Nintendo Switchタイトルは「いつでもどこでも」をキャッチコピーとしてどれだけ使っているのか検証
「いつでもどこでも銀行強盗」
この鮮烈なフレーズが飛び出したのは昨年4月13日に公開された「Nintendo Direct」でのことである。
タイトルはオンラインFPS『PAYDAY2』。
また、先日発売された『プリパラ オールアイドルパーフェクトステージ!』を紹介する任天堂公式ホームページのトピックスにおいても、「いつでもどこでもプリパラ!」という見出しが用いられている。
このように、Nintendo Switchにおいては「いつでもどこでも」という表現が多用されている、ような印象がある。
考えてみれば、「いつでもどこでも」の後にアピールしたいフレーズを挿入すれば、それだけでNintendo Switchタイトルのキャッチコピーが誕生するのだ。
「いつでもどこでもここたま活動」とか、「いつでもどこでもハッピーハンター」とか、「いつでもどこでもここんぽいぽいここったま!」とか、そういう感じでフレーズを量産できるわけ。
こんな楽な手段を使わない手はないはず! そこでNintendo Switchタイトルのキャッチコピーが「いつでもどこでも」で溢れかえっている、堕落と怠慢に満ちた地獄絵図かどうかを確認してみた。
今回調査の対象としたのは2018年3月31日までに発売されたNintendo Switchタイトルのうち350本。
それらについて、任天堂公式ホームページ、またNintendo SwitchのNintendo eshopで公開されている紹介文をすべて抜粋した。
この赤枠で囲んだ部分が対象の箇所。
該当箇所において「いつでもどこでも」、あるいはそれに類する表現が使われているゲームタイトル数をカウントした。
と、ご丁寧に前置きしたが、結局はタイトル数を発表するだけなので、ここは秒で結論に至ろう。
Nintendo Switchにおいて、「いつでもどこでも」という要素をアピールしているタイトル数は……
7本!!
す、少ねえ~!!!
350本中7本て!
率にしてわずか2パーセント!?
Nintendo Switchに、「いつでもどこでも」を売りにしているゲームタイトル、ほぼ皆無ッ!!
それでは、そんな「いつでもどこでも」を売りにした、Nintendo Switch界の七天大聖をご紹介しよう。
①『オセロ』 メーカー:アークシステムワークス/配信開始日:2017年3月3日
②『密着対戦スピード』 メーカー:Collavier/配信開始日:2017年7月20日
③『ナムコミュージアム』 メーカー:バンダイナムコエンターテインメント/配信開始日:2017年7月28日
④『密着対戦2048』 メーカー:Collavier/配信開始日:2017年9月7日
⑤『密着対戦ピクプレ』 メーカー:Collavier/配信開始日:2017年9月28日
⑥『LEGO®ワールド 目指せマスタービルダー』 メーカー:ワーナー/配信開始日:2017年11月22日
⑦『ファーミングシミュレーター Nintendo Switch Edition』 メーカー:オーイズミ・アミュージオ/配信開始日:2017年12月14日
このメンツ、「圧」がある……!
『密着対戦』シリーズに関しては完全にフレーズを使い回してるしな……。
しかし、ここはもう少し視野を広げてみよう。これに加え、更にその下のゲーム概要本文にも調査対象を拡大してみる。
ここまで見ればきっと「いつでもどこでも」の建て売り住宅が広がっているに違いない!
それを含めると、合計タイトル数は……
14本!!
やっぱ少ねえ~!!!
およそ3.7パーセントしかねえ!!
そのタイトル一覧がこちら。
⑧『マリオカート8デラックス』 メーカー:任天堂/配信開始日:2017年4月28日
⑨『ドラゴンボール ゼノバース2 for Nintendo Switch』 メーカー:バンダイナムコエンターテインメント/配信開始日:2017年9月7日
⑩『ポッ拳 POKKÉN TOURNAMENT DX』 メーカー:ポケモン/配信開始日:2017年9月22日
⑪『FIFA 18』 メーカー:エレクトロニック・アーツ/配信開始日:2017年9月29日
⑫『WWE 2K18』 メーカー:テイクツー・インタラクティブ・ジャパン/配信開始日:2017年12月6日
⑬『シンプル麻雀オンライン』 メーカー:アークシステムワークス/配信開始日:207年12月21日
⑭『BILLIARD』 メーカー:D3パブリッシャー/配信開始日:2018年2月15日
この中で成されている表現は「いつでも、どこでも」のみならず、「家でも外でも」や「自宅でも外出先でも」などと多岐にわたる。
また、「どこでも」というフレーズのみを使用しているタイトルも1本のみ存在した。
Panic Buttonより2017年10月19日より配信されているDL専用ソフト、『アストロデュエルデラックス』だ。
(敵パイロットを踏みつぶしちゃえ!)と、何故かメインボーカルじゃない人が歌ってるパートみたいな表現をしているのも謎だが、そこは今回の主旨ではない。
該当の箇所を確認してみると……
>出先でもお家のTVでも、テーブルや床でだって楽しめます!
ほぼ室内じゃねえか!!
というかこの並びだと、テレビで遊んでたらお父さんにチャンネルを取られてテーブルへ行き、テーブルで遊んでるとお母さんに邪魔だと言われて最終的に床へ追いやられた、みたいな感じになるだろ!(ならない)
で、これらのタイトルを眺めてみると、「いつでもどこでも」と宣伝文句に入れているのは『FIFA』や『マリオカート』のようなメジャータイトル、また他機種からの移植タイトルや、『オセロ』や『スピード』のような国民的ボードゲームが多いのがわかる。
そもそも「いつでもどこでも」遊べるというのはNintendo Switchの本体機能によるものであり、ゲームソフトそのものが持っている特長とは言い難い。
だからこそ多くのタイトルがそのような共通の仕様よりは独自のゲーム性やシステムを売りにしているのであり、逆に既に魅力が浸透している定番ゲームに関しては「いつでもどこでも」という性質を推す余地があるということではなかろうか。
……そうなると、iPadでリリースした『Astro Duel』を基にした『アストロデュエルデラックス』がそこを売りにしているのはなかなか豪気ではあるが……。
お前、もともと床で遊べるじゃねえか!
また、よく目についた売り文句が、月並みではあるが「Nintendo Switchで登場!」だ。
3DSからの移植である『モンスターハンターダブルクロス Nintendo Switch Ver.』や、
新規タイトルながら「HD振動」というSwitch特有の機能を活かしたソフトである『シノビリフレ』、
「蘇る」という表現を使っている『聖剣伝説COLLECTION』などなど。
「いつでもどこでも」のように、主に他機種からの移植作品で使われる傾向にあり、「Nintendo Switch版」であることを強調しているように思える。
中でも印象的だったのは『魔界戦記ディスガイア5』かな。
>『魔界戦記ディスガイア5』がNintendo Switchに登場!!
>『魔界戦記ディスガイア』シリーズがNintendo Switchに初登場!
>”史上最凶のシミュレーションRPG”シリーズが登場!
しつけえ! スクロールすると一定間隔で「無料登録」の誘導が出てくるDMMゲームの広告ページかてめえは!!
とまあ、結果としては「いつでもどこでも」は実は売り文句としてはさほど使われていないということがわかったわけだけど、せっかく色々売り文句を集めたので、ここからは主旨をガラっと変えて「Nintendo Switchソフト キャッチコピー逆算クイズ」を実施するぞ。
先ほど調査対象とした、任天堂公式に掲載されている太字の見出し文をいくつか提示するので、そのタイトルが一体何なのか当ててみてくれよな。
【第1問】
彼女との電話、メール、ボクたちって付き合ってるのかな!?
文面からして恋愛系のゲームな感じがするこちらのキャッチコピー。
Switchに恋愛シミュレーションなんて出てたかな……と思い当たる節がない方のためにも正解を発表。
正解はドラスより好評配信中の実写疑似恋愛トークソフト、『真・電愛「なにが欲しいの?」 ~北見えり~』。
出し抜けにSwitchで配信されたため一部の好事家の間で話題となったタイトルでもある。
【第2問】
谷へ引っ越してきて…
引っ越してきて……なんなんだよ! その後が大事だろ!
もしくは「目を覚まして……」みたいに、女の子がお願いしてきてるのかもしれない。
正解は、『牧場物語』ライクなDLゲー、『Stardew Valley』。
その後の短い概要を読めば何となくゲームは把握できるんだけど、このキャッチコピーだけじゃ何もわからない。
【第3問】
楽しくプレイ。プレイこそ人生。
「人生」というまた大きな話を持ち出してきてるけども、金言な気もするこの文言。
しかしこれもまたゲーム性は一切伝わらないので、これだけで何のゲームかを当てることが出来る人はいるだろうか。
正解は、大人気スポーツゲーム『ロケットリーグ』。
他機種でも随分前から遊ばれているタイトルなので「いつでもどこでも」や「Nintendo Switchで登場!」が使われてもおかしくなさそうなのだが、キャッチコピーは上で述べた通り、格言。
【第4問】
――史上最強、痛快無比。
俺が今回集めた中で「カッコいい」と感じたコピーの1つ。
『刑事J.B.ハロルドの事件簿 マーダー・クラブ』の、「ゲームは、現実よりリアル。」というものもクールなんだけど、こちらも単純ながら、しかしそれ故にズバッと決まったフレーズとなっている。
正解は、インティ・クリエイツよりSwitch本体と同時発売された、『ブラスターマスター ゼロ』。
『ショベルナイト』や『シャンティ』、『ぎゃるがん』といったタイトルともコラボしている。
【第5問】
最終問題は少し形式を変えてみよう。
次に示す3つのキャッチコピーと3つのゲームタイトルとの正しい組み合わせを考えていただきたい。
A:『数学力王 中学1年』
B:『数学力王 中学2年』
C:『数学力王 中学3年』
a:「Nintendo Switchで楽しく学習! 数学力王を目指そう!!」
b:「Nintendo Switchで楽しく学習! 数学がどんどん好きになる!!」
c:「Nintendo Switchで楽しく学習! 数学の力をぐんぐん伸ばそう!!」
『数学力王』シリーズの見出し文は、若干とはいえ全て異なっており、個別に用意されているというまさかの凝りっぷり。
学習ソフトではなくれっきとしたボードゲームである『密着対戦』シリーズは全部同じだったのに!
しかしこの微妙な差異を判別できる「数学力王力王」はいるだろうか。
正解は、「A-c」、「B-b」、「C-a」。
数学の力をぐんぐん伸ばし、その結果数学がどんどん好きになり、そして最後には数学力王を目指すという非常に筋の通った流れになっているのだ。
Switchでの学習はこれと『ナナミ』シリーズで決まり。
というわけで今回の検証は以上。
意外だったのは『アケアカ』シリーズで、もっとも「いつでもどこでも」という売り文句と相性がいいかと思いきや、全てしっかりとゲーム内容を説明し、世界観に触れている紹介文で感心してしまった。
同じ復刻モノである『彩京』シリーズは、気分によって変えてるのか、「Nintendo Switchに登場!」という文面があったりなかったりするのでよくわからなかったけど。
『Minecraft』や『ショベルナイト』は直訳感がすごくてちょっと残念。
今後もNintendo Switchにはたくさんのゲームがリリースされるだろうが、個人的にはこういう点にも注目していきたい。
以上。