image credit:Woods Hole Oceanographic Institution
1708年、スペインのガレオン船「サンホセ(San Jose)号」は、カリブ海での大英帝国と熾烈な戦いの末、金銀財宝もろとも海底に沈んだ。
そして今、310年もの海底での眠りから覚めようとしている。沈没船に搭載されていた青銅の大砲を調査した結果、その身元がついに正式に特定されたのだ。
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米ウッズホール海洋研究所によると、自動潜水艇「REMUS 6000」が2015年に行った調査では、青銅の大砲に刻まれたイルカの装飾を今でも確認できたという。
大砲にあったイルカの装飾が決め手に image credit:Woods Hole Oceanographic Institution
そしてこの度、提携機関であるスイスの海洋考古学コンサルタント(Maritime Archaeology Consultants)とコロンビア政府によって正式にその詳細を公表する許可が出された。
大英帝国船と砲撃戦を繰り広げ海の藻屑と消えたサンホセ号
サンホセ号は62門の銃砲を搭載していたが、大英帝国には敵わなかった。その毎年の航海の大半は、軍艦を伴い、新世界からヨーロッパへと財宝を運んでいた。
事実、沈没したその時も、ペルーで発掘された財宝を積載しており、その価値は現在の価格でおよそ40億から1700億円と推定されている。
これはスペイン帝国とフランス王国が大英帝国と衝突したスペイン継承戦争の軍資金になるはずだった。
しかし1708年、軍艦が遅れたため、司令官ホセ・フェルナンデス・デ・サンティジャン提督は単独での出航を決めた。これが命取りとなる。英国船4隻と遭遇し、激しい砲撃戦の末にサンホセ号は海の藻屑と消えた。
砲撃戦を余儀なくされるサンホセ号 image credit:commons.wikimedia
水深600メートルの海の底に眠っていたサンホセ号
それ以来、トレジャーハンターや考古学者が沈没船を探し求めてきた。
ついに発見されたのは、2015年11月27日のことだ。コロンビア海軍の調査船に乗った国際チームが沈没したサンホセ号の位置を突き止めたのだ。それは600メートルの海の底で眠っていた。
しかし当時、沈没船が本当にサンホセ号であるかどうか確証が得られなかった。そこでウッズホール海洋研究所はバル半島沖に沈んでいる船の発見に貢献したREMUS 6000を再び送り込み、詳しく調査を進めることにした。
大砲にある装飾によりサンホセ号であることを正式確認
その調査記録によると、船は部分的に堆積物によって覆われていた。映像に収められていた大砲には装飾が彫られており、これがサンホセ号特定の決め手となった。
サンホセ号の文化的・歴史的価値は計り知れない。その積載物は18世紀初頭におけるヨーロッパの社会経済的・政治的状況を知る貴重な手がかりとなるだろう。
コロンビア政府は、すでに見つかっている大砲や陶器なども含め、船から発掘されるであろう遺物を保存・展示するための博物館や研究所の設立を計画している。
300年以上前のティーカップ image credit:Woods Hole Oceanographic Institution
ダリオ財団が所有し、ウッズホール海洋研究所が操作したREMUS 6000は、これ以外にも深海底調査でお手柄を立てた実績がある。
2009年にブラジルからフランスへの途中で墜落したエールフランス447便の残骸を発見し、2010年にはタイタニック号が沈没したと考えられる場所一帯のマッピングや写真撮影を行った。
自動潜水艇「REMUS 6000」image credit:kongsberg
References:whoi / sciencealert/ written by hiroching / edited by parumo
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コメント
1.
2. 匿名処理班
ドラクエって魔王討伐が目的じゃなければ
海の財宝を手に入れた時点で
エンディングでいいレベルなんだよな。
3.
4. 匿名処理班
財宝をめぐってさらに醜い争いが勃発してるようですが…
5. 匿名処理班
そのお宝はスペインじゃなくてペルーのものでしょ