけた。

 だが、頬の衝撃の反応したのはオレの……だった。

「あら? やっぱり? そんなにワタシの中が良いのね。ワタシの中で元気になっていくなんて……」

 オレのはハルヒの中を楽しむかのように脈打って直立していく。

 ハルヒは暫く、オレのが脈打つのに合わせて腰を蠢かせていたが……不意に離れた。

 ゆっくりと……何故か不機嫌そうな眉で。

「さあ。みくるちゃん。キョンのコレが欲しい?」

「はひぃ……欲しひぃ……れすぅ」

 オレのは……放ったモノとハルヒの中のとてせ白く紅く彩られている。

 紅く?

 オレの疑問よりも先に朝比奈さんの手が伸びてきた。

「コレが……欲しひぃ……でえぇすぅ……」

 ベッド横のソファに躙り寄る朝比奈さんの顔はまるで痴女のようだった。

 ピシッと鞭の音が響く。

「はしたないわよ? みくるちゃん。欲しいならドコでどうしたいのかをちゃんと言いなさいっ!」

 ハルヒを見ると……オレが放ったモノと紅い液体が太股を彩っている。

「はひぃ……コレをしゃぶりたいですぅ」

「良く言ったわね。みくるちゃん、コレが欲しいの? ワタシのとキョンのとが混じっでべとべとのコレをしゃぶりたいのね?」

「はぁひぃ……しゃぶりたいですぅ」

「ふふふ……じゃあ、しゃぶりなさい。心ゆくまで舌で舐めり尽くすのよ」

 朝比奈さんの可愛い口から小さな舌がチロリと出てオレのを舐めていく。

 根本から先の方へと……表面についていた全てを舐めり取るかのように……

「ふふふ。みくるちゃん、美味しい? ワタシのとキョンのが混じったそれは美味しいでしょ?」

「はぁひぃ……美味しいですぅ」

「次はどうしたいんだっけ? みくるちゃん。ハッキリと言いなさい」

 鞭の音が響く。ハルヒは冷たい視線で朝比奈さんを見下ろしている。

「ココに……みくるのココに……入れて欲しひぃ」

「ドコに? ちゃんと、もう一度広げて見せなさい」

 朝比奈さんは後ろに転げるようにベッドに倒れ、足を突っ張って……お尻を上げて……指で押し広げた。

 空中に未熟な果実が自らの指で広げられ……ハルヒとオレの視線が注がれている。

「ココに……みくるのこの中に……入れてぇ……下さひぃぃ」

「はしたないわね。みくるちゃん。でも正直で良いわ。キョン? みくるちゃんのソコにぶち込んであげなさい」

 オレはベッドの上に上がり……顔の目の前にあった朝比奈さんの広げられた未熟な果実……秘裂にキスをした。何気に。

「いひぃっ!」

 朝比奈さんの身体がビクッと痙攣し、崩れ落ちた。

 両足は左右に広がったまま……ぐしょぐしょに泣いたように濡れている秘裂はオレのモノの前に広がっていた……ちょうどオレのを受け入れるかのように。

「さぁ? キョン。グチャグチャに掻き回してあげなさい。みくるちゃんの気が狂うまで掻き回すのよっ!」

 鞭の音が響く。

 オレのは……秘裂の中へと沈んでいく。オレの手は朝比奈さんの細い腰を変えている。だがそんなコトをしなくても……オレのは全て沈んでいった。まるで吸い込まれるかのように……

 途中で……それまでとは違う種類の痙攣が朝比奈さんの全身を振るわせ、朝比奈さんの身体が起き上がった。

「ぁうっ! キョンくぅん。みくるの中に……中に来てくれたんだぁ。嬉しひぃ……」

 ハルヒは……朝比奈さんの手首と足首についていた金属の輪をカチリと繋いだ。

 右手首と右足首、左手首と左足首が繋がれ……自由が制限されていく。

 朝比奈さんが動かせるのは……腰だけ。

 その腰が絶え間なく蠢き……オレのを求めている。奥へ……奥へと……

「みくるちゃん。他にもして欲しいことがあったんじゃない? その大きくてミルクを噴き出している胸をどうして欲しいんだっけ?」

「弄っひて……弄り倒ひて……お願ぁひぃしまふぅ……」

 蠢く腰を押さえていたオレの手は胸へと伸びる。が、絶え間ない痙攣に震える朝比奈さんが仰け反る所為でなかなか届かなかった。指先が胸の突起に触れたりする度に、朝比奈さんはのけぞり痙攣する。

「だめじゃない? みくるちゃん。仰け反ったりしたらキョンが弄れないじゃない」

 朝比奈さんの顔を覗き込んでいたハルヒが朝比奈さんを抱き上げる。背中から手を回して朝比奈さんの胸を突き出すように……

「ほぉら。キョン、みくるちゃんの胸、大きいでしょう? ミルクも噴き出していやらしいでしょ?」

 ハルヒの手から溢れ、そしてその上からオレの手が覆っても、朝比奈さんの胸は溢れている。ハルヒが揉む度にオレの胸にミルクがかかっている。胸の突起を包むようにオレの手が弄っていく。

「あひぃ。キョンくんの手が……いっぱいあるぅ……キョンくんがワタひぃの中にぃ……きているぅ……うれひぃですぅ……あひぃいぃぃ」

 秘裂に沈んだオレのを離さないかのような痙攣が……オレのを果てさせた。直後に……長い痙攣が朝比奈さんの身体を震わせ……意識が途絶えていった。

 

「みくるちゃん? いっちゃったの? 良かったかしら? 返事しなさい?」

 ハルヒの指が朝比奈さんの胸の突起を摘み上げる。

 直後に混濁したままの意識を取り戻して……朝比奈さんはとろんとした眼でオレを見上げた。

「お礼は? みくるちゃん。ちゃんと言わないと駄目でしょ? キョンのを綺麗にしてあげなさい」

 ハルヒは朝比奈さんの手足のリングを外し、自由にする。が、崩れ落ちたままの朝比奈さんは……身体が泥でできているかのようなゆっくりとした動きでオレのへと顔を近付けてくる。

「ありがとぉうですぅ……お礼にみくるの舌で綺麗にさせて下ぁさひぃ」

 朝比奈さんはまだ小さく痙攣している身体をゆっくりと動かして……舌先で包むように含んで……舐め上げていく。

「みくるちゃん? 幾ら好きだからってソコだけ綺麗にしても仕方ないわよ? アナタのミルクで全身べとべとになったキョンの全身を隅々まで綺麗にしてあげなさい。きちんとね」

「はぁひぃ。綺麗にさせていただきますぅ」

 ハルヒの指示に従い朝比奈さんはオレの全身を舐め上げていった。

 

 

 全てが終わり……シャワーを浴びたオレ達は無言のまま普段着に着替え、部屋を出た。

 オレは……外の空気を吸い込んでやっと正気と常識とを取り戻し、ハルヒの腕を掴んで詰め寄った。

「おい、ハルヒ。これは一体どういうコトだ?」

 ハルヒはオレを一瞥し、直ぐには答えずに朝比奈さんに指示した。

「みくるちゃん。悪いけど先に行ってエレベーター呼んで」

「は、はい」

 朝比奈さんは小動物のようにオレとハルヒとの間に湧き上がっていく険悪な雰囲気に怖がっていたが、素直にハルヒの指示に従ってマンションの廊下を駆けて行った。

「どういうコトってなによ?」

「何よじゃない、今のことだ」

「……昨日、みくるちゃんとカラオケ行ったのよ。みんなと別れた後」

 オレの脳裏に昨日の出来事が浮かび上がる。確かに皆で帰り道の途中まではいつもと同じに行動していた。駅前で別れた後……確かにコイツは朝比奈さんと同じ方向へと消えていった。

「そしたら……機械の調子が悪くて、全然歌えなくて……みくるちゃんとイロイロ話してたのよ。そしてね……」

 ハルヒは視線を逸らす。何故か恥ずかしげな表情になって……

 さっきまでのコトをしておきながら今更そんな表情をするなんて……不可解すぎる。

「みくるちゃんに好きなタイプは誰って聞いたりして……そのうちに初めての相手はどんなのが良いのって聞いたら……」

 何故か語気が荒立っていく。

「キョンっ! アナタが良いっていったのよっ! みくるちゃんがっ! だから協力してあげたのよっ! 悪いの?」

 オレを睨み付けるハルヒの顔は怒っている。

 怒っているのだが……どこかしら違うような気もしている。

「それならそれでこんなコトをしなくても……」

 選ばれたというコトだけは光栄なのは間違いないのだが、だからといって手段というモノが……

「じゃあっ! 聞くけど、アンタ。みくるちゃんが『して下さい』って頼んだら『判りました。じゃあ……』って直ぐに行動できる? 行動したところで、途中で直ぐに尻込みして、『また次の機会に……』とかってお茶を濁すに違いないわっ! だから有無を言わさずに……っ!」

 不意にハルヒの言葉が途切れた。何事かと見ると……

 怒っているハルヒの瞳から大粒の涙がぽろぽろと溢れていた。

「あれ? アタシ……なんで?」

 オレに聞くな。涙以前の部屋の中の出来事と今の説明を理解しようと努力するだけでオレの頭脳の処理能力は手一杯だ。

「あのぅ。エレベーター来ましたけど」

 廊下の先でフェレットが嵐が去ったのかを巣穴からちょこっと頭を出して確認するかのような感じで朝比奈さんはオレ達を呼んだ。

「ふん。いい? 玄宗とかカエサルとかは言わないけど、みくるちゃんの最初の相手になったんだから、後で『なんであんな人を選んだんだろう?』って後悔されないようになりなさいよ。メネラオスみたいのはアタシの方もみくるちゃんも遠慮するけど」

 意味不明な言葉と共にハルヒはエレベーターへと向かった。

 オレは……0.5秒ほど呆然としていたが、廊下の先で振り向いたハルヒの「さっさと来なさいよっ!」と物語る視線に慌てて歩き出した。

 

 エレベーターの中でもオレ達は無言だった。

 1階についてドアが開いた途端にハルヒは出て行き、電動昇降機の箱の中にはオレと朝比奈さんが残された。

 律儀にもドアの「開」ボタンを押し続けてオレが出るのを待っている朝比奈さんは……先程のことがなかったかのような愛くるしい笑顔のまま、立ち止まっているオレを不思議そうに見上げていた。

「あの……クスリってなんですか? ハルヒに飲まされているんですか?」

 オレは……何故、こんな質問を発したのかをオレ自身に問い詰めたかった。

 もっと別に確認すべき点、および質問すべきコトはあるだろう? オレっ!

 たが、朝比奈さんは……耳を真っ赤にして恥ずかしそうにうつむいた。

 ……先程の光景とのギャップが在りすぎて、オレは固まっていた。

「別に変なクスリじゃないです。キョンくんも妹さんがいますから判るかと思いますけど……月に一度ある……の薬なんですけど、体質に合わないみたいで……そのクスリを飲む前から……その……出ることはあったので……気にしないで下さい」

 朝比奈さんは真っ赤になっている。

 やはり……先程とのギャップに……オレは悩んでいた。何をどう悩んでいたのかはオレ自身にも判らなかったのだが。

「……気にしなくて良いんですね?」

 何を確認しているっ! オレはっ!

「あ、はい。それと……」

 オレを見上げた朝比奈さんは世界三大美少女コンテストに優勝したかのような笑顔だった。

 この笑顔の前にはゼウスでさえ妻を投げ出し、閻魔大王だって地獄の罪人どもを無罪放免するだろう。

 ……その可憐な瞳から大粒の涙がはらはらと溢れてさえいなければ。

「私に……あんまり優しくしないで下さい」

 不可解な表情と言葉に再びオレの頭脳は活動を静止した。

 

 静止したオレの頭脳を強制リセットアンド再起動したのは……ハルヒの怒鳴り声だった。

「なにしてんのよっ! キョンっ! さっさと来なさいっ!」

「あ、はい。ただいま……」

 朝比奈さんに促されオレはハルヒが待つ通りへと足を運んだ。

「じゃあね、キョン。みくるちやん、カラオケでも行こっか? キョンがこんなに早く『終わる』なんて思ってもいなかったから時間が余って仕方ないわ」

 オレはハルヒの肩を掴もうとしたが軽いフットワークによって空中で間抜けな形に腕を上げただけに終わった。

「なぁに? キョン。まださっきの続きをしたいの?」

「オマエ、まさかカラオケ屋で……」

 オレの警告というか注意はハルヒに先回りされて途切れた。

「する訳無いでしょっ! みくるちゃんを苛めて良いのはこのアタシだけなんだからっ! それにあんなコトを誰かに晒すような趣味もないわよっ! するんだったら部屋に戻るわよっ! ……それとも」

 ハルヒは底意地の悪い笑顔で睨む。

「みくるちゃんがあんなに丁寧に舐めてあげたのにぴくりとも動かなくなったアンタのがもう復帰したとでも?」

 オレはハルヒの毒気に当てられたかのように後ずさった。

「ふん。口だけの男なんて最低ね。ちゃんと行動で示しなさいよっ! 次までには少しは鍛えておくコトね。みくるちゃん、こんなふにゃふにゃ男は放っといて行きましょ」

 オレは立ち去る2人を……黙って見送った。

 時々、朝比奈さんが申し訳なさそうに振り向いてくれるのだけが救いだった。

 

 ……これだけで終わったのであれば、悩ましい日として記憶に留まるだけだったのかも知れないが、そうはならなかった。

 この日から嵐に……妄想と欲望の嵐に翻弄される日々が始まったのである。

 

 つくづく思う。

 全てが夢であって欲しいと。

 

 いや、一部分は事実のままで残って欲しいというもまた、本音ではあるのだが……

 

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