とても納得できる内容とはいえない。

 陸上自衛隊イラク派遣部隊の日報隠蔽(いんぺい)問題に関する防衛省の調査結果である。

 発端は、昨年2月の国会で稲田朋美防衛相が野党議員に「見つけることができなかった」と存在を否定する答弁をしたことだ。だがイラク日報は陸自研究本部(現教育訓練研究本部)教練課で翌3月には見つかっている。陸上幕僚監部には今年1月に報告されたが、小野寺五典防衛相に上がったのは3月である。

 発見から1年以上も防衛相らに報告されていない。防衛省・自衛隊の隠蔽体質、政治が軍事に優越するシビリアンコントロール(文民統制)が機能しているのか疑わざるを得ない事態である。

 昨年3月といえば南スーダン国連平和維持活動(PKO)日報隠蔽が問題になっていた時期である。イラク日報問題が新たに飛び出すのを避けたのではないか、との疑念が拭えない。

 稲田氏が国会答弁した2日後、統合幕僚監部の総括官に「本当にないのか」と発言。調査結果はこれを再捜索の「指示」と認定しているが、疑問である。

 稲田氏の発言はあいまいさが指摘され、本人の認識を確かめるため聞き取りをしなければならないのに、防衛省はこれを怠っている。

 調査はこの発言が「指示」だったとの前提で始めている。当初から稲田氏の政治責任は問わず、必然的に責任は部下にあるとの構図が出来上がったのではないか。

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 統幕総括官が「指示」と受け止めたことを理由に、担当者が陸幕などにメールで「指示」を伝え、再度日報を捜索するよう求めた。だが、メールの本文中に「大臣指示」「命令」などの記載がなかったため、陸幕は再捜索の「指示」と認識しなかったという。やはりあいまいなのである。

 陸自研究本部教練課でイラク日報が見つかったが、課長は報告の必要がないと判断。イラク日報に関する情報公開請求を受けた担当者も課長に確認もせずに存在しないと回答したという。極めて不自然というほかない。

 現場の認識不足や担当者同士の意思疎通が十分でないことが原因で、組織的隠蔽はなかったと調査結果は結論付けているが、にわかには信じがたい。聞き取りは「現場のミス」で一致しており、防衛省幹部が「口裏合わせ」との見方を示しているくらいだ。

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 日報には「戦闘が拡大」などとの記述があり、「非戦闘地域」に限定した派遣との矛盾もある。自衛隊の活動実態が国民に知らされなければ戦時中の大本営発表と同じだ。

 今年4月には幹部自衛官が野党議員に「国益を損なう」などと暴言を浴びせた。野党議員は「おまえは国民の敵だ」とののしられたとも証言している。改正防衛省設置法で制服組と背広組が同等になり、自衛隊のおごりが生まれているのではないか。

 イラク日報問題を省内の調査チームで手掛けたことにそもそも限界がある。調査は尽くされておらず、国会でたださなければならない。