那覇市のタイムスビルで開催中の写真展「カラーでもっとあんやたん」で1967年に撮影された1枚が目に付いた。自転車の荷台に置かれた紙芝居を子どもたちがじっと見つめている

▼30年代に誕生した日本独特の文化で今では世界47の国と地域へ広まった紙芝居。そんな紙芝居も戦争遂行の道具になった時代があった

▼「国策紙芝居からみる日本の戦争」(安田常雄編著、勉誠出版)には、約千種類あるという国策紙芝居のうち、神奈川大学非文字資料研究センターの240点が収録された。人気漫画のキャラクターが登場する「フクチャントチョキン」では、軍艦や弾丸をつくるのにお金が必要だからオモチャを我慢して貯金し、国債を買おうという筋立て

▼あからさまに戦争協力を訴える話ばかりではない。家族愛や友情を主題にした美談仕立てで感動を誘い、節約や戦地の兵士を思う作品もあって、国が理想とする「少国民」の宣伝に一役買った

▼子どもの感性に訴えるものとして、4月に始まった小学校の道徳を連想するのは考えすぎか。憲法学者の木村草太さんは、道徳には学問体系がなく、政治家や社会の雰囲気で指導内容が決まる恐れがあると指摘する

▼柔らかな心を狙って、国民よりも国家が優先される思想が押し付けられる。そんな時代の再来があってはならない。(玉城淳)